つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

時にはあれこれ考えてみたりする

ワールドですっかり今シーズンが終わってしまってなんとなく気が抜けている。国別も結局リアルタイムではあまり見れなくて・・・とりあえず日本優勝おめでとう!出場選手の皆様、シーズンお疲れさまでした。おいしいもの食べて来季に備えてください。

 

ワールドが終わった後だったか、北京以降のルール変更について記事が上がった。文章だけではよくわからないが、今のSP・FSという2プログラム採点ではなく技術と芸術に分けるという案だ。どちらか片方だけの参加もOKということだった。

漠然としすぎて現状どういう感じになるのか想像できないのだが、読んで最初に浮かんだのは「面白そうじゃないなぁ」という感想だった。何しろSP5位からの逆転優勝という劇的な試合を見た後だ。1プログラムのみで順位を決めるということはあの驚きがなくなるわけで魅力が半減してしまう気がしたのだ。

次に思ったのは「枠ってどうなるの?」という疑問。毎年ワールドで翌年の出場枠が決まるが、2つの採点する試合においてそれぞれに枠が作られるのだろうか?

そして一番気になったのは「芸術」だ。何をもって芸術として何を良いと数値化するのか。その辺りが全く分からないので良い改正かどうかが判断できない。今のところあまり海外でも話題になっていないのでとりあえず判断は保留。もう少し情報を待つことにしする。

 

ただ・・・ルールの大きな改正が必要な状況であることは確かだ。特に男子シングルでは深刻な状況だ。ジャンプが高難度化しすぎてPCSとのバランスが取れなくなっている。点数が限界を迎えているのは他のカテゴリも同じなのだが、男子は特にジャンプに偏りすぎている。平昌後に1つ減るがそれはむしろ加速化させそうな印象が今からすでにある。PCS係数を変えるという話も出ているがどこまで有効かわからない。そういったこともあり先のような新ルールが考案されているんだなというのは理解できる。ただスポーツでありオリンピック種目であるからテクニカルに限界を持たせるということには是とは言えない。スポーツである以上技術の向上は必要でバレエやピアノのコンクールとは違うのだから・・・

 

以前から考えていたことがある。男子シングルのTESとPCSのバランスどう改良したらしたらいいのか。ジャンプの比重が大きすぎるから点数を下げるということが最も簡単だ。しかし基礎点は男子だけではなく女子でもペアでも利用されている。GOE係数との兼ね合いもあるし、下手に調節してバンクーバーの頃のように低難度をまとめた方が得というようなことになったら目も当てられない。現在の基礎点も4Aを除けばほどほど妥当な数値だと思う。そんなわけで基礎点や現在のGOEのやり方を変えないという前提で考えると道は2つしかない。一番簡単なのはPCS係数を変えること。現行のSP×1、FS×2を1.2や2.4に変える。そうすればTESとPCSのバランスは上位ではかなりとれるようになるだろう。ただしこのやり方ではジャンプの偏重は変わらない。スピンステップが苦手だと感じたらまずジャンプという選手が多く出てくるだろう。そういう意味ではあまりいい対策だとは言えない。

そんなことで私が考えるのは単純に「ジャンプの点数を下げる」という方策だ。現行の基礎点やGOEは変えない、ただ「ジャンプの獲得点を下げる」。そうすればPCS係数は現行通りでいいし、ジャンプの比重が下がる分スピンステップの価値が上がるわけだ。ではどうやって下げるかといえば、実に簡単、「獲得したジャンプの得点を決めた係数でかける」というやり方だ。4/5でも3/4でもいいのだがとりあえず2017世界選手権の羽生のFSで計算してみる。

 ジャンプ  スピン ステップ  TES  PCS  合計
 104.67 + 12.65 + 8.80 = 126.12  97.08  223.20 

これをジャンプで獲得した点数のみ係数をかける

ジャンプ  スピン ステップ  TES  PCS  合計
 83.74 + 12.65 + 8.80 = 105.19  97.08  202.27 ×0.8の場合
 78.50 + 12.65 + 8.80 =  99.95  97.08  197.03 ×0.75の場合
 73.27 + 12.65 + 8.80 =  94.72  97.08  191.80 ×0.7の場合

なんとなくだがいい感じに収まってきた感じがする。

SPはフェルナンデスで計算してみるとこうなる
ジャンプ  スピン ステップ   TES  PCS  合計
 43.17 + 11.62 + 6.00 = 60.79  48.26  109.05
 34.54 + 11.62 + 6.00 = 52.16  48.26  100.42 ×0.8の場合
 32.38 + 11.62 + 6.00 = 50.00  48.26   98.26 ×0.75の場合
 30.22 + 11.62 + 6.00 = 47.84  48.26   96.10 ×0.7の場合

係数的にはFSと変わりなくできそうな予感だ。しかもFSよりも格段にスピンステップの比重が上がる。基礎力を図るには向いていると感じる。

ジャンプの獲得点に対し×0.〇で下げることの意味としては基礎点を変えないためジャンプ難度を求めたければその姿勢を変えなくても構わないということ。ただ現在ほど効果が大きくないだけだ。そして質をよくしてGOEを多く得ることが大切という点も変わらない。選手にとって負担は少ないと感じる策だがどうだろうか?

試しに2017世界選手権で上位の成績で検討してみる。今回は0.75で計算してみた。

         TES PCS 減点 総合計 → TES PCS 減点 総合計
1位 羽生 結弦 178.16 144.43 -1 321.59   143.75 144.43 -1 287.18
2位 宇野 昌磨 179.19 140.12  0 319.31   144.25 140.12  0 284.37
3位 ボーヤン・ジン 176.59 126.99  0 303.58   141.36 126.99  0 268.35
4位 フェルナンデス  159.41 142.78 -1 301.19   129.34 142.78 -1 271.12
5位 P・チャン 152.22 142.94  0 295.16   124.00 142.94  0 266.94
6位 N・チェン 165.83 127.89 -3 290.72   133.29 127.89 -3 258.18
7位 ブラウン  136.27 134.30 -1 269.57   112.72 134.30 -1 246.02
8位 コリャーダ 133.26 125.21 -1 257.47   108.82 125.21 -1 233.03
9位 レイノルズ 139.54 114.30  0 253.84   112.82 114.30  0 227.12
10位 ビチェンコ 130.08 115.88  0 245.96   105.09 220.97  0 220.97
11位 コフトゥン 126.05 120.79 -1 245.84   102.51 120.79 -1 222.30

予想した通りジャンプに0.75をかけると3位のボーヤンと10位のビチェンコの順位が下がる。(ちなみにビチェンコはミーシャよりも下回るため12位になる)
10位以下だとヴァシリエフスとテンとヘンドリクスが1つ順位が上がることになる。ビチェンコはスピンステップが弱いことで下がり、ヴァシリエフスやヘンドリクスはその辺りが強いから上にきてフェルナンデスとテンはPCSが高いことで上昇するというわけだ。バランスの取れた選手を上位にあげたいというジャッジの意志にはある程度該当しているのではという印象がある。
点数を見て面白いのはボーヤンとチャンが差がなくなるということ。そして上位6強とブラウンの差がかなり縮まった反面コリャーダとの差が広がったこと。博打的高難度を飛ぶよりエレメンツの質をよくしてGOEを稼ぐことに意味がある結果といえないだろうか?

 
 
「技術」「芸術」と分けて採点するという競技となれば仮にその2つを勝って世界王者になっても今までとは違う競技になってしまう。旧採点から新採点になっていろいろ見方は変わったがフィギュアスケートという競技そのものは継続されてきたはずだ。しかし先ほど提案されたものはあまりにも違って見えることが不安でならない。新採点になって変わってしまった部分もあるがよりよくなった部分も多かったはず。そして今の選手たちはその採点法に合わせて訓練してきている。だとしたら運用レベルの修正の方が良いのではないかと今の段階では思っている。全体的に高難度になってはいても芸術性が失われた演技というのはそれほどないはずだから。違うスポーツに変わってしまえば価値観が見えない中で戦うことになる今のノービス・ジュニア世代の負担も大きい。なるべくならば流れの先にある道筋の見える変革をしてほしい、こんな風にしたらあんな風にしたらとあれこれ思い浮かべながら願っている。