つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

祝福された男―――ハビエル・フェルナンデス

国別対抗戦がまだ残っているが一応主要大会が終わったので、今シーズンの各選手を振り返ってみる。
まず最初は新たな世界チャンピオンになったハビエル・フェルナンデス選手だ。
振り返ってみれば出場したすべての大会で2位以上という安定した戦果を上げている。  

 

Sカナダ    総合2位 244.87 SP1位 86.36 FS2位 158.51
ロステレコム  総合1位 265.01 SP1位 93.92 FS1位 171.09
G P F   総合2位 253.90 SP5位   79.18 FS2位 174.72
欧州選手権     総合1位 262.49 SP1位 89.24 FS1位 173.25
世界選手権     総合1位 273.90 SP2位 92.74 FS2位 181.16
平均       総合   260.034   SP  88.288     FS      171.746

 

順位も安定していたが得点も比較的安定していたシーズンだった。平均から下限と上限の幅が少ない、言ってみれば大遭難もなく神演技もなかったということだ。
ただフェルナンデス選手の構成から考えればもう少し高い点が出てもおかしくない。SPFS合計ともPBを更新できなかったという結果を見れば何かしらミスや取りこぼしのあったシーズンでもあった。
しかしほどほど高値安定を維持できたからこそ世界チャンプになれたともいえる。実績がついたし自信にもなるだろう。来季さらなる向上を期待したい。
それではプロトコルからいろいろ見ていきたい。  

 

<ジャンプ>
SP  予定構成 4S 3Lz+3T // 3A  29.95 

         基礎点   GOE  減点  合計
Sカナダ   24.23  4.62  0 28.85  
ロステレコム 29.95  3.11  0 33.06
G P F  26.05 -2.66 -1 22.39 
欧州選手権  29.95 -0.95  0 29.00
世界選手権  29.95  2.98  0 32.93
平均    28.026  1.42 -0.2 29.246  


平均が予定構成点を下回っている結果から見てわかるようにジャンプの安定感はあまりないシーズンだった。 3つのジャンプ全て成功は世界選手権だけ。フェルナンデス選手は実は3つともどこかの大会で失敗している。鉄板といえるジャンプがないのが不安定の原因なのかもしれない。

  
FS 予定構成 4T 4S+3T 3A // 4S 3F+Lo+3S 3Lz+2T 3Lo 3T=74.10  

        基礎点   GOE  減点  合計
カナダ杯   62.80 -5.93 -1 56.87  
ロシア杯   64.61 -0.55  0 64.06
G P F  59.06  7.49  0 66.55  
欧州選手権  60.21  4.53 -1 63.74
世界選手権  71.43  2.70 -1 73.13
平均    63.622 1.648 -0.6 64.67  


驚いた。予定構成点を1度も上回ってない。平均に至っては10点近くもマイナスになっている。
主な原因はセカンド3Tがほとんど入らないこと、最初の4Sが一度も成功していないこと、LoとLzが2回ずつ抜けていること。 セカンド3Tが2Tになる、抜けが起こるとそれはそのまま基礎点が下がることになる。
一方でGOEがあまり多くないという結果ジャンプによる得点が思ったほど伸びないという結果を生み出している。
フェルナンデス選手はジャンプが得意な選手と思われているが意外にジャンプでは稼げていないわけだ。

  
<スピン>
SP  

        基礎点   GOE   合計
カナダ杯    8.5  1.6  10.10  レベル3 2回  レベル4 1回
ロシア杯    8.9  2.01 10.91  レベル3 1回  レベル4 2回
G P F   9.4  1.93 11.33  ALLレベル4
欧州選手権   9.4  2.29 11.69  ALLレベル4
世界選手権   9.4  1.93 11.33  ALLレベル4
平均       9.12 1.952 11.072  


今シーズンフェルナンデス選手が特に良かったと思ったのがスピンだ。レベルは昨年も大凡とれていたがかなり安定したように見える。
アップライトなので若干基礎点は低いが元々あまりスピンが得意な選手ではないし確実にレベルをとってGOEを少しでももらうのは正しい戦略だと思う。  


FS

        基礎点   GOE   合計
カナダ杯   9.5  1.36  10.86  レベル3 1回  レベル4 2回
ロシア杯   9.0  2.00  11.00  レベル2 1回  レベル4 2回
G P F 10.0  2.15  12.15  ALLレベル4
欧州選手権 10.0  2.50  12.50  ALLレベル4
世界選手権 10.0  1.71  11.71  ALLレベル4
平均      9.70  1.94  11.644  


うーん、スピン巧者並みの点数だ。正直ここまで点が出るスピンとは思えないのだがレベルを確実にとるということが大事だとわかる採点表である。

  
<ステップ>
SP  

        基礎点   GOE   合計
カナダ杯    3.3  0.93  4.23  レベル3 
ロシア杯    3.9  1.90  5.80  レベル4
G P F   3.9  1.60  5.50  レベル4
欧州選手権   3.9  1.50  5.40  レベル4
世界選手権   3.9  1.07  4.37  レベル3
平均       3.66  1.40  5.06  


ステップはだいたいレベルがとれているしGOEも平均2がついている。プログラムも今期は良かったし評価もされていると言うことだろう。 

 
FS

        基礎点   GOE   合計

カナダ杯    5.9  2.10  8.00  レベル4 
ロシア杯    5.3  3.01  8.31  レベル3
G P F   5.9  2.90  8.80  レベル4
欧州選手権   5.3  2.57  7.87  レベル3
世界選手権   5.3  1.96  7.26  レベル3
平均       5.54 2.508  8.048  


SPに比べてレベルがとれていないがレベルがとれないから点が低いわけじゃないのが面白い。コレオステップの加点が平均1.5以上つくのがGOEの高い原因である。  


<TES計>
SP    

        基礎点   GOE  減点    合計
カナダ杯   36.03  7.15  0   43.18  
ロシア杯   42.75  7.02  0   49.77
G P F  39.35  0.87 -2   38.22 
欧州選手権  43.25  2.84  0   46.09
世界選手権  42.65  5.98  0   48.63
平均    40.806 4.772 -0.4 45.178 

 
唯一崩壊したGPFが思い切り押し下げているが40点後半をコンスタントに出していることがわかる。
世界選手権でSPがSBにならないことが悔しそうだったが、加点が少ない(特に3A)こととステップのレベルがとれなかったことが大きかった。

  
FS

        基礎点   GOE  減点    合計
カナダ杯   78.20 -2.47 -1  74.73  
ロシア杯   78.91  4.46  0  83.37
G P F  74.96 12.54  0  87.50 
欧州選手権  75.51  9.60 -1  84.11
世界選手権  86.73  6.37 -1  92.10
平均    78.862  6.10 -0.6  84.362  


GPFのGOEが光っている。基礎点は一番低いのに合計では2番目になってしまうと言う。この採点法ではいかにGOEを稼ぐのかが重要というのがよくわかる。
それにしても平均85無いというのが構成を考えればもったいないとしか言いようがない。
ジャンプが生かされていない、というのを如実に表している。 

 
<PCS>
SP  

       SS  TR  PE  CC  IN   合計
Sカナダ   8.68  8.43  8.71  8.61  8.75  43.18
ロステレコム 8.68  8.61  8.89  8.86  9.11  44.15
G P F  8.18  8.11  7.89  8.46  8.32  40.96
欧州選手権  8.61  8.61  8.43  8.68  8.82  43.15
世界選手権  8.75  8.64  8.86  8.86  9.00  44.11
平均     8.58  8.48  8.556 8.694  8.80  43.11

  
崩壊したGPFが数値を下げているがそれを抜かせば恐ろしいほどどの数値も安定しているのがよくわかる。
あれだけつなぎが多いプログラムを滑っている割に評価が高いのはIN・CC・PEという相変わらず基準がどこにあるのか今ひとつわからないのがPCSの特徴。
そこそこまとめればほぼ同じような数字が出てくると言うことは今季のプログラムは評価が高かったことが理解できる。  

FS

       SS  TR  PE  CC  IN   合計
Sカナダ   8.43  8.21  8.18  8.57  8.50  83.78
ロステレコム 8.64  8.61  8.61  9.00  9.00  87.72
G P F  8.43  8.46  8.75  8.93  9.04  87.22
欧州選手権  8.86  8.82  8.75  9.00  9.14  89.14
世界選手権  8.71  8.71  8.93  9.07  9.11  89.06
平均     8.614 8.562  8.644 8.914  8.958 87.384  


SPよりもTESの振り幅が試合ごとに大きいわりにSカナダ以外高値安定なのが面白い。
一番PCSが高かったのはジャンプがいまいちの欧州選手権。大会ごと最終グループまでの流れが違うので一概に高い低いは言いません。
ただジャンプが安定しないためPCS90以上は一度も出なかったこと、そこそこの出来なら85以上は堅いことがよくわかります。
やはりINが高くつなぎばりばりの割にはTRが一番低い。振り回されていると思われていると言うことなのか?あるいはもっと入れろと言うことなのか?
SSよりTRが高くてもいいと思うんだけどなぁ。

  
<来季に向けて>
高難度ジャンプで稼ぐ選手の割にジャンプで点数が上積みできなかったシーズンだった。 スピンステップはほぼ安定しているので来季はとにかく抜けをなくすこととセカンド3Tを確実に入れることだ。予定構成点を稼げば280点台は確実に出るはずだ。
あとは3クワドのわりに羽生より構成点が低いのは2回飛ぶ予定のジャンプが3Tであることが大きい。3Sのザヤを防ぐために3Tにしたのは理解できるができれば3Lz(本当は3Aが良いがコンビネーションにしなければならないのでハードルが高い)にしたい。それなら今季の羽生の構成を上回れる。
この夏は是非3Lzとセカンド3Tを猛練習してほしい。
そうすれば戻ってくるPチャンを含めてもっと面白い戦いが見られるはずだ。
今季のプログラムは2つとも良いものだったがつなぎが多すぎたためか割とスケーティングが重めのフェルナンデス選手にはテンポが遅れがち振り付けに振り回された感があった。 Pチャンやテンならそれを「タメ」に見せられてもフェルナンデスだと重くというか鈍く見えてしまう。
来季はもう少しつなぎを減らし余裕を持って伸びやかに滑れるようなプログラムがどちらかに来るといいのではないかと思っている。
是非チャンピオンらしい演技を見せてほしいと願っている。