つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

表現は基礎があってこと映える―――ミーシャ・ジー

自己流にルールを変え楽しそうに踊りバックヤードで面白い写真を撮るEXに本気を出す選手というのがミーシャ・ジーのイメージだった。勝つことにも高難度ジャンプにも興味がないのかと思っていた。
しかしそんなジーが今季は違った。あれほど不安定だったジャンプが安定してはいるようになった。昨季の世界選手権SP落ちが悔しかったという話は聞いていたがここまで奮起してくると言うのは予想外だった。
しかしそのおかげで今まで見えてこなかったジーの本当の真価が見えたシーズンとなった。そんなシーズンを振り返る。

 

中 国 杯  総合5位 219.28 SP7位 69.46 FS3位 149.82
ロステレコム 総合4位 238.05 SP5位 79.69 FS5位 158.36
四大陸選手権 総合8位 226.20 SP7位 82.25 FS9位 143.95
世界選手権  総合6位 234.89 SP8位 78.52 FS7位 156.37
  平均     総合 229.605  SP  77.48  FS   152.125

 

シーズン前にジーが出場した試合全てで入賞するなど想像できた人がいただろうか?特にチャンピオンシップで一桁台など思いもしなかった。
200点を超えるのがやっとだった昨季までとは雲泥の差である。それ程構成が上がったわけではない。ただ安定しただけだ。だが多くの選手がその安定こそに苦労している。それを成し遂げたのが基礎力。昨年までとは全てが違った。
つくづく悔しさこそが人を成長させる一番の薬なのかもしれないと感じた人物だ。

 

<ジャンプ>
SP 予定構成 3A 3Lz+3T // 3F =24.43

        基礎点   GOE   減点   合計
中 国 杯  23.33 -0.11      23.22
ロステレコム 24.43  1.27      25.70
四大陸選手権 24.43  2.11      26.54
世界選手権  24.43    0.77              26.52
  平均  24.155  1.01      25.495


この平均同じ四回転なしのブラウンより高い。ニューエンも四大陸で四回転入れて失敗した為これより低い。ついでに四回転2本入れてるコフトゥンよりも高かったりする。
SPで下位に沈んでしまうとFSが早いグループになってしまい実績の強くない選手はPCSが出にくい印象がある。だから基本的にSPではジャンプミスは痛い。今季は3つのジャンプをほぼ安定させることができた.これが躍進の大きな理由である。


FS 予定構成 3A+Lo+3S  3A  3Lz //  3Lz+3T  3F+2T  3Lo  2A  2A =58.94

        基礎点   GOE   減点   合計
中 国 杯  55.24  2.13      57.37
ロステレコム 58.87  1.54  -1  59.41
四大陸選手権 50.91 -1.96      48.95
世界選手権  58.94    1.81              60.75
  平均   55.99  0.88 -0.25  56.62


実は今期全ての試合で構成が違う。予定構成は一番高い世界選手権のもの。
最初の中国杯では勘違いなのか構成ミスがありキックアウトされたり、四大陸ではなぜか最後の連続2Aがシークエンス扱いになって8掛けになりジャンプが一つ足りなくなったりしている。そのためFSは平均が低くなっている。
羽生の3連続を見て入れることを実践してみたり構成の変更を柔軟にできる器用さがある。四回転を入れるかわからないが、来季の出方が楽しみだ。
ただしばしば3Lzに!がつく。大きな減点にはならないがもったいないので気をつけたい。


<スピン>
SP

        基礎点   GOE    合計
中 国 杯   4.9   0.93   5.83
ロステレコム  9.7   1.85  11.55
四大陸選手権  9.7   1.71  11.41
世界選手権   9.2   1.72  10.92
  平均   8.375 1.5525 9.9275

シーズン当初はノーカンになったりレベルもとれなかったのが翌週の試合で修正してきた。非常に器用であるといえるし、頑張りが成果になりやすい選手だと言うことでもある。
まだ勝つことまで願っているかはわからないが、高い技術を求めるならもっと上手くなれるのではと思わせる。
自己満足なやり方ではなく基礎をつけて評価されるという経験はとても良いものではなかっただろうか?

 

FS

        基礎点   GOE    合計
中 国 杯   8.4   1.65  10.05
ロステレコム  9.3   2.07  11.37
四大陸選手権  8.9   1.64  10.54
世界選手権   8.8   1.79  10.59
  平均   8.85 1.7875 10.6375

 

SPに比べて取りこぼしが多い。ただ体力的につらいと言うことなら仕方ないがシットスピンが全てレベル3と言うことは要素が足りてない可能性も。
もっと上を目指すならこういう取りこぼしはもったいないので頻繁にスピンの確認をした方がいい。

 

<ステップ>
SP

        基礎点   GOE    合計
中 国 杯   3.3   0.93  4.23
ロステレコム  3.9   1.40  5.30
四大陸選手権  3.9   1.40  5.30
世界選手権   3.9   0.80  4.70
  平均   3.75 1.1325 4.8825

 

ジーにとって一番の見せ場はステップだ。
昨季までは自己満足な感じが強かったが今期は要素を押さえながら魅せることができるようになった。それも基礎力が上がったからである。ジャンプが安定したのもスケーティングは上達したから。
基礎があってこと表現の幅も増えるし多くの人を魅了することができる。今期はそれを証明したシーズンだったと思う。


FS

        基礎点   GOE    合計
中 国 杯   5.3   2.70  8.00
ロステレコム  5.9   2.90  8.80
四大陸選手権  5.9   2.90  8.80
世界選手権   5.3   2.09  7.39
  平均    5.6 2.6475 8.2475

 

ステップの評価は高い。魅せる選手であることは認められていると言うことだ。
あとはレベルをしっかりとりたい。今のところジャンプの構成は高くない選手だ。取れるところではしっかりとっておきたい。


<TES計>
SP
        基礎点   GOE   減点   合計
中 国 杯  31.53  1.75      33.28
ロステレコム 38.03  4.52      42.55
四大陸選手権 38.03  5.22      43.25
世界選手権  37.53  3.29      40.82
  平均   36.28 3.695     39.975

 

ジェイソンより高くコフトゥンよりわずかに低い、次世代トップを狙う若い力とほぼ同じ数値を出していることになる。
安定した成績を出したことで実績を作った年となった。来期は是非TES40を超えGPSの台乗りをしたいところだ。


FS
        基礎点   GOE   減点   合計
中 国 杯  68.94  6.48      75.42
ロステレコム 74.07  6.51  -1  79.58
四大陸選手権 65.71  2.58      68.29
世界選手権  73.04  5.69      78.73
  平均   70.44 5.315 -0.25  75.505

 

SPを考えるとトップ選手と言うにはTESが高いと言いがたい。四回転がないため基礎点が低くなりがちエッジエラー・回転不足をなくし確実に稼ぎたい。
あとは少しでも基礎点をあげたい。スピン・ステップのレベルとGOEも大切だ。


<PCS>

SP 

         SS  TR  PE  CC  IN  合計

中 国 杯    7.04  6.86  7.43  7.39  7.46  38.18

ロステレコム   7.32  7.04  7.64  7.46  7.68  37.14

四大陸選手権   7.71  7.36  7.96  7.93  8.04  39.00

世界選手権       7.46  7.25  7.71  7.57  7.71  37.70

平均      7.3825 7.1275  7.685 7.5875 7.7225  37.505


初頭に比べてPCSが順当に上がってきている。特にPEとINが高い。表現力が評価されている。あとはもう少しスケーティングを上げることと個性を殺さずつなぎを増やすこと。
ブラウンとは違う世界観を魅せて欲しい。


FS 

         SS  TR  PE  CC  IN  合計

中 国 杯    7.21  6.96  7.71  7.61  7.71  74.40

ロステレコム   7.75  7.50  8.00  7.93  8.21  78.78

四大陸選手権   7.75  7.43  7.75  7.61  7.79  75.66

世界選手権       7.75  7.43  7.93  7.75  7.96  77.64

平均          7.57   7.25  7.8475  7.725 7.9175     76.62


FSのPCSはSPより高い。7点代後半が安定して出るようになった。
ミスが少ないことも良かったが最後まで世界観を崩さず滑ることができていることが評価されたのだろう。
表現力の選手であるから後半3項目を8点台に乗せたいところだ。


<来季に向けて>
技術的なことを期待してこなかった選手なのでどんな風に化けるのはちょっと想像がつかない。より高難度を目指すのか、それともブラウン並みの安定感を備えつなぎを増やしてくるか?とりあえずスケーティングをもう少し上げたいところだ。
ブラウンほど大衆的ではない個性なのでもしかしたらジャッジ好みに合わないプログラムが来るかもという心配はある。しかし同じものばかりではつまらないのでジーらしく楽しそうに滑ってくれればいいと思う。
是非来季は招待選手ではなく自力でEX出場を勝ち取って欲しい。