つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

穴掘って地固まる?―――ハン・ヤン

シニア1年目の羽生がGPSで洗礼を受け全日本選手権で世界選手権出場権を得られなかった頃私は「ハンヤンがシニアに来たら羽生あっさり上に行かれそうだな」なんて思っていた。中国は日本ほど選手層が厚くない。チャンピオンシップに出場しているかどうかは実績として大きいからだ。
しかしそんな私の考えとは裏腹にハンヤンのシニア入りは遅れ、一方で羽生は2011年四大陸銀・2012年世界選手権銅・2012年GPF銀と着々と実績を積み上げていった。
ハンヤンがようやくシニア入りしたのは肝心のオリンピックシーズンになってから。中国杯でいきなり1位となり華々しいデビューとはなったが、いかんせんシニア経験不足、その後はハンヤン自身のペースも上がらず他の有力選手の波に押し流されていった。それでもオリンピック・世界選手権ともに7位入賞と言うまずまずの戦果を残した。
シニア参戦2年目のシーズンはさらなる活躍が望まれたのだが羽生共々波乱の幕開けとなり…ハンヤンの2014-15シーズンを振り返る。


中 国 杯  総合6位 206.65 SP3位 79.21 FS7位 127.44
エリックB  総合8位 216.85 SP10位 73.18 FS6位 143.67
四大陸選手権 総合3位 259.47 SP3位 87.34 FS4位 172.13
世界選手権  総合10位 229.15 SP5位 84.45 FS13位 144.70
国別対抗戦  総合3位 250.27 SP2位 87.13 FS4位 163.14
  平均    総合 232.478  SP 82.262  FS 150.216


羽生との事故の影響からGPSは不本意の結果に終わった。その後四大陸で復調をアピールしたものの世界選手権ではFSで大きく沈んでしまった。
数字としては悪かった試合の影響が大きく平均はGPS台乗り位の控えめに落ち着いた。
もともとハンヤンは事故以外でも体調不良の試合が多い。何とか体調の折り合いをつけ安定した試合運びができるようにしてほしい。


<ジャンプ>
SP 予定構成 3A 4T // 3Lz+3T =29.91

        基礎点    GOE   減点   合計
中 国 杯  28.70  -4.65      24.05
エリックB  20.63  -0.20  -1  19.43
四大陸選手権 29.91   0.96      30.87
世界選手権  28.90    1.03        29.93
国別対抗戦  29.91    0.80        30.71
  平均   27.61 -0.412  -0.2 26.998

 

シーズン初頭のGOEのマイナスが取り戻せなかったのは4Tが一度も成功しなかったから。
3Aが素晴らしくGOE2以上がついても4Tのミスでほぼ0になってしまう。
とりあえずこの4Tの安定が急務であると言える。
ジャンプがすべて入った世界選手権の基礎点が下がっているのは後半のコンビネーションが前半扱いになっているから。テンもそうだったがあまりギリギリのタイミングでジャンプを設定しすぎると時間のはかり方と飛ぶタイミングで基礎点を失う場合がある。特にSPでは要素が少ないので無条件で1点以上失うと順位が変わる可能性が高い。確実に後半でカウントしてもらえるよう設定すべきである。

 

FS 予定構成 3A+3T 4T 3A // 3Lz 3Lo 3Lz+2T+Lo 3F+2T 3S =64.07
                            3A+2T 4T+3T 4T // 3A 3Lo 3Lz+2T+ Lo 3F 3S =68.49(国別のみ)

        基礎点    GOE   減点   合計
中 国 杯  41.35  -7.01  -1  33.34
エリックB  60.11  -4.14  -2  53.97
四大陸選手権 64.07   7.22      71.29
世界選手権  56.95     -5.79    -3        48.16
国別対抗戦  67.39     -4.32    -1        62.07
  平均  57.974 -2.808  -1.4 53.766

 

中国杯およびエリックBが低いのはある意味仕方ない。事故直後とほとんど練習できないまま2週間後に試合だったのだから。本来なら省いてもいいかもしれない。
ただこの2試合を差し引いたとしてもハンヤンのGOEはマイナスになってしまう点は注視すべきだ。結局FSでも4Tは一度も決まらず。得意で得点源の3Aにもミスが多い。そしてそれ以外のジャンプにもミスが出る、ということだ。
安定してこれは入れられるというジャンプがあまりない人は平均が予定構成よりもかなり低い傾向がある。幅の大きなジャンプが魅力で成功すれば加点も多くつくが、失敗が多くてそれを相殺されてしまっては点は伸びてこない。
来季は4Tを2回にしてきそうだが、その前に3Lz以下のジャンプは確実に決める、3A・4Tも50%以上の確率が欲しい。そのためには幅だけではなくもう少し高さが欲しい。回転が止められないまま降りてきているためステップアウトや転倒が多くなっているように見える。
物凄いスピードでジャンプに入り物凄い幅のジャンプの飛ぶのは魅力だが成功率が50%を切るなら博打でしかない。大人の体になり力もついてくる頃なので回転を止めて降りるジャンプを身に着けてほしい。そうすれば怪我も少なくなる。


<スピン>
SP

        基礎点   GOE    合計
中 国 杯   9.3   1.71  11.01
エリックB   9.3   1.28  10.58
四大陸選手権  9.3   2.07  11.37
世界選手権   9.3   1.57  10.87
国別対抗戦   8.8   1.36  10.16
  平均    9.2  1.598 10.798

 

GPSでキャメルのレベルが取れずシットスピンと入れ替えたら今度はシットのレベルが取れなくなった…ということは後半のスピンが体力的にきついということか?2つレベル4で1つ3ならそう悪くないとみるべきか。
ハンヤンはオールラウンダーのイメージがあったがトップ選手の中で割と加点はふつうだった。悪くもなく取りたてて良くもなくといった感じ。


FS

        基礎点   GOE    合計
中 国 杯   6.6   0.63   7.23
エリックB   7.7   1.00   8.70
四大陸選手権  8.8   1.36  10.16
世界選手権   7.8   1.71   9.51
国別対抗戦   8.9   1.22  10.12
  平均   7.96  1.184  9.144

 

FS全体の出来がよくないとレベルもとれない傾向にある。コンビネーションでちょくちょく要素不足がとられている。
FSを見る限りでは加点も少なくスピンの苦手な選手と言うレベルの点数である。
体力的にきついのかもしれないが地味にスピンは差のつくエレメンツなので取りこぼしだけはなくしたい。

 

<ステップ>
SP

        基礎点   GOE    合計
中 国 杯   3.9   1.50  5.40
エリックB   3.9   1.10  5.00
四大陸選手権  3.9   2.10  6.00
世界選手権   3.3   0.86  4.16
国別対抗戦   3.9   1.40  5.30
  平均   3.78  1.392 5.172

 

スケーティングの良いハンヤンの見せ場であるステップはGOE1.5以上の加点がついている。
確実に点数を稼ぐためにレベルの取りこぼしをまずなくしたい。
だいぶ表情も豊かになってきたが魅せるという点でまだ弱い感じがするのでジャッジアピールをもう少し頑張ろう。


FS

        基礎点   GOE    合計
中 国 杯   5.3   2.13  7.43
エリックB   5.9   1.40  7.30
四大陸選手権  5.3   2.24  7.54
世界選手権   5.3   1.73  7.03
国別対抗戦   5.3   1.73  7.03
  平均   5.42  1.846 7.266

 

レベルの取りこぼしがもったいない。そしてスケーティングの良さから見ればGOEはもう少し欲しい所。
フェルナンデスのキャラクターの良さでもテンのような独特の音感による魅せ方でもブラウンのような音楽を生かした表現力でも羽生のような問答無用にGOEをもぎ取っていくアピール力でも何でも良いからもう少しハンヤンのハンヤンたる所以を見せてほしいと思う。


<TES計>
SP
        基礎点   GOE   減点   合計
中 国 杯  41.30 -1.87      39.43
エリックB  33.83  2.18  -1  35.01
四大陸選手権 43.11  4.33      47.44
世界選手権  41.50  3.46      44.96
国別対抗戦  42.61  3.56      46.17
  平均   40.47 2.332  -0.2  42.602

 

SPのTESが42を超えるというのはかなり高い。
羽生・テン・フェルナンデスという今シーズンの3強からは下がるがその次といってもいい。つまり4Tさえ安定して入ればSPのTESについては3強に並び立てるということでもある。
とにかく4Tを確実に成功させることが来季の課題である。

 

FS
        基礎点   GOE   減点   合計
中 国 杯  53.25 -4.25  -1  48.00
エリックB  73.71 -1.74  -2  69.97
四大陸選手権 78.17 10.82      88.99
世界選手権  70.05 -2.35  -3  64.70
国別対抗戦  81.59 -1.37  -1  79.22
  平均  71.354 0.222  -1.4 70.176


高いSPのTESに比べFSは格段に劣る。四大陸の加点が効いているから平均がプラスになっているが、基本的にGOEがマイナスである現状が大きな問題。
大きなマイナスになる原因がミスが3Aと4Tが多く係数が高いことがあげられる。3Aは稼ぎ場所であるはずなのでここをマイナスにしてしまうと4Tの成功率が低い状態ではフォローできない。
FSはジャンプミスが多く転倒や大きなミスが出るとやる気と言うか覇気が無くなった感じになるため他の部分でも取りこぼしが増えたり加点が少なくなったりする傾向があるように思える。
国別の感じから4T2回構成を来季は試しそうだが、4Tもさることながら3Aは確実に決められるようにする必要がある。


<PCS>

SP 

         SS  TR  PE  CC  IN  合計

中 国 杯    8.21  7.71  7.75  8.04  8.07  39.78
エリックB    7.89  7.57  7.39  7.68  7.64  38.17
四大陸選手権   8.21  7.68  8.04  8.04  8.04  39.90
世界選手権      8.14  7.75  7.75  7.96  7.89   38.49
国別対抗戦      8.25  7.93  8.14  8.32  8.32   40.96
平均         8.14   7.728  7.814   8.008   7.992     39.46

 

SPのPCSについてはシーズンを通してあまり変わりない。大きく崩れたエリックBですら平均から1.5点以内に収まっている。
評価としてはやはりSSが高い。スケーティングの良さが認められている。ここが高い選手はジャンプミスが多くてもそれほど大幅にPCSが下がらない傾向があるように思う。
あとはジャンプを安定させて表現の幅を広げて5項目全体の底上げをしていきたい。


FS 

         SS  TR  PE  CC  IN  合計

中 国 杯    8.18  7.75  7.75  8.11  7.93  79.44
エリックB    7.68  7.11  7.21  7.46  7.39  73.70
四大陸選手権   8.54  7.89  8.46  8.29  8.39  83.14
世界選手権       8.14  7.86  7.75  8.18  8.07  80.00
国別対抗戦       8.64  8.11  8.21  8.46  8.54  83.92
平均         8.236  7.744  7.786     8.10  8.064     80.04

 

平均が80を超えているがほぼSPから横ばい。FSは崩れると大きいのでこのあたりにとどまった感じだ。
同年代のブラウンより少し低くコフトゥンよりわずかに高い。
ただ印象としては世界選手権でハンヤンの上に行ったブラウン・コフトゥン程のインパクトが残せなかった気がする。
来季このメンバーを超えチャン・フェルナンデス・羽生・テンと競うにはハンヤンとしては大きな成長を見せる必要がありそうだ。


<来季に向けて>
序盤のアクシデントでいろいろ困難の多いシーズンとなった。台乗りも四大陸のみと言う少しさみしい結果に。
来季に向けてはとにかく4Tの成功率を上げることが必須だ。羽生程実績がないのでノーミスでなければこれ以上のPCSの上昇は望めない。
また国内にもボーヤン・ジンという大型ジュニアが控えている。中国の派遣方法はよくわからないのでボーヤンがシニア入りするかは不明だが次のオリンピックに向けてメダル候補と名乗りを上げるためにもはっきりとした実績を作る必要がある。
得点的には安定してSP90以上、FS165以上を出せるようにしたい。その為にはFSのスピン・ステップのを確実にレベルを取りGOE加点を狙った振付などのプログラムを作る必要がある。
また幅の広い選手であることを見せる必要があるから来季は振付師を変えてみてはどうだろうか?ローリー・ニコルは優秀な振付師ではあるが必ずしもハンヤンにあっているとは言い難い。衣装など見た目の印象もここ数シーズン変わり映えしない。まだ若いのだからいろいろ試してみてほしい。