2014-15シーズンジャンプ成功率―――N.ニューエン/FS編
クリケットオーサー組3兄弟の3男、シニア1年目のナム・ニューエンのFSジャンプ成功率を見る。
出場試合はSアメリカ/中国杯/カナダ選手権/四大陸選手権/世界選手権/国別対抗戦の6試合。
GOE0以上はSアメリカ8・中国杯7・カナダ選手権8・四大陸6・世界選手権7・国別5の41回。
成功率41/48=85.42%。
非常に高い成功率だ。このジャンプの安定こそがシニア1年目のニューエンを上位選手に押し上げた。それぞれのジャンプを見てみる。
予定構成
4S 3A+3T 3A // 3S 3F+2T+2Lo 3F+2T 3Lo 3Lz = 64.93 (中国杯まで)
4S 3A+3T 3S // 3A 3F+2T+2Lo 3F+2T 3Lo 3Lz = 65.36 (それ以降)
・4S 4/6 成功率66.67%
基礎点 GOE 減点 合計
Sアメリカ 10.50 0.86 0 11.36
中 国 杯 10.50 0.29 0 10.79
カナダ選手権 10.50 1.71 0 12.21
四大陸選手権 4.20 -2.10 0 2.10 (<<)
世界選手権 10.50 1.57 0 12.07
国別対抗戦 7.40 -1.00 0 6.40 (<)
平均 8.933 0.222 0 9.155
転倒は1回も無い。四回転のチャレンジャーをしてはヴォロノフとニューエンくらいかもしれない。しかしあのよく回れると思うほどスピードを落として飛ぶためにGOEも付きにくいし回転不足になる危険もある。まだ成長期であるため軽い体重で回りきれるかもしれないが今後更に背が伸び筋肉が付いてくるとこのスピード感では回れなくなるかも。羽生・ハンヤンほどで無くてももう少し助走のスピード感のまま飛べるようにしたいところ。
平均基礎点から出来高102.49%、元の基礎点からは87.19%と四回転の難度から見ればかなり基礎点を稼いでいたといえる。
・3A+3T 6/6 成功率100%
基礎点 GOE 減点 合計
Sアメリカ 12.60 0.00 0 12.60
中 国 杯 13.86 0.29 0 14.15 (後半リカバリ)
カナダ選手権 12.60 1.14 0 13.74
四大陸選手権 12.60 0.86 0 13.46
世界選手権 12.60 0.71 0 13.31
国別対抗戦 12.60 0.43 0 13.03
平均 12.81 0.572 0 13.382
実は中国杯では失敗しているのだがリカバリーが上手くいったため結果的には100%となった。演技中も構成を考えられる冷静な頭脳の持ち主であるといえる。コンビネーションは元々それ程GOEが付くものでも無いのでここでは成功率さえ確保していれば良いだろう。平均基礎点に対し104.47%、元の基礎点に対しては106.21%と高い得点源になっていたことがわかる。
・3A 5/7 成功率71.43%
基礎点 GOE 減点 合計
Sアメリカ 8.50 1.00 0 9.50
中 国 杯 8.50 0.57 0 9.07
中 国 杯 1.10 -0.06 0 1.04 (1A抜け)
カナダ選手権 9.35 1.29 0 10.64
四大陸選手権 9.35 0.43 0 9.78
世界選手権 9.35 1.14 0 10.49
国別対抗戦 9.35 -0.29 0 9.06
平均 7.929 0.582 0 8.511
シーズン後のインタビューで3Aは簡単なジャンプと言っていたが確かに成功率は高かった。中国杯で1Aに抜けたが後半3Aコンボを急遽入れてある程度取り戻したのは素晴らしい。スピードは無いためそれ程流れないが成功率の高さと基礎点を確実に稼ぐ戦略ならば十分な結果なのかもしれない。平均基礎点から出来高107.34%、後半基礎点からでも91%と高得点を得ている。
・3S 5/5 成功率100%
基礎点 GOE 減点 合計
Sアメリカ 4.62 0.10 0 4.72 (後半)
カナダ選手権 4.20 0.80 0 5.00
四大陸選手権 4.20 0.60 0 4.80
世界選手権 4.20 0.60 0 4.80
国別対抗戦 4.20 0.60 0 4.80
平均 4.284 0.54 0 4.824
GOEが後半全く同じという・・・ある意味わかりやすいジャンプだといえる。ニューエンのプロトコルはプラスでもマイナスでも0,1,2が多い。成功率がこれほど高いなら次はGOEの加点を狙っていきたいところだ。出来高は112.61%と高い結果になっている。
・3F+2T+2Lo 5/6 成功率83.33%
基礎点 GOE 減点 合計
Sアメリカ 9.24 0.60 0 9.84
中 国 杯 9.24 0.50 0 9.74
カナダ選手権 9.24 1.10 0 10.34
四大陸選手権 9.24 -0.70 0 8.54 (OT)
世界選手権 9.24 0.20 0 9.44
国別対抗戦 9.24 0.60 0 9.84
平均 9.24 0.383 0 9.623
1回オーバーターンが入っただけで基礎点はしっかり稼いでいる。コンビネーションは一般にGOEは付きにくい。後半でしっかり基礎点を稼いでおくことが大事という点では十分だといえる。出来高は104.15%。
・3F+2T 6/6 成功率100%
基礎点 GOE 減点 合計
Sアメリカ 7.26 0.10 0 7.36
中 国 杯 7.26 0.00 0 7.26
カナダ選手権 7.26 1.00 0 8.26
四大陸選手権 7.26 0.70 0 7.96
世界選手権 7.26 0.50 0 7.76
国別対抗戦 7.26 0.30 0 7.56
平均 7.26 0.433 0 7.693
GOEは少ないが安定して基礎点を得ていることがわかる。ジャンプが小さく高さが無いため転倒のリスクが少ないのが安定感を維持できる要因かもしれない。出来高は105.96%。
・3Lo 6/6 成功率100%
基礎点 GOE 減点 合計
Sアメリカ 5.61 0.30 0 5.91
中 国 杯 5.61 0.20 0 5.81
カナダ選手権 5.61 0.80 0 6.41
四大陸選手権 5.61 0.50 0 6.11
世界選手権 5.61 0.80 0 6.41
国別対抗戦 5.61 0.50 0 6.11
平均 5.61 0.517 0 6.127
プログラムの終盤のジャンプではあるがきちんと基礎点+GOEを稼いでいる。3Loはあまり加点の付くジャンプでは無いのでこれで十分だろう。出来高109.22%。
・3Lz 4/6 成功率66.67%
基礎点 GOE 減点 合計
Sアメリカ 6.60 0.10 0 6.70 (!)
中 国 杯 6.60 0.60 0 7.20
カナダ選手権 6.60 0.80 0 7.40
四大陸選手権 6.60 0.60 0 7.20
世界選手権 6.60 -0.30 0 6.30 (!)
国別対抗戦 6.60 -0.40 0 6.20 (!)
平均 6.60 0.233 0 6.833
着氷はしっかりしているが半数で!がとられている。SPでもそうだったがニューエンの場合ジャンプに加点が付かないタイプなので!が付くとほぼマイナスになってしまう。エッジが気をつければ大丈夫レベルなら羽生のように先に飛ぶという手もあるがどうなのだろう。とりあえず今季は基礎点以上確保できているので良かったといえる。出来高103.53%。
<FSジャンプまとめ>
・四回転は1回だけだがまずまず確率もよくある程度の基礎点を稼いでいるといえる。次のオリンピックでメダルを目指す意味でも来季は2種にしてくるかもしれない。転倒が少ないタイプというかFSでは転倒なしという実績は素晴らしいといえる。体力温存できているので案外スムーズに2種行けるかもしれない。ニューエンはGOEはそこそこで基礎点をしっかり稼ぐタイプで伸びるのかもしれない。ただまだ成長期であるので体型変化に伴い別のリスクが生まれる可能性も。とりあえずは来季パトリック・チャンとカナダチャンプを争うためにチャンより高い構成が必要になるかもしれない。
・3Aの成功率は11/13の84.62%、出来高99.74と高い結果になっている。自身もかなり自信があるジャンプになっているようなので四回転2種にした場合羽生のように2つとも後半なんてプランになるのかもしれない。
・コンビネーションの成功率は17/18の94.44%、出来高105.49%と非常に高い獲得源になっている。あまり見栄えはしないが堅実に点を積み上げていくことを求められる今の採点方式には合っているといえる。
・3Lz以下のジャンプ26/29の89.65%、出来高107.31%と成功率も出来高も素晴らしい結果に。転倒が無く!とOTのみの小ミスであるので基礎点を失うことが無いことが大きい。
今季の上位陣の中で高いジャンプ成功率を達成している。四回転や3A以外では転倒も抜けも無くしっかりと基礎点を稼いだ結果FSではTESで羽生・フェルナンデスに次ぐ成果を出した。これを継続できれば羽生やフェルナンデスのように成功ジャンプに高いGOEが付かなくても成功率でカバーできるかもしれない。今季の最中だけでも身長が伸びまだ成長期である現状体型変化によりジャンプの飛び方の変更等があるかもしれない。また四回転を2種にしてきた場合すぐさま安定できるかという不確定要素もあるがシニア1年目で見せたこの安定感は大きな期待を抱かせるのは十分だ。高難度ジャンプを飛ぶトップ2人を見ながら練習できるという環境も良い。この安定感を維持したまま上手く成長できたら末恐ろしい選手になるかもしれない。来季がとても楽しみに思える選手だ。