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つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

サルコウあれこれ

私がフィギュアスケートを見だした小学生時代には女子のプログラムには3回転が幾つか入る程度、2回転のジャンプを当たり前に飛んでいた。
その頃覚えたジャンプの見極め方は前に飛ぶのがアクセル、後ろ向きに助走が長いのがルッツ、くるっと飛ぶのがフリップ、いすに腰掛けたようなジャンプがループ、飛ぶ前にハの字に見えるのがサルコウ、トゥを付くのがトゥループというものだった。
今は軌道よりエッジが重要なのでルッツとフリップにこの説明は使えない。そしてもう一つ使えないと思うのがサルコウである。女子も男子も今ではあまりハの字には見えないサルコウを跳ぶ選手が多くなった。

 

何故こんなことを書いているかというと、NHK杯以降ネット上で羽生のトゥループサルコウの飛び方が同じに見えると言うようなことをまたよく見かけるようになったからだ。
また、と書いたのは前にもそういう文章をよく見かけた時期があったと言うこと。それは羽生が4Sを飛び始めたノートルダムの頃に多く目にしたことだった。
確かにあの時期の羽生の4Sは妙な飛び方をしていた。実際本人もナム・ニューエンにそれを指摘され修正したという記事を目にしたことがあった。羽生の4Sが安定するのに意外に時間がかかったのもこの辺りの事情もあったと思われる。
しかし今になって何故そんなことを目にするのか?そもそもトゥループサルコウは全く種類の違うジャンプだ。サルコウはトゥを付くことなんてないし実際羽生もそんなことはしていない。

 

そんなわけで4Sをもっと良く理解するためにそれを跳ぶ選手達の違いを検証してみようと思い立った。
ちょうどNHK杯という五人もの4Sを飛ぶ選手が居た大会の直後だ。詳しく見ればそう感じた理由がわかるかもしれない、そう思った。

 

NHK杯にはブレジナメンショフ・コフトゥン・ジン・羽生と五人もの4Sを飛ぶ選手が居た。
そして各々の4Sをコマ送りで見比べると非常に面白いことに気がついた

まずはブレジナだ。今では稀少となってしまったハの字サルコウを跳ぶ選手だ。
この五人は皆左回転の選手なので4Sを飛ぶ場合は左足の踏切になる。ブレジナの場合踏切の左足のエッジがかなりの角度でインに入る。つま先が内側かかとが極端に外側というカタカナのハの字の左側をしっかり作った踏切だ。そして右足を振り上げてその力を持って離氷するのだが、その右足は大きく外側から内側に入ってくる。ちょうど体の横に来たときにきれいなハの字を作るわけだ。要するに大きく外側から回転しながら振り上げた右足の力によってジャンプと回転の推進力を得る、ある意味力学的によくわかるジャンプの仕組みである。おそらくそもそもサルコウとはこういうジャンプだったのだな、と理解できた。
では何故今この飛び方のサルコウが減っているのか、理由はおそらく2つあるのではと推察される。一つはきれいなハの字を作るためには足を左右に大きく開くことになる。結果、重心が下がってしまうためパワーが無い女子など回転をし終える高さを出すのが大変になると言うことだ。二つめは足が大きく開くことによってジャンプの回転軸がぶれやすいという点だ。2回転くらいならそれ程影響も無いだろうが3回転4回転になってくると足の振りをより大きくしないと高さと回転が出来ないためそれを一定に保つのも難しい。足の幅分体も動く可能性があるため軸ぶれなしのジャンプはよほど一定に保たなければ出来ないだろう。その辺りから足を大きく開くハの字は減ってきたのではと推測した。実際ブレジナは今季1度も4Sを成功していない。NHK杯でもSPでは高さが足りずステップアウトし、FSでは軸が外れて転倒している。

 

では他の四人はどういう飛び方かというと広く言えば2つに分かれる。

 

メンショフとコフトゥンはほぼ同じ飛び方のジャンプだと言える。ロシアン型とでも言えば良いのか。面白いのはこの二人の足の形は逆ハの字型になっていると言うことだ。かかと側が狭くつま先が外に向いている。そして振り上げる右足はブレジナのように外側から内側へは回さない。彼らの右足は膝を曲げて上に引き上げるのだ。つまり右足を上にジャンプするために推進力にのみ使い回転には利用していないということ。さすが高飛びジャンプの多いロシアンだと思わせる仕草だがこれは自力で回転できるパワーが無いと難しい。飛び始めの頃少年体型だったコフトゥンがちょくちょく回転不足をとられたのも頷ける。ついでにパワーだけで回転するため軸ぶれも多い。高飛び型なので着氷にはある程度の体重も必要そうだと感じる。

 

羽生とジンは飛ぶ前の足の形については似ているところがある。ブレジナに比べかなり浅いハの字というか平行に近いかもしれない。飛び型そのものは違うので羽生からまず説明する。
ブレジナが右足を回転しながら振り上げて離氷するのに対して羽生はある意味逆の発想になっている。というのは右足はあまり利用されていないのだ。羽生の場合踏切足の左足を斜め後方に引くことによって結果的に右足が持ち上がる。左足を引くことによって生まれる回転に右足を沿わせているのだ。つまりブレジナのジャンプが右足9左足1位の力配分によって生まれているとしたら、羽生は左足9右足1位で飛んでいるというわけだ。右足は主に回転を締めるためだけに使われている。
ではジンはどう飛んでいるかというと彼も羽生のように左足の引く力を利用している。ただ羽生よりも右足を使っていて羽生が浮き上がった右足をそのまま回転を締めるだけに利用しているのに対しロシアンのように膝を上げて持ち上げているのだ。ジンはプルシェンコヤグディン全盛の頃のロシアンや中国ジャンパーを似た高飛びタイプである。幅では無く高さを膝を上げることによって生み出している。ただメンショフやコフトゥンのようにつま先は外では無く回転軸の方に向いているので回転はスムーズだ。着氷が今のところいまいちなのは体重が軽く高さを受け止めきれない部分があるのかもしれない。右左の割合で行くと右足3左足7位の飛び方といえるかもしれない。
左足を使うタイプのの利点はなんと言っても軸が作りやすいと言うこと。足の幅が狭いので体のぶれが少ない。左足で作り出した回転の推進力を右足でかぶせて締めることで細軸を作り易く見える。

 

幅広のハの字が減った現代多かれ少なかれこの幅の狭い平行に近いハの字型のジャンプが多いのでは・・・そう思ったため他の4S飛ぶ選手はどうか気になってニューエン・アモディオ・フェルナンデスも見ることにした。
残念ながらニューエンは今季4Sをほとんど飛んでいない。またフェルナンデスの出た中国杯ロステレコム杯は地上波放送が無いため大画面で見ることが出来ないため三月の世界選手権の映像で確認することにした。

 

ニューエンは幅の狭いハの字型、左足の引きを使っているが右足の回転も利用している。言ってみれば両足を同じくらい利用するハイブリット・エコタイプという感じ。軸も作りやすいしサルコウらしい振り上げも見られる。見た中ではハの字は狭いが一番ブレジナに近い感じを受けた。


アモディオは残念ながら足下がはっきりわかる映像が見つけられなかったが、右足はロシアン達と同じく外向き、ただ上には引き上げていないように感じる。


一番不思議なのがフェルナンデスだ。彼は足の形はカタカナのくっついていないレのような形。羽生のように左足を引いてはいるが引いたことで右側が上がらない。見方によっては両足踏切にも見える飛び方だ。羽生の場合は右足から生まれる氷の破片と左足が離氷するときに出る氷に時間差があるが彼の場合はほぼ同時に上がっている。だから回転そのものはロシアンのように自分のパワーで生み出しているように思える。

 

ざっと見ただけで飛び方にこれだけ違いがあることにも驚いた。
結果的に言えば羽生の4Sが4Tのように見える原因はおそらく左足を中心に飛んでいるためそう感じるのだろう。回転と高さを生み出すために後ろに回す左足の動きがトゥをつく際の動きに似ているように見えるのかもしれない。ただ左足より先に右足が離氷しているし踏切る足もインエッジになっているので問題は無いと思われる。
どちらかと言えば一番変ではと思われる飛び方はフェルナンデスの気がするが、4Sを飛んでいる期間はこの中では長い方で特に指摘も無いのなら問題ないのだろうと思うしか無い。


ハの字のサルコウサルコウらしいのかもしれないがこの高難度時代にもしかしたらそぐわなくなってきているのかもしれない。各選手のコマ送り画面を繰り返し見ていてそんなことを感じた休日だった。