それでも旅は続く―――パトリック・チャン
しかしながらネイサンを身近で認識し羽生が更に構成を上げてきていることからソチシーズンでも行わなかった構成上げを敢行した。昨季後半から3Aを2回にし今季は4Sを投入してきた。おそらく来季にはSPも2クワドにしてくるだろう。
年齢がフィギュア選手の中では高いチャンにとってなかなか体力的に難しい部分ではあるが更に進化しようとする姿勢は評価したい。この高難度時代にあるからこそそのスケーティングの良さはもっと評価されるべきだと思うからだ。
Sカナダ 総合1位 266.95 SP1位 90.56 FS2位 176.39
中 国 杯 総合1位 279.72 SP3位 83.41 FS1位 196.31
G P F 総合5位 266.75 SP2位 99.76 FS5位 166.99
四大陸選手権 総合4位 267.98 SP5位 88.46 FS4位 179.52
世界選手権 総合5位 295.16 SP3位 102.13 FS5位 193.03
国別対抗戦 276.47 SP6位 85.73 FS3位 190.74
平均 総合 271.68 SP平均 90.663 FS平均 181.017
昨シーズンはSPで出遅れてFSで盛り返すという試合が多かったが今季はSPを纏めPBも出せた。FS高難度構成になるとやはり体力的に厳しそうなので来季上位をキープするためにはやはりSPで上位にとどまり滑走順をなるべく後にしてGOEとPCSを出しやすくする必要がある。ただおそらく2種クワドにしてくるためそれが可能かは現時点では未知数だ。
<ジャンプ>
SP 4T+3T 3A // 3Lz =29.70
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 30.13 -6.10 -1 23.03
Sカナダ 29.70 -0.70 -1 28.00
中 国 杯 23.10 -1.60 0 21.50
G P F 29.70 4.54 0 34.24
四大陸選手権 27.83 -3.11 -1 23.72
世界選手権 29.70 5.83 0 35.53
国別対抗戦 25.49 -2.94 -1 21.55
平均 27.95 -0.583 -0.571 26.796
4Tが4S練習の影響からか割とミスが出たのが基礎点を下回ってしまった大きな原因。そして3A、決まると綺麗なんだけど確実というわけでは無いのがやはり不安要素となっている。
FS
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 56.42 -0.66 -1 54.76
Sカナダ 61.10 3.14 -1 63.24
中 国 杯 77.16 6.59 -1 82.75
G P F 62.03 -4.09 -4 53.94
四大陸選手権 70.53 -3.10 -2 65.43
世界選手権 72.05 5.29 0 77.34
国別対抗戦 67.04 6.10 0 73.14
平均 66.619 1.896 -1.286 67.229
今季から投入した4SはGPF以降はかなりの確率で入れることが出来た。決まればGOEが付くので大きな武器になる。一方で昨季から継続して後半の4回転の成功率が低い。3Aもなかなか2本ともクリーンに決められないのが現状だ。無理に前半3後半5にせずにネイサンのように前半ジャンプ多め後半滑りで見せる方式にしても良いのではと思う。少なくともネイサンよりは滑りに見応えがある分評価はされやすいと思う。
<スピン>
SP
基礎点 GOE 合計
フィンランディアT 9.3 2.92 12.22 レベル4 2回 レベル3 1回
Sカナダ 9.2 3.13 12.33 レベル4 2回 レベル3 1回
中 国 杯 9.7 3.21 12.91 ALLレベル4
G P F 9.3 3.42 12.72 レベル4 2回 レベル3 1回
四大陸選手権 9.7 3.28 12.98 ALLレベル4
世界選手権 9.3 3.28 12.58 レベル4 2回 レベル3 1回
国別対抗戦 9.7 3.00 12.70 ALLレベル4
平均 9.457 3.177 12.634
レベルはちょくちょく落としているが、平均12.5以上は素晴らしい数字だ。
FS
基礎点 GOE 合計
フィンランディアT 9.3 2.84 12.14 レベル4 2回 レベル3 1回
Sカナダ 9.7 2.93 12.63 ALLレベル4
中 国 杯 9.3 3.00 12.30 レベル4 2回 レベル3 1回
G P F 9.3 3.07 12.37 レベル4 2回 レベル3 1回
四大陸選手権 9.3 2.71 12.01 レベル4 2回 レベル3 1回
世界選手権 9.2 2.07 11.27 レベル4 2回 レベル3 1回
国別対抗戦 9.7 2.86 12.56 ALLレベル4
平均 9.4 2.783 12.183
確実の稼げるポイントなのであと一踏ん張り頑張りたいところだ。
SP
基礎点 GOE 合計
フィンランディアT 3.9 1.52 5.42 レベル4
Sカナダ 3.3 1.43 4.73 レベル3
中 国 杯 3.3 1.21 4.51 レベル3
G P F 3.9 1.80 5.70 レベル4
四大陸選手権 3.9 2.10 6.00 レベル4
世界選手権 3.9 2.10 6.00 レベル4
国別対抗戦 3.9 1.90 5.80 レベル4
平均 3.729 1.723 5.452
満点の回数はフェルナンデスと同じ2回。フェルナンデスが格好良さとかフラメンコらしい動きを楽しむのに対してチャンは純粋に滑りの気持ちよさを楽しむエレメンツとなっている。チャンの魅力が最も感じられるのがステップだと思う。
基礎点 GOE 合計
フィンランディナT 5.9 3.26 9.16 レベル4
Sカナダ 5.9 3.50 9.40 レベル4
中 国 杯 5.3 2.96 8.26 レベル3
G P F 5.9 4.00 9.90 レベル4
四大陸選手権 5.9 3.60 9.50 レベル4
世界選手権 5.9 3.60 9.50 レベル4
国別対抗戦 5.9 4.00 9.90 レベル4
平均 5.814 3.56 9.374
<TES計>
SP
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 43.33 -1.66 -1 40.67
Sカナダ 42.20 3.86 -1 45.06
中 国 杯 36.10 2.82 0 38.92
G P F 42.90 9.76 0 52.66
四大陸選手権 41.43 2.27 -1 42.70
世界選手権 42.90 11.21 0 54.11
国別対抗戦 39.09 1.96 -1 40.05
平均 41.136 4.316 -0.571 44.881
来季は2種クワドにするようだがもしそうならば3ジャンプ全て前半でも良いかもしれない。ジャンプについては基礎点確保、スピンステップで稼げばチャンならば十分上位にこれると思う。
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 71.62 5.44 -1 76.06
Sカナダ 76.70 9.57 -1 85.27
中 国 杯 91.76 12.55 -1 103.31
G P F 77.23 2.98 -4 76.21
四大陸選手権 85.73 3.21 -2 86.94
世界選手権 87.15 10.96 0 98.11
国別対抗戦 82.64 12.96 0 95.60
平均 81.833 8.239 -1.286 88.786
高難度ジャンパー達は羽生を除けばそこまで完璧に点数を出せる訳ではない。実際ボーヤンはノーミスで204点。チャンがTES110点出せれば205以上にはなる。無理な構成上げよりも組んだ構成を完璧に実施することにに徹した方が良いと思う。
<PCS>
SP
SS TR PE CC IN 合計
フィンランディンT 8.63 8.54 8.33 8.67 8.75 42.92
Sカナダ 9.14 8.93 9.00 9.18 9.25 45.50
中 国 杯 9.07 8.89 8.57 8.89 9.07 44.49
G P F 9.43 9.36 9.46 9.39 9.46 47.10
四大陸選手権 9.18 9.11 8.93 9.25 9.29 45.76
世界選手権 9.71 9.46 9.64 9.57 9.64 48.02
国別対抗戦 9.36 9.21 8.75 9.18 9.18 45.68
平均 9.217 9.071 8.954 9.162 9.234 45.638
そして今季はミスると低めに採点されるチャンと羽生に対しフェルナンデスは高値安定傾向となっている。ノーミス同士だった世界選手権でもフェルナンデスの方が高い。SSとTRはチャンが上、後半3項目がフェルナンデスが上というよう特色は分かれているが・・・2クワドの構成の高さとフラメンコという認識されやすい世界の表現が評価されたのだろう。そういう意味では五輪シーズンには王道的なわかりやすい曲の方が有利なのかもしれない。
SS TR PE CC IN 合計
フィンランディアT 8.83 8.58 8.67 8.96 9.00 88.08
Sカナダ 9.21 9.00 8.96 9.18 9.21 91.12
中 国 杯 9.36 9.18 9.14 9.36 9.46 93.00
G P F 9.32 9.11 8.57 9.18 9.21 90.78
四大陸選手権 9.25 9.18 9.14 9.29 9.43 92.58
世界選手権 9.57 9.46 9.36 9.57 9.50 94.92
国別対抗戦 9.64 9.43 9.32 9.57 9.61 95.14
平均 9.311 9.134 9.023 9.301 9.346 92.231
ジャッジには北米・欧州・アジアと若干好みというか重要視する項目にばらつきがあるので当たる試合によっては多少の有利不利は発生している。出された数字はともかく試合内での序列は変わりないので順位には影響しないがこうして纏めてみるとこの数字である意味をどうとらえて良いのかわからなくなってくる。少なくともTRについてはフェルナンデスがチャンより高い理由がよくわからない。
<来季に向けて>
いかに優れたスケーティング技術を持とうとTESを堅実に稼げないと現行ルールでは勝てない。ただチャンの場合五輪団体戦のメダルはほぼ確実に得られるので可能な限りの高構成を確実に実施したい。3A2本の確実性が得られないなら4S4T2本ずつ構成(しかも前半4本構成)でも良いかもしれない。
海賊は高みを目指す―――ネイサン・チェン
4種類の4回転を自由自在に飛ぶ様は見ているものを興奮させた。更にシニア1年目にして四大陸というチャンピオンシップのタイトルをとった。
一躍優勝候補に名を連ねることになったネイサンのシーズンを振り返る。
フランス杯 総合4位 264.80 SP2位 92.85 FS4位 171.95
NHK杯 総合2位 268.91 SP2位 87.94 FS2位 180.97
G P F 総合2位 282.85 SP5位 85.30 FS1位 197.55
四大陸選手権 総合1位 307.46 SP1位 103.12 FS2位 204.34
世界選手権 総合6位 290.72 SP6位 97.33 FS4位 193.39
国別対抗戦 284.52 SP2位 99.28 FS4位 185.24
平均 総合 279.386 SP平均 93.331 FS平均 186.054
それでもボーヤンに比べてネイサンの日本での報道が多かったのはやはり4回転を4種類飛ぶというわかりやすさと羽生に勝ったという点につきる。普通の公式戦ではボーヤンも宇野も未だに羽生に勝てていない。一方ネイサンは一緒の試合で戦った中で勝っていない選手はいないというシニア1年目にしてある意味の偉業を成し遂げた。年齢のわりに物おじしない落ち着いた精神力の持ち主だが五輪シーズンでもそれが貫けるか来季は真価が問われそうだ。
ジャンプの質という点ではボーヤンには劣るが種類という点では勝っている。高難度の急進派として来季もひた走る予感がする。怪我には気を付けながら質の向上も図って欲しい。
SP 4Lz+3T 4F // 3A =39.55
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 39.55 -3.33 -1 35.22
フランス杯 33.83 2.26 0 36.09
NHK杯 39.55 -6.00 -1 32.55
G P F 35.85 -4.40 -1 30.45
四大陸選手権 39.55 2.37 0 41.92
世界選手権 39.55 -0.29 -1 38.26
国別対抗戦 36.25 3.71 0 39.96
平均 37.733 -0.812 -0.571 36.35
最高難度の構成のため転倒もそれなりにありまた着氷もいまいちという部分も多かった。しかし高難度4回転の場合上手く着氷すれば3回転よりGOEが付きやすいという傾向がある。シーズン後半にはステップからのジャンプ基準も緩くなってGOEがつきやすくなった。この数字を見てしまうと来季もとりあえず基礎点計画は継続しそうだなと感じる。
FS
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 92.45 -10.65 -2 79.80
フランス杯 81.70 -5.34 -2 74.36
NHK杯 85.65 -5.46 -1 79.19
G P F 86.02 8.17 0 94.19
四大陸選手権 90.38 3.92 0 94.30
世界選手権 96.77 -5.87 -2 88.90
国別対抗戦 77.45 3.87 0 81.32
平均 87.203 -1.623 -1 84.58
ただやはり高難度のため転倒はトップ選手の中では多めとなりGOEと減点のマイナスが大きくボーヤンと1点も差がつかなくなった。
<スピン>
SP
基礎点 GOE 合計
フィンランディアT 7.9 1.33 9.23 ALLレベル3
フランス杯 9.2 2.22 11.42 レベル4 2回 レベル3 1回
NHK杯 9.2 1.50 10.70 レベル4 2回 レベル3 1回
G P F 8.8 1.07 9.87 レベル4 1回 レベル3 2回
四大陸選手権 9.7 2.36 12.06 ALLレベル4
世界選手権 9.3 2.36 11.66 レベル4 2回 レベル3 1回
国別対抗戦 9.7 2.21 11.91 ALLレベル4
平均 9.114 1.864 10.978
ネイサン単体で見るとやはり転倒があった試合は低めになっている。転倒による体力消耗が関わっているのかもしれない。
FS
基礎点 GOE 合計
フィンランディアT 7.4 1.08 8.48 レベル4・2・1 各1回
フランス杯 9.7 1.57 11.27 レベル4 2回 レベル3 1回
NHK杯 9.3 1.43 10.73 レベル4 1回 レベル3 2回
G P F 9.7 2.14 11.84 ALLレベル4
四大陸選手権 10.2 2.08 12.28 ALLレベル4
世界選手権 10.2 1.71 11.91 ALLレベル4
国別対抗戦 9.7 2.36 12.06 レベル4 2回 レベル3 1回
平均 9.457 1.767 11.224
スピンの位置や構成はシーズン中にかなり変更があった。冒頭は前半にも入っていたが途中から全てジャンプが終了後になった。その方が精神的・体力的な負担が少なかったのだろう。プログラムとしては単調になってしまうが基礎点を確実に獲得することを優先したのだろう。ただ見ていて印象はあまりよくないので来季はその辺り工夫する必要があると思う。
SP
基礎点 GOE 合計
フィンランディアT 3.9 1.40 5.30 レベル4
フランス杯 3.3 0.93 4.23 レベル3
NHK杯 3.3 1.00 4.30 レベル3
G P F 3.3 1.00 4.30 レベル3
四大陸選手権 3.9 1.70 5.60 レベル4
世界選手権 3.3 1.00 4.30 レベル3
国別対抗戦 3.9 1.40 5.30 レベル4
平均 3.557 1.204 4.761
バレエをモチーフにしたこのプログラムはネイサンの個性にはよく合っていた。曲も定番曲と言われる(毎年誰かが使用している)ほどフィギュアではなじみがあるもので曲の盛り上がりを上手く使ったプログラムになっていたと思う。
基礎点 GOE 合計
フィンランディナT 4.6 1.20 5.80 レベル2
フランス杯 5.3 1.66 6.96 レベル3
NHK杯 5.3 1.69 6.99 レベル3
G P F 5.3 1.80 7.10 レベル3
四大陸選手権 5.9 3.00 8.90 レベル4
世界選手権 5.9 1.90 7.80 レベル4
国別対抗戦 5.9 2.60 8.50 レベル4
平均 5.457 1.979 7.436
コレオについては前半の高難度のジャンプ構成から印象を変えるために上手く使われており、StSqはジャンプが終わった後の最後のひとがんばりといった滑りになっていた。転倒があるとかなりきつそうだったがしっかりレベルを確保してきたことは評価できる。
SP
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 51.35 -0.60 -1 49.75
フランス杯 46.33 5.41 0 51.74
NHK杯 52.05 -3.50 -1 47.55
G P F 47.95 -2.33 -1 44.62
四大陸選手権 53.15 6.43 0 59.58
世界選手権 52.15 3.07 -1 54.22
国別対抗戦 49.85 7.32 0 57.17
平均 50.404 2.257 -0.571 52.09
表彰台に上がるためにはSP100点を超える必要が出てきたシーズンとなったがそうするとやはり4Lzの基礎点が必要になる。国別では抜いてきたが怪我を治して来季も是非暴れて欲しいと願っている。
FS
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 104.45 -8.37 -2 94.08
フランス杯 96.70 -2.11 -2 92.59
NHK杯 100.25 -2.34 -1 96.91
G P F 101.02 12.11 0 113.13
四大陸選手権 106.48 9.00 0 115.48
世界選手権 112.87 -2.26 -2 108.61
国別対抗戦 93.05 8.83 0 101.88
平均 102.117 2.123 -1 103.24
ノーミスボーヤンのTESがネイサンの最高記録より上という結果を見るとやはり順位評価としては完成度が重要なので着氷含めて質と確率をもう少し上げたい。
<PCS>
SP
SS TR PE CC IN 合計
フィンランディンT 7.58 7.25 7.54 7.71 7.67 37.75
フランス杯 8.18 7.89 8.43 8.36 8.25 41.11
NHK杯 8.18 8.04 7.89 8.14 8.14 40.39
G P F 8.18 7.96 8.04 8.32 8.18 40.68
四大陸選手権 8.68 8.50 8.93 8.75 8.68 43.54
世界選手権 8.64 8.43 8.61 8.68 8.75 43.11
国別対抗戦 8.46 8.21 8.61 8.29 8.54 42.11
平均 8.271 8.04 8.293 8.321 8.316 41.241
バレエ音楽をバレエ的な振付で上手く見せたという効果もあったかもしれない。SPは来季そのまま持ち越しても良いかもしれないと思っている。
TESであまり代わり映えの無いボーヤンとネイサンだがPCSで若干差がついている。ジャンプを纏めるとポンと上がりやすい傾向があるのでPCSについてはボーヤンよりも有利に感じられる。
FS
SS TR PE CC IN 合計
フィンランディアT 7.71 7.17 7.46 7.63 7.46 74.86
フランス杯 8.11 7.61 7.96 8.07 7.93 79.36
NHK杯 8.54 8.32 8.25 8.46 8.46 84.06
G P F 8.46 8.11 8.79 8.46 8.39 84.42
四大陸選手権 9.00 8.75 8.89 8.93 8.86 88.86
世界選手権 8.54 8.39 8.32 8.64 8.50 84.78
国別対抗戦 8.50 8.07 8.50 8.29 8.32 83.36
平均 8.409 8.06 8.31 8.354 8.274 82.814
ただFSはやはりバランスが悪い構成だし、構成を演技中に変えるためジャンプ中はそれだけになりやすい。来季も同じことをして同等の評価がされるかは未知数だ。
FSについては持越は無いと思う。今季は割とSPFSが似た印象だったので違った感じにしたいところだ。ネイサンについてはボーヤンと異なり王道曲も似合いそうだし、物怖じしない性格で年齢の割に大人びた身のこなしが出来るのでロックやジャズなどでも手くこなせそう。今季を引きずらない曲調になるといいと思う。
<来季に向けて>
とりあえずFSでバランスの取れた構成を作って欲しい。ラストにスピン纏めてこなしますというのはシニア選手としては印象が悪い。
速いテンポは盛り上がりやすいがスタミナが持たなくなるとこなしています感が感じられるのでその辺りを上手くフォローできる振付が出来ると良いかもしれない。
後はやはり着氷。前傾になる着氷はやはり膝に良くない。ほとんどが4回転の高難度であるので負担が大きすぎる。後方に流す着氷技術を磨いて欲しい。ボーヤンも昨季より改善傾向にあるのでネイサンも難度を上げるより完成度を上げて欲しいと願っている。
蜘蛛男は笑顔で飛ぶ―――ボーヤン・ジン
シーズン開始前にはかなり心配していたローリーとの相性がかなり良くSPFS共に好印象を残した。SPは持越と言うことでランを減らしもう少し密度を上げたらかなり評価が上がりそうな印象がある。来季のさらなる躍進が非常に楽しみな選手だ。
中 国 杯 総合2位 278.54 SP1位 96.17 FS2位 182.37
四大陸選手権 総合5位 267.51 SP4位 91.33 FS5位 176.18
アジア大会 総合2位 280.08 SP1位 92.86 FS2位 187.22
世界選手権 総合3位 303.58 SP4位 98.64 FS3位 204.94
国別対抗戦 272.61 SP3位 97.98 FS7位 174.63
平均 総合 274.567 SP平均 91.652 FS平均 182.915
シーズン冒頭は身長が伸び上半身のバランスも変わりジャンプが安定しないのかと心配したが後半に行くにつれしっかりGOEが取れるものに調整してきた。いつもにこにこ笑顔ながらしっかりやることをやってきている手強い選手になったなぁと感じる。
先日2015年GPFを久々に振り返ったが体型や所作がものすごく変わっていて驚いた。是非ローリーにしごかれて更なるスケーティングの向上を図ってまた驚かせて欲しい。
SP 4Lz+3T 3A // 4T =37.73
基礎点 GOE 減点 合計
Sアメリカ 33.43 -10.14 -2 21.29
中 国 杯 37.73 3.86 0 41.59
四大陸選手権 37.73 -1.97 0 35.76
アジア大会 37.73 -1.52 0 36.21
世界選手権 37.73 4.14 0 41.87
国別対抗戦 37.73 1.55 0 39.28
平均 37.013 -0.68 -0.333 36.00
体型変化もほぼ終わったようだしSPは持越なので来季はシーズン開始から大暴れしそうな予感がする結果だ。
FS 4Lz 4S 3A+Lo+3S // 4T+2T 4T 3Lz+3T 3A 3F = 88.1
基礎点 GOE 減点 合計
中 国 杯 85.57 1.52 -1 86.09
四大陸選手権 91.58 -7.89 -2 81.69
アジア大会 78.90 4.98 0 83.88
世界選手権 88.10 10.94 0 99.04
国別対抗戦 77.09 -3.34 0 73.75
平均 84.452 -0.033 -0.667 83.752
国別はシーズン終了後ということでおいておいても四回転で抜けが少ないというのは大きいなと基礎点を見て思う。大抵の選手はその位のTESを得るのにも苦労しているというのに・・・
4Lzの質については今のところ世界最高だと思うので4Tも同じレベルになると更に怖い存在になりそうだ。
SP
基礎点 GOE 合計
Sアメリカ 9.3 1.21 10.51 レベル4 2回 レベル3 1回
中 国 杯 9.3 1.43 10.73 レベル4 2回 レベル3 1回
四大陸選手権 8.9 1.50 10.40 レベル4 2回 レベル3 1回
アジア大会 9.7 1.90 11.60 ALLレベル4
世界選手権 9.7 1.78 11.48 ALLレベル4
国別対抗戦 9.7 1.64 11.34 ALLレベル4
平均 9.433 1.577 11.01
それ程上手いと感じる選手では無いが、しっかり回るという意識は持てているので割と好感が持てる。シーズン冒頭のポジション不足も持越プロならば来季には心配なさそう。
FS
基礎点 GOE 合計
中 国 杯 8.7 1.28 9.98 レベル4 2回 レベル3 1回
四大陸選手権 9.3 1.22 10.52 レベル4 2回 レベル3 1回
アジア大会 9.7 1.90 11.60 ALLレベル4
世界選手権 9.7 2.00 11.70 ALLレベル4
国別対抗戦 9.7 1.93 11.63 ALLレベル4
平均 9.233 1.52 10.753
FSはおそらく新プロになると思うのでこの位のGOEとレベルが取れればボーヤンとしてはまずまずなのかもしれない。
<ステップ>
SP
基礎点 GOE 合計
Sアメリカ 3.3 0.79 4.09 レベル3
中 国 杯 3.9 0.80 4.70 レベル4
四大陸選手権 3.9 1.20 5.10 レベル4
アジア大会 3.3 1.00 4.30 レベル3
世界選手権 3.3 1.00 4.30 レベル3
国別対抗戦 3.9 1.60 5.50 レベル4
平均 3.6 1.065 4.665
ただ昨季より格段に滑るようになっているので見応えが上がっている。動いている感が減っていることは素晴らしい。それでもチャンやブラウンに挟まれてしまうとまだまだな印象を受けるのでその辺りは継続的に強化して欲しい。
基礎点 GOE 合計
中 国 杯 5.9 1.60 7.50 レベル4
四大陸選手権 5.3 1.23 6.53 レベル3
アジア大会 5.9 2.24 8.14 レベル4
世界選手権 5.9 2.30 8.20 レベル4
国別対抗戦 5.3 1.81 7.11 レベル3
平均 5.6 1.813 7.413
個人的には前半のコレオはともかく後半のステップが割と下を向いていることが多いのが気になる。苦しい時間なのはわかるが顔を上げて姿勢よく頑張って欲しい。
<TES計>
SP
基礎点 GOE 減点 合計
Sアメリカ 46.03 -8.14 -2 35.89
中 国 杯 50.93 6.09 0 57.02
四大陸選手権 50.53 0.73 0 51.26
アジア大会 50.73 1.38 0 52.11
世界選手権 50.73 6.92 0 57.65
国別対抗戦 51.33 4.79 0 56.12
平均 50.047 1.962 -0.333 51.675
FS
基礎点 GOE 減点 合計
中 国 杯 100.17 4.40 -1 103.57
四大陸選手権 106.18 -5.44 -2 98.74
アジア大会 94.50 9.12 0 103.62
世界選手権 103.70 15.24 0 118.94
国別対抗戦 92.09 0.40 0 92.49
平均 99.285 3.30 -0.667 101.918
体型もしっかりして大人の体つきになりスケートも力強さが感じられる。話題としてはネイサンや宇野に隠れてしまった感はあるが単純なジャンプの質としては二人より上だと感じるので世界選手権の4Lzの様な質を常に見せられるようにして欲しい。
SP
SS TR PE CC IN 合計
中 国 杯 7.79 7.46 8.11 7.93 7.86 39.15
四大陸選手権 8.18 7.68 8.21 7.93 8.07 40.07
アジア大会 8.20 8.00 8.10 8.20 8.25 40.75
世界選手権 8.25 7.96 8.46 8.07 8.25 40.99
国別対抗戦 8.36 8.04 8.64 8.32 8.50 41.86
平均 8.058 7.702 8.14 7.998 8.078 39.977
平均でほぼ40と昨季より1.5点ほども上がっている。地道な努力が実を結んでいると感じる。後はつなぎ、クロスはそれ程でも無いがランは非常に目につくのでその辺りもう少し工夫をしたいところだ。
FS
SS TR PE CC IN 合計
中 国 杯 7.86 7.54 8.07 7.93 8.00 78.80
四大陸選手権 8.04 7.43 7.64 7.82 7.79 77.44
アジア大会 8.45 8.15 8.45 8.30 8.45 83.60
世界選手権 8.71 8.36 8.68 8.64 8.61 86.00
国別対抗戦 8.43 8.00 8.11 8.32 8.21 82.14
平均 8.218 7.812 8.147 8.157 8.165 80.997
ローリーの振付がボーヤンに合っていることも良かった。来季はどういう選曲になるかわからないがたぶんわかりやすい世界観の音楽が合っていると思う。下手な王道よりボーヤンの素直さや純朴さをアピールした方が良いと考える。
<来季に向けて>
来季もローリー振付だと思うので是非ボーヤンの個性を引き出すものであって欲しいと願っている。スケーティングの強化とともにローリーにはぜひ引き出し中を捌くって頑張って欲しい。
4Loについては入れる必要が有るか微妙だが、ネイサンと争うことになると難度の問題になりそうなので入れそうな予感はする。ただ入れる場所については検討した方が良いとは感じる。
大人の体型でしっかりジャンプを安定させてきたことで今季よりプログラムに工夫が出来ると思う。つなぎとステップでの姿勢の強化を頑張って欲しい。
高難度時代に挑む―――ミハイル・コリャダー
もし作るならばアイスダンスが一番見たいのだが、男子シングルだったら羽生以外では特にチャンとフェルナンデスとブラウン、そしてコリャダーが見たいと思う。コリャダーは止まって動く場所もあるが結構足元は凝ってると思うのだ。ブラウンやチャンほど解説にはあまり取り上げられないのが残念だが、もう少しその辺りも評価されてもいいのにと思っている。今季はなかなかジャンプが安定しなくてシーズン当初は点数が伸びなかった。ただ初めてナショナルチャンプにもなったし世界選手権から国別にかけてまずまずの演技ができたので来季への期待も持てる終わり方だった。新たな4回転を入れる予定があるというコメントも出ているのでぜひ今季乗り越えられなかった280を超える演技を見せて欲しいと願っている。
フィンランディアT 総合4位 219.55 SP4位 80.20 FS5位 139.35
ロステレコム 総合4位 245.30 SP3位 90.28 FS6位 155.02
NHK杯 総合5位 225.69 SP4位 78.18 FS6位 147.51
欧州選手権 総合3位 250.18 SP3位 83.96 FS3位 166.22
世界選手権 総合8位 257.47 SP7位 93.28 FS9位 164.19
国別対抗戦 279.41 SP4位 95.37 FS5位 184.04
平均 総合 246.266 SP平均 86.878 FS平均 159.388
入賞圏内を超えてユーロ以外の表彰台に上がるためには平均で265、下限で245を超えたいところだ。
SP 4T+3T 3A // 3Lz =29.70
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 26.83 -1.09 -1 24.74
ロステレコム 29.70 2.07 0 31.77
NHK杯 20.83 0.80 0 21.63
欧州選手権 21.20 3.41 0 24.61
世界選手権 29.70 4.50 0 34.20
国別対抗戦 29.70 4.46 0 34.16
平均 26.327 2.358 -0.167 28.518
しかし昨年のワールドといい今季のワールド&国別とシーズン後半でピークを合わせることは上手いのかもしれない。ジャンプそのものの質は良く流れも綺麗なのでGOEは付きやすい。特に3Lzの質の良さは素晴らしい。あとは確実性を上げたいところ。
FS
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 47.87 -2.72 -1 44.15
ロステレコム 53.32 1.76 -1 54.08
NHK杯 55.83 -7.66 -2 46.17
欧州選手権 62.53 -0.72 -1 60.81
世界選手権 62.47 1.09 -1 62.56
国別対抗戦 71.58 4.76 -1 75.34
平均 58.933 -0.582 -1.167 57.185
コンボが足りなかったり予定構成がこなせない試合が多かったこともあり表彰台には絡めなかった。正直に言えば4Lzより4T2本構成をまずやるべきだと思うのだが・・・3Fがない分REPに引っかかりやすくリカバリしにくい構成を組んでいるところがもったいなく感じる。
<スピン>
SP
基礎点 GOE 合計
フィンランディアT 9.7 2.50 12.20 ALLレベル4
ロステレコム 9.7 2.86 12.56 ALLレベル4
NHK杯 9.7 2.36 12.06 ALLレベル4
欧州選手権 9.7 3.28 12.98 ALLレベル4
世界選手権 9.7 2.57 12.27 ALLレベル4
国別対抗戦 9.7 2.93 12.63 ALLレベル4
平均 9.7 2.75 12.45
シーズンが進むとともにビールマンの姿を消したが、十分レベル確保はできているので無理する必要はない。平均獲得点数も素晴らしい出来だ。
基礎点 GOE 合計
フィンランディアT 8.9 1.83 10.73 レベル4 1回 レベル3 2回
ロステレコム 8.3 2.36 10.66 レベル4・3・2 各1回
NHK杯 9.7 2.22 11.92 ALLレベル4
欧州選手権 9.7 2.57 12.27 ALLレベル4
世界選手権 9.7 2.57 12.27 ALLレベル4
国別対抗戦 9.7 2.86 12.56 ALLレベル4
平均 9.333 2.402 11.735
ただスピンが得意な選手であるから、コンビネーションを2つにした方がお得なのにと思わないこともない。0.3もしくは0.5でも基礎点を上げられるなら取り組む価値はあると思う。
SP
基礎点 GOE 合計
フィンランディアT 3.9 1.05 4.95 レベル4
ロステレコム 3.3 0.93 4.23 レベル3
NHK杯 3.3 0.64 3.94 レベル3
欧州選手権 3.3 1.00 4.30 レベル3
世界選手権 3.3 1.00 4.30 レベル3
国別対抗戦 3.9 1.40 5.30 レベル4
平均 3.5 1.003 4.503
持ち越しプロだったので滑り慣れているはずだが、ステップのレベル要件については毎年少しずつ変わるので対応はなかなか難しいのかもしれない。
基礎点 GOE 合計
フィンランディアT 5.9 2.33 8.23 レベル4
ロステレコム 4.6 1.70 6.30 レベル2
NHK杯 5.9 2.00 7.90 レベル4
欧州選手権 5.9 2.80 8.70 レベル4
世界選手権 5.3 1.36 6.66 レベル3
国別対抗戦 5.9 2.80 8.70 レベル4
平均 5.583 2.165 7.748
SP
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 40.43 2.46 -1 41.89
ロステレコム 42.70 5.86 0 48.56
NHK杯 33.83 3.80 0 37.63
欧州選手権 34.20 7.69 0 41.89
世界選手権 42.70 8.07 0 50.77
国別対抗戦 43.30 8.79 0 52.09
平均 39.527 6.112 -0.167 45.472
ロシア男子がトップ選手から遠ざかっている実情があるので何とか頑張って欲しいものだ。とりあえずSPでは抜けは厳禁、特に3Aは稼ぎどころなので確実に飛びたいところだ。
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 62.67 1.44 -1 63.11
ロステレコム 66.22 5.82 -1 71.04
NHK杯 71.43 -3.44 -2 65.99
欧州選手権 78.13 4.65 -1 81.78
世界選手権 77.47 5.02 -1 81.49
国別対抗戦 87.18 10.42 -1 96.60
平均 73.85 3.985 -1.167 76.668
転倒はともかくとしても抜けやコンボ不足・REPなどで基礎点を失っている試合が多いためまずはそこをなくすことを注視したい。コフトゥンにせよコリャダーにせよリカバリするということがないのがもどかしいと感じる。
SP
SS TR PE CC IN 合計
フィンランディアT 7.88 7.38 7.63 7.71 7.71 38.31
ロステレコム 8.36 8.04 8.50 8.36 8.46 41.72
NHK杯 8.21 7.96 7.96 8.21 8.21 40.55
欧州選手権 8.43 8.14 8.50 8.46 8.54 42.07
世界選手権 8.57 8.29 8.61 8.43 8.61 42.51
国別対抗戦 8.64 8.36 8.89 8.57 8.82 43.28
平均 8.348 8.028 8.348 8.29 8.392 41.407
ただし巧さはあるのにまだまだPCSが伸びきらないのはプログラムの問題もあるかと。コミカルな動きや表現は上手だが、それを点数に結びつけることに関しては弱いかなと感じる。もう少しうまくプログラミングできれば4回転が飛べるブラウン並みの評価が得られそうな印象がある。
五輪シーズンにコミカルでない良い振付が来ることを願っている。(バトルに振付してもらえないかな…)
SS TR PE CC IN 合計
フィンランディアT 7.67 7.33 7.58 7.75 7.79 76.24
ロステレコム 8.61 8.14 8.21 8.57 8.46 83.98
NHK杯 8.32 7.79 8.04 8.25 8.36 81.52
欧州選手権 8.57 8.18 8.43 8.43 8.61 84.44
世界選手権 8.46 8.07 8.21 8.29 8.32 82.70
国別対抗戦 8.86 8.50 8.86 8.64 8.86 87.44
平均 7.995 7.45 7.783 7.805 7.828 77.723
大技の転倒についてはジャッジもそこまで取り上げないが3A以下のジャンプでぽろぽろミスが出るのはいただけない。スケーティングはかなり良く着氷も美しく流れる選手なのでその辺りを強調したプログラムを組みしっかり基礎点を確保すれば275以上をコンスタントに出せる選手だと思う。
来季はさらに構成を上げるといっているが、まず取りこぼしがなくすことを注視して欲しい。
コミカルっぽいプログラムを2つ並べたことが良かったかどうか微妙な印象だったシーズン。来季はぜひもっと違った方面の振り付けにしてほしい。SPFSのどちらかは北米系の振付師に依頼してくれたらと願っている。
スケーティングの伸びは非常にいい選手で足元も割と多彩で非常に好みの選手である。ジャッジの評価もまずまずな選手だけにロシアンという枠には収まらないで欲しい。
4Lzについては回転は問題なさそうだが着氷の感覚がまだつかめていない印象だ。飛形が飛ぶたびに異なっているみたいなのでまだ試行錯誤中かなという印象がある。オフの間にぜひそこをきわめて来季の武器にしてほしい。
時にはあれこれ考えてみたりする
ワールドですっかり今シーズンが終わってしまってなんとなく気が抜けている。国別も結局リアルタイムではあまり見れなくて・・・とりあえず日本優勝おめでとう!出場選手の皆様、シーズンお疲れさまでした。おいしいもの食べて来季に備えてください。
ワールドが終わった後だったか、北京以降のルール変更について記事が上がった。文章だけではよくわからないが、今のSP・FSという2プログラム採点ではなく技術と芸術に分けるという案だ。どちらか片方だけの参加もOKということだった。
漠然としすぎて現状どういう感じになるのか想像できないのだが、読んで最初に浮かんだのは「面白そうじゃないなぁ」という感想だった。何しろSP5位からの逆転優勝という劇的な試合を見た後だ。1プログラムのみで順位を決めるということはあの驚きがなくなるわけで魅力が半減してしまう気がしたのだ。
次に思ったのは「枠ってどうなるの?」という疑問。毎年ワールドで翌年の出場枠が決まるが、2つの採点する試合においてそれぞれに枠が作られるのだろうか?
そして一番気になったのは「芸術」だ。何をもって芸術として何を良いと数値化するのか。その辺りが全く分からないので良い改正かどうかが判断できない。今のところあまり海外でも話題になっていないのでとりあえず判断は保留。もう少し情報を待つことにしする。
ただ・・・ルールの大きな改正が必要な状況であることは確かだ。特に男子シングルでは深刻な状況だ。ジャンプが高難度化しすぎてPCSとのバランスが取れなくなっている。点数が限界を迎えているのは他のカテゴリも同じなのだが、男子は特にジャンプに偏りすぎている。平昌後に1つ減るがそれはむしろ加速化させそうな印象が今からすでにある。PCS係数を変えるという話も出ているがどこまで有効かわからない。そういったこともあり先のような新ルールが考案されているんだなというのは理解できる。ただスポーツでありオリンピック種目であるからテクニカルに限界を持たせるということには是とは言えない。スポーツである以上技術の向上は必要でバレエやピアノのコンクールとは違うのだから・・・
以前から考えていたことがある。男子シングルのTESとPCSのバランスどう改良したらしたらいいのか。ジャンプの比重が大きすぎるから点数を下げるということが最も簡単だ。しかし基礎点は男子だけではなく女子でもペアでも利用されている。GOE係数との兼ね合いもあるし、下手に調節してバンクーバーの頃のように低難度をまとめた方が得というようなことになったら目も当てられない。現在の基礎点も4Aを除けばほどほど妥当な数値だと思う。そんなわけで基礎点や現在のGOEのやり方を変えないという前提で考えると道は2つしかない。一番簡単なのはPCS係数を変えること。現行のSP×1、FS×2を1.2や2.4に変える。そうすればTESとPCSのバランスは上位ではかなりとれるようになるだろう。ただしこのやり方ではジャンプの偏重は変わらない。スピンステップが苦手だと感じたらまずジャンプという選手が多く出てくるだろう。そういう意味ではあまりいい対策だとは言えない。
そんなことで私が考えるのは単純に「ジャンプの点数を下げる」という方策だ。現行の基礎点やGOEは変えない、ただ「ジャンプの獲得点を下げる」。そうすればPCS係数は現行通りでいいし、ジャンプの比重が下がる分スピンステップの価値が上がるわけだ。ではどうやって下げるかといえば、実に簡単、「獲得したジャンプの得点を決めた係数でかける」というやり方だ。4/5でも3/4でもいいのだがとりあえず2017世界選手権の羽生のFSで計算してみる。
ジャンプ スピン ステップ TES PCS 合計
104.67 + 12.65 + 8.80 = 126.12 97.08 223.20
これをジャンプで獲得した点数のみ係数をかける
ジャンプ スピン ステップ TES PCS 合計
83.74 + 12.65 + 8.80 = 105.19 97.08 202.27 ×0.8の場合
78.50 + 12.65 + 8.80 = 99.95 97.08 197.03 ×0.75の場合
73.27 + 12.65 + 8.80 = 94.72 97.08 191.80 ×0.7の場合
なんとなくだがいい感じに収まってきた感じがする。
SPはフェルナンデスで計算してみるとこうなる
ジャンプ スピン ステップ TES PCS 合計
43.17 + 11.62 + 6.00 = 60.79 48.26 109.05
34.54 + 11.62 + 6.00 = 52.16 48.26 100.42 ×0.8の場合
32.38 + 11.62 + 6.00 = 50.00 48.26 98.26 ×0.75の場合
30.22 + 11.62 + 6.00 = 47.84 48.26 96.10 ×0.7の場合
係数的にはFSと変わりなくできそうな予感だ。しかもFSよりも格段にスピンステップの比重が上がる。基礎力を図るには向いていると感じる。
ジャンプの獲得点に対し×0.〇で下げることの意味としては基礎点を変えないためジャンプ難度を求めたければその姿勢を変えなくても構わないということ。ただ現在ほど効果が大きくないだけだ。そして質をよくしてGOEを多く得ることが大切という点も変わらない。選手にとって負担は少ないと感じる策だがどうだろうか?
試しに2017世界選手権で上位の成績で検討してみる。今回は0.75で計算してみた。
TES PCS 減点 総合計 → TES PCS 減点 総合計
1位 羽生 結弦 178.16 144.43 -1 321.59 143.75 144.43 -1 287.18
2位 宇野 昌磨 179.19 140.12 0 319.31 144.25 140.12 0 284.37
3位 ボーヤン・ジン 176.59 126.99 0 303.58 141.36 126.99 0 268.35
4位 フェルナンデス 159.41 142.78 -1 301.19 129.34 142.78 -1 271.12
5位 P・チャン 152.22 142.94 0 295.16 124.00 142.94 0 266.94
6位 N・チェン 165.83 127.89 -3 290.72 133.29 127.89 -3 258.18
7位 ブラウン 136.27 134.30 -1 269.57 112.72 134.30 -1 246.02
8位 コリャーダ 133.26 125.21 -1 257.47 108.82 125.21 -1 233.03
9位 レイノルズ 139.54 114.30 0 253.84 112.82 114.30 0 227.12
10位 ビチェンコ 130.08 115.88 0 245.96 105.09 220.97 0 220.97
11位 コフトゥン 126.05 120.79 -1 245.84 102.51 120.79 -1 222.30
予想した通りジャンプに0.75をかけると3位のボーヤンと10位のビチェンコの順位が下がる。(ちなみにビチェンコはミーシャよりも下回るため12位になる)
10位以下だとヴァシリエフスとテンとヘンドリクスが1つ順位が上がることになる。ビチェンコはスピンステップが弱いことで下がり、ヴァシリエフスやヘンドリクスはその辺りが強いから上にきてフェルナンデスとテンはPCSが高いことで上昇するというわけだ。バランスの取れた選手を上位にあげたいというジャッジの意志にはある程度該当しているのではという印象がある。
点数を見て面白いのはボーヤンとチャンが差がなくなるということ。そして上位6強とブラウンの差がかなり縮まった反面コリャーダとの差が広がったこと。博打的高難度を飛ぶよりエレメンツの質をよくしてGOEを稼ぐことに意味がある結果といえないだろうか?
突き抜けられない男―――マキシム・コフトゥン
しかし今は4回転2種はそれ程の武器にはならない。SPですらだ。そしてFは重度のエラーのため飛ばない。3Lzと3Loは不格好になりがちとジャンプで稼ぐには弱点も多いと言う現状がある。そうなるとジャンプが強みの選手と言うには弱い印象になる。
強みよりも弱点が目立ってしまうというのは採点競技ではなかなか厳しい状態だ。演技に心情が反映しやすい選手だけになおさら心配になる。シニアに上がった頃のような突き抜けたら凄い選手になりそう感を取り戻して欲しいと願っているが本人の不運も有りその道筋が見えてこないところが悩ましいシーズンだった。
Sアメリカ 総合7位 230.75 SP10位 67.43 FS6位 163.32
中 国 杯 総合7位 221.43 SP10位 70.10 FS7位 151.33
欧州選手権 総合2位 266.80 SP2位 94.53 FS2位 172.27
世界選手権 総合11位 245.84 SP10位 89.38 FS14位 156.46
国別対抗戦 212.91 SP11位 64.62 FS10位 148.29
平均 総合 234.550 SP平均 79.053 FS平均 155.497
構成や演技の質、ミスの出方も割と似ているので仕方ないのかもしれない。ロシアンは欧州選手権で良い得点が出ないと世界選手権に出られないのが大変だと感じる。その為ここがシーズン一番になってしまうのかもしれない。
<ジャンプ>
SP 4S+3T 4T // 3A =34.45
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 34.45 -0.56 0 33.89
Sアメリカ 14.80 1.57 0 16.37
中 国 杯 20.25 -0.28 0 19.97
欧州選手権 34.45 2.53 0 36.98
世界選手権 34.45 -1.42 -1 32.03
国別対抗戦 15.23 -4.14 0 11.09
平均 25.605 -0.383 -0.167 25.055
ジャンプの質そのものもあまり変わらないところが無いとも改善の見込みを感じなくて残念だ。
FS
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 48.62 1.46 0 50.08
Sアメリカ 70.68 1.90 -1 71.58
中 国 杯 57.92 2.36 0 60.28
欧州選手権 63.27 6.31 0 69.58
世界選手権 57.48 3.67 0 61.15
国別対抗戦 63.27 -2.89 -1 59.38
平均 60.207 2.135 -0.333 62.009
ただそれ以上に問題なのがジャンプ前の動作だと思う。離氷前に前傾になるのはどの選手も同じだがコフトゥンで気になるのは飛ぶ直前まで下を向いていることだ。苦手なジャンプや高難度が特にそうなる傾向にある。ただでさえ上背があるコフトゥンが下を向いてジャンプするわけでそれだけでエネルギーを無駄にしているし力の方向を不安定にさせていると感じる。ジャンプは基本後ろ向きに飛ぶ、一方高跳び型ジャンパーであるので力方向は上に向かわなければいけない。後ろにはねる力が強くなりすぎれば抜けてしまうし上に綺麗にエネルギーが働かないと回転が緩んでそのまま下に落ちてしまう。そういったジャンプの失敗をどれだけ見てきたか・・・
だから足下を見るのでは無く他の選手のように斜め前方くらいに顔を向けられたら姿勢も良くなるし無駄も改善する分少しは変わりそうな気がするのだけど・・・コーチとかは指摘しないのだろうか?
<スピン>
SP
基礎点 GOE 合計
フィンランディアT 9.7 1.25 10.95 ALLレベル4
Sアメリカ 9.7 0.57 10.27 ALLレベル4
中 国 杯 7.4 0.93 8.33 レベル3 2回 レベル2 1回
欧州選手権 9.7 1.29 10.99 ALLレベル4
世界選手権 9.7 1.71 11.41 ALLレベル4
国別対抗戦 9.3 1.07 10.37 レベル4 2回 レベル3 1回
平均 9.25 1.137 10.387
基礎点 GOE 合計
フィンランディアT 8.9 0.75 9.65 レベル4 1回 レベル3 2回
Sアメリカ 9.7 0.86 10.56 ALLレベル4
中 国 杯 8.9 1.22 10.12 レベル4 1回 レベル3 2回
欧州選手権 9.7 1.43 11.13 ALLレベル4
世界選手権 9.3 0.78 10.08 レベル4 2回 レベル3 1回
国別対抗戦 6.7 0.64 7.34 レベル4 2回 ノーカン 1回
平均 8.867 0.947 9.814
SP
基礎点 GOE 合計
フィンランディアT 3.9 0.93 4.83 レベル4
Sアメリカ 3.3 0.50 3.80 レベル3
中 国 杯 3.3 0.57 3.87 レベル3
欧州選手権 3.9 1.10 5.00 レベル4
世界選手権 3.3 0.71 4.01 レベル3
国別対抗戦 3.9 0.80 4.70 レベル4
平均 3.6 0.768 4.368
基礎点 GOE 合計
フィンランディアT 4.6 0.56 5.16 レベル2
Sアメリカ 4.6 0.66 5.26 レベル2
中 国 杯 5.3 0.63 5.93 レベル3
欧州選手権 5.3 1.76 7.06 レベル3
世界選手権 5.3 1.07 6.37 レベル3
国別対抗戦 5.3 0.63 5.93 レベル3
平均 5.067 0.885 5.952
SP
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 48.05 1.62 0 49.67
Sアメリカ 27.80 2.64 0 30.44
中 国 杯 30.95 1.78 0 32.73
欧州選手権 48.05 4.92 0 52.97
世界選手権 47.45 1.00 -1 47.45
国別対抗戦 28.43 -2.27 0 26.16
平均 38.455 1.615 -0.167 39.903
FS
基礎点 GOE 減点 合計
フィンランディアT 62.12 2.77 0 64.89
Sアメリカ 84.98 3.42 -1 87.40
中 国 杯 72.12 4.21 0 76.33
欧州選手権 78.27 9.50 0 87.77
世界選手権 72.08 5.52 0 77.60
国別対抗戦 75.27 -1.62 -1 72.65
平均 74.140 3.967 -0.333 77.774
<PCS>
SP
SS TR PE CC IN 合計
フィンランディアT 7.88 7.38 7.83 7.71 7.79 38.59
Sアメリカ 7.57 7.07 7.21 7.64 7.50 36.99
中 国 杯 7.61 7.43 7.25 7.54 7.54 37.37
欧州選手権 8.39 8.11 8.46 8.39 8.21 41.56
世界選手権 8.54 8.18 8.36 8.39 8.46 41.93
国別対抗戦 8.00 7.64 7.36 7.75 7.71 38.46
平均 7.998 7.635 7.745 7.903 7.868 39.150
SS TR PE CC IN 合計
フィンランディアT 7.79 7.29 7.63 7.75 7.75 76.42
Sアメリカ 7.82 7.14 7.71 7.61 7.68 75.92
中 国 杯 7.75 7.21 7.57 7.54 7.43 75.00
欧州選手権 8.61 8.21 8.54 8.39 8.50 84.50
世界選手権 8.07 7.64 7.86 7.93 7.93 78.86
国別対抗戦 7.93 7.21 7.39 7.61 7.68 75.64
平均 7.995 7.45 7.783 7.805 7.828 77.723
せめて多少ミスが出てもそれを忘れさせるような勢いのある演技を見せる強さが有れば違うのにと思わないでいられない。
4Lzを練習中という情報が入っている。ネイサンを見て技術の向上に目覚めたというのは喜ばしいが・・・3Lzも安定していないが大丈夫かと思わずにいられない。
せっかく大きな上背があるのだからそれを有意義に見せることに注視しても良いかもとは思っている。ただジャンプで大きくミスると目に見えてやる気が失われるというのはシニアになってそこそこ時間の経った選手には喜ばしい態度では無い。
どうしてもコミカル系のプログラムが多いがもう中堅の実績がある選手なので正統派の硬質なプログラムで印象を変えるのも良いのではと思っている。型にきちっとはまった動きの必要なプロなら姿勢を生かす振付になるのかもしれない。出来ればどちらかはロシアン以外の振付にして欲しいのでが、それは難しいかな。
ただ現状背後にの火がついた状態なので奮起してプログラムを完遂する意識が無ければ五輪どころか欧州選手権にも出場できなくなるかもしれない。何とか意識と技術が改革されることを願っている。
ぜいたくな悩み、その他ワールド雑感
午前中は用事で出かけていたのだが帰宅したらBSで2017年ワールド男子FSが放映されていたので見た。(録画はできないけど見ることはできるのだ)録画に失敗してあのフジカウンターで羽生の点数が上がっていくところが見れなくてがっかりしていたので再放送は非常にありがたかった。
しかし・・・第3グループの途中から見たのだがだんだん私の中の期待感が消滅していく。というか・・・
カウンターすげぇ邪魔!
と身もふたもない感想になってしまった。
公式のTESカウンターがつき始めてもう数年、それを見て一度も感じたことのない思いがフジ高性能カウンターにわいてきたのはひとえに情報量が多すぎる、ということに尽きる。お茶の間の漠然としかフィギュアをご存じない一般視聴者にはありがたいのだろうが基礎点がほぼ頭に入っているファンにはエレメント名も基礎点とGOEをわざわざ分けて表す必要も感じない。むしろカウンターのでかさが無駄なスペースを奪われているみたいだし、認識する文字が多すぎて演技から目がそれていることに気が付いて自分が嫌になってくる。途中から結局カウンターを見ないようにして、このナビと解説なら海外動画で十分だったなと思ってしまった。
もっともこの感想を抱いてしまったのはリアルタイム観戦ではないということが大きかっただろう。そしてカウンターはつけないで欲しいとは絶対に思わない。なければ欲しいと思うしあればあったでわがままな気持ちがわいてくるというものだろう。人間なんて贅沢なものだとつくづく思う。
今回のワールドで非常にうれしかったのはイスラエル2枠だ。結果を見て思わず万歳してしまったくらいだった。1枠だとサモヒンとビチェンコが争いサモヒンが代表になったらビチェンコが引退してしまうかもと危惧していたので二人が五輪で見れることがほぼ確定した2枠が非常にうれしかった。演技としてはミスも多かったがそれでもコンボを無駄にしなかったこととREPを食らわない対処をきちんとしたということがこの結果を生み出した。そういえば昨季ユーロで2位になったときも1Tをつけたことが大きくて、今回も結果的にそれが2枠につながった。点数にならないコンボを付ける意味があるのかとも思うが、それ以上点数を失わないため後に負担をかけないために対処しておくというのが大局では意味があるのだなと感じる。
今回のワールドでも案外コンボを無駄にしている選手が多かった。例えば田中とかコリャーダとか、後半リカバリできそうな場合でもしないケースがいくつも見られた。順位にはかかわらなかったかもしれないが今の点数が積み上げられて得点となるルールにおいては無駄にするということはそれだけで勝機を失うということ。ネイサンが2転倒してもきっちりコンボ分の基礎点を得ようとした姿勢がいま世界で戦うためには必要なのだと改めて今日振り返り映像を見て感じた。
構成が横並びの女子に比べて男子選手は基礎点に固執する姿勢が見れない場合が多い。REPやザヤも男子選手の方が多く発生している現状がある。実行さえすれば基礎点は確実に得られる点数なのでも予定構成だけは確保するという姿勢がもう少し見られるとより面白い試合になる気がする。
来季はいよいよ五輪シーズン、勝利にはより完成度が求められるシーズンだ。自分の決めた構成を完遂してより際どいしのぎを削る試合が見られることを期待する。