2014-15シーズンジャンプ成功率―――フェルナンデス/FS編
そろそろ2015-16シーズンのそれぞれの選手達の取り組みが本格的に耳に入っているようになった。少し驚き?なのはロシア選手・コーチ達が例年に無く北米と関わりを持っていること。これも時代の流れなのか?それぞれに良い点悪い点を持っているから相互交流を深めてよりよいプログラム・試合に生かしていければファンとしても楽しみが増えるというもの・・・でも何となく複雑な心境もある。人間というものは全くいつも相反する心情を持つ生き物だ。
そんな中いまだに2014-15シーズンのまとめをしようかなとしている当ブログ。正直終わるのか?という不安もあるが来年の春にやっておいて良かったと思えるようにぽちぽち進めていこうかと思っている。
それでは2014-15シーズン世界王者のハビエル・フェルナンデスのFSジャンプ成功率を見ていきたい。
出場試合はSカナダ/ロステレコム/GPF/スペイン選手権/欧州選手権/世界選手権の6試合。
GOE0以上はSカナダ3・ロステレコム5・GPF7・スペイン選手権3・欧州選手権6・世界選手権6の30回。
成功率は30/48=62.5%
単純にジャンプの成功率を見ると羽生・テンより劣る結果となった。ただシーズン通して得点が安定していた結果から見るとフェルナンデスのミスは二人に比べ小さいものが多かったと言うことか。それぞれのジャンプごと見ていく。
予定構成
4T 4S+3T 3A // 4S 3F+Lo+s 3Lo 3Lz+2T 3T = 74.1
2014-15シーズン出場者の中で羽生に次いで構成が高かったのがフェルナンデスだ。しかし一度もセカンド3Tが入らなかった為こなせたことは無い。3クワドだが羽生に劣ってしまうのは3Aが1回しか無いこととその代わりに入っているのが3Tであること。4クワドは現実味が無いためこの点が来季の課題であるといえる。
・4T 4/6 成功率66.67%
基礎点 GOE 減点 合計
S カ ナ ダ 10.30 -0.57 0 9.73 (お手つき)
ロステレコム 10.30 2.43 0 12.73
G P F 10.30 1.71 0 12.01
スペイン選手権 10.30 -1.67 0 8.63 (お手つき)
欧州選手権 10.30 2.57 0 12.87
世界選手権 10.30 2.29 0 12.59
平均 10.30 1.127 0 11.427
成功すればGOE2以上という高得点は羽生と同じだが抜けと転倒がない分高い得点を獲得できている。今季に関しては成功した場合4Sよりも美しかった。「2種を飛ぶこと」に関しては羽生よりもキャリアがあるためか安定している印象だ。
出来高は110.94%と高い数字になっている。
・4S+3T 1/6 成功率16.67%
基礎点 GOE 減点 合計
S カ ナ ダ 8.09 -3.00 -1 4.09 (転倒+REP)
ロステレコム 12.98 -1.57 0 11.41 (お手つき)
G P F 5.50 0.60 0 6.10 (3S+2T)
スペイン選手権 5.50 -0.47 0 5.03 (3S+2T・OT)
欧州選手権 8.30 0.30 0 8.60 (3S+3T)
世界選手権 12.98 1.71 0 14.69 (4S+2T)
平均 8.892 -0.405 -0.167 8.32
4S+3Tは先にも書いたが1度も成功していない。唯一成功とカウントした世界選手権の4S+2Tも後半のリカバリーだ。その位今季は最初の4Sの成功率が低かった。案外後半の4Sが飛べていることから考えると4Sそのものと言うよりコンビネーションへの苦手意識のため失敗が多かったと言うべきか。単独ジャンプに比べコンビネーションはつまり気味であるところはフェルナンデスの弱点の一つであるといえる。改善を求めたいがフェルナンデスのセカンドは上から落ちるタイプなのでなかなか難しい。
平均基礎点から出来高93.57%、元の基礎点からだとわずか56.99%と予定構成から半分ほどしか稼げていない。ここが今季フェルナンデスが一番取りこぼしたポイントであるといえる。
・3A 6/6 成功率100%
基礎点 GOE 減点 合計
S カ ナ ダ 8.50 0.00 0 8.50
ロステレコム 8.50 0.00 0 8.50
G P F 8.50 2.00 0 10.50
スペイン選手権 8.50 2.00 0 10.50
欧州選手権 8.50 2.00 0 10.50
世界選手権 8.50 1.00 0 9.50
平均 8.50 1.167 0 9.667
成功率100%は素晴らしい。しかしつなぎぎちぎちで飛んでいる割には案外低いと思えるGOE。SPでもそうだったがつなぎが多すぎて3Aの着氷がクリーンといえなくなってしまう場合があると言うことだ。ちょうど良いバランスが保てると大きな得点源になれる。
出来高は113.73%と高い数字になっている。
・4S 1/6 成功率16.67%
基礎点 GOE 減点 合計
S カ ナ ダ 10.50 -1.86 0 8.64 (前半SO)
ロステレコム 10.50 -1.71 0 8.79 (前半着氷不良)
G P F 11.55 0.14 0 11.69
スペイン選手権 11.55 -1.00 0 10.55 (着氷不良)
欧州選手権 11.55 -2.43 -1 8.12 (転倒)
世界選手権 10.50 -3.00 -1 6.50 (前半転倒)
平均 11.025 -1.644 -0.333 9.048
羽生・テンとみてきて思うのは抜けが無いって大きいと言うこと。転倒の数は羽生と同じ、成功率は羽生の方が高いでも獲得点はフェルナンデスの方が上、つまり差は抜けがあったかどうかという点だ。正直な印象ではFSで4Sほとんど成功しなかったんじゃ?というものだったが最低限の点数を確保していることがわかる。テンや羽生に比べ下限が高いのはここの差であるといえる。
平均基礎点に対して82.07%、元の基礎点に対して78.34%。リスクの多い四回転としてはこのくらいなら仕方ないと言うべきか。印象よりは稼いでいた結果だ。
・3F+Lo+3S 2/6 成功率33.33%
基礎点 GOE 減点 合計
S カ ナ ダ 10.89 -0.70 0 10.19 (!・2ndUR)
ロステレコム 7.81 -0.60 0 7.21 (着氷不良2S)
G P F 11.00 1.30 0 12.30
スペイン選手権 7.81 0.47 0 8.28 (2S)
欧州選手権 7.70 0.00 0 7.70 (2ndUR・2S)
世界選手権 11.00 -0.60 0 10.40 (!)
平均 9.368 -0.022 0 9.346
昨シーズンから3-1-3の3連続が増えたがスムーズに見える選手とそうでは無い選手がいる。フェルナンデスはあまり見栄えのしない方の選手だ。たぶんコンビネーションに苦手意識が本人にもあるのだろう。3Fに時々!をとられるのは気をつけたいところだが抜けるよりはましなのかも。
平均基礎点に対して99.77%、元の基礎点に対して84.96%。
・3Lo 4/6 成功率66.67%
基礎点 GOE 減点 合計
S カ ナ ダ 1.98 0.00 0 1.98 (2Lo)
ロステレコム 1.98 0.00 0 1.98 (2Lo)
G P F 5.61 1.30 0 6.91
スペイン選手権 5.61 0.23 0 5.84
欧州選手権 5.61 1.20 0 6.81
世界選手権 5.61 0.90 0 6.51
平均 4.40 0.605 0 5.005
昨季とそれ程つなぎが変わったとは思わなかったがシーズン当初の抜けが響いて基礎点までは行かなかった。男子選手でも時々Loが苦手な選手がいるがフェルナンデスはそういうタイプには見えないので確実にとっておきたいジャンプではある。
平均基礎点からは113.75%、元の基礎点からは89.22%。
・3Lz+2T 2/6 成功率33.33%
基礎点 GOE 減点 合計
S カ ナ ダ 8.03 -0.20 0 7.83
ロステレコム 8.03 0.40 0 8.43
G P F 2.09 -0.06 0 2.03 (1Lz)
スペイン選手権 6.60 -1.40 0 5.20 (お手付きコンボ無)
欧州選手権 3.74 0.09 0 3.83 (2Lz)
世界選手権 8.03 0.10 0 8.13
平均 6.087 -0.179 0 5.908
フェルナンデスの鬼門のような3Lz。今季も成功率はいまいちだった。ただ抜けは2回で抑えられたので完全に無くしたい。
平均基礎点に対して97.06%、元の基礎点に対して73.57%。
・3T 5/6 成功率83.33%
基礎点 GOE 減点 合計
S カ ナ ダ 4.51 0.40 0 4.91
ロステレコム 4.51 0.50 0 5.01
G P F 4.51 0.50 0 5.01
スペイン選手権 0.00 0.00 0 0.00 (2T+2Tノーカン)
欧州選手権 4.51 0.80 0 5.31 (2Lz)
世界選手権 4.51 0.30 0 4.81
平均 3.758 0.417 0 4.175
3クワド飛んで飛べないトリプル無いのになぜ単独3T?と言いたくなってしまう構成。おそらく昨季の3Sザヤ対策なのだろうが・・・微妙な策だ。結局ナショナルではキックアウトされている。TとSはどうしてもリカバリしてもザヤになりやすい。対策は別のジャンプでした方が良い。
平均基礎点に対して111.10%、元の基礎点に対して92.57%。
<FSジャンプまとめ>
・四回転の成功率は6/18の33.33%・・・確率だけだと羽生と同じになった。平均獲得点は28.795,基礎点からの出来高は79%と正直に言えば四回転で大きく稼ぐと言うことは出来ないでいる。三回転より少し多い点数を確実に稼いでいるといった印象だ。
・コンビネーションの成功率は8/18で44.44%とかなり低め。出来高でも基礎点33.63に対し22.708で67.52%とセカンド・サード分の基礎点が取れていない結果に。これ以上クワドを増やすことには来季はならないと思うのでここが重点改善ポイントだと思われる。羽生は全て後半で成功率が高いのでGOEの加点はともかく基礎点だけは取っておきたいところ。ノーカウントも1回あるのでザヤ対策も必要だ。
・FSについては3Aの成功率は100%で良い結果に。ただつなぎから一生懸命飛んでいるという印象があるのでもうちょっと減らし余裕を持って飛んで流れのあるジャンプを目指しても良いのではと思ってしまう。羽生・テンのように2回入れたいところだがコンボが苦手なフェルナンデスではハードルは高いか。1回だけなら同じレベルで後半に入れたいところだ。
・3Lz以下のジャンプの成功率は13/24で54.17%、出来高は基礎点29.15に対し22.708で77.9%。と成功率から見ればまずまずといった感じ。これはフェルナンデスは転倒が少なく大きな減点が無い一方、着氷不良や3-1-3の足替えの不手際でちょいちょい減点を受けているためである。体幹が強いため羽生やテンなら転倒するところをこらえられるが結局クリーンな着氷が少ないと言うこと。体が強いうちはこれで良いが年齢が上がっていくと負担が増えることになるかも。怪我を少なくする意味でも流れのある着氷にしたいところだが上から落ちるタイプのジャンパーではなかなか難しい。まずは着氷したときくるっと反転することを減らせるようにしたいものだ。
単純なジャンプ成功率では羽生やテンを下回った結果に。というかナショナルを入れた場合FSのジャンプ平均獲得点がテンを下回っていることに気がついた。TES下限はこの二人より高いが一方で上限かなり下がるということ。二人が安定していなければ勝負できるが、体調が良ければそれ程取りこぼしをしないため勝負にならなくなる。まずはクリーンに成功するジャンプをもう少し増やしたいところ。チャン・羽生・テンに続きTES100越えをしないともしかしたら一気に表彰台から漏れる結果になるかもしれない。今やジュニアもどんどんTESを目指して構成を上げている。構成だけ高くても実施が伴わなければ徐々にPCSが下がることになってくる。チャンや羽生の良いときほどまだPCSも出ていない現状があるのはそれだけクリーンな演技が出来ていないと言うこと。日本選手ほどノーミスノーミス言うことは無いが絶対に決めるという意志がもう少し強く見えても良いのではと思う。
来季は王者として全ての選手の挑戦を受ける立場だ。強い王者の演技でもっともっと面白い競技の側面を見せて欲しいと願っている。