つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

平昌五輪2018年 SPデータ

いつの間にかというかあっという間に3月に。まだオリンピックが終わったばかりの気がするんですが・・・

オリンピック期間から幾つか記事を書いたのですがPCの不調で保存できなかったり文字化けして訳が分からなくなってしまったり・・・何度も続いて嫌になってしまいました。まだしばらくはこのPCを使わなくてはいけないため当面だましだましの更新になりそうです。コメント等頂きながらなかなかお返事できずに申し訳ありません。

 

 

五輪には魔物がいる、と昔から言われてきた。
優勝候補と呼ばれる選手が思いもしないミスを犯してしまうということも何度も見てきた。ただ男子シングルに限れば4回転という元々ミスの多いエレメンツがあることからそれが五輪特有のそういった雰囲気によって引き起こされるかはわからない部分がある。
それでもソチの時のようにいきなりプルシェンコが棄権してしまったり、ミスの多い演技がぼろぼろ続いていくと言う流れは今回はあまりなかった。魔物にやられた、と言える選手はせいぜいSPのネイサンとテン位だろう。そういう意味では見ている人には面白い五輪男子シングルだったのでは無いだろうか?
ただ一方でメダル有力選手が過去にないほど多く存在した大会であったために国を背負った各国ジャッジの思惑が透けて見える採点の大会でもあったと思う。あとからあまりぐちぐち言いたくは無いが、上位各選手細かく見ていくと色々勘繰りしたくなる数字が並んでいる。
ただ各国ジャッジが自国の選手上げで何とか点数と順位を調整しようとしても羽生の連覇を否定することは出来ない。女子シングル・ペア・アイスダンスと僅差の勝負が続いたが男子シングルだけは10点以上の大差となった。羽生結弦が際立った技術と表現力の持ち主であることは、多少のごり押し程度では覆しようのない事実であると言う事だろう。五輪の金メダリストはそういう強さを持ち合わさなければいけないということが分かった大会でもあった。

 

 


<ジャンプ獲得点数上位>
           基礎点  GOE     計    減点
  1位 羽生結弦    35.91  8.28  44.19
  2位 ボーヤン・ジン 37.55  5.14  42.69
  3位 フェルナンデス 34.45  7.14  41.59
  4位 アリエフ    37.55  3.86  41.41
  5位 宇野昌磨    37.71  3.28     40.99
  6位 V・ゾー    38.25   -4.89   33.36
  7位 ビチェンコ   30.13  0.87   31.00
  8位 ケリー     29.95  0.90   30.85
  9位 メッシング   29.70    -0.07  29.63  -1(28.63)
10位 サモヒン    31.59    -2.72  28.87  -1(26.87)     
11位 ブレジナ    26.13   2.43  28.56
12位 ヘンドリクス  25.44   2.80  28.24
13位 J・チャ    24.70   3.50  28.20  

3つしかジャンプが無いSPの場合、ジャンプミスはかなりの痛手となる。ただ近年SPでも2クワドが普通になってきている。その場合基礎点の高さである程度であればフォローできてしまう。それは3つともマイナスがついているのに6位に入ったヴィンセントを見てもわかる。同じように3つとも失敗したネイサンはコンボ分の基礎点が無いためこの中に入ってこられない。基礎点を大きく損なうと高難度も意味が無い。
ビチェンコ以下は4回転入りのミス有り選手と4回転の無いノーミス選手のせめぎ合いとなっている。4回転の無い選手は勿論GOEが付いているが係数の関係でそれ程大きくは伸ばせない。ジャンプだけで30点はかなりハードルが高い事がわかる。
上位は4Lz入りのボーヤン・アリエフVS4T4Sの羽生・フェルナンデスの戦いが面白い。質という点では羽生とフェルナンデスに軍配が上がるためSPではまだ十分戦えることがわかる。ただアリエフは4回転の単独にしっかりステップを入れてきているので体力と確実性を伴えば将来大きく伸びる印象がある。


<スピン得点上位10人>
           基礎点 GOE  合計
  1位 リッポン     9.7  3.57  13.27  
  2位 コリャダー    9.7  3.35  13.05
  3位 羽生結弦     9.2  3.79  12.99
  4位 P・チャン    9.3  3.49  12.79
  5位 宇野 昌磨    9.7  3.07  12.77
  6位 メッシング    9.7  2.71  12.41
  6位 ヴァシリエフス  9.7  2.71  12.41
  8位 フェルナンデス  9.4  3.00  12.40
  9位 ボーヤン・ジン  9.7  2.58  12.28
10位 J・チャ     9.7  2.43  12.13

リッポン・コリャダー・羽生と妥当なメンバーが上位を占めている。羽生はラストのコンビネーションでレベルを落としたがGOEはNo.1だった。
今回ALLレベル4はほぼ半数の14人とスピンレベルを取るのはもう当たり前の時代になった。
ちなみに最下位はかつてスピンが得意だったマルティネス。急な出場で練習がしっかり出来なかったのだろう。それでもビールマンを見せて盛り上げた。五輪出場でもう一度フィギュアスケートを頑張ってくれる事を期待する。
テンは1つノーカンになってしまいブービーに。これもSP落ちの大きな原因になった。

 

<ステップ得点上位10人>
             基礎点  GOE  合計
  1位 羽生結弦      3.90  2.10  6.00
  2位 P・チャン     3.90  1.90  5.80
  2位 フェルナンデス   3.90  1.90  5.80
  4位 コリャダー     3.90  1.70  5.60
  5位 リッポン      3.90  1.60  5.50
  5位 ヴァシリエフス   3.90  1.60  5.50
  7位 ボーヤン・ジン   3.90  1.40  5.30
  7位 N・チェン     3.90  1.40  5.30
  9位 ハン・ヤン     3.90  1.20  5.10
10位 リッツォ      3.90  0.90  4.80


レベル4が10人、3が13人、2が7人という結果。そしてステップはレベルでGOE係数が変わるのでSPでレベル3が4を上回るのはほぼ出来ない。
ステップは羽生・チャン・フェルナンデスのベテランが上位。
そして相変わらず似た点数のボーヤンとネイサン。点の取り方も実際出た点数も似ているのに何故ボーヤンはネイサンほど持ち上げられないのだろう?


<TES上位10人>
             ジャンプ  スピン   ステップ  計     減点
  1位 羽生結弦    44.19  12.99     6.00  63.18
  2位 ボーヤン・ジン 42.69  12.28  5.30  60.27
  3位 フェルナンデス 41.59  12.40  5.80  59.79
  4位 宇野昌磨    40.99  12.77  4.37  58.13
  5位 アリエフ    41.41  11.48  4.09  56.98
  6位 V・ゾー    33.36  11.27  3.87  48.50
  7位 メッシング   29.63  12.41  3.46  45.50  -1(実質44.50)
  8位 ケリー     30.85  10.84  3.80  45.49
  9位 P・チャン   26.49  12.79  5.80  45.08  -1(実質44.08)
10位 リッポン    25.71  13.27  5.50  44.48
11位 ブレジナ    28.56  11.55  4.23  44.34
12位 ヘンドリクス  28.24  11.63  4.30  44.17

1位から10位レベルでTES差が約20点・・・ソチから思えばTESの伸びが恐ろしい。しかしスポーツという意味ではより高い点数を取った者が勝ちとわかりやすい上達の目安にはなる。
ソチから見て大きく伸びているのは上位5名のジャンプ点数で有り、SPではまだ4回転無しでもエレメンツの質が良ければそれなりの上位にはこれる。
この中で最も構成が高いのはヴィンセント、3ジャンプともマイナスでもこの位置に来れるというのは若手ジャンパーには魅力に感じるかもしれない。ただこの時期に回転不足が多いと言う事は今後体型がしっかりしたとき大丈夫かなと少し心配にはなる。飛び方も含めて4年で改善して欲しい。


<GOE獲得上位10人>
                 ジャンプ  スピン  ステップ   計
  1位 羽生結弦     8.28   3.79  2.10  14.17 
  2位 フェルナンデス  7.14   3.00  1.90  12.04
  3位 ボーヤン・ジン  5.14   2.58  1.40   9.12  
  4位 宇野 昌磨    3.28   3.07  1.07   7.42
  5位 J・チャ     3.50   2.43  0.86   6.79
  6位 アリエフ     3.86   1.78  0.79   6.43
  7位 リッポン     1.01   3.57  1.60   6.18    
  8位 ヘンドリクス   2.80   1.93  1.00   5.73 
  9位 ブレジナ     2.43   2.35  0.93   5.71
10位 M・ジー     1.57   2.14  1.21   4.92

毎年こうしてデータを纏めていて羽生とフェルナンデス(以前はチャンも)のGOEは連動しているのかと感じる事が多い。羽生の方が滑走順が早いことが多いのでその出来と比較してフェルナンデスのGOEがついている感じだ。
今回の場合羽生がスピンレベルを一つ落とした以外全てのエレメンツの質が良かったためフェルナンデスも悪くないけどそこまで付けられないと言うような採点になった.。ジャンプもスピンも羽生の方が若干構成が高いという点もあるがメダルが欲しい各国がフェルナンデスまで高めに出してしまうと自国の選手が厳しくなると出し渋った部分もあるかと。
ボーヤンと宇野が共に見た目ノーミスで1点差ほどの点数が出た。以前は見た目ノーミスでも4~5点ほどの差がついたのにここまで近くなった原因はここにあるとわかる。宇野はステップ3で3AもこらえたものだったのでGOEが想定より低めだったが一方でボーヤンはしっかりGOEを獲得してきた。PCS差は何故かまだ大きくあるがGOEでボーヤンは迫る力を得てきたと言う事。北米から評価の低いボーヤンではあるが滑りを改善しスケーターとしても表現者としても眼に見えて成長を続けている。欠点を改善できないままだと今後PCSでもボーヤンに並ばれる可能性もあるだろう。ジャンプ構成が伸ばせるボーヤンの方が伸びしろが大きいといえる。
5位はジュンファンというちょっとびっくりに結果に。身長が伸びたため4回転他のジャンプは多少不安定ではあるがクリケットで練習しているだけあって滑りはまずまずである。もう少し魅せ方を意識的に改善できれば印象も変わるかと。
アリエフはロシアンの割に滑りは良いし単独ジャンプにステップをしっかり入れてくるという新採点で点数の出るタイプの若手だ。後はジャンプの成功率と体力の問題。雰囲気もあるし姿勢も綺麗な選手であるので上手く育てて欲しい期待大の選手だ。五輪という大舞台でSPでPBを出したという経験を今後に生かしてほしい。


<PCS上位10人>
              SS  TR   PE CC IN  計
  1位 羽生結弦     9.71 9.43 9.86 9.75 9.75 48.50    
  2位 フェルナンデス  9.36 9.36 9.71 9.68 9.68 47.79     
  3位 宇野昌磨     9.29 9.00 9.25 9.29 9.21 46.04  
  4位 P・チャン    9.36 9.07 9.00 9.29 9.21 45.93 
  5位 コリャダー    8.96 8.54 8.64 8.82 8.89 43.85  
  6位 リッポン     8.57 8.43 8.64 8.68 8.93 43.47
  7位 ボーヤン・ジン  8.79 8.29 8.82 8.54 8.61 43.05
  8位 M・ジー     8.18 8.18 8.54 8.46 8.79 42.15   
  9位 アリエフ     8.43 8.11 8.50 8.50 8.46 42.00
10位 N・チェン    8.46 8.32 8.14 8.57 8.39 41.88

 

羽生とフェルナンデスはどちらも見た目ノーミスだとこういう点になるんだというわかりやすい採点かと。二人の最も大きな差はSSだが、9人中5人のジャッジがここで0.5の差を付けている。他の項目では同等か0.25差というものが多いためジャッジとしてはスケーティングは羽生の方が上という認識がありそう。プログラムとしてはどちらも似合ったものなので同等の良い出来の場合はジャッジの好みも関わってくる。五輪という格の高い場合だと正統派クラシックの羽生の演技は評価しやすいのかもしれない。
宇野はフランスジャッジが高く浮いている以外はほどほど9点台という認識があるようだ。数字の並びで見ると画一化されている印象がある。
ボーヤンは中国が高くスペインとカナダが格段に低いというわかりやすい採点。それを除くと8点代半ばから9点というシニア入りの頃を思えば頑張ったという数字となっている。
ネイサンは若干スペインとカナダが低くフランスが高い印象があるがジャンプ3ミスレビュー付き演技ではボーヤンの下になっても文句は言えない。何しろ二人の最大の差はPEであるから。ただネイサンはSPプログラムの評価は高いんだなという印象はある。

 

ジャッジの匿名性が廃止されて最初の五輪となった今回、男子シングルから見えたのは各国の推し選手とそれに対抗する選手へのあからさまな採点の違いだった。
しかしそれでも最も各国が危険認識していた羽生がノーミスしてしまうとあからさまに下げられないと2と3がずらっと並んだプロトコルを見て感心してしまう。最終的に常に勝ち続けるためにはジャッジにマイナスさせる要因を持ってはいけないと言うことがよくわかる。ジャブジャブに上げ採点せずとも世界最高点にならなくてもトップに立ててしまうという結果になった。
一方でその割を食った形になったのがフェルナンデスでは無いだろうか?羽生がどこかでミスってくれれば2017年ワールド並みに出てもおかしくない出来だったのに合計で108を下回ることになった。表彰台に上らせたい選手がいる国は羽生よりは下という相対評価的な採点になった印象だ。結果から見ればこのSPの採点がフェルナンデスのメダルを銀から銅に変えたのかもしれない。色にはそこまでこだわらない選手だったからまだ良かったが、こういったナショナリズム的な認識が見えることは採点競技としてはアウトだろう。ISUは早急な改善が必要だ。
第4グループまでは割と気前よく点を出し五輪採点だなぁと感じていたが羽生で通常採点になってしまった。五輪採点的に見ていた各国の解説者がてっきり世界最高点が出ると思っていたのが肩すかし食った感じになった。五輪という大舞台だからそのまま気前よく出せば良いのにと思ったかもしれないが、そうできないところが五輪のメダルだったのだろう。上位が渋めに採点されたため結果的にネイサンは4位ボーヤンにあそこまで肉薄できたのだろう。