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つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

四大陸選手権上位5選手FS比較

2016-17 フィギュアスケート 羽生結弦 宇野昌磨 ネイサン・チェン パトリック・チャン ボーヤン・ジン

四大陸は面白い戦いだった。3位以下は離れたが優勝を争った選手の得点があそこまで拮抗したのは昨季の四大陸以来だろう。

しかしながらテレビや新聞では相変わらず四回転の種類や本数のことばかりで嫌になる。ネイサンが勝ったのは高難度の四回転誰よりも多く飛んだからというのは正しくない。むしろ羽生がSPでもFSでも基礎点を大幅に取り損ねたためだといえる。
四回転の本数を多く飛んで勝てるのなら昨季ボーヤンがとっくに勝っている。昨年末のGPFでネイサンが勝ったはずだしとっくに世界最高得点を超えているだろう。
その辺りまるっと無視して4種だ5本だとことさらに強調するのを見ると本当にうんざりする。
何か情報があるかもと幾つか録画してみたがろくに見ること無くさくっと削除してしまった。

 

それでも大会として四大陸は非常に面白かった。オールマイティの実績がある元世界王者2名に高難度ジャンプを組み込んだ若手達が殴り込みをかけた試合。五輪王者が自らのミスで大幅に基礎点を失いながらもそれでも勝利を目指して可能なかぎりの得点を求めた演技をすれば、若手トップが今できる自分の最高構成で迎え撃ち逃げ切った試合だった。いつもここにはワールドしか載せてないが四大陸の面白さを残したいのでデータをまとめておく。

 

 

<予定構成>

1位 ネイサン・チェン  4Lz+3T 4F 4T+2T 4T //3A+Lo+3F 4S 3Lz 3A =95.33 
2位 ボーヤン・ジン   4Lz+3T 4S 4Lo //4T+2T 4T 3A+Lo+3S 3A 3Lz =95.18
3位 宇野昌磨      4Lo 4F 3Lz //3A+3T 4T+2T 4T 3A+Lo+3F 3S =89.04
4位 羽生結弦         4Lo 4S 3F //4S+3T 4T 3A+2T 3A+Lo+3S 3Lz =87.53
5位 パトリック・チャン 4T+3T 3A 4S //4T 3A+2T 3Lo 3Lz+2T+2Lo 3F =77.16 

 

ネイサンの構成が直前に3A2本になったため1位に躍り出た。ボーヤンとの差は4Fと4Loとサードが3Fと3Sの違いと後半ボーナス点の違いとなる。

羽生と宇野の違いは主に4Sと4Fの差でいずれにせよ四回転の本数が同じならそれ程差がつかない。
そういう意味ではチャンは四回転の本数が少ないのと難易度の低い種類であることでトップとは滑る前から18点以上も差が合ったことがよくわかる。

 

<実施構成>

                    実施内容          予定達成率

1位 ボーヤン・ジン  4Lz+3T 4S 4Lo< //4T+2T 4T 3A+Lo+3S 3A 3Lz =91.58  96.22%
2位 ネイサン・チェン  4Lz+3T 4F 4T 4T+2T //3A+2T+2T* 4S 3Lz 3A =90.38     94.80%
3位 羽生結弦    4Lo 4S 3F //2S+Lo 4T 3A+3T 4T+2T 3A =77.30      88.31%
4位 宇野昌磨    4Lo 4F 3Lz //3A 4T 4T+2T 3AREP 3S =75.13       84.38%
5位 パトリック・チャン   4T+3T 3A 4S< //4T 3AREP 3Lo 3Lz 3F+2T+2Lo =70.53 91.40%

 

実際に一番基礎点を獲得していたのはボーヤンだった。予定された構成を全て飛びURで少しだけ基礎点を落としたという形だ。結果的に2転倒したもののTESが100超えたのはこの基礎点をほぼ確保したという点が大きかった。
ネイサンは+Lo+3Fコンボが2T+2Tとなりそれが一つキックアウトされたことで基礎点を落とした。しかしほぼ95%基礎点を確保したので大きなマイナスにはならなかったことがわかる。
チャンはREPを食らったこととその分のコンボ2T分の基礎点を落とした。しかし予定された構成をほぼこなしたので90%以上の基礎点を確保できた。
一方90%を割り込んだのは日本人2選手だ。結果的に3クワドのチャンの予定構成並みに落としてしまっている。特に宇野はREPとコンボ2つ落としたため15%以上も予定構成から落ちている。宇野とネイサンのFSの点差が16.57となっているがそのほとんどがこの基礎点の確保の差だったということがよくわかる。REPはほぼコンボが絡むのでそのリカバリの重要性をもう少し自覚する必要があるだろう。
羽生については4Sが2Sになり同時にサード3Sを失ったためこの時点でほぼ15点失った。それをその後の構成を大幅に変えることで10点強まで押さえることには成功した。しかし取り戻せない点数は大きかったことは間違いない。

 

<TES計>
             TES  減点  獲得点  
1位 ネイサン・チェン  115.48
2位 羽生結弦      112.33
3位 ボーヤン・ジン   100.74  -2  =98.74
4位 宇野昌磨        98.69  -2  =96.69
5位 パトリック・チャン   88.94  -2  =86.94

 

TESは転倒が無い2選手が上位に来た。やはり転倒してしまうとGOE-3がついてしまうので大きな減点となる。四回転が増えたからと言って転倒することを当然と思ってはいけない。
宇野とボーヤンは結構点差があるがその大半はPCSであり、テクニカル的には予定構成をこなしたボーヤンの方が上だった。
それにしてもネイサンと羽生はジャンプの実施構成では13点以上差があったのに結果的に3点ほどしか違わないという、羽生の恐ろしさはここにあると実感する。ただこの3点を埋められなかったことが羽生が負けた大きな原因でもあったりする。

 

<ジャンプ得点計>
           TES 減点 獲得点  予定構成獲得率  実施構成獲得率
1位 ネイサン・チェン  94.30           98.92%      104.34%
2位 羽生結弦  90.27            103.13%      116.78%
3位 ボーヤン・ジン   83.69 -2 =81.69            85.83%                     89.20%
4位 宇野昌磨  76.70 -2 =74.70            83.89%                     99.43%
5位 パトリック・チャン 67.43 -2 =65.43            84.80%                     92.77%

 

実施した基礎点を上回ったのは上位二人だけ。やはり転倒すると基礎点を下回る可能性が高くなる。
ネイサンの獲得率を見て思い出すのは昨季のボーヤンだ。着氷はいまいちなものがあるが転倒が無いのでほぼ基礎点分確保できると言う結果。今季ボーヤンが昨季より安定していないのはスケーティングが良くなった為もあるが、体格の変化という理由もあるだろう。昨季も衣装が徐々に小さくなって切り込みを入れたりしていたが今季は更に背が伸びたように見える。細身は変わらないが上半身の体つきがしっかりしてきている。その為昨季のまま飛んでも上手く着氷できなくなっているのだと感じる。高く飛びすぎたり一定のリズムがまだ確立されていない。
ネイサンはボーヤンより小さいし体型もどちらかと言えばしっかりしているので案外こういう影響は受けないかもしれないがそれでもまだ17歳だ。感覚が狂うことが無いとは言えない。1年経ってがらっと変わるケースというのはネイサンだけ見てもありうることだと言うことがわかる。更に技術を上げて着氷を安定させることが出来るか、まだ未知数だなとこの数字を見て感じる。
それにしても羽生は本当に面白い。基礎点で10点以上少なくなっているのに結果的には唯一予定構成以上の得点を確保している。これは飛んだジャンプの質が良くGOEが多くついている&転倒などの大きなミスがなかったということ。報道などで羽生は良く転ぶ的なことを言われることが多いがソチの頃よりはずっと少なくなっている印象がある。4回転を数多く飛ぶからと言って転倒が多くなってはいけないという意識があるのだろうと最近の試合を見て感じる。
面白いのは下位3人の獲得率だ。予定構成からでは3人横並びなのだが、実施構成に対しては格段に宇野が良い。これは転倒以外にマイナスを受けなかったことと成功ジャンプのGOEが高かったことで相殺できているということ。宇野のジャンプの質が良いとはあまり感じないが、勢いを殺さず飛ぶということにジャッジが案外価値を置いているということかもしれない。

 

<スピン得点計>

1位 宇野昌磨      12.99 ALLレベル4
2位 羽生結弦      12.86 ALLレベル4
3位 ネイサン・チェン  12.28 ALLレベル4
4位 パトリック・チャン 12.01 レベル4 2つ レベル3 1つ
5位 ボーヤン・ジン   10.52 レベル4 2つ レベル3 1つ

 

チャンはキャメルでボーヤンはシットでレベルを取りこぼしている。
ただ上位4人はレベルとGOEがもらえているので思ったほど差がつく項目ではない。その辺り評価の厳しいボーヤンはきつい。他の選手にアップライトレベル4一つ多く実行されているようなものだ。ボーヤンは回転もポジションも悪くはないが機械的と言うか必要だから回っています的印象を受けるあたりがGOEが伸びないと感じる。
ネイサンはジャンプをそこそこまとめたのでここはしっかり基礎点を確保するぞ的な正確さと言うか正しさを感じる四大陸のスピンだった。

 

<ステップ得点計>

1位 パトリック・チャン 9.50 レベル4
2位 羽生結弦      9.20 レベル4
3位 宇野昌磨      9.00 レベル4
4位 ネイサン・チェン  8.90 レベル4
5位 ボーヤン・ジン   6.53 レベル3

 

納得のチャン1位だが2つしかない要素で上位4人はレベルを確保しているためあまり差がつかない項目ではある。
個人的には宇野のコレオはクロスしてクリムキンするだけに見えるがあんなに短くていいのだろうかと疑問に思っている。その点ネイサンはジャンプだけじゃないよとしっかり見せているのでメリハリがあっていい。
羽生は今回抑え気味と言うか腰かどこかが悪いのかある程度上下動などの動きを制限しているように見えた。その中でこれだけ取れれば十分なのかもしれない。
ただボーヤンにとってはスピンに続いて困難な要件だ。スピンステップで5点羽生と離れている。3回転ジャンプ一つ分のGOEを増やすのはボーヤンには厳しいのでせめてレベルは取っておきたいところ。

 

<GOE合計>
            ジャンプ  スピン   ステップ   合計
1位 羽生結弦      12.97      + 2.86    + 3.30   = 19.13
2位 ネイサン・チェン   3.92          + 2.08    + 3.00   =   9.00
3位 宇野昌磨      -1.57          + 2.79    + 3.10   =   7.46
4位 パトリック・チャン -3.10          + 2.71    + 3.60   =   3.21
5位 ボーヤン・ジン   -7.89          + 1.22    + 1.23   = -5.44

 

転倒2回するとどうしたってジャンプのGOEはマイナスになることがよくわかる。そのマイナスの大きさから先ほどあった構成獲得率の差が出ることもわかるだろう。
それにしても羽生のジャンプGOEは群を抜いている。抜けた2回転以外は全て1点以上のプラスがついている。急遽変えた構成ですら単純な飛び方をしていないので多少着氷が沈んでも付けずにはいられないだろう。それでも質としては2015年のNHK杯やGPFには及ばないのでもっと高得点が出せそうという期待感は非常に感じる。
スピン得点で宇野が羽生を抑えて1位だったが、これは基礎点の差があるためでGOEそのものは羽生の方が多い。そこまで差はないもののジャンプ・スピン・ステップ全ての要素でGOEすら確実に獲得できるということが羽生の強さの真実だ。
そのあたりがジャンプ超特化型のボーヤンがなかなかトップになれない競技だということがよくわかる。
それにしても実施構成で13点以上あった差が、GOEで10点以上縮めてしまうわけでネイサンがどんどん構成を上げていく理由がよくわかる結果だ。如何に稼げるとしてもGOEにもPCSと同じく限界があり、基礎点差を大きくしてしまえばGOEの獲得率での優位は薄れるからだ。これは本来ボーヤンがやりたかったことだったろう。

 

<PCS比較>
                                              SS TR PE  CO IN  合計
1位 羽生結弦      9.46   9.25    9.54    9.46    9.46    94.34
2位 パトリック・チャン 9.25   9.18    9.14    9.29    9.43    92.58
3位 宇野昌磨      9.11   8.96    9.04    9.18    9.25    91.08
4位 ネイサン・チェン  9.00   8.75    8.89    8.93    8.86    88.86
5位 ボーヤン・ジン   8.04   7.43    7.64    7.82    7.79    77.44

 

全般的にパーフェクトと言う選手がいなかったので羽生やチャン、ボーヤンは結構渋めだなと感じる。ただ宇野とネイサンは高めに出た。ネイサンは最終滑走者で高難度構成を転倒なく滑ったため点が出易かったことはわかるが、宇野についてはかなり微妙だ。何しろコンボ抜けだけで済ませたGPFより高いからだ。高難度ジャンプを成功させたからと言う理由で上がるのはボーヤンを思えば妥当ではない気がする。
それにしてもボーヤンとチャンが毎回僅差で競うことになるのがよくわかる。今回もTES12点差VSPCS15点の争いになった。傾向としては同点の場合FSではPCSが上の方が評価される事から結果的にチャンがいつもボーヤンの上に来るという感じだ。
しかしネイサンと宇野がガンガンPCSを上げているのに今季明らかに滑りの質が良くなったボーヤンがほとんど上がらないのはどうしてだろう?TRが低いのはわからないでもないが・・・9点台・8点台・7点台の差がもう少し明確になるといいと感じる。
ただネイサン場合今季初めの頃のプログラムを思うと出したくなる気持ちはよくわかる。シーズン初めの頃は冒頭の4回転4本を同じ方向ばかり回って飛んでいたし、プログラム全体も非常にあっさりしていた。しかしだんだんとプログラムの肉付きも良くなり同じ方向ばかりではなくなってきた。羽生は特にターンが多く際立っているがそこまでいかなくてもある程度方向転換を入れていこうとする姿勢を見せる必要がボーヤンにはあるのかもしれない。
チャンは2転倒とはいえユーロのフェルナンデスを思うとここまで下がるのかとちょっと驚く。
ここではあげないがブラウンがそこまで良くなかったとはいえSSやTRがネイサンを下回ってしまうというあたりでジャンプ構成によって差別化を図る意図も多少見える気がする。それでもチャンは昨季より構成を上げてきているのだから宇野との差がこの程度しかないのかと思うとすっきりしない印象が残る。

なによりジャンプの難度によりPCSの上限が定められてしまうとしたらそもそものPCSの意味がなくなってしまうような気がする。チャン・羽生と宇野・ネイサンの間にはジャンプ以外のプログラムの質などを見てももう少し差があるように感じる。その辺りをもう少し差別化できないか。PCSの意味や運用についてジャッジ間での意思統一を図ってほしい。

 

TESで3.15ネイサンが勝ち、PCSで羽生が5.48勝った。SPで6.08ネイサンが勝っていたのでそのまま逃げ切ったという形だ。その差3.75と言う僅差だった。4Sが抜けてしまったのはある意味仕方ないがLoをつけた時4Sは無理と判断しても3Sを飛んでいたらTESでも上回れたかもしれない。結果的に実施基礎点差が大きすぎたと言うことが今回の羽生の敗因だ。他の選手でもサルコウのミスが多かったので飛びにくい氷だったのかもしれない。ただこの会場で五輪が来年開かれる。その感覚を味わったことは良かったと思うしかない。

ワールドではわからないがラファの発言を聞くとまだネイサンは構成上げをする可能性がある。転倒も駄目だが抜けもまた致命傷になるということが今回認識しただろう。抜けやすいエッジジャンプの多い羽生としては飛ぶ位置や飛び方などで対策する必要がありそうだ。ただ負け方としては悪くないものだったのでワールドに向けて気持ちを切り替えてほしい。

宇野についてはキスクラで笑顔だったことが印象的だった。3Aは得意なジャンプだから次は大丈夫と言うことか、それとも3位になれれば良いということだったのかよくわからないが、勝てるチャンスがある時に自ら先におちてしまうのは勝負弱いと言う印象がある。後で滑った羽生の自らのミスを少しでも取り返そうとした姿勢や羽生の得点を聞いて高難度の方の構成を決意してやりきったネイサンを顧みるとまだその域には達してないなと感じる。五輪金メダルを目指すなら何としてもヘルシンキでは表彰台に載らないといけない。ネイサン羽生フェルナンデスをはねのけてそれができるか、現時点ではその姿を想像できない。

チャンについては今は2種クワドの両立が必須だ。4Sの成功率もだが現状4Tが不安定化している印象があるので少し心配だ。ただ3Aの質はかなり良くなってきている。決めれば加点も多くつくジャンプなのでいい得点源になっている。高難度若手のミス待ちになってしまう部分はあるが質の良いエレメンツと最上級の滑りで上位に食い込んでいって欲しい。

ボーヤンはジャンプの角度が昨季と変わってきているように感じる。体形や筋力やスケーティングの質の向上など様々な要件の変化の中で模索している印象がある。それを掴みさえすれば昨季のような安定したジャンプが戻ってきそうではあるので、落ち着くまでジレンマはあるだろうがジャンプ以外のエレメンツの質の向上を目指してほしい。

ネイサンは今はジャンプの心配はないだろう。安定して離氷も着氷もできている。だから心配なのはケガだけだ。現構成をほぼ飛べるので更にあげるというのもネイサンならいいかもしれない。しかし良い時だからこそ体のケアに気を付けて長く滑れる技術を身に着けてほしい。今季は変えないだろうが来季はスピン1つだけでももう少し早い位置で入れてほしい。まとめて残りのエレメンツをこなすよ的な配置はジュニア上がりだからこそ大目に見れることであってシニアのプログラムとしては物足りない部分だ。PCSも伸びているので来季のプログラムは改善してほしい。

 

1月にユーロがあり2月の四大陸が終わった。四大陸の上位5位までがユーロの2位の上に来る。この選手たちとフェルナンデスがワールドの表彰台を争うことに恐らくなるだろう。熾烈な四大陸を見るとワールドがますます楽しみになってくる。五輪の枠がかかった今季のワールドは非常に重要だ。誰がその頂点に立つのか・・・あとひと月の選手たちの努力と成果を今から非常に期待している。