つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

賽を投げる―――羽生結弦新シーズンプログラム発表に寄せて

昨日は徹夜で仕事という方もいらっしゃったのでは。思い起こせば昨年は夜眠れずにこそっとPCを立ち上げたらちょうどツイッターで情報が流れてきたんです。確か2時40分過ぎだったかと。
しかしながら今年はなかなか情報が出ず。私も朝起きてまだどこにも出てなかったので戸惑いました。(結局8時半過ぎに会社のPCで見ましたよ)
てっきり新作が来ると思っていたのでSEIMEI再演は多少驚きました。しかし元々それっぽい情報が流れていたこともあり残念と言った感情はありませんでした。というよりむしろ「おお!ルビコンを渡った!!」と言う感想を抱きました。全世界のライバル選手達に自分が勝つ戦いの宣戦布告をした様に思ったのです。
なにしろバラ1とSEIMEIはどちらもノーミスし最高得点を獲得したプログラムです。羽生は音にこだわりが有りそれ故にプログラムが上手く行かないこともありますが、それをすでに乗り越えた選曲でしかも評価としても最高の物を受けている。すでに出した330点強の上を目指すことを宣言したに等しい。そして今現在320点を超えた選手は羽生以外にいません。構成を上げれば可能かもしれませんがリスクの高さは羽生以上であることは明らかです。
「自分は勝ちに行く。そして必ず勝つ!!」
再演だったらバラ1の時に一緒に発表すれば良かったのではと思う人もいるかもしれませんが、わざわざ別に行ったことはこういう意思を示す意味合いが強かったためでしょう。ルビコンを渡り賽を投げた、絶対に引かない戦いに対する決意と宣言を行ったのだと私は勝手に思っています。
 
それでも個人的な感想を言わせてもらえれば、再演だったら出来ればオペラ座が良かったなぁ・・・
別にオペラ座のプログラムの方が好みだとかSEIMEIがいまいちだからということではありません。どちらのプログラムも編曲は良いですし振付も良いところいまいちなところそれぞれにあると思っています。プログラムの評価としては私の中では同じくらいになっています。

ただ・・・たった一つだけオペラ座がSEIMEIを大きく上回る要素があります。それは「衣装」。

私はとにかくあの2代目オペラ座衣装が好きでした。ネット上では白虎とかホワイトタイガーなどと呼ばれていたあれです。あれを上回る羽生衣装は今のところ私の中では存在しません。
デザインが良かったこともありますが、一番評価が高い理由は「羽生結弦という選手の弱点を失わせた衣装」だからです。海外を戦うアスリートとして男子シングル選手として羽生結弦という選手はどうしてもその細い体型に目がとまります。ジャンプの回転には適していますが一方でか弱さといった印象も与えてしまう。ただでさえ東洋人は若く見られるが羽生は輪をかけて幼く見えるところが昔からあります。しかし五輪王者としてトップ選手としては大人の男性でなければならないでしょう。若々しさや少年体型的な印象をいつまでも持たれることは良いことではないと思います。
そういう意味ではあの2代目オペラ座羽生結弦を非常に大人びて見せた衣装でした。オペラ座の怪人の衣装としてはどうかという意見はありましたがあの衝撃の中国杯のイメージを打ち消すためにも全く印象の違う衣装を用意したことは非常にベストだったと思います。
赤いオペラ座は首元が詰まっていたためかあるいは人形衣装的だったためか若干若く見えましたが、2代目は凝ってはいるが首元すっきりで年相応に感じました。少なくとも若すぎることもかわいらしくも見えなかった。急速に大人になった印象を植え付け「若い男性」という部分をプラスに見せた秀逸な衣装だったと今でも高い評価をしています。再演だったら同系統の衣装になるかもという期待が多少あったのでその部分では少し残念です。
 
SEIMEIの衣装は狩衣をイメージしたよくできたものではあったと思います。刺繍も豪華だし配色もなかなか面白いものでした。ただ・・・2代目オペラ座と比較してしまうと「大人」という面では物足りません。狩衣をイメージしたとはいえ形としてはチュニックだからです。そしてチュニックは大人の男性が着るというイメージはほぼありません。おそらく今シーズンも基本の形は変わらないと思います。それは仕方ないので色彩とデザインでどこまですっきりとした大人感を出せるのかを多少の心配もありますが期待することにします。
 
構成を考えると、まぁ最悪だったなという感想に尽きます。もっとも5クワド構成の場合3種の時点で「良くない」という判断になってしまいます。もともと4Lzを入れることに否定的であったから予想はできましたが、やっぱりねとため息をついてしまいました。
ということで皆様今シーズンもしっかり後半4S前に祈る日々になりそうです。とはいえ昨季後半には成功しましたし、SEIMEIでは2回後半4Tコンボを成功させている。成功のイメージはありますので昨シーズンよりは大丈夫ではと思っています。REPの恐怖は今シーズンも付きまとうので見ている側としては胃を丈夫にしておきましょう。それしかないです。
 
滑りやすい曲という発言がありましたので飛びにくいとか感覚がつかめないという心配は少なそうです。最高点を出した2つのプログラムを実行する意味は330点を下限にするという意思もあるのでしょう。今シーズンこの境地までたどり着ける選手が何人出るのかわかりませんが俺はこの上に行くぞという決意を羽生が見せた以上みなそれを目指しシーズンを進むことになりそうです。
 
進化したバラ1がSEIMEIがどんな未来を描き出すのか。そしてそれを上回ろうとする選手たちがどう戦っていくのか・・・高難度高品質の最上の演技が乱れ飛ぶシーズンであることを願ってやみません。