つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

2017-18シーズン終了―――世界選手権FS感想

第2グループのブレジナ・アーロンで感極まりアリエフの頑張りに喜び、第3グループのマヨロフ.友野.フェンツ・ミーシャ・ラトデニ・ビチェンコさんというそれぞれの持ち味を出した演技に歓喜しこれは良い大会になると非常に満足していた。
よもや怒濤の魔物大暴れ劇になるとは思いもしなかった・・・

 

最終グループは確かに五輪に全員出場していた。色々忙しかっただろうし調整も難しかったろう。それでも・・・ソチ後の埼玉ワールドを思えば今後の男子シングルは本当にこれで良いのか?と考えさせられる結果となった。
SPでも感じたが羽生・チャン・フェルナンデスがいないとここまでジャンプ以外見るべき処の無い競技になってしまっていた事が残念だった。そしてそのジャンプがこうまで崩れると・・・・・・

 

ラストにネイサンがそこそこ纏めたため大会としては救われた形になったが最終グループに関しては史上最低の大会と言われてしまっても仕方ない出来になってしまった。


1位 ネイサン・チェン
4種6クワド構成を最後まで滑りきる事が出来ると言う事は凄いことだと思う。またSPよりも4回転の質は良かったと感じた。ジャンプが上手くいったので気持ちに余裕があるのかスピンをとても丁寧に回っていたのも興味深い。それはある意味でネイサンの作戦は女子のザギトワに近いのだな感じる瞬間だった。冒頭の3クワドが成功すれば体力の消耗も少ないし気持ちに余裕が出来る。後半のエレメンツにしっかり気を配ることが出来るのだろう。ミスが出たザギトワが今回崩れたことから見てもDEAD OR ALIVE的な作戦だといえる。ただザギトワは高BV以外にも高GOEを求めた事に対してネイサンは現時点でBVだけだといえる。それだけ4回転の基礎点に旨みが多いということなのだが今後はそれでいいのかわからない。ルール改正次第では不利になるケースも考えられる。その場合どうするか取るべき手段があるかが次の五輪の金メダル候補となる条件となるだろう。
個人的に今のアメリカ選手に不満があるとしたら悪いとは言わないがロングイーグルで時間を稼ぐ以外に滑りが伸びる部分を見せられる場所がないということ。ロングイーグルは盛り上がるがホクスタインもヴィンセントもネイサンも同じだとまた?って感じになるし個人のカラーを表現していると言えない。またイーグルは結局両足でポジションを維持できるのでロングーで実行すると体力温存的な手段に(特に後半にやると)見えるのでもう少し考えて効果的に使ってほしい。それ以外にもこれがネイサン・チェンだと競技プロでもジャンプ以外で魅せられるようになるといいのではと思う。
それでも大自爆大会を最後に締めてくれたことは良かった。そしてこれで五輪以外の主要タイトルを獲得したことになる。今後ワールドチャンプとしてこの競技をどう進化させていこうとするのか、今後を見守りたい。


2位 宇野昌磨
足を怪我しているということでグダグダしてしまったのは仕方なかったのかもしれない。それでも後半にコンボをすべて決めたことが土俵際で表彰台に踏みとどまったのかもしれない。
しかし取られた4F・4T以外にも回転不足と思われるジャンプがいくつかある。着氷したときの体の向きとエッジの位置が合わない場合が多い。たまにそうなることは仕方ないがそちらの方が多いというのはトップ選手としては褒められることではない。今後4年かけてもう少し技術のお手本になれるような選手に成長して欲しいと思う。


3位 ミハイル・コリャダー
ネイサン以外上位総崩れということで3位に残ったコリャダー。それでもガチンスキー以来の表彰台であるし3枠獲得したわけだから結果的に良かったといえる。
今の上位選手内では滑りもエレメンツの質も良いので後はジャンプの確実性を上げたいところ。コリャダーの4Lzを見ていると羽生の成功率の低かったころの4Sやハン・ヤンの3Aを思い出す。ハンヤンの3Aは幅がありすぎて振り回されるところがあった。羽生の4Sは軸が持ち上がってズレていく失敗が多かった。コリャダーの場合高さがありすぎることとそれによって後ろに軸がずれていくとこが着氷を難しくしている感じだ。4Lzにはもちろん高さは必要だが必要以上に上がる必要はない。自分にとって適度な高さと幅を見つけその中で軸を細く維持できる空中姿勢を確立していく必要があるだろう。
もう一つはミスが複数になると演技の中にモチベーションが下がったような部分が見えてくることを改善したい。採点競技なのでミスが出てもだから何?ここから巻き返すよという姿勢が見える方が絶対にジャッジの心証が良いはずだ。あっさり今日は自分の日じゃなかったなどと思わないでやり切ることが今後の飛躍につながると思う。
初ワールドメダルおめでとう。来季はバシッと演技をまとめた演技を是非見せて欲しい。


4位 アレクセイ・ビチェンコ
五輪・ワールドと4T+3Tと4Tがクリーンに入ったことが素晴らしい。というかもう3Aの方を先にした方がいいんじゃない?と思ってしまう。それでもREPを絶対に食らわないぞという姿勢は素晴らしい。若手より超ベテランのビチェンコさんがそういう姿勢を見せることが大きいかも。
そして今回はスピンが2つレベル4を獲得しました!そのかわり?にステップがレベル2に・・・どっちが良かったんだろうと考えてしまいますがレベル取りまで意識が持てたということは凄いことかもしれない。
自己最高の4位に入り来季GPSのシード権を獲得したわけだが今後どうするのだろうか?サモヒンがまだまだ不安定なので続けられる環境があるならぜひ来季も続けて欲しいと思う。
30代になってもPBを連発しベテランの底力を見せてくれる、フィギュア強豪国でないからこそできることだがその存在の意義は大きいと感じる。

 

5位 友野一希
羽生の代役というものすごいプレッシャーを跳ねのけて素晴らしい演技を見せてくれた。SPの6連ではミスばかりで心配だったが本番ではバシッと決めた。この結果は今後に生きてくると思う。
友野の良さはシャープであること。滑りもジャンプも非常に無駄がない。若干その細さが今後大人の体型になったときに心配にはなるが現時点では非常に演技に効果的に魅せていると思う。
大観衆の視線に物おじしない笑顔を向けられるという部分は表現にも生きてくる。曲やストーリーも等身大で非常に共感性が高い。また課題もわかりやすい選手であるので今後の伸びを非常に期待できる。
ワールド前はGPS枠も足りていなかったが何とシード権を獲得してしまった。来季はシーズンを通して結果を出してくれるだろうと非常に楽しみである。

 

6位 デニス・ヴァシリエフス
頑張った本人より応援する師匠の方が注目を浴びてしまうという。ちょっとだけ不憫だ。
上位が自爆ったため4回転無しで6位入賞してしまった。2015年のミーシャみたいな感じかもしれない。
これ以上点数を伸ばすためには4回転を入れる必要がある。今回3Tになってしまったのでセカンドの構成も下がってしまった。わりとジャンプの軸が太い選手なので安定して飛ぶのはまだ時間がかかりそうな印象はあるが是非身に着けて欲しいと思う。

 


4回転に!がついたのはヴィンセントが初かな?ボロボロのボロなヴィンセントのプロトコル。転倒だらけですが基本回転はほぼすべてのジャンプで足りていません。SPからそれは変わりません。転倒したから容赦なく刺したのでしょうが妙な甘採点は選手のためにならないということ。メダルがちらつかなければここまで崩れなかったかもしれません。アーロンが頑張ったので3枠確保できましたが下手をしたら2枠になるところでした。ヴィンセントはシーズン当初ボロボロで全米からジャンプの着氷できるようになりここまで来ましたがもともとそこまで技術が高くない。もう一度最初から見直した方がいいです。手っ取り早く上位に名を連ねたかったという意図は理解できますが明らかに色々な部分で見劣りします。テンプレートな印象のアメリカ的上半身の魅せ方はヴィンセントにはあまり向かないと思います。もう少し年齢に合った振付をした方がいいかと思います。

 

ボーヤンの崩れ方は非常に怖かったです。おそらくSPの壁に近づきすぎて回転不足を取られたジャンプを意識したのでしょう。それでもまた近づいてしまったので踏切が合わなくなったかと。当初冒頭のジャンプで膝を痛めたのかと思いましたが怪我ではないということで少しだけ安心しました。スケーティングが良くなってきているので今までのタイミングだと壁に近くなってしまう。近づきすぎないところで確実に踏み切るためにはどう助走したらいいのかオフシーズン対策が必要です。シニアに上がって3シーズンほぼ同じ位置でジャンプしていますので変えるというのはなかなか難しそうですが転倒→壁激突というのは怪我のリスクを上げますし体力的にも厳しい。長く競技を続けてくために解決しなければいけない課題だと思いますのでぜひ頑張って欲しいです。できれば来季はローリー以外の振付師で。男性の振付師と一度組んで欲しいと願っています。


1位ネイサンの得点は昨年の羽生とほとんど変わりません。
しかし2位の270点代では昨季では7位と大幅に下がります。昨季がたまたま高かったと言われればそれまでですが正直観客としてはこんな最終グループは見たくなかったといいたくなります。五輪後で難しかったと言えばそれまでですが、ソチ後の埼玉でも今回の2位の得点では表彰台に乗れません。とりえあえず4回転を飛べという風潮が招いた(ジャッジが招かせた)弊害の結果かもしれません。
4回転は確かに高難度ですがそれは基礎点で評価されます。GOEについてはやはり3回転までと同等に見るべきでそこで質の差を示すべきだった。しかし4回転を飛んで降りればそれだけで∔1を簡単につけてしまう。確かに4回転は幅や高さが出やすいから評価に当てはまりやすいが着氷姿勢が3回転までより劣っても引かれないというのは問題かと。結果的に質良く飛ぶ選手とそう大きな差にならないためとりあえず飛んでしまうのでしょう。
来季以降はGOE幅がさらに拡大します。その場合のジャッジのそういった恣意的な感覚をどう制限するのかしっかりと定めないとこういった自爆大会が続き競技の魅力を失わせてしまうことになります。4回転だろうとマイナスはしっかり減点するそういう姿勢をジャッジは強くアピールする必要があるでしょう。チャンが引退しフェルナンデスもユーロ以外の主要大会は出ないという。唯一残ったホールパッケージプレーヤーである羽生もこれまでと同様には試合には出なくなる可能性がある。そういう環境下で男子シングルを今以上に進化させていくためにはどうしたらいいのか。何を評価しどういった演技を求めていくのか、はっきりとした指針をISUは示す必要があると感じたワールドになった。

 

それでも長い五輪シーズンを戦った選手の皆様お疲れさまでした。良い結果を得た選手もそうでなかった選手もこれでみな一区切りです。怪我や痛みのある選手はしっかりと直してそうでない選手はより良い自分になるために有意義にオフシーズンを過ごしていただきたい。

今シーズンもたくさん楽しませていただきました。お疲れ様でした、そしてありがとうございました!