つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

突き抜けられない男―――マキシム・コフトゥン

今シーズンの演技を見ながらよく考えていたことがある。コフトゥンの強みって何だろう?ということ。スピンはお世辞にもうまい選手だとは言えない。スケーティングも悪くはないが特別に良いとは言えない。やはりどちらかと言えばジャンプの選手だ。
しかし今は4回転2種はそれ程の武器にはならない。SPですらだ。そしてFは重度のエラーのため飛ばない。3Lzと3Loは不格好になりがちとジャンプで稼ぐには弱点も多いと言う現状がある。そうなるとジャンプが強みの選手と言うには弱い印象になる。
強みよりも弱点が目立ってしまうというのは採点競技ではなかなか厳しい状態だ。演技に心情が反映しやすい選手だけになおさら心配になる。シニアに上がった頃のような突き抜けたら凄い選手になりそう感を取り戻して欲しいと願っているが本人の不運も有りその道筋が見えてこないところが悩ましいシーズンだった。
 
フィンランディアT   総合3位 229.57 SP1位 88.26 FS4位 141.31
Sアメリカ   総合7位 230.75 SP10位 67.43 FS6位 163.32
中 国 杯   総合7位 221.43 SP10位 70.10 FS7位 151.33
欧州選手権   総合2位 266.80 SP2位  94.53 FS2位 172.27
世界選手権   総合11位 245.84 SP10位 89.38 FS14位 156.46 
国別対抗戦           212.91 SP11位  64.62 FS10位 148.29
平均       総合   234.550 SP平均 79.053 FS平均  155.497
 
国別を入れなくてもいい気がするけどブラウンとかコリャーダとかPB出しているんで一応含めておく。国別を入れないと総合で平均が3点ちょっと上がり240行かないくらいの得点となる。数字としては中堅レベルだ。ここ数年変わってないなぁという印象の得点になってしまう。
構成や演技の質、ミスの出方も割と似ているので仕方ないのかもしれない。ロシアンは欧州選手権で良い得点が出ないと世界選手権に出られないのが大変だと感じる。その為ここがシーズン一番になってしまうのかもしれない。

<ジャンプ>
SP  4S+3T 4T // 3A =34.45
         
        基礎点    GOE   減点    合計
フィンランディアT  34.45  -0.56  0   33.89  
Sアメリカ  14.80   1.57  0   16.37
中 国 杯  20.25  -0.28  0   19.97
欧州選手権  34.45   2.53  0   36.98
世界選手権  34.45  -1.42 -1   32.03
国別対抗戦  15.23  -4.14  0   11.09
平均    25.605 -0.383 -0.167  25.055  
 
国別を入れないと平均28点弱。コフトゥンは転倒は少ない選手だったりする。しかし今のルールでは抜けの方が遙かにダメージは大きい、特にSPでは。その為ノーカンによる0点が数字を非常に悪くしている。
ジャンプの質そのものもあまり変わらないところが無いとも改善の見込みを感じなくて残念だ。
 
 
FS 
        
        基礎点    GOE  減点    合計
フィンランディアT  48.62  1.46  0   50.08
Sアメリカ  70.68  1.90 -1   71.58
中 国 杯  57.92  2.36  0   60.28  
欧州選手権  63.27  6.31  0   69.58
世界選手権  57.48  3.67  0   61.15
国別対抗戦  63.27 -2.89 -1   59.38
平均    60.207 2.135 -0.333 62.009
 
コフトゥンは典型的なロシアンジャンパーだと思う。ただヤグディンプルシェンコに比べると身長が高い。ただ高いだけでは無く重心も高くなっていてその為にジャンプの安定には小柄な選手よりは困難な要因になっている。
ただそれ以上に問題なのがジャンプ前の動作だと思う。離氷前に前傾になるのはどの選手も同じだがコフトゥンで気になるのは飛ぶ直前まで下を向いていることだ。苦手なジャンプや高難度が特にそうなる傾向にある。ただでさえ上背があるコフトゥンが下を向いてジャンプするわけでそれだけでエネルギーを無駄にしているし力の方向を不安定にさせていると感じる。ジャンプは基本後ろ向きに飛ぶ、一方高跳び型ジャンパーであるので力方向は上に向かわなければいけない。後ろにはねる力が強くなりすぎれば抜けてしまうし上に綺麗にエネルギーが働かないと回転が緩んでそのまま下に落ちてしまう。そういったジャンプの失敗をどれだけ見てきたか・・・
だから足下を見るのでは無く他の選手のように斜め前方くらいに顔を向けられたら姿勢も良くなるし無駄も改善する分少しは変わりそうな気がするのだけど・・・コーチとかは指摘しないのだろうか?

<スピン>
SP
        基礎点   GOE     合計
フィンランディアT   9.7  1.25  10.95  ALLレベル4
Sアメリカ   9.7  0.57  10.27  ALLレベル4
中 国 杯   7.4  0.93   8.33  レベル3 2回 レベル2 1回
欧州選手権   9.7  1.29  10.99  ALLレベル4
世界選手権   9.7  1.71  11.41  ALLレベル4
国別対抗戦   9.3  1.07  10.37  レベル4 2回 レベル3 1回
平均     9.25 1.137 10.387
 
中国杯を除いてはほぼほぼレベルは取れていると言える。あまりGOEを稼げるタイプでは無いのでとにかくレベルを確保するしかない。SPについてはまずまずできているのかもしれない。
 
FS
        基礎点   GOE   合計
フィンランディアT   8.9  0.75   9.65  レベル4 1回  レベル3 2回
Sアメリカ   9.7  0.86  10.56  ALLレベル4
中 国 杯   8.9  1.22  10.12  レベル4 1回  レベル3 2回
欧州選手権   9.7  1.43  11.13  ALLレベル4
世界選手権   9.3  0.78  10.08  レベル4 2回  レベル3 1回
国別対抗戦   6.7  0.64   7.34  レベル4 2回  ノーカン  1回
平均    8.867 0.947  9.814
 
エレメンツが多い分FSでは取りこぼしが増える傾向にある。というよりコフトゥンは割とメンタルで演技が変わるタイプなのでミスが重なってくるとエレメントの質を確保する意識が下がる。レベルの獲得と点数の高さがはっきり連動していることが感じられる結果だ。
 
<ステップ>
SP
        基礎点   GOE   合計
フィンランディアT   3.9  0.93  4.83  レベル4 
Sアメリカ   3.3  0.50  3.80  レベル3
中 国 杯   3.3  0.57  3.87  レベル3
欧州選手権   3.9  1.10  5.00  レベル4
世界選手権   3.3  0.71  4.01  レベル3
国別対抗戦   3.9  0.80  4.70  レベル4
平均      3.6 0.768 4.368
 
レベルはまずまずSPでは取れている。小芝居は上手いし表情も出せるが滑りで魅せられるかというとちょっと微妙。そんな印象のGOEなのかもしれない。
 
FS
        基礎点   GOE   合計
フィンランディアT   4.6  0.56  5.16  レベル2
Sアメリカ   4.6  0.66  5.26  レベル2 
中 国 杯   5.3  0.63  5.93  レベル3
欧州選手権   5.3  1.76  7.06  レベル3
世界選手権   5.3  1.07  6.37  レベル3
国別対抗戦   5.3  0.63  5.93  レベル3
平均    5.067 0.885 5.952
 
FSになると体力がかなり厳しくスピードも落ちやすい。エッジも甘くなりがちでレベルを落とす印象。特に後半のエレメンツはこなしている感がはっきり出るのでGOEがあまりつかない。スピンが上手いと言えない分本来ならここで稼ぎたいところなのだが・・・できていないことが感じ取れる結果となっている。
 
<TES計>
SP  
        基礎点   GOE  減点    合計
フィンランディアT  48.05  1.62  0   49.67  
Sアメリカ  27.80  2.64  0   30.44
中 国 杯  30.95  1.78  0   32.73
欧州選手権  48.05  4.92  0   52.97
世界選手権  47.45  1.00 -1   47.45
国別対抗戦  28.43 -2.27  0   26.16
平均    38.455 1.615 -0.167 39.903
 
ジャンプミスを埋められる要素がないことがダイレクトに見られる結果に。転倒が少ない分GOEがマイナスになることは少ないが抜けやノーカンが埋まられるわけでは無い。強みを強みとして生かせていない辺りが基礎点から10点ほど下がってしまう結果となっている。

FS
        基礎点    GOE  減点    合計
フィンランディアT  62.12  2.77  0   64.89
Sアメリカ  84.98  3.42 -1   87.40  
中 国 杯  72.12  4.21  0   76.33
欧州選手権  78.27  9.50  0   87.77
世界選手権  72.08  5.52  0   77.60
国別対抗戦  75.27 -1.62 -1   72.65
平均    74.140 3.967 -0.333 77.774 
 
結果的にそこそこにいつも落ち着いてしまうコフトゥンの点数。ミスが出る場所が色々あるところがもどかしいシーズンを繰り返す結果なのかもしれない。ここだけは高得点を確実に稼げる、というジャンプが必要と同時に、苦手なエレメンツも最低限の点数を確保できるようにしないとほどほどから脱却できないのかもしれない。

<PCS>
SP
       SS  TR  PE  CC  IN  合計
フィンランディアT  7.88  7.38  7.83  7.71  7.79  38.59
Sアメリカ  7.57  7.07  7.21  7.64  7.50  36.99
中 国 杯  7.61  7.43  7.25  7.54  7.54  37.37
欧州選手権  8.39  8.11  8.46  8.39  8.21  41.56
世界選手権  8.54  8.18  8.36  8.39  8.46  41.93
国別対抗戦  8.00  7.64  7.36  7.75  7.71  38.46
平均      7.998  7.635   7.745   7.903   7.868   39.150
 
2シーズン前と平均はあまり変わらないが全体的に下がり気味だなと感じる。まだSPは短いのでこの位で治まっていると言うべきかも。コフトゥンの5項目はPEこそジャンプの出来で上下するが他は横並びの印象。それはある意味強みというか評価するべき処が取り立てて無いということ表していると言うことなのかも。
 
FS
       SS  TR  PE  CC  IN  合計
フィンランディアT  7.79  7.29  7.63  7.75  7.75  76.42
Sアメリカ  7.82  7.14  7.71  7.61  7.68  75.92
中 国 杯  7.75  7.21  7.57  7.54  7.43  75.00 
欧州選手権  8.61  8.21  8.54  8.39  8.50  84.50
世界選手権  8.07  7.64  7.86  7.93  7.93  78.86
国別対抗戦  7.93  7.21  7.39  7.61  7.68  75.64
平均      7.995  7.45  7.783   7.805   7.828   77.723
 
FSは2シーズン前より確実に落ちてきている。欧州選手権のようなジャンプを纏めた演技で無ければ8点台が出ないというのは若手が伸びてきた今の実情では厳しい。ロシアもジュニアにスケーティングの良い選手が出てきているのでこのまま下降し続けると五輪出場を逃してしまいそうな印象だ。
せめて多少ミスが出てもそれを忘れさせるような勢いのある演技を見せる強さが有れば違うのにと思わないでいられない。
 
<来季に向けて>
4Lzを練習中という情報が入っている。ネイサンを見て技術の向上に目覚めたというのは喜ばしいが・・・3Lzも安定していないが大丈夫かと思わずにいられない。
せっかく大きな上背があるのだからそれを有意義に見せることに注視しても良いかもとは思っている。ただジャンプで大きくミスると目に見えてやる気が失われるというのはシニアになってそこそこ時間の経った選手には喜ばしい態度では無い。
どうしてもコミカル系のプログラムが多いがもう中堅の実績がある選手なので正統派の硬質なプログラムで印象を変えるのも良いのではと思っている。型にきちっとはまった動きの必要なプロなら姿勢を生かす振付になるのかもしれない。出来ればどちらかはロシアン以外の振付にして欲しいのでが、それは難しいかな。
ただ現状背後にの火がついた状態なので奮起してプログラムを完遂する意識が無ければ五輪どころか欧州選手権にも出場できなくなるかもしれない。何とか意識と技術が改革されることを願っている。