つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

理想の見えない男―――宇野昌磨

宇野という選手はかなり以前から知っていた。早くからジュニアで活躍していたこともあるが名古屋の選手であったためショーなどで見かけることが割合あったからだ。
スケーティングが良く高難度ジャンプさえ飛べればトップに行けると言われていて昨年ようやくその花を開かせ始めた。ジュニアを無双して鳴り物入りでシニア入り、話題性のあるデビューとなった。
スケーティングが評価される選手で高橋大輔に憧れていると言うことで「踊れるパトリック・チャン」もしくは「スケーティングの良い高橋大輔」的な選手を目指すのだろうと非常に期待していたが、kamiyannの思惑を外れ当初から後半四回転だとかジャンプの話題ばかり先行した。
シーズン中にころころと構成を変えそのどれもが安定せずにシーズンが進むにつれて順位を落としていった。目論見があっての変更ならば理解できるがただ単に基礎点を高くするだけという不思議な仕様で、宇野自身がいったいどういう選手を目指しているのか一向に見えないシニア1年目となった。


USクラッシック    総合5位 207.41 SP9位 52.45   FS1位 154.96
Sアメリカ    総合2位 257.43 SP4位 80.78   FS1位 176.65
エリックB      (総合1位  89.56 SP1位 89.56) 
G P F    総合3位 276.79 SP4位   86.47   FS4位 190.32
四大陸選手権   総合4位 269.81 SP1位   92.99   FS5位 176.82
世界選手権      総合7位 264.25 SP4位 90.74   FS6位 173.51
平均       総合  255.138  SP  82.165           FS    174.452
(エリックはSPだけなので総合の平均には含まない)

 

ジャパンオープンという花試合で華々しいシニア1年目を飾ったが後半に行くほど順位と得点を落とすある意味日本人選手らしいシーズンの過ごし方をした。
初戦のUSクラッシックはまだ滑り込みが出来ていない頃で仕方ない結果かも知れないがGPFをピークにそれまでむしろ良かったFSが下がっていったことが勢いを失った印象を与える。
安定しているような報道を宇野の紹介でされるが実は1度もノーミスなしという今季結果をどう受け止めていくか今後が気になるところだ。
 

<ジャンプ>
SP  予定構成 3A // 4T 3F+3T =30.39
         4T // 3A 3F+3T =30.21(四大陸以降)

         基礎点   GOE  減点   合計
USクラッシック    7.93 -2.70 -1   4.23
Sアメリカ  30.39  -1.89  -1  27.50  
エリックB     30.39  2.90  0   33.29
G P F  27.86  -0.57 -1  26.29
四大陸選手権 30.21  2.13  0   32.34
世界選手権  26.91  2.92  0   29.83
平均    25.615  0.465    -0.5  25.58

 

USクラッシックの崩壊を抜きにしてもエリック以外はどこかでミスが出た。4Tの確率が昨年より下がりシーズン後半は構成を下げたが結局安定はしなかった。
結果的に基礎点を下回ることになった。コンボが3Fからなので後半2ジャンプでも男子としてはそれ程基礎点は高くない。SPではやはり出遅れが痛いので確実にジャンプを決めるようにしたい。


 
FS 予定構成 4T  3A  3A+3T // 3Lo  3S  4T+2T  3Lz  2A+Lo+3F =71.42(変更多し)
        
        基礎点   GOE  減点    合計
ジャパンO  71.42  8.35  0   79.77
USクラッシック   59.72  2.78 -1   61.50
Sアメリカ  71.42  3.74  0   75.16   
G P F  69.31 11.27  0   80.58
四大陸選手権 61.97  4.30  0   66.27 
世界選手権  67.21  0.04 -1   66.25
平均    66.842  5.08 -0.333 71.589

 

構成はUSクラッシックから世界選手権まで変更の多いシーズンだった。最終的に一番高い構成にしたようだがミスが出て高構成にした意味をなさなかった。リスクが高い割にリカバリのしにくい組み方をしていたためただひたすらハードだった印象だ。
女子の村上のようにころころ配置を換えるのは器用かもしれないがそこにそれを置く意味があるのか疑問だし博打的なイメージを与えるので長い目で見ればジャッジに良い印象を与えない気がする。

 
<スピン>
SP

        基礎点   GOE   合計
USクラッシック    9.3  1.32  10.62  レベル3 1回 レベル4 2回
Sアメリカ   9.2  1.64  10.84  ALLレベル4(CCoSp2P)
エリックB   9.7  1.56  11.26  ALLレベル4
G P F   9.7  2.36  12.06  ALLレベル4
四大陸選手権  9.7  2.42  12.12  ALLレベル4 
世界選手権   9.7  2.14  11.84  ALLレベル4
平均          9.55  1.907   11.457

 

スピンレベルは問題ない。ただシットについては腰高な傾向があるので多少GOEが少ない傾向がある。
FSと併せて多少ポジション不足をとられるので気をつけたいところだ。

 

FS

        基礎点   GOE    合計
ジャパンO   9.7   2.28  11.98  ALLレベル4
USクラッシック     9.7   1.30     11.00  ALLレベル4
Sアメリカ   9.2   1.72  10.92  ALLレベル4(CCoSp2p)    
G P F   9.7   2.57  12.27  ALLレベル4
四大陸選手権  9.7   2.43  12.13  ALLレベル4
世界選手権   9.7   2.28  11.98  ALLレベル4
平均    9.617  2.096 11.713

 

FSでもレベルは取れているので安定した得点源になっている。スピン好きとしてはSPとは違った印象を持てるともっと良いと思う。


  
<ステップ>
SP

        基礎点   GOE   合計
USクラッシック     2.6  0.80  3.40  レベル2
Sアメリカ   3.3  0.64  3.94  レベル3 
エリックB   3.3  0.86  4.16  レベル3
G P F   3.9  1.70  5.60  レベル4
四大陸選手権  3.9  1.70  5.60  レベル4 
世界選手権   3.9  1.60  5.50  レベル4
平均    3.483 1.217  4.70 

 
後半に行くにつれてレベルがしっかり取れるようになっていった。評価も高いので稼ぎどころではある。
ただ昨年までとほとんど代わり映えのない組み合わせなので次は違った振り付け師で演じて欲しい。


 
FS

        基礎点   GOE   合計
ジャパンO   5.3   2.43  7.73  レベル3
USクラッシック     5.3   1.96       7.26  レベル3
Sアメリカ   4.6   1.67  6.27  レベル2     
G P F   5.3   2.59  7.89  レベル3
四大陸選手権  5.9   3.30  9.20  レベル4
世界選手権   5.9   2.80  8.70  レベル4
平均    5.383  2.459 7.842

 
こちらも後半はレベルの修正が出来た。ただFSでもEX等で昨年のプログラムを見るとほとんど同じだという印象になる。
表現力を求めるなら幅広い組み合わせや表現方法を試し演じる必要がある。次はSPとFSを別の振り付け師に依頼して欲しい

 

<TES計>
SP  

        基礎点   GOE  減点    合計
USクラッシック    19.83 -0.58 -1   18.25
Sアメリカ  42.89  0.39 -1   42.28  
エリックB  43.39  5.32  0   48.71
G P F  41.46  3.49 -1   43.95
四大陸選手権 43.81  6.25  0   50.06 
世界選手権  40.51  6.66  0   47.17
平均    38.648 3.588 -0.5   41.736

 

USクラシックの崩壊がすごかったが結果的にまずまずの数字で治まった。
スピンとステップでほどほど稼げるのか大きいが来季はもう少し転倒を減らしたいところだ。
 
FS

        基礎点    GOE  減点    合計
ジャパンO  86.42   13.06      0   99.48
USクラッシック    74.72   6.04  0   80.76
Sアメリカ  85.22   7.13  0   92.35    
G P F  84.31  16.43  0  100.74
四大陸選手権 77.57  10.03  0   87.60
世界選手権  82.81   5.12 -1   86.93
平均    81.842  9.635  -0.167          91.31


FSは転倒は少なかった。シーズン前半比較的FSは安定していたのでなんとか90点台を保ったという出来だ。
今のところGOEが割とつきやすい評価をされているので今のうちに欠点を直したいところだ。

 
<PCS>
SP

       SS  TR  PE  CC  IN   合計
USクラッシック    7.25        6.60       6.30        7.10        6.95     34.20
Sアメリカ  7.96        7.43       7.68        7.79        7.64     38.50
エリックB  8.39        7.93       8.25        8.14        8.14     40.85
G P F  8.71        8.21       8.64        8.50        8.46     42.52
四大陸選手権 8.71        8.18       8.75        8.61        8.68     42.93
世界選手権  8.96        8.50       8.79        8.68        8.64     43.57
平均        8.33      7.808     8.068      8.137      8.085   40.428

 

ノーミスがない割に非常に上がっていることがよくわかる。シニア1年目でこれだけ付いた人間は居ないのではないか。ジャッジの期待値が高い選手だと言うことがわかる。
だからこそ長所を磨いて短所を修正してもっと良い演技を見せて欲しい。表現力を口にするなら確実な技術と多様性を見せる必要がある。来季のプログラムを是非外注して欲しい。


FS

       SS  TR  PE  CC  IN    合計
ジャパンO  8.43       8.21        8.93       8.75        8.68       86.00
USクラッシック    7.80       7.15        7.35        7.60       7.70       75.20
Sアメリカ     8.43       8.11       8.61        8.39        8.61       84.30  
G P F  9.04       8.46       9.29        9.00        9.00       89.58 
四大陸選手権    9.00       8.71       8.93        8.93        9.04       89.22 
世界選手権   8.86      8.50       8.61        8.61        8.71       86.58 
平均     8.593       8.19    8.62      8.547       8.623     85.146


これだけもらえていればとりあえず十分だろう。ただTRが他のエレメンツに比べてかなり低い、これは内容が薄いプログラムを滑っていると認識されているということ。来季はもう少しつなぎを入れたプログラムを滑る必要がある。
滑りの良さは今季で十分見せられたと思うのでプログラムについては次の段階に進みたいところだ。

  
<来季に向けて>
日本人選手はGPSから全力で行かないと世界選手権などに出られないのでシーズン後半に落ちる傾向が強い。宇野も今季それにはまった印象だ。ジャンプ構成をいじりすぎたことも原因なので来季はもう少し落ち着いてプログラムを充実させる様にして欲しい。
そして出来れば日本人以外の二人以上の振り付け師にプログラムを作ってもらい幅の広さを見せるようにした方が良い。話題がジャンプばかりになりがちでどこか焦っている印象がある。まだシニアに上がったばかりだから落ち着くところは落ち着いて自分の方向性を模索し目指す理想のための道筋を考えていって欲しい。