つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

世界王者という名の檻の中で―――ハビエル・フェルナンデス

B級戦には出ないフェルナンデスはここ数年JOが初戦になっている。どちらかといえばスロースターターなフェルナンデスはJOではいつもそこそこな滑りで大げさにはやし立てる日本メディアを喜ばせる存在になっていた。
しかし今シーズンのJOでは宇野に及ばなかったもののかなりまとめた演技をしてきた。こんなに早くから仕上げてくるなんて珍しい、しかもFSの振り付けが遅かったはずなのに・・・と意外に思ったことを覚えている。
GPSが連戦なのでそうしたのかなと思いそのあと1月空くから体調は整えられるだろうと思い込んでいたのだが実際にはメディアやショーや宣伝など世界王者として忙しい生活を送っていたらしい。今季最高を見せたロステレコム以降FSをまとめることができずにユーロ以外の主要大会の表彰台を逃す結果となってしまった。
世界王者という称号は私が思う以上にいろいろな意味を持つものなのだな、と改めて知ったフェルナンデスの今シーズンを振り返る。


ロステレコム  総合1位 292.98 SP2位 91.55 FS1位 201.43
フランス杯   総合1位 285.38 SP1位 96.57 FS1位 188.81
G P F   総合4位 268.77 SP3位 91.76 FS4位 177.01
欧州選手権   総合1位 294.84 SP1位 104.25 FS1位 190.59
世界選手権   総合4位 301.19 SP1位 109.05 FS1位 192.14
平均       総合  288.632 SP平均 98.636 FS平均  189.996

 

ユーロは5連覇できたがGPFと世界選手権という強豪選手が揃った大会で台落ちしてしまうと言う五輪シーズン前にはちょっと不安になるシーズンとなってしまった。
点数的には後半の試合で伸びたが主にSPのおかげで有りFSではなかなかジャンプを揃えることが出来なかった。若手が大幅に基礎点を上げていく中で構成を上げないと選択したが、ショーや取材など世界王者に課せられた数多くの雑事の影響も有りなかなかベストな状態で試合をむかえることが出来なかった。


<ジャンプ>
SP  予定構成 4T+3T 4S // 3A = 34.45
         
        基礎点   GOE  減点        合計
ロステレコム 28.35  1.09  0  29.44  
フランス杯  34.45 -0.57 -1  32.88
G P F  34.45 -3.06 -1  30.39
欧州選手権  34.45  4.15  0  38.60
世界選手権  34.45  8.72  0  43.17
平均     33.23 1.958 -0.4  34.896 

持ち越しプロであるマラゲーニャが世界選手権でようやく完成形を見せた。はまり役であるプログラムがなかなかノーミスできずにもやもやしていたのだが、パーツがびしっと入ったときの完成度の高さは素晴らしくこれは3連覇固いのではと思わせた。2連覇という実績が風格ある選手を作り演技に貫録をもたらせた。ロステレコムでは抜けもあったがシーズン後半に向かって完成に近づいていくことがわかる数字の並びになっている。

 


FS 予定構成 4T 4S+3T 3A+2T // 4S 3A 3Lz 3F+Lo+3S 3Lo =79.23
        
        基礎点    GOE  減点   合計
ジャパンO  70.10  8.58  0  78.68
ロステレコム 76.23 10.23  0  86.46
フランス杯  72.49  4.99 -1  76.48  
G P F  67.59 -2.41 -1  64.18
欧州選手権  79.23 -1.19 -1  77.04
世界選手権  75.49  1.61 -1  76.10
平均    73.522 3.635 -0.667 76.49

SPがだんだんとまとまっていくのに対してむしろ崩れていったような印象があるFSのジャンプ。昨季は安定していたセカンド3Tがなかなか入らず、また抜けもしばしば出てなかなか予定構成通りに滑れなかった。構成を上げない以上完成度の高い演技が求められたが、試合以外の要素が多かったためかFSまでは完成度を高められなかった印象だ。


<スピン>
SP
        基礎点   GOE    合計
ロステレコム  8.0  2.43  10.43  ALLレベル3
フランス杯   9.4  2.50  11.90  ALLレベル4
G P F   8.9  1.86  10.76  レベル4 2回 レベル3 1回
欧州選手権   9.4  2.93  12.33  ALLレベル4
世界選手権   9.4  2.22  11.62  ALLレベル4
平均     9.02 2.388 11.408

 SPのスピンについては基礎点が低いので確実にレベル確保しGOEを稼ぎたいところだったがシーズン序盤はレベルを落とすこともあった。世界選手権でもアップライトでぶれて思ったほどのGOEを得られなかった。スピンはフェルナンデスにとってはまだ取りこぼしの多い要素という印象が残るシーズンだった。

FS
        基礎点   GOE   合計
ジャパンO   8.2  2.00  10.20  レベル4 2回  レベル1 1回
ロステレコム  9.0  2.43  11.43  レベル4 2回  レベル2 1回
フランス杯   9.6  2.01  11.61  レベル4 2回  レベル3 1回
G P F   9.6  2.29  11.89  レベル4 2回  レベル3 1回
欧州選手権   9.6  1.65  11.25  レベル4 2回  レベル3 1回
世界選手権  10.0  2.22  12.22  ALLレベル4
平均     9.33  2.10  11.43

なかなかFSで会心という演技がなかったためもあるがスピンもちょっといまいちな印象のシーズンだった。ジャンプの基礎点が現在では決して高くないので取れるところではしっかりとっておきたい。レベルがワールドまでそろわなかったことが少しもったいないと感じる。

 

<ステップ>
SP
        基礎点   GOE   合計
ロステレコム  3.9  1.70  5.60  レベル4 
フランス杯   3.9  2.00  5.90  レベル4
G P F   3.9  1.40  5.30  レベル4
欧州選手権   3.9  2.10  6.00  レベル4
世界選手権   3.9  2.10  6.00  レベル4
平均      3.9  1.86  5.76

ステップは稼ぎどころ、はまりプロでもあるので加点もしっかりとっている。平均も非常に高い素晴らしい数字である。


FS
        基礎点   GOE   合計
ジャパンO   5.9  3.30  9.20  レベル4
ロステレコム  5.3  2.54  7.84  レベル3 
フランス杯   5.3  3.14  8.44  レベル3
G P F   5.9  3.20  9.10  レベル4
欧州選手権   5.9  3.10  9.00  レベル4
世界選手権   5.9  3.40  9.30  レベル4
平均      5.7 3.113 8.813

 ロステレとGOFでレベルを落とした。FSでミスが多かったためかステップの加点も昨季ほど多い感じにはならなかった。休憩するところなどわりと巧くつくられたプログラムだと思ったが、転倒のためか体力的にきつそうに見えてしまいなかなかうまくいかないものだと感じてしまった。

 

<TES計>
SP  
        基礎点   GOE  減点    合計
ロステレコム 40.25  5.22  0   45.47  
フランス杯  47.75  3.93 -1   50.68
G P F  47.25  0.20 -1   46.45
欧州選手権  47.75  9.18  0   56.93
世界選手権  47.75 13.04  0   60.79
平均     46.15 6.314 -0.4  52.064

世界選手権のノーミスTESが素晴らしい。ずっと見たかった完璧マラゲーニャが見れてうれしかった。昨季に比べぐっと数字が高くなっている。ただ個人的にはステップは昨季の方が良かったなぁと思っている。


FS
        基礎点    GOE  減点    合計
ジャパンO  84.20  13.88  0   98.08
ロステレコム 90.53  15.20  0  105.73  
フランス杯  87.39  10.14 -1   96.53
G P F  83.09   3.08 -1   85.17
欧州選手権  94.73   3.56 -1   97.29
世界選手権  91.39   7.23 -1   97.62
平均    88.555  8.848 -0.667 96.736

 ロステレコムが最高でそれを超えることができなかった。もともと4S・4Tはそこそこミスがある選手だったが今シーズンはここ数年安定していた3Aにミスが増えてきたことが昨季の比べ数字を下げる原因となっている。

 

<PCS>
SP
       SS TR PE CC IN  合計
ロステレコム 9.14 9.11 9.11 9.36 9.36  46.08
フランス杯  9.07 9.07 9.00 9.32 9.43  45.89 
G P F  9.07 9.00 8.71 9.21 9.32  45.31 
欧州選手権  9.32 9.32 9.54 9.50 9.64  47.32
世界選手権  9.43 9.36 9.79 9.75 9.93  48.26
平均     9.206  9.172  9.230  9.428  9.536   46.572

フェルナンデスのPCSの特徴は基本CCとINが高く、SSとTRが似た数字に落ち着く、PEはその時の演技の出来に左右されるという点。シーズンを通してその傾向は変わらなかった。

 

FS
       SS TR PE CC IN  合計
ジャパンO  9.39 9.14 9.50 9.46 9.57  94.12
ロステレコム 9.36 9.39 9.68 9.71 9.71  95.70
フランス杯  9.18 9.14 9.04 9.39 9.39  92.28 
G P F  9.14 9.14 8.93 9.39 9.32  91.84
欧州選手権  9.29 9.18 9.21 9.43 9.54  93.30
世界選手権  9.43 9.36 9.36 9.57 9.54  94.52
平均     9.298  9.225  9.287  9.492  9.512  93.628

ロステレコムがPCSでも一番高くこれを超えることができなかった。ノーミスできなくてもPCSの高さはシーズン通して変わらなかったが伸びるということもなかった1年となった。


<来季に向けて>

ノーミスできなかったこともあるがこの構成で五輪を勝ち抜けるかといえば厳しいという印象を与えたシーズンだった。しかしFSで明らかに体力がきつそうなことも見て取れるので構成を上げることができるかもかなり未知数だ。構成を上げる上げないどちらの選択をするかわからないが、決めたら決めたでそれを貫き通しやり遂げることが五輪の表彰台に上る条件になると思う。ぜひいい演技をして念願のメダルをゲットして欲しい。