つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

平昌五輪2018年 FSデータ

ジュニアワールドが始まっています。kamiyannはやはりコストルナヤが好きですね。来季はシニアに上がるのかな?女子のロシア1強はまだまだ続きそうな気配。いよいよ女子も4回転時代に入るのか?日本勢も是非道を拓くために頑張って欲しいです。

ジュニアが終われば次はワールドですが世界チャンプが一人も出場しないことが確定しました。誰が勝っても初タイトル、新時代の開幕となるか。その前に五輪の集計を。

 

<FS順位>
             TES  PCS  減点   合計
  1位 N・チェン    127.64  87.44      215.08
  2位 羽生 結弦    109.55  96.62      214.45
  3位 宇野 昌磨    111.01  92.72   -1  202.73
  4位 フェルナンデス  101.52  96.14      197.66
  5位 ボーヤン・ジン  109.69  85.76   -1  194.45
  6位 V・ゾー     112.24  79.92      192.16
  7位 コリャダー     91.62   87.94   -2  177.56
  8位 P・チャン     81.56   91.86      173.42
  9位 ビチェンコ     89.08   83.80      172.88
10位 リッポン      84.47   86.94      171.41
    
    
SPと同じく200点超えが3人も出た。来季以降ジャンプが減り基礎点も下がると言う事でネイサンの得点がオリンピックレコードとして長く残りそうだ。SPの出来があまりにも酷くほぼ表彰台が無理という状況になったからこそ出来た演技ではあるが今後に期待させるFSが出来たことは良かっただろう。
怪我が直りきってなく練習も万全で無かった羽生にとっては転倒なくジャンプを回りきっただけで十分だったのだろう。現実路線でFS1位まで望まず挑んだことは良かったといえる結果だ。
個人的には平昌FSは第2グループのビチェンコ→サモヒン→ネイサンの流れが非常に良かった。スピンもステップもあまり点の取れないビチェンコが10位以内に入っているという事が素晴らしい。ここのところ深みにはまっていた感じのサモヒンが自国の先輩の良い演技に触発されたような演技を見せた。この経験が今後に生かされてくるのではと非常に楽しみになっている。
SPと違ってFSは4回転無しに上位に来ることが難しい。入賞以上を目指すためにはやはり4回転は必須な時代であることがよくわかる。



<ジャンプ得点上位10人>
            基礎点  GOE   計   減点
  1位 N・チェン   99.01    7.67    106.68
  2位 V・ゾー    95.59   -1.11   94.48
  3位 ボーヤン・ジン 88.10    3.68   91.78  -1(実質90.78)
  4位 宇野 昌磨   88.14    2.37   90.51  -1(実質89.51)
  5位 羽生 結弦   77.26  10.49   87.75
  6位 フェルナンデス 69.11  10.66  79.77  
  7位 ビチェンコ      65.86    7.68  73.54
  8位 サモヒン    67.04    3.74  70.78
  9位 コリャダー   73.86   -3.70  70.16  -2(実質68.16)
 10位 アリエフ    69.59  -2.67  66.92  -2(実質64.92)
11位 J・チャ    65.39    1.52  66.91  -1(実質65.91)

 

ジャンプ獲得点としては歴代最高だろう。2017年ワールドの羽生を2点上回っている。ただミス有りでの点数のためにGOEはそれ程多いとはいえない。SOが無くてもGOEが10点ほどなので質としてはそこまで良いジャンプでは無いといえる。次の五輪でメダルを取るためにはこの高構成を質良く飛べるようになることが課題であると言える。
この一覧を見て目立つのは5位6位の羽生・フェルナンデス。ジャンプの多いFSでもGOE10点超えはなかなか出ない。(過去羽生・チャン・フェルナンデス・ボーヤン位かな?)マイナス2つ有る羽生の質の良さが際立っていることがわかる。それでも二人がこの順位に甘んじたのは基礎点を失っているから。羽生はセカンド2TとRPEで5点ほど、フェルナンデスは2S抜けで10点ほどマイナスになっている。基礎点に元々差がある以上更なる損失は痛いと言う事。若手のPCSが上がりやすい現状はフェルナンデスやチャンのようなベテランにはきつい時代だ。
一方でそこまで構成が高くなく更に質もそれ程のビチェンコが7位に入っていると言う点も面白い。基礎点や質の良さの次に来るのは確実性の高さと言う事か。基礎点の下がる来季以降はそういう部分の武器にベテランは戦っていくことになるのかもしれない。(ただしビチェンコにはちょっと辛いか?)

 

<スピン得点上位10人>
            基礎点 GOE  合計
  1位 リッポン    10.20  3.50   13.70  
  2位 メッシング   10.00  3.28   13.28
  3位 羽生結弦       10.00  3.07   13.07
  4位 宇野昌磨      9.70  2.93   12.63
  5位 P・チャン     9.30  3.28   12.58
  6位 N・チェン   10.20  2.36   12.56
  6位 コリャダー     9.70  2.86   12.56
  6位 ヘンドリクス    9.70  2.86   12.56
  9位 ヴァシリエフス   9.80  2.57   12.37
10位 フェルナンデス   9.10  2.85   11.95

ALLレベル4は9人かな?レベル認定はちょっと厳しめ、ただしGOEは(ボーヤン以外)出ている方では無いかと。3Lzをミスった羽生は直後のシットで良く4を取ったなと、入りが遅れた分通常より早く回って曲調と合わない部分が出たので若干GOEが低めに。元々シットはGOEがつきにくいエレメンツだが変える気は無いでしょうからスピンについてはレベルとGOE平均1.0以上有れば良いのかな?ただSPの時も感じましたが羽生比であまり良いスピンでは無かったのは足が回復してなかったからでしょう。ラストであそこまでぶれるのは久しぶりに見た気がします。
フェルナンデスが3位になったのは4S抜けが大きいですが地味にこのスピンレベル落としも合ったかと。GOEがついたスピンでレベルを落としたというのは演技の質という点で上回っていただけにもったいなかった。ただ元々それ程上手くなかったスピンでここまでGOEが付くようになったというのは感慨深いものがあります。
スピンの11位はボーヤン(11.41ALLレベル4)。基礎点もあまり変わらない同じ1点転倒の宇野と差がつく原因がPCS以外ではこの辺りかと。レベル認定には問題が無いが大きくGOEを付けられるかと言えば難しい。スピンについては淡々と回っている感が強い。上手さではネイサンと同レベルかなと思うのでがスピン中に回転速度を上げる、もしくは一つ一つのポジションの飾り付けなどの工夫が欲しい。
ちなみに最下位は貫禄のビチェンコさん。ただむしろレベル気にして取っていた時より演技が生き生きしている気がするので彼にとってはこれもありな戦術かもと言う気はします。ただ来季以降はジャンプが減る分スピンステップに力を入れないと点数・順位的に厳しくなってきそう。



<ステップ得点上位10人>
              基礎点  GOE   合計
  1位 フェルナンデス  5.90   3.90   9.80
  2位 コリャダー    5.90   3.00   8.90
  3位 羽生結弦     5.30   3.43   8.73
  4位 リッポン     5.90   2.70   8.60
  5位 ヘンドリクス   5.90   2.60   8.50
  6位 N・チェン    5.90   2.50   8.40
  6位 ヴァシリエフス  5.90   2.50   8.40
  6位 M・ジー     5.30   3.10   8.40
  9位 サモヒン     5.90   2.20   8.10   
10位 P・チャン    5.90   2.10   8.00
10位 アリエフ     5.90   2.10   8.00

フェルナンデスが大差で1位、流石といった感じ。レベル4は11人とまずまず取っています。
1点以上羽生はフェルナンデスと差がありますが、実のところGOEに関しては全く同じジャッジスコアだったりします。(どちらも∔2が二人残りは全員+3)ステップはレベルで係数が変わるのでGOEが同じでもこういう差がつくと言う事です。ただSEIMEIに関してはレベル4を取れた事が1度しか無いのでこれは織り込み済みでしょう。怪我のため練習も制限されていたことを思えばこれだけ取れればOKかと。
今回唯一のコレオ満点はミーシャ・ジー。自分の強みを存分に見せて評価を受けるというのは有りな作戦かと。こういった選手に光を与えたいという側面で「技術」「芸術」という話が出ているのだろうと理解します。ただし「芸術」を評価するためには「技術」以上にシビアな基準が必要になるでしょう。それを提供できるか、何を持って芸術というのかをはっきり提示する必要がある。
本来ならこの分野でフェルナンデス・羽生と肩を並べるチャンが10位、レベルは取れたもののステップでバランスを崩してGOEがほとんど取れなかったことが大きかった。
ステップに関しては2つしか無い&基礎点GOE共にそれ程大きくないと言う点において差がそれ程つかないエレメンツになっている。GOE幅が拡大するに当たってステップの基礎点や評価のポイントを大きく見直して欲しいと感じるエレメンツではある。基礎点狙いでとりあえずジャンプという若手の風潮を自制する位基礎点を上げてみても良いのでは?と思います。時間が減ることで今より短い省エネコレオが増えることが無いようなルール作りをお願いしたい。


<TES上位10人>
             ジャンプ   スピン   ステップ   計     減点 
  1位 N・チェン     106.68  12.56  8.40 127.64   
  2位 V・ゾー     94.48  11.06  6.70 110.59
  3位 宇野昌磨     90.51  12.63  7.87 111.01 -1(実質110.01)
  4位 ボーヤン・ジン  91.78  11.41  6.50 109.69 -1(実質108.69)
  5位 羽生結弦     87.75  13.07  8.73 109.55
  6位 フェルナンデス  79.77  11.95  9.80 101.52 
  7位 コリャダー    70.16  12.56  8.90  91.62 -2(実質 89.62)
  8位 ビチャンコ      73.54     8.83  6.71  89.08
  9位 サモヒン     70.78  10.15  8.10  89.03 
10位 田中刑事     66.75  11.09  7.80  85.64 -2(実質 83.64)
11位 アリエフ     66.92  10.47  8.00  85.39 -2(実質 83.39) 
12位 J・チャ     66.91  10.33  7.70  84.94 -1(実質 83.94)
13位 メッシング    64.40  13.28  7.20  84.88 
14位 リッポン     62.17  13.70  8.60  84.47


この順位の並びをジャッジがどう判断するのか今後を注意深く見ていきたい。それ程高難度では無くても質良く実行し上位に来る羽生・フェルナンデス系を求めるのかそれともエレメンツの質は良くなくてもヴィンセントのようにとりあえず実行してマイナスだらけでも上位に来てかまわないと思うのか・・・とりあえず平昌五輪はその過渡期のさなかと言う事がよくわかる。
それは田中以下の10位の混戦でもよくわかる。高基礎点を実行して転倒するか何でもバランス良く全てのエレメンツで稼ぐかのしのぎあいとなっている。
一番はネイサンやボーヤンが羽生・フェルナンデス並みの質を持ってくれることだろうがそもそもネイサンは回転速度以外でジャンプにそれ程良いものが無いし、ボーヤンも質良く飛べるジャンプとそうで無いジャンプの差が大きい。スピンステップに関しても現状レベル取り優先できている。それが悪いとは言わないが現状若手のエレメンツが「こなしている」と見えるところは改善していく必要はあるかと思う。
魅せることに評価をおいてきた女子で今基礎点に向かう流れが出来ている。その辺りのバランスも考えて今後の展望を考察する必要がありそうだ。


<GOE獲得上位10人>
             ジャンプ  スピン  ステップ   計
  1位 フェルナンデス  10.66  2.85  3.90  17.41  
  2位 羽生結弦        10.49  3.07  3.43  16.99
  3位 N・チェン      7.67  2.36  2.50  12.53
  4位 メッシング      6.17  3.28  2.60  12.05
  5位 ビチャンコ      7.68  0.93  1.41  10.02
  6位 ヘンドリクス     4.37  2.86  2.60    9.83
  7位 P・チャン      3.69  3.28  2.10    9.07
  8位 リッポン          2.49  3.50  2.70   8.69
  9位 宇野昌磨       2.37  2.93  2.57    7.87
10位 ボーヤン・ジン    3.68  2.93  1.90    6.50

羽生がフェルナンデスを上回れないのはジャンプに2ミスがあったからと言うより同評価のステップが係数によって低くなってしまったからかもしれない。レベル4だったらジャンプのミスがあっても羽生の方が上の計算になる。今季は仕方ないが来季以降についてはこの辺りが留意が必要か。
そして驚くビチェンコさん5位!スピンもステップもGOEほとんどついてないと言って良いのに、断トツでこの中で低いのに!素晴らしい30歳、五輪の歴史に輝きます。
そしてTES2位だったヴィンセントはこのランキングでは22位(1.65)、以下アリエフ(1.00)、田中(0.03)が続きます。今回高難度化してもそこまで転倒が多くなかったので結果的にGOEがマイナスになる選手は出ませんでした。それは評価したいと思います。それを踏まえて考えるとミスの出やすいジャンプより確実に+評価を受けられるであろうスピンとステップに下位の選手はもう少し力を入れた方が良いのではと感じます。

 

 

<PCS上位10人>
           SS TR PE CC IN  計
  1位 羽生結弦    9.71 9.50 9.64 9.71 9.75 96.62
  2位 フェルナンデス 9.46 9.43 9.64 9.79 9.75 96.14
  3位 宇野昌磨    9.36 9.07 9.25 9.32 9.36 92.72
  4位 P・チャン   9.32 9.14 8.86 9.29 9.32 91.86
  5位 コリャダー   9.00 8.64 8.68 8.86 8.71 87.94
  6位 N・チェン   8.82 8.32 9.04 8.79 8.75 87.44 
  7位 リッポン    8.75 8.54 8.68 8.71 8.79 86.94
  8位 M・ジー    8.46 8.36 8.64 8.68 8.64 86.08 
  9位 ボーヤン。ジン 8.71 8.21 8.64 8.68 8.64 85.76 
10位 メッシング   8.50 8.29 8.61 8.61 8.71 85.44

 

10点満点は羽生よりフェルナンデスの方が多かった。それでもこの並びを見ると基本ジャッジはPCSでは羽生が上を言う認識があると言う事がFSでもわかる。はっきりミスとわかるものが2つ合っても抜けただけで演技に影響の無かったフェルナンデスが上回れない。
FSでも大きいのはSSの差。羽生が9.5と9.75のみ(しかも後者の方が多い)に対してフェルナンデスは基本9.5評価となっている。振付・演技部分でフェルナンデスが上回ることがあっても二人とも合っているプログラムだけに 差がつかないためSS評価の差が結果的に出たことになる。
そう理解して次を見るとわからないのが宇野とチャンの評価だ。確かにステップでミスがあったりしたが滑りの質の差は明らかにチャンの方に分があるのに宇野が上となっている。最終滑走であったことも影響しているかもしれないがリンク使いも進む方向も一定化した宇野がTR以外でチャンを上回るのは首をかしげたくなる。
一方でリッポン・ミーシャ・メッシングの評価を見るとプログラムが本人にはまっているかというのは割と大きいのだなと感じる。ボーヤンが1転倒だけで上手く纏めた演技だった割に控えめな評価と感じるのはジャッジ受けしないプログラムの影響もあったかもしれない。
一方でネイサンは早めの滑走順がかえって良かったのかもと言う気がする。直前のビチェンコ・サモヒンのイスラエル二人が良い演技をして盛り上がったところに登場して高難度を1ミスで纏めた。そこまでプログラムとしては良くないが流れとして気前よく出したい雰囲気は合っただろう。結果的にボーヤンとほとんど差がない5位に入ったことはネイサンの今後に大きな意味を持った採点となった。

 

高難度化した昨今、なかなかクリーンなノーミスは見られない。今回もそうであったがそれでも見ていて良い演技だなと思う大会だった。
個人的には第2グループのビチェンコ→サモヒン→ネイサンの流れは本当に良かった。この1年もやもやした感じだったサモヒンに同国の先輩ビチェンコが良い演技を見せることで奮起を促したように感じた。そこからの流れに乗ったネイサンが意地を見せたことであの最悪のSPを吹っ切ったことも大きかったと思う。
ネイサンはこれまで4大陸で勝ってタイトルを持っていたがそれは彼自身が会心の演技をしたからでは無く優勝候補が大きなミスをしたため拾った勝利だった。優勝候補筆頭だったジュニアワールドは怪我のため出られずヘルシンキはSPFS共ミスが出て6位となった。同じようにSPミス有りで5位だった羽生がFS会心の演技を見せて逆転優勝したことを思うとネイサンはそこまで評価できないなと個人的に思っていた。その為今回の平昌五輪で取れても銅という予想をしていたわけだ。しかし今回大舞台で1ミスとはいえTES最高点を出してFS1位になった経験は大きい。今後はワールドの金メダル候補として検討するだろう。

羽生については2014-15年シーズンの終わりに書いた文章を思い出す結果となった。事故・怪我・手術などを経てSP1位から王座陥落となったあのシーズンが終わって書いたことは羽生の底が見えたシーズンだったということ。それはとてつもなく高い底だった。今回の五輪はそれをまざまざと見せつけたと思う。外国のメディアでは7・8割の羽生に誰も勝てなかったと評したというがまさにそうだろう。高難度煽りばかりの日本メディアはもう一度表現を改めるべきだろうと感じる。
羽生とフェルナンデスが台に乗りオールラウンダーがやはり強いと高難度化の流れで魅せたことは大きい。来季以降ジャンプが一つ減り時間も短縮される。ジャンプ1つで30秒も使わないからステップなどがかなり心配になってくる。怪我する選手も多く出ている現状もある。バランスが取れた発展に結びつくような採点を健闘して欲しい。

一方でジャッジのいろいろな思惑が透けて見える採点も明らかになった大会でもある。自国びいきは多少仕方ないという気はするがライバル下げはやってはいけないだろう。今後GOEの幅が拡大するのなら明確な基準をより強固に示す必要がある。それと共に自国のライバル選手であっても良いものは良いと評価できるジャッジの度量の広さを示して欲しい。ジャッジの好みで選手の努力を否定することはあってはならない。説明を求められたら自分が何故その点数を出したのか公表するシステムもあっても良いかもしれない。