つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

雑記

静岡という土地はフィギュアスケートの不毛の地だと個人的には思っている。そもそもスケートリンクがないからスケートするのはほぼ他県に行かなければいけない。テレビ放映では放送のない一部地域に入ってしまうことも多い。

フィギュアスケートの雑誌も大学で他県に住んで初めて存在を知ったし、地元に戻ってもそれを買えるのは静岡中心地のかなり大きな書店までいかなければならなかった。郊外のチェーン店でちらちら見かけるようになったのはソチ五輪の少し前の頃になってようやくだったと記憶している。

私自身はかなり田舎の地域に住んでいるので近所に本屋はない。そのため立ち寄るのは勤務先の近くのツ〇ヤになる。ソチ直後の羽生表紙の雑誌の乱立の頃、ここでもほぼすべてのフィギュア雑誌が結構な冊数置かれていた。しかしそれから時間がたち平昌五輪開幕前には入っても各1冊、WFSに至っては全く置かれない状況になった。雑誌以外のフィギュア関連の本もここ1~2年はほとんど並ぶことはなかった。

それでも「羽生結弦は助走をしない」という本が販売されると聞いたとき、五輪直前だしこの位は入るかなと楽観して予約しなかった。どんな本かチラ見して良かったら買おうと思っていたのだが1週間たっても入らず仕方なくネットで取り寄せることになった。その少し前あたりにいくつかフィギュア関連本が出たがそれらも結局1冊も目にすることがなかった。

しかし平昌五輪が終了し大量の羽生表紙雑誌が発売されると状況が一気に変わった。本屋の中央にそう言った雑誌がまとめて飾られその下にここ最近に発売された関連本が一斉に並んだ。更に羽生の新刊「夢を生きる」が出ると3列に積み置きになった。蒼い炎が1も2も並んでいるのもこの店で初めて目にした。一番多い時でトータルで80冊ほど並んでいる様は地方の本屋としては異様な光景だ。流石にこんなにたくさんは売れんだろう・・・と逆に心配になってしまうほどだった。

ところが、である。毎日昼休みに本屋に行くのだが見るたびに減っていくのだ。新しいものが出るので雑誌の棚はそれなりに埋まっている(ただし密度は下がっている)が平置きの本はどんどん少なくなっていく。蒼い炎は両方とも目にした翌日にはもうなく、発売日に15冊ほど置かれた「夢を生きる」は一度なくなり2日ほどして再び10冊ほど入荷していた。最もすべてのフィギュア関連の本や雑誌が売れているわけではない。ほとんど当初のまま動かずに残っている雑誌・本もあることはある。やはり売れ筋は羽生結弦関連だろう。雑誌も評判の高いものから出ている印象だ。

私自身、今シーズンは久々に雑誌も本も買っている。3年ぶりに購入数が2桁をすでに超えた。まだ届いていないものもあるしワールドもあるからトータル15冊程度になるかもしれない。

この人気がいつまで続くかわからない。ブームというものは激しければそれだけ冷めるのも早いものだ。スケート文化が根付いていない分この辺りはそういう傾向が強いだろう。変わりゆくフィギュア雑誌の棚を眺めながら今回はどのくらい続くかなと若干冷めた目で見ている自分もいる。

それでもスーパーやドラッグストアなどで羽生を目にする機会がある。今回はまだ目にしていないがまたキシリガムで羽生ボトルが出ているという。おそらく羽生人気というのはもうフィギュアスケートという枠を外れているのだろうと推察される。これほど色々目にするのだから経済効果が大きいのだろう。

金メダルを再び手にするために色々捨ててきたという。精一杯の努力を重ねて目標に向かってきた羽生の姿勢に共感する人感銘を受ける人が多いということも人気の一因になっているのだろう。ヤフオクではチャリティーに出品された羽生のスケート靴に物凄い高値がついているという。国民栄誉賞の話題など色々な意味で別格な存在になったと感じる。

五輪金メダルを再び手にして「幸せだ」と口にした羽生。世界的に広まった人気や今後与えられるだろう名誉などが重荷になるのではなく幸せの上積みになることを祈りたい。ソチ以降の4年間強い王者という存在であり続けるためにひたすら走り続けてきた。その為に負った負荷を十分に癒しその上で新たな目標に向かってこれまで以上に自由に進んでいって欲しいと願っている。

ちなみにではあるが今回の五輪で見た羽生の写真で一番好きなのは国旗をまといスホランのしっぽを持って上を向いて笑っている写真。一部の雑誌の表紙にもなっているあれがとても印象に残っている。初めて見た時女子サッカーがワールドカップに勝利した際の国旗をまとった澤選手の後ろ姿の写真を思い出した。どちらも精いっぱいの力を出し切り勝利したときの写真、とてもいい写真だ。こういう素敵な写真を見ることもスポーツの楽しみの一つだと個人的には思っている。

平昌五輪2018年 FSデータ

ジュニアワールドが始まっています。kamiyannはやはりコストルナヤが好きですね。来季はシニアに上がるのかな?女子のロシア1強はまだまだ続きそうな気配。いよいよ女子も4回転時代に入るのか?日本勢も是非道を拓くために頑張って欲しいです。

ジュニアが終われば次はワールドですが世界チャンプが一人も出場しないことが確定しました。誰が勝っても初タイトル、新時代の開幕となるか。その前に五輪の集計を。

 

<FS順位>
             TES  PCS  減点   合計
  1位 N・チェン    127.64  87.44      215.08
  2位 羽生 結弦    109.55  96.62      214.45
  3位 宇野 昌磨    111.01  92.72   -1  202.73
  4位 フェルナンデス  101.52  96.14      197.66
  5位 ボーヤン・ジン  109.69  85.76   -1  194.45
  6位 V・ゾー     112.24  79.92      192.16
  7位 コリャダー     91.62   87.94   -2  177.56
  8位 P・チャン     81.56   91.86      173.42
  9位 ビチェンコ     89.08   83.80      172.88
10位 リッポン      84.47   86.94      171.41
    
    
SPと同じく200点超えが3人も出た。来季以降ジャンプが減り基礎点も下がると言う事でネイサンの得点がオリンピックレコードとして長く残りそうだ。SPの出来があまりにも酷くほぼ表彰台が無理という状況になったからこそ出来た演技ではあるが今後に期待させるFSが出来たことは良かっただろう。
怪我が直りきってなく練習も万全で無かった羽生にとっては転倒なくジャンプを回りきっただけで十分だったのだろう。現実路線でFS1位まで望まず挑んだことは良かったといえる結果だ。
個人的には平昌FSは第2グループのビチェンコ→サモヒン→ネイサンの流れが非常に良かった。スピンもステップもあまり点の取れないビチェンコが10位以内に入っているという事が素晴らしい。ここのところ深みにはまっていた感じのサモヒンが自国の先輩の良い演技に触発されたような演技を見せた。この経験が今後に生かされてくるのではと非常に楽しみになっている。
SPと違ってFSは4回転無しに上位に来ることが難しい。入賞以上を目指すためにはやはり4回転は必須な時代であることがよくわかる。



<ジャンプ得点上位10人>
            基礎点  GOE   計   減点
  1位 N・チェン   99.01    7.67    106.68
  2位 V・ゾー    95.59   -1.11   94.48
  3位 ボーヤン・ジン 88.10    3.68   91.78  -1(実質90.78)
  4位 宇野 昌磨   88.14    2.37   90.51  -1(実質89.51)
  5位 羽生 結弦   77.26  10.49   87.75
  6位 フェルナンデス 69.11  10.66  79.77  
  7位 ビチェンコ      65.86    7.68  73.54
  8位 サモヒン    67.04    3.74  70.78
  9位 コリャダー   73.86   -3.70  70.16  -2(実質68.16)
 10位 アリエフ    69.59  -2.67  66.92  -2(実質64.92)
11位 J・チャ    65.39    1.52  66.91  -1(実質65.91)

 

ジャンプ獲得点としては歴代最高だろう。2017年ワールドの羽生を2点上回っている。ただミス有りでの点数のためにGOEはそれ程多いとはいえない。SOが無くてもGOEが10点ほどなので質としてはそこまで良いジャンプでは無いといえる。次の五輪でメダルを取るためにはこの高構成を質良く飛べるようになることが課題であると言える。
この一覧を見て目立つのは5位6位の羽生・フェルナンデス。ジャンプの多いFSでもGOE10点超えはなかなか出ない。(過去羽生・チャン・フェルナンデス・ボーヤン位かな?)マイナス2つ有る羽生の質の良さが際立っていることがわかる。それでも二人がこの順位に甘んじたのは基礎点を失っているから。羽生はセカンド2TとRPEで5点ほど、フェルナンデスは2S抜けで10点ほどマイナスになっている。基礎点に元々差がある以上更なる損失は痛いと言う事。若手のPCSが上がりやすい現状はフェルナンデスやチャンのようなベテランにはきつい時代だ。
一方でそこまで構成が高くなく更に質もそれ程のビチェンコが7位に入っていると言う点も面白い。基礎点や質の良さの次に来るのは確実性の高さと言う事か。基礎点の下がる来季以降はそういう部分の武器にベテランは戦っていくことになるのかもしれない。(ただしビチェンコにはちょっと辛いか?)

 

<スピン得点上位10人>
            基礎点 GOE  合計
  1位 リッポン    10.20  3.50   13.70  
  2位 メッシング   10.00  3.28   13.28
  3位 羽生結弦       10.00  3.07   13.07
  4位 宇野昌磨      9.70  2.93   12.63
  5位 P・チャン     9.30  3.28   12.58
  6位 N・チェン   10.20  2.36   12.56
  6位 コリャダー     9.70  2.86   12.56
  6位 ヘンドリクス    9.70  2.86   12.56
  9位 ヴァシリエフス   9.80  2.57   12.37
10位 フェルナンデス   9.10  2.85   11.95

ALLレベル4は9人かな?レベル認定はちょっと厳しめ、ただしGOEは(ボーヤン以外)出ている方では無いかと。3Lzをミスった羽生は直後のシットで良く4を取ったなと、入りが遅れた分通常より早く回って曲調と合わない部分が出たので若干GOEが低めに。元々シットはGOEがつきにくいエレメンツだが変える気は無いでしょうからスピンについてはレベルとGOE平均1.0以上有れば良いのかな?ただSPの時も感じましたが羽生比であまり良いスピンでは無かったのは足が回復してなかったからでしょう。ラストであそこまでぶれるのは久しぶりに見た気がします。
フェルナンデスが3位になったのは4S抜けが大きいですが地味にこのスピンレベル落としも合ったかと。GOEがついたスピンでレベルを落としたというのは演技の質という点で上回っていただけにもったいなかった。ただ元々それ程上手くなかったスピンでここまでGOEが付くようになったというのは感慨深いものがあります。
スピンの11位はボーヤン(11.41ALLレベル4)。基礎点もあまり変わらない同じ1点転倒の宇野と差がつく原因がPCS以外ではこの辺りかと。レベル認定には問題が無いが大きくGOEを付けられるかと言えば難しい。スピンについては淡々と回っている感が強い。上手さではネイサンと同レベルかなと思うのでがスピン中に回転速度を上げる、もしくは一つ一つのポジションの飾り付けなどの工夫が欲しい。
ちなみに最下位は貫禄のビチェンコさん。ただむしろレベル気にして取っていた時より演技が生き生きしている気がするので彼にとってはこれもありな戦術かもと言う気はします。ただ来季以降はジャンプが減る分スピンステップに力を入れないと点数・順位的に厳しくなってきそう。



<ステップ得点上位10人>
              基礎点  GOE   合計
  1位 フェルナンデス  5.90   3.90   9.80
  2位 コリャダー    5.90   3.00   8.90
  3位 羽生結弦     5.30   3.43   8.73
  4位 リッポン     5.90   2.70   8.60
  5位 ヘンドリクス   5.90   2.60   8.50
  6位 N・チェン    5.90   2.50   8.40
  6位 ヴァシリエフス  5.90   2.50   8.40
  6位 M・ジー     5.30   3.10   8.40
  9位 サモヒン     5.90   2.20   8.10   
10位 P・チャン    5.90   2.10   8.00
10位 アリエフ     5.90   2.10   8.00

フェルナンデスが大差で1位、流石といった感じ。レベル4は11人とまずまず取っています。
1点以上羽生はフェルナンデスと差がありますが、実のところGOEに関しては全く同じジャッジスコアだったりします。(どちらも∔2が二人残りは全員+3)ステップはレベルで係数が変わるのでGOEが同じでもこういう差がつくと言う事です。ただSEIMEIに関してはレベル4を取れた事が1度しか無いのでこれは織り込み済みでしょう。怪我のため練習も制限されていたことを思えばこれだけ取れればOKかと。
今回唯一のコレオ満点はミーシャ・ジー。自分の強みを存分に見せて評価を受けるというのは有りな作戦かと。こういった選手に光を与えたいという側面で「技術」「芸術」という話が出ているのだろうと理解します。ただし「芸術」を評価するためには「技術」以上にシビアな基準が必要になるでしょう。それを提供できるか、何を持って芸術というのかをはっきり提示する必要がある。
本来ならこの分野でフェルナンデス・羽生と肩を並べるチャンが10位、レベルは取れたもののステップでバランスを崩してGOEがほとんど取れなかったことが大きかった。
ステップに関しては2つしか無い&基礎点GOE共にそれ程大きくないと言う点において差がそれ程つかないエレメンツになっている。GOE幅が拡大するに当たってステップの基礎点や評価のポイントを大きく見直して欲しいと感じるエレメンツではある。基礎点狙いでとりあえずジャンプという若手の風潮を自制する位基礎点を上げてみても良いのでは?と思います。時間が減ることで今より短い省エネコレオが増えることが無いようなルール作りをお願いしたい。


<TES上位10人>
             ジャンプ   スピン   ステップ   計     減点 
  1位 N・チェン     106.68  12.56  8.40 127.64   
  2位 V・ゾー     94.48  11.06  6.70 110.59
  3位 宇野昌磨     90.51  12.63  7.87 111.01 -1(実質110.01)
  4位 ボーヤン・ジン  91.78  11.41  6.50 109.69 -1(実質108.69)
  5位 羽生結弦     87.75  13.07  8.73 109.55
  6位 フェルナンデス  79.77  11.95  9.80 101.52 
  7位 コリャダー    70.16  12.56  8.90  91.62 -2(実質 89.62)
  8位 ビチャンコ      73.54     8.83  6.71  89.08
  9位 サモヒン     70.78  10.15  8.10  89.03 
10位 田中刑事     66.75  11.09  7.80  85.64 -2(実質 83.64)
11位 アリエフ     66.92  10.47  8.00  85.39 -2(実質 83.39) 
12位 J・チャ     66.91  10.33  7.70  84.94 -1(実質 83.94)
13位 メッシング    64.40  13.28  7.20  84.88 
14位 リッポン     62.17  13.70  8.60  84.47


この順位の並びをジャッジがどう判断するのか今後を注意深く見ていきたい。それ程高難度では無くても質良く実行し上位に来る羽生・フェルナンデス系を求めるのかそれともエレメンツの質は良くなくてもヴィンセントのようにとりあえず実行してマイナスだらけでも上位に来てかまわないと思うのか・・・とりあえず平昌五輪はその過渡期のさなかと言う事がよくわかる。
それは田中以下の10位の混戦でもよくわかる。高基礎点を実行して転倒するか何でもバランス良く全てのエレメンツで稼ぐかのしのぎあいとなっている。
一番はネイサンやボーヤンが羽生・フェルナンデス並みの質を持ってくれることだろうがそもそもネイサンは回転速度以外でジャンプにそれ程良いものが無いし、ボーヤンも質良く飛べるジャンプとそうで無いジャンプの差が大きい。スピンステップに関しても現状レベル取り優先できている。それが悪いとは言わないが現状若手のエレメンツが「こなしている」と見えるところは改善していく必要はあるかと思う。
魅せることに評価をおいてきた女子で今基礎点に向かう流れが出来ている。その辺りのバランスも考えて今後の展望を考察する必要がありそうだ。


<GOE獲得上位10人>
             ジャンプ  スピン  ステップ   計
  1位 フェルナンデス  10.66  2.85  3.90  17.41  
  2位 羽生結弦        10.49  3.07  3.43  16.99
  3位 N・チェン      7.67  2.36  2.50  12.53
  4位 メッシング      6.17  3.28  2.60  12.05
  5位 ビチャンコ      7.68  0.93  1.41  10.02
  6位 ヘンドリクス     4.37  2.86  2.60    9.83
  7位 P・チャン      3.69  3.28  2.10    9.07
  8位 リッポン          2.49  3.50  2.70   8.69
  9位 宇野昌磨       2.37  2.93  2.57    7.87
10位 ボーヤン・ジン    3.68  2.93  1.90    6.50

羽生がフェルナンデスを上回れないのはジャンプに2ミスがあったからと言うより同評価のステップが係数によって低くなってしまったからかもしれない。レベル4だったらジャンプのミスがあっても羽生の方が上の計算になる。今季は仕方ないが来季以降についてはこの辺りが留意が必要か。
そして驚くビチェンコさん5位!スピンもステップもGOEほとんどついてないと言って良いのに、断トツでこの中で低いのに!素晴らしい30歳、五輪の歴史に輝きます。
そしてTES2位だったヴィンセントはこのランキングでは22位(1.65)、以下アリエフ(1.00)、田中(0.03)が続きます。今回高難度化してもそこまで転倒が多くなかったので結果的にGOEがマイナスになる選手は出ませんでした。それは評価したいと思います。それを踏まえて考えるとミスの出やすいジャンプより確実に+評価を受けられるであろうスピンとステップに下位の選手はもう少し力を入れた方が良いのではと感じます。

 

 

<PCS上位10人>
           SS TR PE CC IN  計
  1位 羽生結弦    9.71 9.50 9.64 9.71 9.75 96.62
  2位 フェルナンデス 9.46 9.43 9.64 9.79 9.75 96.14
  3位 宇野昌磨    9.36 9.07 9.25 9.32 9.36 92.72
  4位 P・チャン   9.32 9.14 8.86 9.29 9.32 91.86
  5位 コリャダー   9.00 8.64 8.68 8.86 8.71 87.94
  6位 N・チェン   8.82 8.32 9.04 8.79 8.75 87.44 
  7位 リッポン    8.75 8.54 8.68 8.71 8.79 86.94
  8位 M・ジー    8.46 8.36 8.64 8.68 8.64 86.08 
  9位 ボーヤン。ジン 8.71 8.21 8.64 8.68 8.64 85.76 
10位 メッシング   8.50 8.29 8.61 8.61 8.71 85.44

 

10点満点は羽生よりフェルナンデスの方が多かった。それでもこの並びを見ると基本ジャッジはPCSでは羽生が上を言う認識があると言う事がFSでもわかる。はっきりミスとわかるものが2つ合っても抜けただけで演技に影響の無かったフェルナンデスが上回れない。
FSでも大きいのはSSの差。羽生が9.5と9.75のみ(しかも後者の方が多い)に対してフェルナンデスは基本9.5評価となっている。振付・演技部分でフェルナンデスが上回ることがあっても二人とも合っているプログラムだけに 差がつかないためSS評価の差が結果的に出たことになる。
そう理解して次を見るとわからないのが宇野とチャンの評価だ。確かにステップでミスがあったりしたが滑りの質の差は明らかにチャンの方に分があるのに宇野が上となっている。最終滑走であったことも影響しているかもしれないがリンク使いも進む方向も一定化した宇野がTR以外でチャンを上回るのは首をかしげたくなる。
一方でリッポン・ミーシャ・メッシングの評価を見るとプログラムが本人にはまっているかというのは割と大きいのだなと感じる。ボーヤンが1転倒だけで上手く纏めた演技だった割に控えめな評価と感じるのはジャッジ受けしないプログラムの影響もあったかもしれない。
一方でネイサンは早めの滑走順がかえって良かったのかもと言う気がする。直前のビチェンコ・サモヒンのイスラエル二人が良い演技をして盛り上がったところに登場して高難度を1ミスで纏めた。そこまでプログラムとしては良くないが流れとして気前よく出したい雰囲気は合っただろう。結果的にボーヤンとほとんど差がない5位に入ったことはネイサンの今後に大きな意味を持った採点となった。

 

高難度化した昨今、なかなかクリーンなノーミスは見られない。今回もそうであったがそれでも見ていて良い演技だなと思う大会だった。
個人的には第2グループのビチェンコ→サモヒン→ネイサンの流れは本当に良かった。この1年もやもやした感じだったサモヒンに同国の先輩ビチェンコが良い演技を見せることで奮起を促したように感じた。そこからの流れに乗ったネイサンが意地を見せたことであの最悪のSPを吹っ切ったことも大きかったと思う。
ネイサンはこれまで4大陸で勝ってタイトルを持っていたがそれは彼自身が会心の演技をしたからでは無く優勝候補が大きなミスをしたため拾った勝利だった。優勝候補筆頭だったジュニアワールドは怪我のため出られずヘルシンキはSPFS共ミスが出て6位となった。同じようにSPミス有りで5位だった羽生がFS会心の演技を見せて逆転優勝したことを思うとネイサンはそこまで評価できないなと個人的に思っていた。その為今回の平昌五輪で取れても銅という予想をしていたわけだ。しかし今回大舞台で1ミスとはいえTES最高点を出してFS1位になった経験は大きい。今後はワールドの金メダル候補として検討するだろう。

羽生については2014-15年シーズンの終わりに書いた文章を思い出す結果となった。事故・怪我・手術などを経てSP1位から王座陥落となったあのシーズンが終わって書いたことは羽生の底が見えたシーズンだったということ。それはとてつもなく高い底だった。今回の五輪はそれをまざまざと見せつけたと思う。外国のメディアでは7・8割の羽生に誰も勝てなかったと評したというがまさにそうだろう。高難度煽りばかりの日本メディアはもう一度表現を改めるべきだろうと感じる。
羽生とフェルナンデスが台に乗りオールラウンダーがやはり強いと高難度化の流れで魅せたことは大きい。来季以降ジャンプが一つ減り時間も短縮される。ジャンプ1つで30秒も使わないからステップなどがかなり心配になってくる。怪我する選手も多く出ている現状もある。バランスが取れた発展に結びつくような採点を健闘して欲しい。

一方でジャッジのいろいろな思惑が透けて見える採点も明らかになった大会でもある。自国びいきは多少仕方ないという気はするがライバル下げはやってはいけないだろう。今後GOEの幅が拡大するのなら明確な基準をより強固に示す必要がある。それと共に自国のライバル選手であっても良いものは良いと評価できるジャッジの度量の広さを示して欲しい。ジャッジの好みで選手の努力を否定することはあってはならない。説明を求められたら自分が何故その点数を出したのか公表するシステムもあっても良いかもしれない。

 

平昌五輪2018年 SPデータ

いつの間にかというかあっという間に3月に。まだオリンピックが終わったばかりの気がするんですが・・・

オリンピック期間から幾つか記事を書いたのですがPCの不調で保存できなかったり文字化けして訳が分からなくなってしまったり・・・何度も続いて嫌になってしまいました。まだしばらくはこのPCを使わなくてはいけないため当面だましだましの更新になりそうです。コメント等頂きながらなかなかお返事できずに申し訳ありません。

 

 

五輪には魔物がいる、と昔から言われてきた。
優勝候補と呼ばれる選手が思いもしないミスを犯してしまうということも何度も見てきた。ただ男子シングルに限れば4回転という元々ミスの多いエレメンツがあることからそれが五輪特有のそういった雰囲気によって引き起こされるかはわからない部分がある。
それでもソチの時のようにいきなりプルシェンコが棄権してしまったり、ミスの多い演技がぼろぼろ続いていくと言う流れは今回はあまりなかった。魔物にやられた、と言える選手はせいぜいSPのネイサンとテン位だろう。そういう意味では見ている人には面白い五輪男子シングルだったのでは無いだろうか?
ただ一方でメダル有力選手が過去にないほど多く存在した大会であったために国を背負った各国ジャッジの思惑が透けて見える採点の大会でもあったと思う。あとからあまりぐちぐち言いたくは無いが、上位各選手細かく見ていくと色々勘繰りしたくなる数字が並んでいる。
ただ各国ジャッジが自国の選手上げで何とか点数と順位を調整しようとしても羽生の連覇を否定することは出来ない。女子シングル・ペア・アイスダンスと僅差の勝負が続いたが男子シングルだけは10点以上の大差となった。羽生結弦が際立った技術と表現力の持ち主であることは、多少のごり押し程度では覆しようのない事実であると言う事だろう。五輪の金メダリストはそういう強さを持ち合わさなければいけないということが分かった大会でもあった。

 

 


<ジャンプ獲得点数上位>
           基礎点  GOE     計    減点
  1位 羽生結弦    35.91  8.28  44.19
  2位 ボーヤン・ジン 37.55  5.14  42.69
  3位 フェルナンデス 34.45  7.14  41.59
  4位 アリエフ    37.55  3.86  41.41
  5位 宇野昌磨    37.71  3.28     40.99
  6位 V・ゾー    38.25   -4.89   33.36
  7位 ビチェンコ   30.13  0.87   31.00
  8位 ケリー     29.95  0.90   30.85
  9位 メッシング   29.70    -0.07  29.63  -1(28.63)
10位 サモヒン    31.59    -2.72  28.87  -1(26.87)     
11位 ブレジナ    26.13   2.43  28.56
12位 ヘンドリクス  25.44   2.80  28.24
13位 J・チャ    24.70   3.50  28.20  

3つしかジャンプが無いSPの場合、ジャンプミスはかなりの痛手となる。ただ近年SPでも2クワドが普通になってきている。その場合基礎点の高さである程度であればフォローできてしまう。それは3つともマイナスがついているのに6位に入ったヴィンセントを見てもわかる。同じように3つとも失敗したネイサンはコンボ分の基礎点が無いためこの中に入ってこられない。基礎点を大きく損なうと高難度も意味が無い。
ビチェンコ以下は4回転入りのミス有り選手と4回転の無いノーミス選手のせめぎ合いとなっている。4回転の無い選手は勿論GOEが付いているが係数の関係でそれ程大きくは伸ばせない。ジャンプだけで30点はかなりハードルが高い事がわかる。
上位は4Lz入りのボーヤン・アリエフVS4T4Sの羽生・フェルナンデスの戦いが面白い。質という点では羽生とフェルナンデスに軍配が上がるためSPではまだ十分戦えることがわかる。ただアリエフは4回転の単独にしっかりステップを入れてきているので体力と確実性を伴えば将来大きく伸びる印象がある。


<スピン得点上位10人>
           基礎点 GOE  合計
  1位 リッポン     9.7  3.57  13.27  
  2位 コリャダー    9.7  3.35  13.05
  3位 羽生結弦     9.2  3.79  12.99
  4位 P・チャン    9.3  3.49  12.79
  5位 宇野 昌磨    9.7  3.07  12.77
  6位 メッシング    9.7  2.71  12.41
  6位 ヴァシリエフス  9.7  2.71  12.41
  8位 フェルナンデス  9.4  3.00  12.40
  9位 ボーヤン・ジン  9.7  2.58  12.28
10位 J・チャ     9.7  2.43  12.13

リッポン・コリャダー・羽生と妥当なメンバーが上位を占めている。羽生はラストのコンビネーションでレベルを落としたがGOEはNo.1だった。
今回ALLレベル4はほぼ半数の14人とスピンレベルを取るのはもう当たり前の時代になった。
ちなみに最下位はかつてスピンが得意だったマルティネス。急な出場で練習がしっかり出来なかったのだろう。それでもビールマンを見せて盛り上げた。五輪出場でもう一度フィギュアスケートを頑張ってくれる事を期待する。
テンは1つノーカンになってしまいブービーに。これもSP落ちの大きな原因になった。

 

<ステップ得点上位10人>
             基礎点  GOE  合計
  1位 羽生結弦      3.90  2.10  6.00
  2位 P・チャン     3.90  1.90  5.80
  2位 フェルナンデス   3.90  1.90  5.80
  4位 コリャダー     3.90  1.70  5.60
  5位 リッポン      3.90  1.60  5.50
  5位 ヴァシリエフス   3.90  1.60  5.50
  7位 ボーヤン・ジン   3.90  1.40  5.30
  7位 N・チェン     3.90  1.40  5.30
  9位 ハン・ヤン     3.90  1.20  5.10
10位 リッツォ      3.90  0.90  4.80


レベル4が10人、3が13人、2が7人という結果。そしてステップはレベルでGOE係数が変わるのでSPでレベル3が4を上回るのはほぼ出来ない。
ステップは羽生・チャン・フェルナンデスのベテランが上位。
そして相変わらず似た点数のボーヤンとネイサン。点の取り方も実際出た点数も似ているのに何故ボーヤンはネイサンほど持ち上げられないのだろう?


<TES上位10人>
             ジャンプ  スピン   ステップ  計     減点
  1位 羽生結弦    44.19  12.99     6.00  63.18
  2位 ボーヤン・ジン 42.69  12.28  5.30  60.27
  3位 フェルナンデス 41.59  12.40  5.80  59.79
  4位 宇野昌磨    40.99  12.77  4.37  58.13
  5位 アリエフ    41.41  11.48  4.09  56.98
  6位 V・ゾー    33.36  11.27  3.87  48.50
  7位 メッシング   29.63  12.41  3.46  45.50  -1(実質44.50)
  8位 ケリー     30.85  10.84  3.80  45.49
  9位 P・チャン   26.49  12.79  5.80  45.08  -1(実質44.08)
10位 リッポン    25.71  13.27  5.50  44.48
11位 ブレジナ    28.56  11.55  4.23  44.34
12位 ヘンドリクス  28.24  11.63  4.30  44.17

1位から10位レベルでTES差が約20点・・・ソチから思えばTESの伸びが恐ろしい。しかしスポーツという意味ではより高い点数を取った者が勝ちとわかりやすい上達の目安にはなる。
ソチから見て大きく伸びているのは上位5名のジャンプ点数で有り、SPではまだ4回転無しでもエレメンツの質が良ければそれなりの上位にはこれる。
この中で最も構成が高いのはヴィンセント、3ジャンプともマイナスでもこの位置に来れるというのは若手ジャンパーには魅力に感じるかもしれない。ただこの時期に回転不足が多いと言う事は今後体型がしっかりしたとき大丈夫かなと少し心配にはなる。飛び方も含めて4年で改善して欲しい。


<GOE獲得上位10人>
                 ジャンプ  スピン  ステップ   計
  1位 羽生結弦     8.28   3.79  2.10  14.17 
  2位 フェルナンデス  7.14   3.00  1.90  12.04
  3位 ボーヤン・ジン  5.14   2.58  1.40   9.12  
  4位 宇野 昌磨    3.28   3.07  1.07   7.42
  5位 J・チャ     3.50   2.43  0.86   6.79
  6位 アリエフ     3.86   1.78  0.79   6.43
  7位 リッポン     1.01   3.57  1.60   6.18    
  8位 ヘンドリクス   2.80   1.93  1.00   5.73 
  9位 ブレジナ     2.43   2.35  0.93   5.71
10位 M・ジー     1.57   2.14  1.21   4.92

毎年こうしてデータを纏めていて羽生とフェルナンデス(以前はチャンも)のGOEは連動しているのかと感じる事が多い。羽生の方が滑走順が早いことが多いのでその出来と比較してフェルナンデスのGOEがついている感じだ。
今回の場合羽生がスピンレベルを一つ落とした以外全てのエレメンツの質が良かったためフェルナンデスも悪くないけどそこまで付けられないと言うような採点になった.。ジャンプもスピンも羽生の方が若干構成が高いという点もあるがメダルが欲しい各国がフェルナンデスまで高めに出してしまうと自国の選手が厳しくなると出し渋った部分もあるかと。
ボーヤンと宇野が共に見た目ノーミスで1点差ほどの点数が出た。以前は見た目ノーミスでも4~5点ほどの差がついたのにここまで近くなった原因はここにあるとわかる。宇野はステップ3で3AもこらえたものだったのでGOEが想定より低めだったが一方でボーヤンはしっかりGOEを獲得してきた。PCS差は何故かまだ大きくあるがGOEでボーヤンは迫る力を得てきたと言う事。北米から評価の低いボーヤンではあるが滑りを改善しスケーターとしても表現者としても眼に見えて成長を続けている。欠点を改善できないままだと今後PCSでもボーヤンに並ばれる可能性もあるだろう。ジャンプ構成が伸ばせるボーヤンの方が伸びしろが大きいといえる。
5位はジュンファンというちょっとびっくりに結果に。身長が伸びたため4回転他のジャンプは多少不安定ではあるがクリケットで練習しているだけあって滑りはまずまずである。もう少し魅せ方を意識的に改善できれば印象も変わるかと。
アリエフはロシアンの割に滑りは良いし単独ジャンプにステップをしっかり入れてくるという新採点で点数の出るタイプの若手だ。後はジャンプの成功率と体力の問題。雰囲気もあるし姿勢も綺麗な選手であるので上手く育てて欲しい期待大の選手だ。五輪という大舞台でSPでPBを出したという経験を今後に生かしてほしい。


<PCS上位10人>
              SS  TR   PE CC IN  計
  1位 羽生結弦     9.71 9.43 9.86 9.75 9.75 48.50    
  2位 フェルナンデス  9.36 9.36 9.71 9.68 9.68 47.79     
  3位 宇野昌磨     9.29 9.00 9.25 9.29 9.21 46.04  
  4位 P・チャン    9.36 9.07 9.00 9.29 9.21 45.93 
  5位 コリャダー    8.96 8.54 8.64 8.82 8.89 43.85  
  6位 リッポン     8.57 8.43 8.64 8.68 8.93 43.47
  7位 ボーヤン・ジン  8.79 8.29 8.82 8.54 8.61 43.05
  8位 M・ジー     8.18 8.18 8.54 8.46 8.79 42.15   
  9位 アリエフ     8.43 8.11 8.50 8.50 8.46 42.00
10位 N・チェン    8.46 8.32 8.14 8.57 8.39 41.88

 

羽生とフェルナンデスはどちらも見た目ノーミスだとこういう点になるんだというわかりやすい採点かと。二人の最も大きな差はSSだが、9人中5人のジャッジがここで0.5の差を付けている。他の項目では同等か0.25差というものが多いためジャッジとしてはスケーティングは羽生の方が上という認識がありそう。プログラムとしてはどちらも似合ったものなので同等の良い出来の場合はジャッジの好みも関わってくる。五輪という格の高い場合だと正統派クラシックの羽生の演技は評価しやすいのかもしれない。
宇野はフランスジャッジが高く浮いている以外はほどほど9点台という認識があるようだ。数字の並びで見ると画一化されている印象がある。
ボーヤンは中国が高くスペインとカナダが格段に低いというわかりやすい採点。それを除くと8点代半ばから9点というシニア入りの頃を思えば頑張ったという数字となっている。
ネイサンは若干スペインとカナダが低くフランスが高い印象があるがジャンプ3ミスレビュー付き演技ではボーヤンの下になっても文句は言えない。何しろ二人の最大の差はPEであるから。ただネイサンはSPプログラムの評価は高いんだなという印象はある。

 

ジャッジの匿名性が廃止されて最初の五輪となった今回、男子シングルから見えたのは各国の推し選手とそれに対抗する選手へのあからさまな採点の違いだった。
しかしそれでも最も各国が危険認識していた羽生がノーミスしてしまうとあからさまに下げられないと2と3がずらっと並んだプロトコルを見て感心してしまう。最終的に常に勝ち続けるためにはジャッジにマイナスさせる要因を持ってはいけないと言うことがよくわかる。ジャブジャブに上げ採点せずとも世界最高点にならなくてもトップに立ててしまうという結果になった。
一方でその割を食った形になったのがフェルナンデスでは無いだろうか?羽生がどこかでミスってくれれば2017年ワールド並みに出てもおかしくない出来だったのに合計で108を下回ることになった。表彰台に上らせたい選手がいる国は羽生よりは下という相対評価的な採点になった印象だ。結果から見ればこのSPの採点がフェルナンデスのメダルを銀から銅に変えたのかもしれない。色にはそこまでこだわらない選手だったからまだ良かったが、こういったナショナリズム的な認識が見えることは採点競技としてはアウトだろう。ISUは早急な改善が必要だ。
第4グループまでは割と気前よく点を出し五輪採点だなぁと感じていたが羽生で通常採点になってしまった。五輪採点的に見ていた各国の解説者がてっきり世界最高点が出ると思っていたのが肩すかし食った感じになった。五輪という大舞台だからそのまま気前よく出せば良いのにと思ったかもしれないが、そうできないところが五輪のメダルだったのだろう。上位が渋めに採点されたため結果的にネイサンは4位ボーヤンにあそこまで肉薄できたのだろう。

 

ソチと平昌の得点を並べてみる SP編

平昌五輪では表彰台の3名がすべて300点を超えた。第1グループから4回転が飛び交うジャンプのレベルがソチに比べて格段に上がったためであるがどのくらい違うのだろう?とちょっと疑問に思ったのでとりあえず並べてみることにした。

 

      ソチ五輪             平昌五輪
    TES PCS  減  計    TES  PCS  減  計
1位 54.84 46.61    101.45     63.18 48.50     111.68
2位 50.34 47.18     97.52   59.79 47.79     107.58  
3位 43.87 43.11     86.98   58.13 46.04     104.17
4位 41.75 44.65     86.40   60.27 43.05     103.32
5位 47.26 38.78     86.04   56.98 42.00     98.98
6位 45.39 40.61     86.00   45.08 45.93 -1   90.01
7位 45.11 40.73     85.84   44.48 43.47     87.95
8位 44.94 40.72     85.66   43.84 43.85 -1   86.69
9位 43.49 41.57 -1   84.06   44.34 40.81     85.15
10位 45.52 38.29       83.81   45.50 40.61 -1   85.11

11位 40.98 42.50     83.48   44.17 40.57     84.74
12位 42.20 39.75     81.95   48.50 36.03     84.53
13位 42.11 39.98 -1   81.09   43.63 40.50     84.13
14位 35.79 39.79     75.58   41.75 42.15     83.90
15位 37.21 37.37 -2   72.58   43.79 39.64     83.43
16位 39.88 32.64     72.52   45.49 37.57     83.06
17位 33.98 36.78 -2   68.76   41.39 41.88 -1   82.27
18位 35.64 32.43     68.07   43.29 38.40 -1   80.69
19位 33.31 31.50     64.81   40.99 40.64 -1   80.63
20位 34.50 29.68     64.18   40.30 40.75 -1   80.05

21位 34.08 28.57     62.65   39.34 41.18 -1   79.52
22位 32.05 31.39 -1   62.44   40.88 36.68 -1   76.56
23位 34.16 27.39     61.55   39.23 36.40     75.63
24位 30.40 30.01     60.41   37.71 37.02     74.73

25位 28.91 30.85     59.76   38.37 35.21     73.58
26位 25.23 31.37     56.60   38.41 33.69     72.10
27位 28.91 28.39 -1   56.30   30.77 39.35     70.12
28位 27.47 29.57 -2   55.04   26.04 29.52     55.56
29位 21.87 26.25 -1   47.12   22.59 30.82 -1   52.41
30位                  18.68 29.90 -2   46.58   

 

ソチが29人しかいない?と首をひねったのだが、そうプルシェンコが棄権したんだった。あれから4年もたったんだと感慨深い。引退はしたがそのプルシェンコが今も変わらずショーなどで滑っているのは素敵だと感じる。日本メディアが事あるごとにコメントを求めるので今でも目にする機会が多く喜んでいたりします。

色がついているのは両大会出場している選手。マヨロフの代わりに急遽出場となったマルティネスは仕方ないにせよ、銅メダルだったテンがまさかSP落ちするとは・・・抜けは本当に怖い。何で4Tにしなかったのだろう?しかしそれ以外の選手はFSに出場した。チャンとハンヤン以外は順位はともかく点数は伸びている印象だ。

それにしても・・・わかってはいたがここまで点数が伸びているとは。70点代前半ではFSに進めないなんて思いもしなかった。それでも進出したメンバーを見ても意外だと思う人物はいないのでボーダー上にいた選手たちはほんの少しのミスと質の差で運命が分かれたのかもしれない。4回転をSPから飛ぶ選手が増えるとテンのように抜けてキックアウトになるケースも多くなる。よほど確実に飛べなければ3回転ジャンプ3つを質良く飛ぶ方が安全かもしれない。ただ上位には確実に行けないけれど・・・

それでも80点が団子なところはソチの頃から変わりがない。そして最下位の点数も。点数が伸びたといえるのは上位と60点代あたりだろう。これは新採点の攻略が現在では幅広く実行されているということなのだろう。

 

     ソチ五輪          平昌五輪

平均TES 37.97/29名   42.90/30名
平均PCS 36.15/29名   39.67/30名
平均得点  73.75/29名   82.16/30名
 
表彰台平均TES   49.68    60.37
表彰台平均得点    95.32    107.81

 

4位~10位平均TES  44.78    48.64
4位~10位平均得点  85.40    91.03

 

11位~20位平均TES 37.56    43.33
11位~20位平均得点    73.30    82.74

 

表彰台に乗るためのTESが60を超えているというのは2クワド絶対に必要ということ。ソチの表彰台レベルでは平昌では10位以内程度になってしまう。

平均を取ってみると伸びているのがTESだけではないことがわかる。PCSの上がり方も大きい。ソチの頃は割としっかり選手ごとにPCSがまだ出されていたが、最近はシニア上がりの若手でも簡単に40以上出るようになった。それなりに滑れるかもしれないがジャンプだけのスカプロでも飛べさえすれば出してしまうというのはいかがなものかという印象もある。平均で40近い数字が出てしまうということはTESを稼ぐ若手有利な採点になってきているということ。つなぎや質・プログラムの魅せ方より高難度ジャンプに走りやすい傾向になっているといえる。

平昌の20位までの平均得点が全体の平均値よりも上という結果に驚く。この平均の上下5点以内に如何に選手が多く入っているかということだろう。

 

    ソチ五輪             平昌五輪
4T 6/13=46.15%   4T 9/15=60.00%
4S 0/ 5= 0.00%   4S 3/ 7=42.86%
                 4F 1/ 2=50.00%
                 4Lz 2/ 5=40.00%
計  6/18=33.33%   計 15/29=51.72%

転倒 8人/10回        転倒 11人/12回

 

4回転の種類も本数も格段に増えていることがわかる。しかし一方で成功率は上がっている。というかソチの時第4グループ最初の羽生まで4回転の成功がなかったことを思い出した。そう思うと五輪という大舞台で安定的に飛べるほど4回転は当たり前になってきているのだろう。

一方でやはり転倒は増えている。必ずしも4回転で転倒しているわけではないが17位から23位まで転倒点が並んでいるところを見ると多少確率が悪くても入れようとする傾向が現在は強いのかもしれない。ただ70~85点内に15人以上の選手がいるので失敗すれば一気にSP落圏に入る危険も。そこそこの確率ではハイリスクハイリターンな戦法ではある。

一方で3Aまでのジャンプをしっかり飛んでFS進出している選手がもちろんいまでも多くいる。どちらかといえば上位4人を除けば綺麗なプロトコルを作ったのはこちらの方が多かったかもしれない。五輪という大舞台にしっかりとした演技を母国で流したい・見せたいと思いまとめてFS進出するというのは結構大事なことだろう。今回はソチとは違っていい演技が多かったという印象があるがそれは彼らの存在も大きかっただろう。

 

ソチから大きく順位と点数を上げたのはケリー君とビチェンコさん。ケリー君は最下位から16位35.94点アップ、ビチェンコさんは22位から13位21.69点アップ。若いケリー君が4回転マスターして点を伸ばすのは理解できるけど三十路のビチェンコさんが4回転安定させてこの年でPB出すなんて想像もできなかった・・・4年間ってすごいなぁと感心してしまう。

 

 

今回は時間がないのでただ並べてみただけ。細かい内容はまた時間が取れた時に。

 

 

 

 

五輪メダルという切符を得て―――ハビエル・フェルナンデス平昌五輪銅メダルに

唯一手に入れることが出来なかった五輪メダルをついにハビエル・フェルナンデスは手に入れた。銅メダルであっても4年前手をすり抜けていったものを得たと言う事は大きかっただろう。キャリアの終わりも見えている時期に手にしたこのメダルは今後に大きく生きてくる。本当におめでとう!SPFSともにここまでまとめた演技が見られるとはシーズン前半には思いもしなかった。本当にクリケットのピーキング力は凄いと感心する。

 

それでも本当はもっと良い色が欲しかっただろう。実際もう一つ上のメダルを取ったと私も思っていた。転倒やつまりこらえ着氷が多かった宇野よりはプログラムとしては完成された出来だったからだ。

確かに宇野とはもともと9点近い基礎点の差があった。そこから2Sに抜けて更に10点以上失ったことは結果として大きかったと思う。それでも差は2点無い僅差だったのだ。

フェルナンデスの演技を見ているときこの滑走順は彼にとって一番最悪のものだったのでは無いかと感じた。そのことがメダルの色を銀から銅に変えたのでは無いかと試合が終わった後思ったのだ。

 

競技中はプロトコルは見えないのでTESカウンターの数字の変遷で何点入ったのか予想するしか無い。フェルナンデスの滑走順が羽生の次になったことが悪かったのでは?と思ったのは2つめのジャンプを飛んだときだ。


最初の2つのジャンプ、羽生は4Sと4T、フェルナンデスは4Tと4S+2Tを飛んだ。本当はフェルナンデスは2番目が4S+3Tだったが4Sがあまり良くなかったので2Tを付けたのだ。結果的に3Tは次の3Aでリカバリ出来たのでここでの基礎点の損失は無かったわけだがそれでもこの2つのジャンプの時点で私はフェルナンデスの逆転は厳しいなと思った。
羽生は結果的にコンボが1つ入らず2T分の基礎点の損をした。しかし羽生の失った2Tを入れて飛んだフェルナンデスの2つめのジャンプ時点のTESは25点代半ばを表示していた。ところが羽生は2つめの時点で26.60を出していたのだ。(プロトコルでは結果的に満点になったのでジャンプ2つで26.80点稼いでいた)つまりこの時点で羽生の失った2Tはフェルナンデスに対しては全く問題にならなかっただけでなくすでにFSでも上回っているということになる。勿論後半羽生はRPEで3点以上失っているのでこの分についてはまだわからないがSPで4点差があることはそうなると大きかったなと思ったのだ。


ではフェルナンデスのジャンプはそこまで差が出るものだったのだろうか?4Sコンボについては確かに着氷がいまいちだったからGOEが少ないのはわかる。しかし4Tは勢いもある良いジャンプだったのだ。普通のGPSやユーロだったら+3ついていたかもしれない。実際ジャッジの1/3は+3を付けている。でも残りの6人は+2が4人と+1が2人だった。これはその前に羽生のGOE満点ジャンプを見ていたことが影響しなかったのだろうか?


もしフェルナンデスの前がジャンプのつまり着氷の多かった宇野だったらあの4Tにもっと高いGOEが付いていたかもしれない。他のジャンプのGOEにも響いていたなら2位と3位が入れ替わっていたかもしれない。完成された美しいジャンプを持つ羽生を直前に見てしまったためにフェルナンデスのGOEが渋くなってしまった気がした。フェルナンデスは羽生に比べると転倒したくないためかフリーレッグが下がりがちだし後半になるとどうしても上から落ちる感じになるためそこまでの流れが出にくくなる。シーズン前半を思えばジャンプもしっかり飛び回って着氷できていたのにそこまで点数が伸びなかったのはそういう影響があったのかもしれないと出されたプロトコルを試合後に見て改めて思ったのだった。

それでもGPSやユーロで勝っても結構グダグダしていたFSがあそこまでしっかりと演じきれたことは素晴らしかったと思う。五輪という最高の舞台でそれをやり切ったことは記憶にも記録にも残る。明らかな着氷不良が2度あった羽生より転倒などがあった宇野より演技としては見ごたえのある整ったものだったと思う。

 

試合後引退を示唆するような発言をし羽生が涙したという。年齢ももう若いとはいえないし五輪メダルを目指して節制する毎日を続けるのはフェルナンデスのような性格の選手には大変だろう。一度ゆっくり休んでリフレッシュしもし続ける意思があるなら続けて欲しいし引退するならそれでもいい。五輪という大舞台のメダルを得たのだ。自分の望み通りに新たな道を選んでも問題ない。

 

昨年のワールドで300点に乗りながら表彰台を逃したとき、GPFを逃したとき、五輪の表彰台は難しいかなと思ったことがある。ジャンプ主体で若手が伸びてきて基礎点としては戦えなくなってきてノーミスしなければと精神的な負担になることもあっただろう。それでもワールド2連覇・ユーロ6連覇・五輪銅メダルは素晴らしい実績だ。最後と思い乗り込んだ五輪で念願のメダルを得たことは本当に良かった。すっきりとした体型のフェルナンデスの笑顔が表彰台に上がる姿を見れたこと、羽生の連覇とともに非常にうれしいことだった。オーサーやトレーシーが非常に喜んでいた姿も印象的だった。羽生連覇・フェルナンデス3位・ジュンファンPBとチームクリケットとしては素晴らしい五輪になっただろう。ワールドに出るかはわからないがオフにショーでその演技を見ることを楽しみにしている。

 

五輪銅メダルおめでとう!SPFSともに素敵な演技でした!!

 

全てはこの瞬間のために―――羽生結弦平昌五輪金メダル獲得に

ぶっちゃけていってしまうと私はソチ五輪が終わった次のシーズンが始まったときから平昌五輪で金メダルを取るのが羽生結弦に違いないと思っていた。本当に今回の平昌五輪が始まるまで一度もそのことを疑ったことは無かった。


一番大きな理由は結局のところ羽生結弦が最も今の現役プレーヤーの中で能力が高い選手だと思っていたからだ。
ソチ五輪の頃は明らかにスケーティングがパトリック・チャンに劣っていたがその次のシーズンには見違えるほど磨かれてきた。そして更に数年掛けて今では男子シングルで最も優れたスケーティングの持ち主になったと思っている。
更に構成を毎年上げてきていることも大きい。若手ではもっと高い基礎点のジャンプを飛ぶ選手がいるが、質と完成度を加味すれば羽生を上回れる選手はいないと確信できる。そして大舞台に強いという点、高難度構成でも何度もノーミスしてきた実績。
こういった諸々で羽生結弦を上回る選手はこの4年現れなかった。

五輪というのはフィギュアスケートにとって最高の舞台である。その舞台で与えられる金メダルは少なくともその競技の顔となるべき存在である。
結果に色々いわれたバンクーバーで示したかったのは闇雲に高難度を飛ぶことでは無く滑り・エレメンツの質・プログラムの密度全てが大事という競技の意思だったと思う。それがふさわしかったのはその当時のプルシェンコでは無くライサチェックだったということだろう。
そう考えれば今回の平昌五輪で金メダルを取るべき人物は羽生結弦以外に無い。平昌五輪が近づくにつれ私の確信はますます強まっていった。

 

確信の二つ目と言って良いのか微妙だが「ジンクス」の存在だ。
女子シングルにはあまりないのだが男子シングルに限っては五輪金メダルに関して幾つかジンクスと呼ばれるものがある。
細かいものまで上げるとかなり数があるのだがその中でも特に当てはまると言われているのが下記の3つである。

 

1.カナダ人で無いこと
2.10代でワールドのメダルを取っていること(金・銀・銅どれでも良い)
3.五輪の2シーズン以上前にワールドのメダルを取っていること(色は何でも良い)

 

今回の平昌五輪出場者30人に当ては待て考えると、1は二人のカナダ選手以外の28名、2はチャン・羽生・ボーヤン・宇野の4人、3はチャン・羽生・フェルナンデス・テン・ボーヤンの5人が該当する。
この3つの条件を全て満たすのは羽生とボーヤンの二人しかいないというわけだ。私が先の記事で表彰台候補にボーヤンを入れていたのはこういうジンクスの存在も大きかった。

カナダ人が金メダルが取れない理由については本当にわからない。ストイコ・オーサー・チャン、それ以外にも世界選手権で何度も金メダルを取っている選手がいるのになぜか五輪に相性が悪い。今回チャンが団体金を取ったことで今後変わることもあるかもしれないが平昌終了時点ではまだ継続したジンクスとなっている。

とにかく過去のデータ上よく言われるジンクスがこの3つであり全て該当する選手が二人しかいない、更にボーヤンが現時点で羽生を上回れる可能性が少ないという点で羽生が勝つ可能性がデータ上高いことがわかる。

 

更に羽生限定で五輪前に別のジンクスが二つ発生していた。


1つ目が4Loの最初の成功者という点。
実は2Loと3Loの最初の成功者である二人の選手とも五輪を連破している。そういったことからLoの初成功者は五輪を連破するというジンクスがあるのではと成功時に話題になった。今回羽生が実際連覇したことで次は5Lo成功者にこのジンクスが引き継がれたことになる。生きているうちにこれが続くのか確認できるかわからないが・・・

2つ目はヘルシンキワールドの金メダリストジンクスである。
第二次世界大戦後五輪の前にヘルシンキで世界選手権があったとき、その優勝者がその後の五輪で金メダルを取っているというもの。スコット・ハミルトンとアレクセイ・ヤクディンの二人しかいないのだが羽生が今回続いたことでこれは今後のジンクスとなっていくかもしれない。

 

五輪金のジンクスとしては直前のGPFで金の選手がとるというものもあったがプルシェンコトリノ金をその枠外でとっていたため今回出場していない羽生には当てはまらない。今回ネイサンが表彰台を外れたことで今後はあまり言われなくなるかもしれない。

 

ジンクスはジンクスでありGPF金のように違う結果を生み出すことは今後起こってくるだろう。ただ平昌開催前の状態でそのジンクスに最も当てはまっているのは羽生だった。そして今回その羽生がその通りにとったという事実はジンクス継続に大きな役割があったといえる。


3つ目は・・・きわめて個人的な出来事にあった。
昨年の10月の初め頃、二日で東京を5万歩以上歩く旅をしてきたと記事を書いた。この歩く旅は多少目的の場所はあるが基本東京の街をぶらぶら散策しているもの。こういう時よく立ち寄るのが神社仏閣である。実際この10月の時は特に多く15~16ほどの社を訪問した。
立ち寄ればもちろん参拝する。参拝すればもちろん願い事もする。色々な神社仏閣で様々なお願い事をした。そんな中2日目に立ち寄ったある神社で私はおみくじを引いた。数年前は1回の旅行で何度もおみくじを引いたのだが現在では1度だけ引くことにしている。その時はおみくじの箱に目がついた上野のある神社で引いた。
内容は「中吉」とまずまずいいものだったが頭をひねったのは「願事」の部分だった。それにはこう書かれていたのだ。
驚くことが起こりますが願いはかないます
実は引く直前にその神社で願ったことは、「羽生結弦選手が2月の平昌五輪で最高の演技をして五輪2連覇できますように」ということだった。
それに対しての返答のようなおみくじの内容で願いが叶うと書かれていたことは喜ばしいのだが気になるのはその前の「驚くことが起こる」という点だ。
おみくじを見て真っ先に思い付いたのは「もしかして羽生GPFに出られないってことじゃ・・・」ということだった。GPS開幕直前のことだったからそう思ったのだが羽生の出るロスレテコム・NHK杯のメンバーを思い浮かべて出れないということはないだろうとすぐに否定した。怪我や病気でもない限りGPFに出られない可能性はかなり低い。
「そうなるとGPF5連覇できないってことかなぁ・・・」
五輪直前のGPF金メダルの価値が高いことはジンクスとしてあることは知っていたから本当にそうならショックは大きいだろう。たとえそうであっても五輪で金を取ればその方がずっと価値が高い。だから仮にGPFで誰かに上回れても驚かないようにしよう、とその時には思ったのだ。五輪金が取れればいい、と。

そしてその後どうなったかはすでにご承知だろう。

あのニュースを聞いたとき私が願ったのは「欠場してくれ」というものだ。無理しないで怪我を直せば絶対大丈夫、と。実際おみくじのことはあのニュースを見るまで忘れていたのだ。五輪シーズンに怪我、なんて予想もするはずがなかったから。でも願いはかなうとあったのだから怪我さえ直せば大丈夫のはず、祈るような気分で欠場の報を待っていたことを覚えている。

NHK杯欠場は苦渋の選択だったのだろう。でもあれ以上の悪いことにならなかったとこは不幸中の幸いだったと今でも思っている。
あの神社には今度東京に行ったときお礼参りしなくてはいけない。羽生負傷の報に多くの人が神社仏閣に足を運んだと聞いている。きっと今頃神様たちは多くの感謝を受けていることだろう。


このように色々なことがあって、何より羽生の実力を信じていたので何が起ころうと私は羽生結弦が平昌五輪金メダルを取ることを全く疑っていなかった。
口の悪い人が羽生欠場の報道が出るたびに色々書いている文章を幾つも見たが、五輪で結果を出せば問題ないと確信していた。


そんな私が羽生が金メダルを取れないかも・・・と初めて不安に感じたのが2月16日の深夜だった。

すでに記事に書いた通りあの日私は仕事でリアルタイム観戦ができなかった。しかし結果はすぐにヤフーのトピックスに上がったので羽生が自己ベスト近い点を出しトップに立ったことはわかった。記事をいくつか目にしたが全く問題ない素晴らしい演技のようだったので帰宅後観戦することを楽しみに仕事を終わらせた。
そして帰宅後、入浴と食事をし地上波録画を最初から見た。

通常の試合で地上波録画を見るとき最近は演技しか見ないことが多い。しかし今回は五輪なのだ。雰囲気と点数の出方を見るために最初からすべて見ることにした。早送りしたのは中居君と女子アナたちが話しているところとCMと製氷部分だけ、30人すべて見終わったときあと数分で17日になるところだった。
ネットニュースでは素晴らしい演技・王者の帰還的に書かれていたが私には111点を超えたあの演技にそんなに浮かれた感想が全く抱けなかった。

羽生の演技を見た時の最初の感想は、「羽生の右足完治してないじゃん!」というものだった。公式練習で単発の4回転成功を見ているときには気づかなかったが試合の曲がかかった演技を見た時鳥肌が立つほどの違和感を感じた。あのSPの演技はリスフランを隠して出場した2016年の世界選手権SPを思い起こさせた。あの試合SPだけはまとめた演技ができたがFSはとても踏ん張れなかった。
ヘルシンキのFSを2000回以上見たのだ。羽生のいい状態のジャンプ着氷とは明らかに違うことがわかる。
完治していることを前提に金メダルは間違いないと思っていたからかなり私は動転したのだと思う。4分半持つのか?4Lzがない以上REPの危険性が発生する。もしかしたら4Lo抜いてそれが2倍になるかもしれない。まだ直っていない足首、おそらくそれほど通し練習もできていない状態でそれをクリアできるのか・・・様々な不安が猛烈に襲ってきた。
4年近くも確信していた分急に沸いたその不安はとても落ち着いていられるものではなかった。もんもんと色々な悪い予想が浮かんでしまい全く眠ることができなかった。

 

大丈夫かな?怪我が悪化しないかな?最後まで滑れるのかな?
そう思いながら2月17日10時からFSが始まった。ソチはあまりいい演技が残念ながら見られなかったが、昼開催のわりにはいい演技が数多く見られた。(この辺りの感想はまた別に)

そして1時40分過ぎに羽生登場である。
はっきり言ってしまうとこの時点で私はすでに疲れ切っていた。夜眠れなかったしそれでも五輪という大会は面白かったし・・・ついでに全選手見れるという長丁場だったから羽生が登場したときにはもうただただ頑張ってくれ、くらいのことしか考えられなかった。
出だしの4Sはまずまずいい出来、そして2番目の4Tはすごく軽やかな着氷とやはり羽生は凄いなぁと感心してみていた。心配していたのは後半の4Sと4Tのコンボとラストの3Lzだ。結局そのうちの2つをミスったが意地でも転倒しないという羽生の意志が感じられてこの子の精神力はどこまで強いのだろうと改めて実感した。
SEIMEIは2シーズン目でだがコレオステップからラストのスピンであそこまで表情を出したことは初めてだろう。勝ちたいんだ、自分が勝つのだというものすごい意志を受け止めた。これは2016年の世界選手権FSとは全く違う印象だった。

演技が終わって羽生が吠えた時、言い表せないほどのものを抱えていたんだなと実感した。その後に多少は出てくるかもしれないがそのほとんどはわからないだろう。
それは選手として五輪にかける気持ち以外のものも多かったはず。それらをすべて飲み込んで更に怪我が完治しない不安の残る状態で構成的にもかなり危険なものをREP1つと2Tマイナス、3Lzの着氷不良だけにとどめた・・・演技中は3Loに2Tつけろ!と思わず叫んでしまったがおそらく3Lzを降りれるかぎりぎりだったのだろう。それでもその2ジャンプ以外は加点が十分つくジャンプだった。つなぎも全く減らさなかった。中盤多少スピードが落ちたが最後まで集中した気迫のこもった演技だった。
言葉にするとなんと陳腐なと思うものしかない。自分が見たものはこんなものじゃなかったという気持ちが強い。しかし今はこれしか思い浮かばない。とにかく頑張った、精いっぱいやり遂げた、連覇を期待した人々に美しく強い姿を見せた。五輪という最高の舞台最高のプレッシャーを注目を浴びる場面で力を出し切ることができる、それがトップに立つ人というものなのだろう。どんな状況に陥ろうとも負けてもいいなんて姿勢は絶対に出さない。


羽生結弦選手、金メダルおめでとうございます!
あなたは現在のフィギュアスケート男子シングルにおいて最高のスケート技術と他に類を見ない表現力と不屈の闘志と精神力と五輪選手としての美しい姿勢と競技への深い愛を持った選手であると思います。
平昌五輪であなたの演技を見られて本当に幸せです。たくさんの感動とフィギュアスケートの深さを改めて感じました。
どうか怪我をしっかり直してこれからも素晴らしいフィギュアスケートを見せてください。

平昌五輪金メダル、66年ぶりの男子シングル連覇の偉業、素晴らしかったです。おめでとう、そしてありがとうございました!!

 

SP滑走順決定!

2年前のワールドが終わった時、平昌の表彰台のメンバーはこの3人だろうなと思った。もちろん順位は変動するだろう。ただメンバーはフェルナンデス・羽生・ボーヤンに違いない、なんとなくだがそう感じていた。その当時の予想順位は1位羽生・2位ボーヤン・3位フェルナンデスだった。
昨季が終わってもその順位予想は変わらなかった。ただフェルナンデスはちょっと難しくなったなとは感じた。
そして今季ここまでを見ていても、その考えは大きくは変わらない。シーズン冒頭ではもしかしたらフェルナンデスの所にコリャダ―が来るかもと思ったこともあるが、ここまで4回転の精度が低いとまず困難だろう。一方であまり内容が良いとは言えないが一応五輪まで全勝できたネイサンは可能性を持っている。多くのスポンサーを持つアメリカの選手であるということも大きい。
そんなわけで1位2位の予想は変わりないが、3位についてはフェルナンデス(50%)・ネイサン(40%)・コリャダ―(10%)くらいで考えている。

 

そんな中、SPの滑走順が出てきた。

表彰台候補としては21番 チャン・25番 羽生・26番 ネイサン・27番 コリャダー・28番 宇野・29番 フェルナンデス・30番 ボーヤンと言う順に登場する。


最終グループに入れなかったチャンもそう悪くない位置での滑走になる。そこまでそれ程の点数の出る選手がいない為チャンの得点の出方がその後の基準になるだろう。団体ではジャンプに苦戦したが金メダルをゲットできたし気持ちよく滑って是非五輪初の3A成功を見せてほしい。
羽生は最終グループ1番滑走になった。ネイサンやフェルナンデスと言った表彰台候補がいる中での出番は点数的に多少不利があるかもしれない。ただソチの時も同じ1番滑走で世界記録を出している。これまでも1番滑走でいい演技をしてきたから苦手意識はないだろう。製氷後最初の滑走者でもあるし気持ちよく滑れる良い順番ではないかと思う。
何度目かの羽生後の滑走になったネイサンは多少難しいかもしれない。ただSPであるからまだ滑りの差は動きの多さでカバーできるかもしれない。団体の時はがちがちで体が動かせていない感じであったが、1週間たったことであるし今回は良い演技を見せてくれることを期待する。
コリャダーはネイサンの後と言うことで動きの美しさを見せるにはいい順番だと思う。ただ点数的にはやはりジャンプを降りてなんぼなので4Lzの転倒は避けたいところ。
滑走順に得意不得意があるかは知らないが宇野はまずまずいい順番ではないだろうか?4回転の成功率の低いコリャダーの後でいいジャンプを飛べば点数も上がるかもしれない。ただコリャダーはこの中でも屈指の高さを誇るジャンパーなのでクリーンに決めてこられると宇野の低空ジャンプに渋くなるかもしれない。
フェルナンデスはラス前ということで点数的にも押さえられることのない良い滑走順を引いたといえる。羽生とも離れたのでオーサー的にも良かっただろう。フェルナンデスは羽生・チャンとは比較した点数が出る傾向にあるが若手とは一線を引いた採点をされているため二人が終わった段階での演技はそのままの点数が出るだろう。構成がそれほど高くないだけにできればSPで若手を上回っておきたいところだ。
そしてラスボスはボーヤン。五輪初滑りが最終滑走とはなかなかすごい運を持っている。大舞台の緊張が不安ではあるが、これまで世界選手権などでも飄々と上手くこなしてきている。大舞台に強い印象があるのでさらっとノーミスするんじゃないかと言う期待がある。PCSではどうしても渋め採点されてしまうのでジャンプ3つしっかり飛ばないと表彰台は難しい。ぜひ最高の4Lzコンボを見せてほしい。

 

その他の選手では田中はなかなかいい滑走順を引いた。過酷なスケジュールの中四大陸に出た甲斐があったと言える。なかなか上位は厳しいがぜひPBを出してほしい。

 

いよいよ明日、である。残念ながら仕事中の時間帯ではあるが各選手の最高の演技が実行されることを心から願っている。