つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

それでも旅は続く―――パトリック・チャン

2014-15シーズンに休養して翌シーズンから戻ってきたときにおそらくここまでの高難度化は予想していなかったと思われる。ボーヤンの登場はセンセーショナルではあったがジャンプ以外の部分は弱かったのでまだそれ程の脅威は無かったはずだ。
しかしながらネイサンを身近で認識し羽生が更に構成を上げてきていることからソチシーズンでも行わなかった構成上げを敢行した。昨季後半から3Aを2回にし今季は4Sを投入してきた。おそらく来季にはSPも2クワドにしてくるだろう。
年齢がフィギュア選手の中では高いチャンにとってなかなか体力的に難しい部分ではあるが更に進化しようとする姿勢は評価したい。この高難度時代にあるからこそそのスケーティングの良さはもっと評価されるべきだと思うからだ。
 
フィンランディアT   総合2位 248.73 SP3位 84.59 FS2位 164.14
Sカナダ    総合1位 266.95 SP1位 90.56 FS2位 176.39
中 国 杯   総合1位 279.72 SP3位 83.41 FS1位 196.31
G P F   総合5位 266.75 SP2位 99.76 FS5位 166.99
四大陸選手権  総合4位 267.98 SP5位 88.46 FS4位 179.52
世界選手権   総合5位 295.16 SP3位 102.13 FS5位 193.03 
国別対抗戦          276.47 SP6位 85.73 FS3位 190.74
平均       総合    271.68 SP平均  90.663 FS平均  181.017
 
平均してしまうと1試合平均7クワドのネイサンと4クワドのチャンの獲得点が8点ほどしか無いという面白い数字マジックが見れる。これだけ見ると下手に4回転増やさなくても良いかもと思ってしまうが、多種4回転はネイサンだけでは無いのでやはり良いときのGOE差で埋められる程度の構成にしておきたくなる。
昨シーズンはSPで出遅れてFSで盛り返すという試合が多かったが今季はSPを纏めPBも出せた。FS高難度構成になるとやはり体力的に厳しそうなので来季上位をキープするためにはやはりSPで上位にとどまり滑走順をなるべく後にしてGOEとPCSを出しやすくする必要がある。ただおそらく2種クワドにしてくるためそれが可能かは現時点では未知数だ。
 

<ジャンプ>
SP  4T+3T 3A // 3Lz =29.70
         
         基礎点      GOE   減点    合計
フィンランディアT   30.13   -6.10  -1   23.03  
Sカナダ    29.70   -0.70  -1   28.00
中 国 杯   23.10   -1.60   0   21.50
G P F   29.70    4.54   0   34.24
四大陸選手権  27.83   -3.11  -1   23.72
世界選手権   29.70    5.83   0   35.53
国別対抗戦   25.49   -2.94  -1   21.55
平均      27.95  -0.583 -0.571  26.796 
 
今季は昨季のような3Lz抜けは無くその分ある程度は確実に基礎点を稼いだ。ただそれ程高難度では無い割に半分転倒があるというのは今の状況では厳しい。
4Tが4S練習の影響からか割とミスが出たのが基礎点を下回ってしまった大きな原因。そして3A、決まると綺麗なんだけど確実というわけでは無いのがやはり不安要素となっている。

 
FS 
        
         基礎点     GOE  減点    合計
フィンランディアT   56.42  -0.66 -1   54.76 
Sカナダ    61.10   3.14 -1   63.24
中 国 杯   77.16   6.59 -1   82.75  
G P F   62.03  -4.09 -4   53.94
四大陸選手権  70.53  -3.10 -2   65.43
世界選手権   72.05   5.29  0   77.34
国別対抗戦   67.04   6.10  0   73.14
平均     66.619  1.896 -1.286 67.229
 
成功ジャンプにはGOEがつきやすいが、転倒が多いとなかなか点数は伸びない。
今季から投入した4SはGPF以降はかなりの確率で入れることが出来た。決まればGOEが付くので大きな武器になる。一方で昨季から継続して後半の4回転の成功率が低い。3Aもなかなか2本ともクリーンに決められないのが現状だ。無理に前半3後半5にせずにネイサンのように前半ジャンプ多め後半滑りで見せる方式にしても良いのではと思う。少なくともネイサンよりは滑りに見応えがある分評価はされやすいと思う。
 

<スピン>
SP
        基礎点   GOE     合計
フィンランディアT   9.3  2.92  12.22  レベル4 2回 レベル3 1回
Sカナダ    9.2  3.13  12.33  レベル4 2回 レベル3 1回
中 国 杯   9.7  3.21  12.91  ALLレベル4
G P F   9.3  3.42  12.72  レベル4 2回 レベル3 1回
四大陸選手権  9.7  3.28  12.98  ALLレベル4
世界選手権   9.3  3.28  12.58  レベル4 2回 レベル3 1回
国別対抗戦   9.7  3.00  12.70  ALLレベル4
平均    9.457 3.177 12.634
 
計算していて感心したのがスピン。稼ぎどころであることはわかっていたがここまで良かったんだと驚いた。これを上回れるのはブラウンと羽生・宇野くらいじゃないのか?
レベルはちょくちょく落としているが、平均12.5以上は素晴らしい数字だ。

FS
        基礎点   GOE    合計
フィンランディアT   9.3  2.84  12.14  レベル4 2回 レベル3 1回
Sカナダ    9.7  2.93  12.63  ALLレベル4
中 国 杯   9.3  3.00  12.30  レベル4 2回 レベル3 1回
G P F   9.3  3.07  12.37  レベル4 2回 レベル3 1回
四大陸選手権  9.3  2.71  12.01  レベル4 2回 レベル3 1回
世界選手権   9.2  2.07  11.27  レベル4 2回 レベル3 1回
国別対抗戦   9.7  2.86  12.56  ALLレベル4
平均      9.4 2.783 12.183
 
FSのスピンも非常に良い得点だ。ただシーズン後半に来てラストのコンビネーションのGOEが低めになった。体力的に厳しかったのだろう。
確実の稼げるポイントなのであと一踏ん張り頑張りたいところだ。
 
 
<ステップ>
SP
        基礎点   GOE   合計
フィンランディアT   3.9  1.52  5.42  レベル4
Sカナダ    3.3  1.43  4.73  レベル3
中 国 杯   3.3  1.21  4.51  レベル3
G P F   3.9  1.80  5.70  レベル4
四大陸選手権  3.9  2.10  6.00  レベル4
世界選手権   3.9  2.10  6.00  レベル4
国別対抗戦   3.9  1.90  5.80  レベル4
平均    3.729 1.723 5.452
 
ステップはチャンの最大の見せ場であるがレベルを落としている分フェルナンデスには及ばなかった・レベルで係数が変わる分GOEも低くなってしまう。
満点の回数はフェルナンデスと同じ2回。フェルナンデスが格好良さとかフラメンコらしい動きを楽しむのに対してチャンは純粋に滑りの気持ちよさを楽しむエレメンツとなっている。チャンの魅力が最も感じられるのがステップだと思う。
 
FS
        基礎点   GOE   合計
フィンランディナT   5.9  3.26  9.16  レベル4
Sカナダ    5.9  3.50  9.40  レベル4 
中 国 杯   5.3  2.96  8.26  レベル3
G P F   5.9  4.00  9.90  レベル4
四大陸選手権  5.9  3.60  9.50  レベル4
世界選手権   5.9  3.60  9.50  レベル4
国別対抗戦   5.9  4.00  9.90  レベル4
平均    5.814  3.56 9.374
 
FSステップはフェルナンデスよりも高くなっている。レベルも中国杯以外は取れている。コレオもStSqも非常に高い。なのでむしろ満点が出なかったことが残念でならない。ステップ合計10点越えを来季期待したい。

<TES計>
SP  
        基礎点   GOE  減点    合計
フィンランディアT  43.33 -1.66 -1   40.67 
Sカナダ   42.20  3.86 -1   45.06
中 国 杯  36.10  2.82  0   38.92
G P F  42.90  9.76  0   52.66
四大陸選手権 41.43  2.27 -1   42.70
世界選手権  42.90 11.21  0   54.11
国別対抗戦  39.09  1.96 -1   40.05
平均    41.136 4.316 -0.571 44.881
 
転倒が半数合ったためどうしてもGOEが伸びなかった。ノーミスであれば世界選手権のようにGOE10点以上稼ぐ質の良さの持ち主なのでジャンプの成功率を上げるようなプログラムを組んだ方が良いのかもしれない。
来季は2種クワドにするようだがもしそうならば3ジャンプ全て前半でも良いかもしれない。ジャンプについては基礎点確保、スピンステップで稼げばチャンならば十分上位にこれると思う。
 
FS
         基礎点    GOE  減点     合計
フィンランディアT   71.62  5.44 -1    76.06
Sカナダ    76.70  9.57 -1    85.27  
中 国 杯   91.76 12.55 -1   103.31
G P F   77.23  2.98 -4    76.21
四大陸選手権  85.73  3.21 -2    86.94
世界選手権   87.15 10.96  0    98.11
国別対抗戦   82.64 12.96  0    95.60
平均     81.833 8.239 -1.286  88.786 
 
ネイサンやボーヤンを見てしまうと基礎点差は大きいなと感じる。PCSで15点差を埋めると言うことは現行のルールではかなり難しくなってきている。構成を上げることを検討したくなる数字だが、現実には転倒とコンボ抜け・REPなどの基礎点減が多かった結果の基の数字でもある。転倒があっても中国杯で100点超えをしているので、無しで纏められれば110程度は出せるということ。
高難度ジャンパー達は羽生を除けばそこまで完璧に点数を出せる訳ではない。実際ボーヤンはノーミスで204点。チャンがTES110点出せれば205以上にはなる。無理な構成上げよりも組んだ構成を完璧に実施することにに徹した方が良いと思う。
 

<PCS>
SP
        SS  TR  PE  CC  IN  合計
フィンランディンT   8.63  8.54  8.33  8.67  8.75  42.92
Sカナダ    9.14  8.93  9.00  9.18  9.25  45.50
中 国 杯   9.07  8.89  8.57  8.89  9.07  44.49
G P F   9.43  9.36  9.46  9.39  9.46  47.10
四大陸選手権  9.18  9.11  8.93  9.25  9.29  45.76
世界選手権   9.71  9.46  9.64  9.57  9.64  48.02
国別対抗戦   9.36  9.21  8.75  9.18  9.18  45.68
平均       9.217  9.071   8.954   9.162  9.234   45.638
 
チャン・フェルナンデス・羽生をPCS3強と呼んでいる。ソチシーズンまではそれでもチャンが一番高かった。しかし休養後チャンと羽生はほとんど変わりなくなり、世界王者になって以降フェルナンデスも同レベルになった。
そして今季はミスると低めに採点されるチャンと羽生に対しフェルナンデスは高値安定傾向となっている。ノーミス同士だった世界選手権でもフェルナンデスの方が高い。SSとTRはチャンが上、後半3項目がフェルナンデスが上というよう特色は分かれているが・・・2クワドの構成の高さとフラメンコという認識されやすい世界の表現が評価されたのだろう。そういう意味では五輪シーズンには王道的なわかりやすい曲の方が有利なのかもしれない。
 
FS
        SS  TR  PE  CC  IN  合計
フィンランディアT   8.83  8.58  8.67  8.96  9.00  88.08 
Sカナダ    9.21  9.00  8.96  9.18  9.21  91.12
中 国 杯   9.36  9.18  9.14  9.36  9.46  93.00
G P F   9.32  9.11  8.57  9.18  9.21  90.78
四大陸選手権  9.25  9.18  9.14  9.29  9.43  92.58
世界選手権   9.57  9.46  9.36  9.57  9.50  94.92
国別対抗戦   9.64  9.43  9.32  9.57  9.61  95.14
平均       9.311   9.134  9.023   9.301  9.346   92.231
 
崩壊したGPFを除いてはシーズン後半に向けて伸びていった印象。ただやはり下限はフェルナンデスより低め。チャンが今季あまりPCSが高くならなかったのはノーミス出来なかったこととFSの構成がトップの中では低めだからという理由もあるかもしれない。実際にはフェルナンデスとはそれ程差はない。だがフェルナンデスは今季欧州といういってみれば地元でしか試合が無かったため多少有利に採点された感じだ。
ジャッジには北米・欧州・アジアと若干好みというか重要視する項目にばらつきがあるので当たる試合によっては多少の有利不利は発生している。出された数字はともかく試合内での序列は変わりないので順位には影響しないがこうして纏めてみるとこの数字である意味をどうとらえて良いのかわからなくなってくる。少なくともTRについてはフェルナンデスがチャンより高い理由がよくわからない。
 

<来季に向けて>
いかに優れたスケーティング技術を持とうとTESを堅実に稼げないと現行ルールでは勝てない。ただチャンの場合五輪団体戦のメダルはほぼ確実に得られるので可能な限りの高構成を確実に実施したい。3A2本の確実性が得られないなら4S4T2本ずつ構成(しかも前半4本構成)でも良いかもしれない。
その一方で無理して構成を上げてバタバタするよりも現行のままそのスケーティングの良さを見せつける方が個性とチャンの存在意義を感じられる気もする。
その為構成を上げるならばジャンプの飛びやすさや位置を検討すべきだし、上げないのならばチャンにしか見せられないような滑りを生かしたものにしたい。できればステップ満点を一度見てみたいのでジャッジが出さざるを得ないような記憶に残るプログラムを組んで欲しい。現役ラストシーズンになるかもしれないのでスピードや滑らかさを堪能できるものであるといいなと思っている。

海賊は高みを目指す―――ネイサン・チェン

ジュニアワールド最有力候補と言われながら骨折のため棄権した。シニア入りが復帰になったが怪我の回復具合を案じるファンを尻目に4Lzと4Fをひっさげて大旋風を巻き起こすという大躍進のシーズンとなった。
4種類の4回転を自由自在に飛ぶ様は見ているものを興奮させた。更にシニア1年目にして四大陸というチャンピオンシップのタイトルをとった。
一躍優勝候補に名を連ねることになったネイサンのシーズンを振り返る。
 
フィンランディアT   総合1位 256.44 SP2位 87.50 FS1位 168.94
フランス杯   総合4位 264.80 SP2位 92.85 FS4位 171.95
NHK杯    総合2位 268.91 SP2位 87.94 FS2位 180.97
G P F   総合2位 282.85 SP5位 85.30 FS1位 197.55
四大陸選手権  総合1位 307.46 SP1位  103.12 FS2位 204.34
世界選手権   総合6位 290.72 SP6位 97.33 FS4位 193.39 
国別対抗戦           284.52 SP2位 99.28 FS4位 185.24
平均       総合   279.386 SP平均  93.331 FS平均 186.054
 
計算してみてあれっと思ったのはそれ程ボーヤンと変わりないなということ。平均で約5点(SP2点FS3点)ほど高いのだが構成そのものはネイサンの方が高いのでこの位ならあまり違いが感じられない。
それでもボーヤンに比べてネイサンの日本での報道が多かったのはやはり4回転を4種類飛ぶというわかりやすさと羽生に勝ったという点につきる。普通の公式戦ではボーヤンも宇野も未だに羽生に勝てていない。一方ネイサンは一緒の試合で戦った中で勝っていない選手はいないというシニア1年目にしてある意味の偉業を成し遂げた。年齢のわりに物おじしない落ち着いた精神力の持ち主だが五輪シーズンでもそれが貫けるか来季は真価が問われそうだ。
ジャンプの質という点ではボーヤンには劣るが種類という点では勝っている。高難度の急進派として来季もひた走る予感がする。怪我には気を付けながら質の向上も図って欲しい。
 
<ジャンプ>
SP  4Lz+3T 4F // 3A =39.55
         
         基礎点     GOE   減点    合計
フィンランディアT   39.55   -3.33 -1   35.22  
フランス杯   33.83    2.26  0   36.09
NHK杯    39.55   -6.00 -1   32.55
G P F   35.85   -4.40 -1   30.45
四大陸選手権  39.55    2.37  0   41.92
世界選手権   39.55   -0.29 -1   38.26
国別対抗戦   36.25    3.71  0   39.96
平均     37.733  -0.812 -0.571  36.35  
 
今季の最高難度・・・と言うかこれを超える難度は現行ルールではほぼ無いだろう。レベルと基礎点さえ確保してしまえばほぼ100点超えしてしまうと言う恐ろしい基礎点である。これを見てしまうとジャンプに偏りすぎと言われても仕方ないという感じだ。PCSが50点満点ならジャンプの基礎点は最高でも35点くらいに治まらないと釣り合いが取れない。
最高難度の構成のため転倒もそれなりにありまた着氷もいまいちという部分も多かった。しかし高難度4回転の場合上手く着氷すれば3回転よりGOEが付きやすいという傾向がある。シーズン後半にはステップからのジャンプ基準も緩くなってGOEがつきやすくなった。この数字を見てしまうと来季もとりあえず基礎点計画は継続しそうだなと感じる。

 
FS 
        
         基礎点     GOE  減点    合計
フィンランディアT   92.45 -10.65 -2   79.80 
フランス杯   81.70  -5.34 -2   74.36
NHK杯    85.65  -5.46 -1   79.19  
G P F   86.02   8.17  0   94.19
四大陸選手権  90.38   3.92  0   94.30
世界選手権   96.77  -5.87 -2   88.90
国別対抗戦   77.45   3.87  0   81.32
平均     87.203 -1.623 -1   84.58
 
なんと今季の7試合全てFSのジャンプ構成が違っていた。基本は4T2本の3種または4種構成だったが、つなぎに配慮が無いため自分の思うままに後半は構成を変えまくっていた。曲の表現とかプログラムの完成度的にどうなのかと思うが、若手のためかジャンプがまとまると気前よく点を出したためその傾向が更に強くなった印象だ。
ただやはり高難度のため転倒はトップ選手の中では多めとなりGOEと減点のマイナスが大きくボーヤンと1点も差がつかなくなった。
若手はマイナス面を甘く見る傾向は以前からあるが来季も同じように見てもらえるかはわからない。怪我の防止の意味でももう少し着氷がスマートになるといいと感じる。ステップアウトやオーバーターンまで行かなくても前傾の膝に悪そうなつまり着氷が多いのは気になった。
 

<スピン>
SP
        基礎点   GOE     合計
フィンランディアT   7.9  1.33   9.23  ALLレベル3
フランス杯   9.2  2.22  11.42  レベル4 2回 レベル3 1回
NHK杯    9.2  1.50  10.70  レベル4 2回 レベル3 1回
G P F   8.8  1.07   9.87  レベル4 1回 レベル3 2回
四大陸選手権  9.7  2.36  12.06  ALLレベル4
世界選手権   9.3  2.36  11.66  レベル4 2回 レベル3 1回
国別対抗戦   9.7  2.21  11.91  ALLレベル4
平均    9.114 1.864 10.978
 
ボーヤンとネイサンの数字を見比べると面白い。このSPスピンもほぼ同じ点数だ。しかし内容的には異なっている。レベルはボーヤンの方が安定していてGOEはネイサンの方が高めとなっている。スピンについてはGOEが付く方がお得なので長い目で見れば有利なタイプかもしれない。
ネイサン単体で見るとやはり転倒があった試合は低めになっている。転倒による体力消耗が関わっているのかもしれない。

FS
        基礎点   GOE    合計
フィンランディアT   7.4  1.08   8.48  レベル4・2・1 各1回
フランス杯   9.7  1.57  11.27  レベル4 2回 レベル3 1回
NHK杯    9.3  1.43  10.73  レベル4 1回 レベル3 2回
G P F   9.7  2.14  11.84  ALLレベル4
四大陸選手権 10.2  2.08  12.28  ALLレベル4
世界選手権  10.2  1.71  11.91  ALLレベル4
国別対抗戦   9.7  2.36  12.06  レベル4 2回 レベル3 1回
平均    9.457 1.767 11.224
 
FSスピンについてはボーヤンより高い得点となっている。
スピンの位置や構成はシーズン中にかなり変更があった。冒頭は前半にも入っていたが途中から全てジャンプが終了後になった。その方が精神的・体力的な負担が少なかったのだろう。プログラムとしては単調になってしまうが基礎点を確実に獲得することを優先したのだろう。ただ見ていて印象はあまりよくないので来季はその辺り工夫する必要があると思う。
スピンの組み合わせも後半から基礎点の最も高いものに変更された。これもとことん戦略を突き詰めた結果だろう。こなしきった精神力と体力は称賛に値する。
 
<ステップ>
SP
        基礎点   GOE   合計
フィンランディアT   3.9  1.40  5.30  レベル4
フランス杯   3.3  0.93  4.23  レベル3
NHK杯    3.3  1.00  4.30  レベル3
G P F   3.3  1.00  4.30  レベル3
四大陸選手権  3.9  1.70  5.60  レベル4
世界選手権   3.3  1.00  4.30  レベル3
国別対抗戦   3.9  1.40  5.30  レベル4
平均    3.557 1.204 4.761
 
ステップについてもボーヤンとほとんど変わらない数字に落ち着いた。レベルについては3と4がほぼ半々だった。印象としては転倒すると取りこぼしがあるという感じだ。
バレエをモチーフにしたこのプログラムはネイサンの個性にはよく合っていた。曲も定番曲と言われる(毎年誰かが使用している)ほどフィギュアではなじみがあるもので曲の盛り上がりを上手く使ったプログラムになっていたと思う。
 
FS
        基礎点   GOE   合計
フィンランディナT   4.6  1.20  5.80  レベル2
フランス杯   5.3  1.66  6.96  レベル3 
NHK杯    5.3  1.69  6.99  レベル3
G P F   5.3  1.80  7.10  レベル3
四大陸選手権  5.9  3.00  8.90  レベル4
世界選手権   5.9  1.90  7.80  レベル4
国別対抗戦   5.9  2.60  8.50  レベル4
平均    5.457 1.979 7.436
 
ステップについてはFSでもボーヤンに近い得点となっている。シーズン後半にレベルを揃えてきた。
コレオについては前半の高難度のジャンプ構成から印象を変えるために上手く使われており、StSqはジャンプが終わった後の最後のひとがんばりといった滑りになっていた。転倒があるとかなりきつそうだったがしっかりレベルを確保してきたことは評価できる。
 
<TES計>
SP  
        基礎点   GOE  減点    合計
フィンランディアT  51.35 -0.60 -1   49.75 
フランス杯  46.33  5.41  0   51.74
NHK杯   52.05 -3.50 -1   47.55
G P F  47.95 -2.33 -1   44.62
四大陸選手権 53.15  6.43  0   59.58
世界選手権  52.15  3.07 -1   54.22
国別対抗戦  49.85  7.32  0   57.17
平均    50.404 2.257 -0.571  52.09
 
転倒が半分合っても平均が50点を超えてしまうという高難度のメリットが見受けられる。そしてやっぱりボーヤンとあまり変わりない数字となった。
表彰台に上がるためにはSP100点を超える必要が出てきたシーズンとなったがそうするとやはり4Lzの基礎点が必要になる。国別では抜いてきたが怪我を治して来季も是非暴れて欲しいと願っている。

FS
         基礎点    GOE  減点     合計
フィンランディアT  104.45 -8.37 -2    94.08
フランス杯   96.70 -2.11 -2    92.59  
NHK杯   100.25 -2.34 -1    96.91
G P F  101.02 12.11  0   113.13
四大陸選手権 106.48  9.00  0   115.48
世界選手権  112.87 -2.26 -2   108.61
国別対抗戦   93.05  8.83  0   101.88
平均    102.117 2.123 -1   103.24 
 
基礎点100超えは構成が高い分ボーヤンよりも多い。しかし平均で1点ちょっとしか上回れなかったのはやはり転倒が多かったためだろう。転倒があるとGOEがマイナスになる可能性が高くなるので点数的には伸びなくなる。5つ6つ4回転を跳んでいる割には低いかもしれないがそれでもSPFS併せて1回程度に抑えないと大きな大会では表彰台は難しい。
ノーミスボーヤンのTESがネイサンの最高記録より上という結果を見るとやはり順位評価としては完成度が重要なので着氷含めて質と確率をもう少し上げたい。
 

<PCS>
SP
        SS  TR  PE  CC  IN  合計
フィンランディンT   7.58  7.25  7.54  7.71  7.67  37.75
フランス杯   8.18  7.89  8.43  8.36  8.25  41.11
NHK杯    8.18  8.04  7.89  8.14  8.14  40.39
G P F   8.18  7.96  8.04  8.32  8.18  40.68
四大陸選手権  8.68  8.50  8.93  8.75  8.68  43.54
世界選手権   8.64  8.43  8.61  8.68  8.75  43.11
国別対抗戦   8.46  8.21  8.61  8.29  8.54  42.11
平均       8.271  8.04  8.293   8.321   8.316  41.241
 
ボーヤンが1シーズン通して地味に点数を伸ばしたことに対してはネイサンの伸びは大きい。ボーヤンよりはジャッジ的評価の高い選手なのだろう。
バレエ音楽をバレエ的な振付で上手く見せたという効果もあったかもしれない。SPは来季そのまま持ち越しても良いかもしれないと思っている。
TESであまり代わり映えの無いボーヤンとネイサンだがPCSで若干差がついている。ジャンプを纏めるとポンと上がりやすい傾向があるのでPCSについてはボーヤンよりも有利に感じられる。

FS
        SS  TR  PE  CC  IN  合計
フィンランディアT   7.71  7.17  7.46  7.63  7.46  74.86 
フランス杯   8.11  7.61  7.96  8.07  7.93  79.36
NHK杯    8.54  8.32  8.25  8.46  8.46  84.06
G P F   8.46  8.11  8.79  8.46  8.39  84.42
四大陸選手権  9.00  8.75  8.89  8.93  8.86  88.86
世界選手権   8.54  8.39  8.32  8.64  8.50  84.78
国別対抗戦   8.50  8.07  8.50  8.29  8.32  83.36
平均       8.409  8.06  8.31   8.354  8.274   82.814
 
平均全て8点台とシニア1年目としては上々の数字。ボーヤンよりも2点ほど高い結果となっている。
ただFSはやはりバランスが悪い構成だし、構成を演技中に変えるためジャンプ中はそれだけになりやすい。来季も同じことをして同等の評価がされるかは未知数だ。
FSについては持越は無いと思う。今季は割とSPFSが似た印象だったので違った感じにしたいところだ。ネイサンについてはボーヤンと異なり王道曲も似合いそうだし、物怖じしない性格で年齢の割に大人びた身のこなしが出来るのでロックやジャズなどでも手くこなせそう。今季を引きずらない曲調になるといいと思う。
 

<来季に向けて>
とりあえずFSでバランスの取れた構成を作って欲しい。ラストにスピン纏めてこなしますというのはシニア選手としては印象が悪い。
速いテンポは盛り上がりやすいがスタミナが持たなくなるとこなしています感が感じられるのでその辺りを上手くフォローできる振付が出来ると良いかもしれない。
後はやはり着氷。前傾になる着氷はやはり膝に良くない。ほとんどが4回転の高難度であるので負担が大きすぎる。後方に流す着氷技術を磨いて欲しい。ボーヤンも昨季より改善傾向にあるのでネイサンも難度を上げるより完成度を上げて欲しいと願っている。

蜘蛛男は笑顔で飛ぶ―――ボーヤン・ジン

女子シングルは本命よりその時良かった選手が五輪金メダルを取ることが多いが、男子シングルはある程度実績がある選手が五輪を制してきている。そういう意味では2年連続ワールド表彰台に上ったことで金メダル有力候補になったと言える。シーズン冒頭はジャンプが安定せずに心配したが終わってみれば非常に安定した成績を出している結果となった。
シーズン開始前にはかなり心配していたローリーとの相性がかなり良くSPFS共に好印象を残した。SPは持越と言うことでランを減らしもう少し密度を上げたらかなり評価が上がりそうな印象がある。来季のさらなる躍進が非常に楽しみな選手だ。
 
 
Sアメリカ   総合5位 245.08 SP8位 72.93 FS4位 172.15
中 国 杯   総合2位 278.54 SP1位 96.17 FS2位 182.37
四大陸選手権  総合5位 267.51 SP4位  91.33 FS5位 176.18
アジア大会   総合2位 280.08 SP1位 92.86 FS2位 187.22
世界選手権   総合3位 303.58 SP4位 98.64 FS3位 204.94 
国別対抗戦           272.61 SP3位 97.98 FS7位 174.63
平均       総合   274.567 SP平均  91.652 FS平均 182.915
 
2016-17シーズンで高難度ながらSPFSノーミスで揃えた今季唯一の選手となった。
シーズン冒頭は身長が伸び上半身のバランスも変わりジャンプが安定しないのかと心配したが後半に行くにつれしっかりGOEが取れるものに調整してきた。いつもにこにこ笑顔ながらしっかりやることをやってきている手強い選手になったなぁと感じる。
先日2015年GPFを久々に振り返ったが体型や所作がものすごく変わっていて驚いた。是非ローリーにしごかれて更なるスケーティングの向上を図ってまた驚かせて欲しい。
 
<ジャンプ>
SP  4Lz+3T 3A // 4T =37.73
         
         基礎点     GOE   減点    合計
  
Sアメリカ   33.43  -10.14 -2   21.29
中 国 杯   37.73    3.86  0   41.59
四大陸選手権  37.73   -1.97  0   35.76
アジア大会   37.73   -1.52  0   36.21
世界選手権   37.73    4.14  0   41.87
国別対抗戦   37.73    1.55  0   39.28
平均     37.013   -0.68 -0.333  36.00  
 
Sアメリカでは2転倒で非常に心配した。昨季から高難度挑戦の割に転倒が少ない選手だったからだ。その後もなかなか得点源の4Lzコンボが綺麗に決まらず苦労したが結果的にSアメリカのGOEマイナスが大きすぎるだけで基礎点はしっかり取ってきたことがわかる。
体型変化もほぼ終わったようだしSPは持越なので来季はシーズン開始から大暴れしそうな予感がする結果だ。
 
FS 4Lz 4S 3A+Lo+3S // 4T+2T 4T 3Lz+3T 3A 3F = 88.1
        
         基礎点     GOE  減点    合計
Sアメリカ   85.47  -6.41 -1   78.06
中 国 杯   85.57   1.52 -1   86.09  
四大陸選手権  91.58  -7.89 -2   81.69
アジア大会   78.90   4.98  0   83.88
世界選手権   88.10  10.94  0   99.04
国別対抗戦   77.09  -3.34  0   73.75
平均     84.452 -0.033 -0.667 83.752
 
四大陸のみ4Loに挑戦した。上手くいかなかったことでその後すっぱりと止めたことはクレバーだと感じる。入れなくても十分高難度なのでワールドでしっかり纏め評価を安定させた。
国別はシーズン終了後ということでおいておいても四回転で抜けが少ないというのは大きいなと基礎点を見て思う。大抵の選手はその位のTESを得るのにも苦労しているというのに・・・
4Lzの質については今のところ世界最高だと思うので4Tも同じレベルになると更に怖い存在になりそうだ。
 
<スピン>
SP
        基礎点   GOE     合計
Sアメリカ   9.3  1.21  10.51  レベル4 2回 レベル3 1回
中 国 杯   9.3  1.43  10.73  レベル4 2回 レベル3 1回
四大陸選手権  8.9  1.50  10.40  レベル4 2回 レベル3 1回
アジア大会   9.7  1.90  11.60  ALLレベル4
世界選手権   9.7  1.78  11.48  ALLレベル4
国別対抗戦   9.7  1.64  11.34  ALLレベル4
平均    9.433 1.577  11.01
 
シーズン後半にしっかりレベルを揃えてきていることは評価できる。GOEについても昨年よりは獲得できるようになってきている。
それ程上手いと感じる選手では無いが、しっかり回るという意識は持てているので割と好感が持てる。シーズン冒頭のポジション不足も持越プロならば来季には心配なさそう。

FS
        基礎点   GOE    合計
Sアメリカ   8.3  0.79   9.09  レベル4 1回 レベル3 2回
中 国 杯   8.7  1.28   9.98  レベル4 2回 レベル3 1回
四大陸選手権  9.3  1.22  10.52  レベル4 2回 レベル3 1回
アジア大会   9.7  1.90  11.60  ALLレベル4
世界選手権   9.7  2.00  11.70  ALLレベル4
国別対抗戦   9.7  1.93  11.63  ALLレベル4
平均    9.233  1.52 10.753
 
SPよりは多少取りこぼしているがそれでも後半しっかり纏めてきているしGOEも付いてきている。
FSはおそらく新プロになると思うのでこの位のGOEとレベルが取れればボーヤンとしてはまずまずなのかもしれない。

<ステップ>
SP
        基礎点   GOE   合計
 
Sアメリカ   3.3  0.79  4.09  レベル3
中 国 杯   3.9  0.80  4.70  レベル4
四大陸選手権  3.9  1.20  5.10  レベル4
アジア大会   3.3  1.00  4.30  レベル3
世界選手権   3.3  1.00  4.30  レベル3
国別対抗戦   3.9  1.60  5.50  レベル4
平均      3.6 1.065 4.665
 
プロが個性にあって盛り上がることもありGOEも昨季よりは延びている。多少せわしく詰め込みすぎている感じもするのでローリーがもう少し調整してくれないかなとは思う。ラストのハイドロが「スパイダーマーーーン」のところで大きくやるともっと効果的だと思う。
ただ昨季より格段に滑るようになっているので見応えが上がっている。動いている感が減っていることは素晴らしい。それでもチャンやブラウンに挟まれてしまうとまだまだな印象を受けるのでその辺りは継続的に強化して欲しい。
 
FS
        基礎点   GOE   合計
Sアメリカ   5.3  1.70  7.00  レベル3 
中 国 杯   5.9  1.60  7.50  レベル4
四大陸選手権  5.3  1.23  6.53  レベル3
アジア大会   5.9  2.24  8.14  レベル4
世界選手権   5.9  2.30  8.20  レベル4
国別対抗戦   5.3  1.81  7.11  レベル3
平均      5.6 1.813 7.413
 
昨季より平均が1点近く上がっている。レベル4が取れるようになってきていることが大きい。レベルが取れればGOE比率も上がるので今後もその傾向を続けて欲しい。
個人的には前半のコレオはともかく後半のステップが割と下を向いていることが多いのが気になる。苦しい時間なのはわかるが顔を上げて姿勢よく頑張って欲しい。

<TES計>
SP  
        基礎点   GOE  減点    合計
 
Sアメリカ  46.03 -8.14 -2   35.89
中 国 杯  50.93  6.09  0   57.02
四大陸選手権 50.53  0.73  0   51.26
アジア大会  50.73  1.38  0   52.11
世界選手権  50.73  6.92  0   57.65
国別対抗戦  51.33  4.79  0   56.12
平均    50.047 1.962 -0.333 51.675
 
序盤の取りこぼしが大きすぎて昨季より平均は落としている。スピンステップのレベルが揃ったのが国別だけだったことがもったいない。ただ来季は持越ならレベル取りは安定しそう。2年連続表彰台と言うことでトップ選手としての認識は高まっている。是非五輪での台風の目となって欲しい。

FS
         基礎点    GOE  減点     合計
Sアメリカ   99.07 -3.92 -1    94.15  
中 国 杯  100.17  4.40 -1   103.57
四大陸選手権 106.18 -5.44 -2    98.74
アジア大会   94.50  9.12  0   103.62
世界選手権  103.70 15.24  0   118.94
国別対抗戦   92.09  0.40  0    92.49
平均     99.285  3.30 -0.667 101.918 
 
抜けとかコンボ無しとかで昨季より基礎点は落としているが獲得点としては上がっている結果に。序盤の転倒のマイナスがあってそれならば十分なシーズンだったろう。
体型もしっかりして大人の体つきになりスケートも力強さが感じられる。話題としてはネイサンや宇野に隠れてしまった感はあるが単純なジャンプの質としては二人より上だと感じるので世界選手権の4Lzの様な質を常に見せられるようにして欲しい。
 
<PCS>
SP
        SS  TR  PE  CC  IN  合計
Sアメリカ   7.57  7.07  7.32  7.54  7.54  37.04
中 国 杯   7.79  7.46  8.11  7.93  7.86  39.15
四大陸選手権  8.18  7.68  8.21  7.93  8.07  40.07
アジア大会   8.20  8.00  8.10  8.20  8.25  40.75
世界選手権   8.25  7.96  8.46  8.07  8.25  40.99
国別対抗戦   8.36  8.04  8.64  8.32  8.50  41.86
平均       8.058  7.702  8.14   7.998   8.078   39.977
 
ワールドの表彰台に上ったにしてはシーズン冒頭は厳しかった。どうも北米はボーヤンをあまり評価したくない傾向があるようでネイサンや宇野のように一気に上がると言うことは無かったが後半になるにつれ伸びていることがわかる。
平均でほぼ40と昨季より1.5点ほども上がっている。地道な努力が実を結んでいると感じる。後はつなぎ、クロスはそれ程でも無いがランは非常に目につくのでその辺りもう少し工夫をしたいところだ。

FS
        SS  TR  PE  CC  IN  合計
Sアメリカ   7.82  7.39  7.93  7.93  7.93  78.00
中 国 杯   7.86  7.54  8.07  7.93  8.00  78.80 
四大陸選手権  8.04  7.43  7.64  7.82  7.79  77.44
アジア大会   8.45  8.15  8.45  8.30  8.45  83.60
世界選手権   8.71  8.36  8.68  8.64  8.61  86.00
国別対抗戦   8.43  8.00  8.11  8.32  8.21  82.14
平均       8.218  7.812   8.147  8.157   8.165   80.997
 
SPよりも更に渋さを感じたPCSだが結果的に平均80を超えたので実績がついてきたのだと感じる。印象としてはPEが高かったのだが結果的にSSだったことが面白い。滑りが良くなったことがそれでも評価されているのだろう。
ローリーの振付がボーヤンに合っていることも良かった。来季はどういう選曲になるかわからないがたぶんわかりやすい世界観の音楽が合っていると思う。下手な王道よりボーヤンの素直さや純朴さをアピールした方が良いと考える。

<来季に向けて>
来季もローリー振付だと思うので是非ボーヤンの個性を引き出すものであって欲しいと願っている。スケーティングの強化とともにローリーにはぜひ引き出し中を捌くって頑張って欲しい。
4Loについては入れる必要が有るか微妙だが、ネイサンと争うことになると難度の問題になりそうなので入れそうな予感はする。ただ入れる場所については検討した方が良いとは感じる。
大人の体型でしっかりジャンプを安定させてきたことで今季よりプログラムに工夫が出来ると思う。つなぎとステップでの姿勢の強化を頑張って欲しい。

高難度時代に挑む―――ミハイル・コリャダー

羽生の全世界にいるファンたちが2017ワールドFSの注釈付き動画を世界的に発信している。面白い動画だなと感じる。ISUがお手本動画を配信しているが演技映像を垂れ流すだけでなくこういう注釈をつけてどこが評価されるのかどういう風に素晴らしいのかを明らかにしてくれれば日本の報道の仕方がもう少し変わるかもしれないのに、と思ったりする。ただ単にジャンプの成否を発信するのではなくどこでレベルを判別するのか、ステップはどこを見ているのか解説しやすくなるのではと思うのだ。ジャンプも単に「幅と流れがある良いジャンプでした」ではなくなってほしい。羽生のFSはノーミス演技だけにいいお手本になるのでISUも上手く利用すればいいのにと感じた。
もし作るならばアイスダンスが一番見たいのだが、男子シングルだったら羽生以外では特にチャンとフェルナンデスとブラウン、そしてコリャダーが見たいと思う。コリャダーは止まって動く場所もあるが結構足元は凝ってると思うのだ。ブラウンやチャンほど解説にはあまり取り上げられないのが残念だが、もう少しその辺りも評価されてもいいのにと思っている。今季はなかなかジャンプが安定しなくてシーズン当初は点数が伸びなかった。ただ初めてナショナルチャンプにもなったし世界選手権から国別にかけてまずまずの演技ができたので来季への期待も持てる終わり方だった。新たな4回転を入れる予定があるというコメントも出ているのでぜひ今季乗り越えられなかった280を超える演技を見せて欲しいと願っている。

フィンランディアT   総合4位 219.55 SP4位 80.20 FS5位 139.35
ロステレコム  総合4位 245.30 SP3位 90.28 FS6位 155.02
NHK杯    総合5位 225.69 SP4位 78.18 FS6位 147.51
欧州選手権   総合3位 250.18 SP3位  83.96 FS3位 166.22
世界選手権   総合8位 257.47 SP7位 93.28 FS9位 164.19 
国別対抗戦           279.41 SP4位  95.37 FS5位 184.04
平均       総合  246.266   SP平均 86.878  FS平均 159.388
 
結果的に見れば後半に向けて着実に点数を伸ばしたシーズンだったといえる。国別ではあるがPBも出せた。ただトップ選手の仲間入りというにはまだまだ下限が低いといえる。
入賞圏内を超えてユーロ以外の表彰台に上がるためには平均で265、下限で245を超えたいところだ。
 
 
<ジャンプ>
SP  4T+3T 3A // 3Lz =29.70
         
        基礎点    GOE   減点    合計
フィンランディアT  26.83  -1.09 -1   24.74  
ロステレコム 29.70   2.07  0   31.77
NHK杯   20.83   0.80  0   21.63
欧州選手権  21.20   3.41  0   24.61
世界選手権  29.70   4.50  0   34.20
国別対抗戦  29.70   4.46  0   34.16
平均    26.327  2.358 -0.167  28.518  
 
ソチの頃はこれで十分の構成だったが現在では少し厳しい構成となってしまった。確実に基礎点とGOEを稼ぎたいところだがシーズン冒頭はなかなかジャンプが揃わなかった。
しかし昨年のワールドといい今季のワールド&国別とシーズン後半でピークを合わせることは上手いのかもしれない。ジャンプそのものの質は良く流れも綺麗なのでGOEは付きやすい。特に3Lzの質の良さは素晴らしい。あとは確実性を上げたいところ。
 

FS 
        
        基礎点     GOE  減点     合計
フィンランディアT  47.87  -2.72  -1   44.15
ロステレコム 53.32   1.76  -1   54.08
NHK杯   55.83  -7.66  -2   46.17  
欧州選手権  62.53  -0.72  -1   60.81
世界選手権  62.47   1.09  -1   62.56
国別対抗戦  71.58   4.76  -1   75.34
平均    58.933 -0.582 -1.167  57.185
 
4Sや4Lzという2種目の4回転を入れようとしたシーズンだった。結果的に基礎点の高い4Lzにしたようだが今季中の成功はできなかった。新クワドの成功率が低いことは仕方ないことかもしれないがその影響か4Tも不安定になったことが序盤なかなか点数が伸びない原因だった。更に得意のはずの3Aもしばしばミスが出てしまうということで新クワドを試すにはリスクの方が大きかったシーズンだった。
コンボが足りなかったり予定構成がこなせない試合が多かったこともあり表彰台には絡めなかった。正直に言えば4Lzより4T2本構成をまずやるべきだと思うのだが・・・3Fがない分REPに引っかかりやすくリカバリしにくい構成を組んでいるところがもったいなく感じる。

<スピン>
SP
        基礎点   GOE     合計
フィンランディアT   9.7  2.50  12.20  ALLレベル4
ロステレコム  9.7  2.86  12.56  ALLレベル4
NHK杯    9.7  2.36  12.06  ALLレベル4
欧州選手権   9.7  3.28  12.98  ALLレベル4
世界選手権   9.7  2.57  12.27  ALLレベル4
国別対抗戦   9.7  2.93  12.63  ALLレベル4
平均      9.7  2.75  12.45
 
シーズン通してALLレベル4は素晴らしい。ロシアンはわりとスピンに苦労する選手が多いがコリャダーはポジション・回転ともに質がいい。
シーズンが進むとともにビールマンの姿を消したが、十分レベル確保はできているので無理する必要はない。平均獲得点数も素晴らしい出来だ。
 
 
FS
        基礎点   GOE   合計
フィンランディアT   8.9  1.83  10.73  レベル4 1回  レベル3 2回
ロステレコム  8.3  2.36  10.66  レベル4・3・2 各1回
NHK杯    9.7  2.22  11.92  ALLレベル4
欧州選手権   9.7  2.57  12.27  ALLレベル4
世界選手権   9.7  2.57  12.27  ALLレベル4
国別対抗戦   9.7  2.86  12.56  ALLレベル4
平均    9.333 2.402 11.735
 
転倒が毎試合発生しているためスピンでそのマイナスを埋めているといった印象。後半に向けて点数が伸びているのは評価されている。
ただスピンが得意な選手であるから、コンビネーションを2つにした方がお得なのにと思わないこともない。0.3もしくは0.5でも基礎点を上げられるなら取り組む価値はあると思う。
 
 
<ステップ>
SP
        基礎点   GOE   合計
フィンランディアT   3.9  1.05  4.95  レベル4 
ロステレコム  3.3  0.93  4.23  レベル3
NHK杯    3.3  0.64  3.94  レベル3
欧州選手権   3.3  1.00  4.30  レベル3
世界選手権   3.3  1.00  4.30  レベル3
国別対抗戦   3.9  1.40  5.30  レベル4
平均      3.5 1.003 4.503
 
ステップのレベルについてはなかなか4が取れなかった。コフトゥンに比べればGOEがつくのでレベルを落とすともったいない印象だ。
持ち越しプロだったので滑り慣れているはずだが、ステップのレベル要件については毎年少しずつ変わるので対応はなかなか難しいのかもしれない。
 
FS
        基礎点   GOE   合計
フィンランディアT   5.9  2.33  8.23  レベル4
ロステレコム  4.6  1.70  6.30  レベル2 
NHK杯    5.9  2.00  7.90  レベル4
欧州選手権   5.9  2.80  8.70  レベル4
世界選手権   5.3  1.36  6.66  レベル3
国別対抗戦   5.9  2.80  8.70  レベル4
平均    5.583 2.165 7.748
 
ロステレコムを除けばまずまずの点数を稼いでいる。ステップはレベルによって係数が変わるためGOEがつきやすい選手だからこそレベルにこだわりたい。
 
<TES計>
SP  
        基礎点   GOE  減点    合計
フィンランディアT  40.43  2.46 -1   41.89  
ロステレコム 42.70  5.86  0   48.56
NHK杯   33.83  3.80  0   37.63
欧州選手権  34.20  7.69  0   41.89
世界選手権  42.70  8.07  0   50.77
国別対抗戦  43.30  8.79  0   52.09
平均    39.527 6.112 -0.167 45.472
 
エレメンツの質については良い選手なのでジャンプミスさえなければ点が出やすい印象だ。シーズン後半に50点超えてきたことで来季に希望が持てる結果となっている。
ロシア男子がトップ選手から遠ざかっている実情があるので何とか頑張って欲しいものだ。とりあえずSPでは抜けは厳禁、特に3Aは稼ぎどころなので確実に飛びたいところだ。
 
FS
        基礎点    GOE  減点    合計
フィンランディアT  62.67  1.44 -1   63.11
ロステレコム 66.22  5.82 -1   71.04  
NHK杯   71.43 -3.44 -2   65.99
欧州選手権  78.13  4.65 -1   81.78
世界選手権  77.47  5.02 -1   81.49
国別対抗戦  87.18 10.42 -1   96.60
平均     73.85 3.985 -1.167 76.668 
 
毎試合転倒しているためGOEが伸びきらないことと減点が大きいことで70点台後半に落ち着いてしまった。羽生のようにジャンプミスが転倒に結びつくタイプの着氷なので安定するまでは仕方ないかもしれない。
転倒はともかくとしても抜けやコンボ不足・REPなどで基礎点を失っている試合が多いためまずはそこをなくすことを注視したい。コフトゥンにせよコリャダーにせよリカバリするということがないのがもどかしいと感じる。
 
<PCS>
SP
       SS  TR  PE  CC  IN  合計
フィンランディアT  7.88  7.38  7.63  7.71  7.71  38.31
ロステレコム 8.36  8.04  8.50  8.36  8.46  41.72
NHK杯   8.21  7.96  7.96  8.21  8.21  40.55
欧州選手権  8.43  8.14  8.50  8.46  8.54  42.07
世界選手権  8.57  8.29  8.61  8.43  8.61  42.51
国別対抗戦  8.64  8.36  8.89  8.57  8.82  43.28
平均      8.348  8.028   8.348     8.29  8.392   41.407
 
スケーティングの伸びの良い気持ちのいい滑りの選手なのでエレメンツをそろえると数字が出やすい選手だ。
ただし巧さはあるのにまだまだPCSが伸びきらないのはプログラムの問題もあるかと。コミカルな動きや表現は上手だが、それを点数に結びつけることに関しては弱いかなと感じる。もう少しうまくプログラミングできれば4回転が飛べるブラウン並みの評価が得られそうな印象がある。
五輪シーズンにコミカルでない良い振付が来ることを願っている。(バトルに振付してもらえないかな…)
 
FS
       SS  TR  PE  CC  IN  合計
フィンランディアT  7.67  7.33  7.58  7.75  7.79  76.24
ロステレコム 8.61  8.14  8.21  8.57  8.46  83.98
NHK杯   8.32  7.79  8.04  8.25  8.36  81.52
欧州選手権  8.57  8.18  8.43  8.43  8.61  84.44
世界選手権  8.46  8.07  8.21  8.29  8.32  82.70
国別対抗戦  8.86  8.50  8.86  8.64  8.86  87.44
平均      7.995  7.45  7.783   7.805   7.828   77.723
 
本来ならネイサンやボーヤンより上でブラウンと変わらない位の評価を受けても良いと感じる選手であるが、なかなかそこまで出ないのはやはり予定構成をこなしきれていないという点だろうか?
大技の転倒についてはジャッジもそこまで取り上げないが3A以下のジャンプでぽろぽろミスが出るのはいただけない。スケーティングはかなり良く着氷も美しく流れる選手なのでその辺りを強調したプログラムを組みしっかり基礎点を確保すれば275以上をコンスタントに出せる選手だと思う。
来季はさらに構成を上げるといっているが、まず取りこぼしがなくすことを注視して欲しい。
 
<来季に向けて>
コミカルっぽいプログラムを2つ並べたことが良かったかどうか微妙な印象だったシーズン。来季はぜひもっと違った方面の振り付けにしてほしい。SPFSのどちらかは北米系の振付師に依頼してくれたらと願っている。
スケーティングの伸びは非常にいい選手で足元も割と多彩で非常に好みの選手である。ジャッジの評価もまずまずな選手だけにロシアンという枠には収まらないで欲しい。
4Lzについては回転は問題なさそうだが着氷の感覚がまだつかめていない印象だ。飛形が飛ぶたびに異なっているみたいなのでまだ試行錯誤中かなという印象がある。オフの間にぜひそこをきわめて来季の武器にしてほしい。

時にはあれこれ考えてみたりする

ワールドですっかり今シーズンが終わってしまってなんとなく気が抜けている。国別も結局リアルタイムではあまり見れなくて・・・とりあえず日本優勝おめでとう!出場選手の皆様、シーズンお疲れさまでした。おいしいもの食べて来季に備えてください。

 

ワールドが終わった後だったか、北京以降のルール変更について記事が上がった。文章だけではよくわからないが、今のSP・FSという2プログラム採点ではなく技術と芸術に分けるという案だ。どちらか片方だけの参加もOKということだった。

漠然としすぎて現状どういう感じになるのか想像できないのだが、読んで最初に浮かんだのは「面白そうじゃないなぁ」という感想だった。何しろSP5位からの逆転優勝という劇的な試合を見た後だ。1プログラムのみで順位を決めるということはあの驚きがなくなるわけで魅力が半減してしまう気がしたのだ。

次に思ったのは「枠ってどうなるの?」という疑問。毎年ワールドで翌年の出場枠が決まるが、2つの採点する試合においてそれぞれに枠が作られるのだろうか?

そして一番気になったのは「芸術」だ。何をもって芸術として何を良いと数値化するのか。その辺りが全く分からないので良い改正かどうかが判断できない。今のところあまり海外でも話題になっていないのでとりあえず判断は保留。もう少し情報を待つことにしする。

 

ただ・・・ルールの大きな改正が必要な状況であることは確かだ。特に男子シングルでは深刻な状況だ。ジャンプが高難度化しすぎてPCSとのバランスが取れなくなっている。点数が限界を迎えているのは他のカテゴリも同じなのだが、男子は特にジャンプに偏りすぎている。平昌後に1つ減るがそれはむしろ加速化させそうな印象が今からすでにある。PCS係数を変えるという話も出ているがどこまで有効かわからない。そういったこともあり先のような新ルールが考案されているんだなというのは理解できる。ただスポーツでありオリンピック種目であるからテクニカルに限界を持たせるということには是とは言えない。スポーツである以上技術の向上は必要でバレエやピアノのコンクールとは違うのだから・・・

 

以前から考えていたことがある。男子シングルのTESとPCSのバランスどう改良したらしたらいいのか。ジャンプの比重が大きすぎるから点数を下げるということが最も簡単だ。しかし基礎点は男子だけではなく女子でもペアでも利用されている。GOE係数との兼ね合いもあるし、下手に調節してバンクーバーの頃のように低難度をまとめた方が得というようなことになったら目も当てられない。現在の基礎点も4Aを除けばほどほど妥当な数値だと思う。そんなわけで基礎点や現在のGOEのやり方を変えないという前提で考えると道は2つしかない。一番簡単なのはPCS係数を変えること。現行のSP×1、FS×2を1.2や2.4に変える。そうすればTESとPCSのバランスは上位ではかなりとれるようになるだろう。ただしこのやり方ではジャンプの偏重は変わらない。スピンステップが苦手だと感じたらまずジャンプという選手が多く出てくるだろう。そういう意味ではあまりいい対策だとは言えない。

そんなことで私が考えるのは単純に「ジャンプの点数を下げる」という方策だ。現行の基礎点やGOEは変えない、ただ「ジャンプの獲得点を下げる」。そうすればPCS係数は現行通りでいいし、ジャンプの比重が下がる分スピンステップの価値が上がるわけだ。ではどうやって下げるかといえば、実に簡単、「獲得したジャンプの得点を決めた係数でかける」というやり方だ。4/5でも3/4でもいいのだがとりあえず2017世界選手権の羽生のFSで計算してみる。

 ジャンプ  スピン ステップ  TES  PCS  合計
 104.67 + 12.65 + 8.80 = 126.12  97.08  223.20 

これをジャンプで獲得した点数のみ係数をかける

ジャンプ  スピン ステップ  TES  PCS  合計
 83.74 + 12.65 + 8.80 = 105.19  97.08  202.27 ×0.8の場合
 78.50 + 12.65 + 8.80 =  99.95  97.08  197.03 ×0.75の場合
 73.27 + 12.65 + 8.80 =  94.72  97.08  191.80 ×0.7の場合

なんとなくだがいい感じに収まってきた感じがする。

SPはフェルナンデスで計算してみるとこうなる
ジャンプ  スピン ステップ   TES  PCS  合計
 43.17 + 11.62 + 6.00 = 60.79  48.26  109.05
 34.54 + 11.62 + 6.00 = 52.16  48.26  100.42 ×0.8の場合
 32.38 + 11.62 + 6.00 = 50.00  48.26   98.26 ×0.75の場合
 30.22 + 11.62 + 6.00 = 47.84  48.26   96.10 ×0.7の場合

係数的にはFSと変わりなくできそうな予感だ。しかもFSよりも格段にスピンステップの比重が上がる。基礎力を図るには向いていると感じる。

ジャンプの獲得点に対し×0.〇で下げることの意味としては基礎点を変えないためジャンプ難度を求めたければその姿勢を変えなくても構わないということ。ただ現在ほど効果が大きくないだけだ。そして質をよくしてGOEを多く得ることが大切という点も変わらない。選手にとって負担は少ないと感じる策だがどうだろうか?

試しに2017世界選手権で上位の成績で検討してみる。今回は0.75で計算してみた。

         TES PCS 減点 総合計 → TES PCS 減点 総合計
1位 羽生 結弦 178.16 144.43 -1 321.59   143.75 144.43 -1 287.18
2位 宇野 昌磨 179.19 140.12  0 319.31   144.25 140.12  0 284.37
3位 ボーヤン・ジン 176.59 126.99  0 303.58   141.36 126.99  0 268.35
4位 フェルナンデス  159.41 142.78 -1 301.19   129.34 142.78 -1 271.12
5位 P・チャン 152.22 142.94  0 295.16   124.00 142.94  0 266.94
6位 N・チェン 165.83 127.89 -3 290.72   133.29 127.89 -3 258.18
7位 ブラウン  136.27 134.30 -1 269.57   112.72 134.30 -1 246.02
8位 コリャーダ 133.26 125.21 -1 257.47   108.82 125.21 -1 233.03
9位 レイノルズ 139.54 114.30  0 253.84   112.82 114.30  0 227.12
10位 ビチェンコ 130.08 115.88  0 245.96   105.09 220.97  0 220.97
11位 コフトゥン 126.05 120.79 -1 245.84   102.51 120.79 -1 222.30

予想した通りジャンプに0.75をかけると3位のボーヤンと10位のビチェンコの順位が下がる。(ちなみにビチェンコはミーシャよりも下回るため12位になる)
10位以下だとヴァシリエフスとテンとヘンドリクスが1つ順位が上がることになる。ビチェンコはスピンステップが弱いことで下がり、ヴァシリエフスやヘンドリクスはその辺りが強いから上にきてフェルナンデスとテンはPCSが高いことで上昇するというわけだ。バランスの取れた選手を上位にあげたいというジャッジの意志にはある程度該当しているのではという印象がある。
点数を見て面白いのはボーヤンとチャンが差がなくなるということ。そして上位6強とブラウンの差がかなり縮まった反面コリャーダとの差が広がったこと。博打的高難度を飛ぶよりエレメンツの質をよくしてGOEを稼ぐことに意味がある結果といえないだろうか?

 
 
「技術」「芸術」と分けて採点するという競技となれば仮にその2つを勝って世界王者になっても今までとは違う競技になってしまう。旧採点から新採点になっていろいろ見方は変わったがフィギュアスケートという競技そのものは継続されてきたはずだ。しかし先ほど提案されたものはあまりにも違って見えることが不安でならない。新採点になって変わってしまった部分もあるがよりよくなった部分も多かったはず。そして今の選手たちはその採点法に合わせて訓練してきている。だとしたら運用レベルの修正の方が良いのではないかと今の段階では思っている。全体的に高難度になってはいても芸術性が失われた演技というのはそれほどないはずだから。違うスポーツに変わってしまえば価値観が見えない中で戦うことになる今のノービス・ジュニア世代の負担も大きい。なるべくならば流れの先にある道筋の見える変革をしてほしい、こんな風にしたらあんな風にしたらとあれこれ思い浮かべながら願っている。



 

 

 

突き抜けられない男―――マキシム・コフトゥン

今シーズンの演技を見ながらよく考えていたことがある。コフトゥンの強みって何だろう?ということ。スピンはお世辞にもうまい選手だとは言えない。スケーティングも悪くはないが特別に良いとは言えない。やはりどちらかと言えばジャンプの選手だ。
しかし今は4回転2種はそれ程の武器にはならない。SPですらだ。そしてFは重度のエラーのため飛ばない。3Lzと3Loは不格好になりがちとジャンプで稼ぐには弱点も多いと言う現状がある。そうなるとジャンプが強みの選手と言うには弱い印象になる。
強みよりも弱点が目立ってしまうというのは採点競技ではなかなか厳しい状態だ。演技に心情が反映しやすい選手だけになおさら心配になる。シニアに上がった頃のような突き抜けたら凄い選手になりそう感を取り戻して欲しいと願っているが本人の不運も有りその道筋が見えてこないところが悩ましいシーズンだった。
 
フィンランディアT   総合3位 229.57 SP1位 88.26 FS4位 141.31
Sアメリカ   総合7位 230.75 SP10位 67.43 FS6位 163.32
中 国 杯   総合7位 221.43 SP10位 70.10 FS7位 151.33
欧州選手権   総合2位 266.80 SP2位  94.53 FS2位 172.27
世界選手権   総合11位 245.84 SP10位 89.38 FS14位 156.46 
国別対抗戦           212.91 SP11位  64.62 FS10位 148.29
平均       総合   234.550 SP平均 79.053 FS平均  155.497
 
国別を入れなくてもいい気がするけどブラウンとかコリャーダとかPB出しているんで一応含めておく。国別を入れないと総合で平均が3点ちょっと上がり240行かないくらいの得点となる。数字としては中堅レベルだ。ここ数年変わってないなぁという印象の得点になってしまう。
構成や演技の質、ミスの出方も割と似ているので仕方ないのかもしれない。ロシアンは欧州選手権で良い得点が出ないと世界選手権に出られないのが大変だと感じる。その為ここがシーズン一番になってしまうのかもしれない。

<ジャンプ>
SP  4S+3T 4T // 3A =34.45
         
        基礎点    GOE   減点    合計
フィンランディアT  34.45  -0.56  0   33.89  
Sアメリカ  14.80   1.57  0   16.37
中 国 杯  20.25  -0.28  0   19.97
欧州選手権  34.45   2.53  0   36.98
世界選手権  34.45  -1.42 -1   32.03
国別対抗戦  15.23  -4.14  0   11.09
平均    25.605 -0.383 -0.167  25.055  
 
国別を入れないと平均28点弱。コフトゥンは転倒は少ない選手だったりする。しかし今のルールでは抜けの方が遙かにダメージは大きい、特にSPでは。その為ノーカンによる0点が数字を非常に悪くしている。
ジャンプの質そのものもあまり変わらないところが無いとも改善の見込みを感じなくて残念だ。
 
 
FS 
        
        基礎点    GOE  減点    合計
フィンランディアT  48.62  1.46  0   50.08
Sアメリカ  70.68  1.90 -1   71.58
中 国 杯  57.92  2.36  0   60.28  
欧州選手権  63.27  6.31  0   69.58
世界選手権  57.48  3.67  0   61.15
国別対抗戦  63.27 -2.89 -1   59.38
平均    60.207 2.135 -0.333 62.009
 
コフトゥンは典型的なロシアンジャンパーだと思う。ただヤグディンプルシェンコに比べると身長が高い。ただ高いだけでは無く重心も高くなっていてその為にジャンプの安定には小柄な選手よりは困難な要因になっている。
ただそれ以上に問題なのがジャンプ前の動作だと思う。離氷前に前傾になるのはどの選手も同じだがコフトゥンで気になるのは飛ぶ直前まで下を向いていることだ。苦手なジャンプや高難度が特にそうなる傾向にある。ただでさえ上背があるコフトゥンが下を向いてジャンプするわけでそれだけでエネルギーを無駄にしているし力の方向を不安定にさせていると感じる。ジャンプは基本後ろ向きに飛ぶ、一方高跳び型ジャンパーであるので力方向は上に向かわなければいけない。後ろにはねる力が強くなりすぎれば抜けてしまうし上に綺麗にエネルギーが働かないと回転が緩んでそのまま下に落ちてしまう。そういったジャンプの失敗をどれだけ見てきたか・・・
だから足下を見るのでは無く他の選手のように斜め前方くらいに顔を向けられたら姿勢も良くなるし無駄も改善する分少しは変わりそうな気がするのだけど・・・コーチとかは指摘しないのだろうか?

<スピン>
SP
        基礎点   GOE     合計
フィンランディアT   9.7  1.25  10.95  ALLレベル4
Sアメリカ   9.7  0.57  10.27  ALLレベル4
中 国 杯   7.4  0.93   8.33  レベル3 2回 レベル2 1回
欧州選手権   9.7  1.29  10.99  ALLレベル4
世界選手権   9.7  1.71  11.41  ALLレベル4
国別対抗戦   9.3  1.07  10.37  レベル4 2回 レベル3 1回
平均     9.25 1.137 10.387
 
中国杯を除いてはほぼほぼレベルは取れていると言える。あまりGOEを稼げるタイプでは無いのでとにかくレベルを確保するしかない。SPについてはまずまずできているのかもしれない。
 
FS
        基礎点   GOE   合計
フィンランディアT   8.9  0.75   9.65  レベル4 1回  レベル3 2回
Sアメリカ   9.7  0.86  10.56  ALLレベル4
中 国 杯   8.9  1.22  10.12  レベル4 1回  レベル3 2回
欧州選手権   9.7  1.43  11.13  ALLレベル4
世界選手権   9.3  0.78  10.08  レベル4 2回  レベル3 1回
国別対抗戦   6.7  0.64   7.34  レベル4 2回  ノーカン  1回
平均    8.867 0.947  9.814
 
エレメンツが多い分FSでは取りこぼしが増える傾向にある。というよりコフトゥンは割とメンタルで演技が変わるタイプなのでミスが重なってくるとエレメントの質を確保する意識が下がる。レベルの獲得と点数の高さがはっきり連動していることが感じられる結果だ。
 
<ステップ>
SP
        基礎点   GOE   合計
フィンランディアT   3.9  0.93  4.83  レベル4 
Sアメリカ   3.3  0.50  3.80  レベル3
中 国 杯   3.3  0.57  3.87  レベル3
欧州選手権   3.9  1.10  5.00  レベル4
世界選手権   3.3  0.71  4.01  レベル3
国別対抗戦   3.9  0.80  4.70  レベル4
平均      3.6 0.768 4.368
 
レベルはまずまずSPでは取れている。小芝居は上手いし表情も出せるが滑りで魅せられるかというとちょっと微妙。そんな印象のGOEなのかもしれない。
 
FS
        基礎点   GOE   合計
フィンランディアT   4.6  0.56  5.16  レベル2
Sアメリカ   4.6  0.66  5.26  レベル2 
中 国 杯   5.3  0.63  5.93  レベル3
欧州選手権   5.3  1.76  7.06  レベル3
世界選手権   5.3  1.07  6.37  レベル3
国別対抗戦   5.3  0.63  5.93  レベル3
平均    5.067 0.885 5.952
 
FSになると体力がかなり厳しくスピードも落ちやすい。エッジも甘くなりがちでレベルを落とす印象。特に後半のエレメンツはこなしている感がはっきり出るのでGOEがあまりつかない。スピンが上手いと言えない分本来ならここで稼ぎたいところなのだが・・・できていないことが感じ取れる結果となっている。
 
<TES計>
SP  
        基礎点   GOE  減点    合計
フィンランディアT  48.05  1.62  0   49.67  
Sアメリカ  27.80  2.64  0   30.44
中 国 杯  30.95  1.78  0   32.73
欧州選手権  48.05  4.92  0   52.97
世界選手権  47.45  1.00 -1   47.45
国別対抗戦  28.43 -2.27  0   26.16
平均    38.455 1.615 -0.167 39.903
 
ジャンプミスを埋められる要素がないことがダイレクトに見られる結果に。転倒が少ない分GOEがマイナスになることは少ないが抜けやノーカンが埋まられるわけでは無い。強みを強みとして生かせていない辺りが基礎点から10点ほど下がってしまう結果となっている。

FS
        基礎点    GOE  減点    合計
フィンランディアT  62.12  2.77  0   64.89
Sアメリカ  84.98  3.42 -1   87.40  
中 国 杯  72.12  4.21  0   76.33
欧州選手権  78.27  9.50  0   87.77
世界選手権  72.08  5.52  0   77.60
国別対抗戦  75.27 -1.62 -1   72.65
平均    74.140 3.967 -0.333 77.774 
 
結果的にそこそこにいつも落ち着いてしまうコフトゥンの点数。ミスが出る場所が色々あるところがもどかしいシーズンを繰り返す結果なのかもしれない。ここだけは高得点を確実に稼げる、というジャンプが必要と同時に、苦手なエレメンツも最低限の点数を確保できるようにしないとほどほどから脱却できないのかもしれない。

<PCS>
SP
       SS  TR  PE  CC  IN  合計
フィンランディアT  7.88  7.38  7.83  7.71  7.79  38.59
Sアメリカ  7.57  7.07  7.21  7.64  7.50  36.99
中 国 杯  7.61  7.43  7.25  7.54  7.54  37.37
欧州選手権  8.39  8.11  8.46  8.39  8.21  41.56
世界選手権  8.54  8.18  8.36  8.39  8.46  41.93
国別対抗戦  8.00  7.64  7.36  7.75  7.71  38.46
平均      7.998  7.635   7.745   7.903   7.868   39.150
 
2シーズン前と平均はあまり変わらないが全体的に下がり気味だなと感じる。まだSPは短いのでこの位で治まっていると言うべきかも。コフトゥンの5項目はPEこそジャンプの出来で上下するが他は横並びの印象。それはある意味強みというか評価するべき処が取り立てて無いということ表していると言うことなのかも。
 
FS
       SS  TR  PE  CC  IN  合計
フィンランディアT  7.79  7.29  7.63  7.75  7.75  76.42
Sアメリカ  7.82  7.14  7.71  7.61  7.68  75.92
中 国 杯  7.75  7.21  7.57  7.54  7.43  75.00 
欧州選手権  8.61  8.21  8.54  8.39  8.50  84.50
世界選手権  8.07  7.64  7.86  7.93  7.93  78.86
国別対抗戦  7.93  7.21  7.39  7.61  7.68  75.64
平均      7.995  7.45  7.783   7.805   7.828   77.723
 
FSは2シーズン前より確実に落ちてきている。欧州選手権のようなジャンプを纏めた演技で無ければ8点台が出ないというのは若手が伸びてきた今の実情では厳しい。ロシアもジュニアにスケーティングの良い選手が出てきているのでこのまま下降し続けると五輪出場を逃してしまいそうな印象だ。
せめて多少ミスが出てもそれを忘れさせるような勢いのある演技を見せる強さが有れば違うのにと思わないでいられない。
 
<来季に向けて>
4Lzを練習中という情報が入っている。ネイサンを見て技術の向上に目覚めたというのは喜ばしいが・・・3Lzも安定していないが大丈夫かと思わずにいられない。
せっかく大きな上背があるのだからそれを有意義に見せることに注視しても良いかもとは思っている。ただジャンプで大きくミスると目に見えてやる気が失われるというのはシニアになってそこそこ時間の経った選手には喜ばしい態度では無い。
どうしてもコミカル系のプログラムが多いがもう中堅の実績がある選手なので正統派の硬質なプログラムで印象を変えるのも良いのではと思っている。型にきちっとはまった動きの必要なプロなら姿勢を生かす振付になるのかもしれない。出来ればどちらかはロシアン以外の振付にして欲しいのでが、それは難しいかな。
ただ現状背後にの火がついた状態なので奮起してプログラムを完遂する意識が無ければ五輪どころか欧州選手権にも出場できなくなるかもしれない。何とか意識と技術が改革されることを願っている。

ぜいたくな悩み、その他ワールド雑感

午前中は用事で出かけていたのだが帰宅したらBSで2017年ワールド男子FSが放映されていたので見た。(録画はできないけど見ることはできるのだ)録画に失敗してあのフジカウンターで羽生の点数が上がっていくところが見れなくてがっかりしていたので再放送は非常にありがたかった。

しかし・・・第3グループの途中から見たのだがだんだん私の中の期待感が消滅していく。というか・・・

 

カウンターすげぇ邪魔!

 

と身もふたもない感想になってしまった。

 

公式のTESカウンターがつき始めてもう数年、それを見て一度も感じたことのない思いがフジ高性能カウンターにわいてきたのはひとえに情報量が多すぎる、ということに尽きる。お茶の間の漠然としかフィギュアをご存じない一般視聴者にはありがたいのだろうが基礎点がほぼ頭に入っているファンにはエレメント名も基礎点とGOEをわざわざ分けて表す必要も感じない。むしろカウンターのでかさが無駄なスペースを奪われているみたいだし、認識する文字が多すぎて演技から目がそれていることに気が付いて自分が嫌になってくる。途中から結局カウンターを見ないようにして、このナビと解説なら海外動画で十分だったなと思ってしまった。

もっともこの感想を抱いてしまったのはリアルタイム観戦ではないということが大きかっただろう。そしてカウンターはつけないで欲しいとは絶対に思わない。なければ欲しいと思うしあればあったでわがままな気持ちがわいてくるというものだろう。人間なんて贅沢なものだとつくづく思う。

 

今回のワールドで非常にうれしかったのはイスラエル2枠だ。結果を見て思わず万歳してしまったくらいだった。1枠だとサモヒンとビチェンコが争いサモヒンが代表になったらビチェンコが引退してしまうかもと危惧していたので二人が五輪で見れることがほぼ確定した2枠が非常にうれしかった。演技としてはミスも多かったがそれでもコンボを無駄にしなかったこととREPを食らわない対処をきちんとしたということがこの結果を生み出した。そういえば昨季ユーロで2位になったときも1Tをつけたことが大きくて、今回も結果的にそれが2枠につながった。点数にならないコンボを付ける意味があるのかとも思うが、それ以上点数を失わないため後に負担をかけないために対処しておくというのが大局では意味があるのだなと感じる。

今回のワールドでも案外コンボを無駄にしている選手が多かった。例えば田中とかコリャーダとか、後半リカバリできそうな場合でもしないケースがいくつも見られた。順位にはかかわらなかったかもしれないが今の点数が積み上げられて得点となるルールにおいては無駄にするということはそれだけで勝機を失うということ。ネイサンが2転倒してもきっちりコンボ分の基礎点を得ようとした姿勢がいま世界で戦うためには必要なのだと改めて今日振り返り映像を見て感じた。

構成が横並びの女子に比べて男子選手は基礎点に固執する姿勢が見れない場合が多い。REPやザヤも男子選手の方が多く発生している現状がある。実行さえすれば基礎点は確実に得られる点数なのでも予定構成だけは確保するという姿勢がもう少し見られるとより面白い試合になる気がする。

来季はいよいよ五輪シーズン、勝利にはより完成度が求められるシーズンだ。自分の決めた構成を完遂してより際どいしのぎを削る試合が見られることを期待する。