つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

時にはあれこれ考えてみたりする

ワールドですっかり今シーズンが終わってしまってなんとなく気が抜けている。国別も結局リアルタイムではあまり見れなくて・・・とりあえず日本優勝おめでとう!出場選手の皆様、シーズンお疲れさまでした。おいしいもの食べて来季に備えてください。

 

ワールドが終わった後だったか、北京以降のルール変更について記事が上がった。文章だけではよくわからないが、今のSP・FSという2プログラム採点ではなく技術と芸術に分けるという案だ。どちらか片方だけの参加もOKということだった。

漠然としすぎて現状どういう感じになるのか想像できないのだが、読んで最初に浮かんだのは「面白そうじゃないなぁ」という感想だった。何しろSP5位からの逆転優勝という劇的な試合を見た後だ。1プログラムのみで順位を決めるということはあの驚きがなくなるわけで魅力が半減してしまう気がしたのだ。

次に思ったのは「枠ってどうなるの?」という疑問。毎年ワールドで翌年の出場枠が決まるが、2つの採点する試合においてそれぞれに枠が作られるのだろうか?

そして一番気になったのは「芸術」だ。何をもって芸術として何を良いと数値化するのか。その辺りが全く分からないので良い改正かどうかが判断できない。今のところあまり海外でも話題になっていないのでとりあえず判断は保留。もう少し情報を待つことにしする。

 

ただ・・・ルールの大きな改正が必要な状況であることは確かだ。特に男子シングルでは深刻な状況だ。ジャンプが高難度化しすぎてPCSとのバランスが取れなくなっている。点数が限界を迎えているのは他のカテゴリも同じなのだが、男子は特にジャンプに偏りすぎている。平昌後に1つ減るがそれはむしろ加速化させそうな印象が今からすでにある。PCS係数を変えるという話も出ているがどこまで有効かわからない。そういったこともあり先のような新ルールが考案されているんだなというのは理解できる。ただスポーツでありオリンピック種目であるからテクニカルに限界を持たせるということには是とは言えない。スポーツである以上技術の向上は必要でバレエやピアノのコンクールとは違うのだから・・・

 

以前から考えていたことがある。男子シングルのTESとPCSのバランスどう改良したらしたらいいのか。ジャンプの比重が大きすぎるから点数を下げるということが最も簡単だ。しかし基礎点は男子だけではなく女子でもペアでも利用されている。GOE係数との兼ね合いもあるし、下手に調節してバンクーバーの頃のように低難度をまとめた方が得というようなことになったら目も当てられない。現在の基礎点も4Aを除けばほどほど妥当な数値だと思う。そんなわけで基礎点や現在のGOEのやり方を変えないという前提で考えると道は2つしかない。一番簡単なのはPCS係数を変えること。現行のSP×1、FS×2を1.2や2.4に変える。そうすればTESとPCSのバランスは上位ではかなりとれるようになるだろう。ただしこのやり方ではジャンプの偏重は変わらない。スピンステップが苦手だと感じたらまずジャンプという選手が多く出てくるだろう。そういう意味ではあまりいい対策だとは言えない。

そんなことで私が考えるのは単純に「ジャンプの点数を下げる」という方策だ。現行の基礎点やGOEは変えない、ただ「ジャンプの獲得点を下げる」。そうすればPCS係数は現行通りでいいし、ジャンプの比重が下がる分スピンステップの価値が上がるわけだ。ではどうやって下げるかといえば、実に簡単、「獲得したジャンプの得点を決めた係数でかける」というやり方だ。4/5でも3/4でもいいのだがとりあえず2017世界選手権の羽生のFSで計算してみる。

 ジャンプ  スピン ステップ  TES  PCS  合計
 104.67 + 12.65 + 8.80 = 126.12  97.08  223.20 

これをジャンプで獲得した点数のみ係数をかける

ジャンプ  スピン ステップ  TES  PCS  合計
 83.74 + 12.65 + 8.80 = 105.19  97.08  202.27 ×0.8の場合
 78.50 + 12.65 + 8.80 =  99.95  97.08  197.03 ×0.75の場合
 73.27 + 12.65 + 8.80 =  94.72  97.08  191.80 ×0.7の場合

なんとなくだがいい感じに収まってきた感じがする。

SPはフェルナンデスで計算してみるとこうなる
ジャンプ  スピン ステップ   TES  PCS  合計
 43.17 + 11.62 + 6.00 = 60.79  48.26  109.05
 34.54 + 11.62 + 6.00 = 52.16  48.26  100.42 ×0.8の場合
 32.38 + 11.62 + 6.00 = 50.00  48.26   98.26 ×0.75の場合
 30.22 + 11.62 + 6.00 = 47.84  48.26   96.10 ×0.7の場合

係数的にはFSと変わりなくできそうな予感だ。しかもFSよりも格段にスピンステップの比重が上がる。基礎力を図るには向いていると感じる。

ジャンプの獲得点に対し×0.〇で下げることの意味としては基礎点を変えないためジャンプ難度を求めたければその姿勢を変えなくても構わないということ。ただ現在ほど効果が大きくないだけだ。そして質をよくしてGOEを多く得ることが大切という点も変わらない。選手にとって負担は少ないと感じる策だがどうだろうか?

試しに2017世界選手権で上位の成績で検討してみる。今回は0.75で計算してみた。

         TES PCS 減点 総合計 → TES PCS 減点 総合計
1位 羽生 結弦 178.16 144.43 -1 321.59   143.75 144.43 -1 287.18
2位 宇野 昌磨 179.19 140.12  0 319.31   144.25 140.12  0 284.37
3位 ボーヤン・ジン 176.59 126.99  0 303.58   141.36 126.99  0 268.35
4位 フェルナンデス  159.41 142.78 -1 301.19   129.34 142.78 -1 271.12
5位 P・チャン 152.22 142.94  0 295.16   124.00 142.94  0 266.94
6位 N・チェン 165.83 127.89 -3 290.72   133.29 127.89 -3 258.18
7位 ブラウン  136.27 134.30 -1 269.57   112.72 134.30 -1 246.02
8位 コリャーダ 133.26 125.21 -1 257.47   108.82 125.21 -1 233.03
9位 レイノルズ 139.54 114.30  0 253.84   112.82 114.30  0 227.12
10位 ビチェンコ 130.08 115.88  0 245.96   105.09 220.97  0 220.97
11位 コフトゥン 126.05 120.79 -1 245.84   102.51 120.79 -1 222.30

予想した通りジャンプに0.75をかけると3位のボーヤンと10位のビチェンコの順位が下がる。(ちなみにビチェンコはミーシャよりも下回るため12位になる)
10位以下だとヴァシリエフスとテンとヘンドリクスが1つ順位が上がることになる。ビチェンコはスピンステップが弱いことで下がり、ヴァシリエフスやヘンドリクスはその辺りが強いから上にきてフェルナンデスとテンはPCSが高いことで上昇するというわけだ。バランスの取れた選手を上位にあげたいというジャッジの意志にはある程度該当しているのではという印象がある。
点数を見て面白いのはボーヤンとチャンが差がなくなるということ。そして上位6強とブラウンの差がかなり縮まった反面コリャーダとの差が広がったこと。博打的高難度を飛ぶよりエレメンツの質をよくしてGOEを稼ぐことに意味がある結果といえないだろうか?

 
 
「技術」「芸術」と分けて採点するという競技となれば仮にその2つを勝って世界王者になっても今までとは違う競技になってしまう。旧採点から新採点になっていろいろ見方は変わったがフィギュアスケートという競技そのものは継続されてきたはずだ。しかし先ほど提案されたものはあまりにも違って見えることが不安でならない。新採点になって変わってしまった部分もあるがよりよくなった部分も多かったはず。そして今の選手たちはその採点法に合わせて訓練してきている。だとしたら運用レベルの修正の方が良いのではないかと今の段階では思っている。全体的に高難度になってはいても芸術性が失われた演技というのはそれほどないはずだから。違うスポーツに変わってしまえば価値観が見えない中で戦うことになる今のノービス・ジュニア世代の負担も大きい。なるべくならば流れの先にある道筋の見える変革をしてほしい、こんな風にしたらあんな風にしたらとあれこれ思い浮かべながら願っている。



 

 

 

突き抜けられない男―――マキシム・コフトゥン

今シーズンの演技を見ながらよく考えていたことがある。コフトゥンの強みって何だろう?ということ。スピンはお世辞にもうまい選手だとは言えない。スケーティングも悪くはないが特別に良いとは言えない。やはりどちらかと言えばジャンプの選手だ。
しかし今は4回転2種はそれ程の武器にはならない。SPですらだ。そしてFは重度のエラーのため飛ばない。3Lzと3Loは不格好になりがちとジャンプで稼ぐには弱点も多いと言う現状がある。そうなるとジャンプが強みの選手と言うには弱い印象になる。
強みよりも弱点が目立ってしまうというのは採点競技ではなかなか厳しい状態だ。演技に心情が反映しやすい選手だけになおさら心配になる。シニアに上がった頃のような突き抜けたら凄い選手になりそう感を取り戻して欲しいと願っているが本人の不運も有りその道筋が見えてこないところが悩ましいシーズンだった。
 
フィンランディアT   総合3位 229.57 SP1位 88.26 FS4位 141.31
Sアメリカ   総合7位 230.75 SP10位 67.43 FS6位 163.32
中 国 杯   総合7位 221.43 SP10位 70.10 FS7位 151.33
欧州選手権   総合2位 266.80 SP2位  94.53 FS2位 172.27
世界選手権   総合11位 245.84 SP10位 89.38 FS14位 156.46 
国別対抗戦           212.91 SP11位  64.62 FS10位 148.29
平均       総合   234.550 SP平均 79.053 FS平均  155.497
 
国別を入れなくてもいい気がするけどブラウンとかコリャーダとかPB出しているんで一応含めておく。国別を入れないと総合で平均が3点ちょっと上がり240行かないくらいの得点となる。数字としては中堅レベルだ。ここ数年変わってないなぁという印象の得点になってしまう。
構成や演技の質、ミスの出方も割と似ているので仕方ないのかもしれない。ロシアンは欧州選手権で良い得点が出ないと世界選手権に出られないのが大変だと感じる。その為ここがシーズン一番になってしまうのかもしれない。

<ジャンプ>
SP  4S+3T 4T // 3A =34.45
         
        基礎点    GOE   減点    合計
フィンランディアT  34.45  -0.56  0   33.89  
Sアメリカ  14.80   1.57  0   16.37
中 国 杯  20.25  -0.28  0   19.97
欧州選手権  34.45   2.53  0   36.98
世界選手権  34.45  -1.42 -1   32.03
国別対抗戦  15.23  -4.14  0   11.09
平均    25.605 -0.383 -0.167  25.055  
 
国別を入れないと平均28点弱。コフトゥンは転倒は少ない選手だったりする。しかし今のルールでは抜けの方が遙かにダメージは大きい、特にSPでは。その為ノーカンによる0点が数字を非常に悪くしている。
ジャンプの質そのものもあまり変わらないところが無いとも改善の見込みを感じなくて残念だ。
 
 
FS 
        
        基礎点    GOE  減点    合計
フィンランディアT  48.62  1.46  0   50.08
Sアメリカ  70.68  1.90 -1   71.58
中 国 杯  57.92  2.36  0   60.28  
欧州選手権  63.27  6.31  0   69.58
世界選手権  57.48  3.67  0   61.15
国別対抗戦  63.27 -2.89 -1   59.38
平均    60.207 2.135 -0.333 62.009
 
コフトゥンは典型的なロシアンジャンパーだと思う。ただヤグディンプルシェンコに比べると身長が高い。ただ高いだけでは無く重心も高くなっていてその為にジャンプの安定には小柄な選手よりは困難な要因になっている。
ただそれ以上に問題なのがジャンプ前の動作だと思う。離氷前に前傾になるのはどの選手も同じだがコフトゥンで気になるのは飛ぶ直前まで下を向いていることだ。苦手なジャンプや高難度が特にそうなる傾向にある。ただでさえ上背があるコフトゥンが下を向いてジャンプするわけでそれだけでエネルギーを無駄にしているし力の方向を不安定にさせていると感じる。ジャンプは基本後ろ向きに飛ぶ、一方高跳び型ジャンパーであるので力方向は上に向かわなければいけない。後ろにはねる力が強くなりすぎれば抜けてしまうし上に綺麗にエネルギーが働かないと回転が緩んでそのまま下に落ちてしまう。そういったジャンプの失敗をどれだけ見てきたか・・・
だから足下を見るのでは無く他の選手のように斜め前方くらいに顔を向けられたら姿勢も良くなるし無駄も改善する分少しは変わりそうな気がするのだけど・・・コーチとかは指摘しないのだろうか?

<スピン>
SP
        基礎点   GOE     合計
フィンランディアT   9.7  1.25  10.95  ALLレベル4
Sアメリカ   9.7  0.57  10.27  ALLレベル4
中 国 杯   7.4  0.93   8.33  レベル3 2回 レベル2 1回
欧州選手権   9.7  1.29  10.99  ALLレベル4
世界選手権   9.7  1.71  11.41  ALLレベル4
国別対抗戦   9.3  1.07  10.37  レベル4 2回 レベル3 1回
平均     9.25 1.137 10.387
 
中国杯を除いてはほぼほぼレベルは取れていると言える。あまりGOEを稼げるタイプでは無いのでとにかくレベルを確保するしかない。SPについてはまずまずできているのかもしれない。
 
FS
        基礎点   GOE   合計
フィンランディアT   8.9  0.75   9.65  レベル4 1回  レベル3 2回
Sアメリカ   9.7  0.86  10.56  ALLレベル4
中 国 杯   8.9  1.22  10.12  レベル4 1回  レベル3 2回
欧州選手権   9.7  1.43  11.13  ALLレベル4
世界選手権   9.3  0.78  10.08  レベル4 2回  レベル3 1回
国別対抗戦   6.7  0.64   7.34  レベル4 2回  ノーカン  1回
平均    8.867 0.947  9.814
 
エレメンツが多い分FSでは取りこぼしが増える傾向にある。というよりコフトゥンは割とメンタルで演技が変わるタイプなのでミスが重なってくるとエレメントの質を確保する意識が下がる。レベルの獲得と点数の高さがはっきり連動していることが感じられる結果だ。
 
<ステップ>
SP
        基礎点   GOE   合計
フィンランディアT   3.9  0.93  4.83  レベル4 
Sアメリカ   3.3  0.50  3.80  レベル3
中 国 杯   3.3  0.57  3.87  レベル3
欧州選手権   3.9  1.10  5.00  レベル4
世界選手権   3.3  0.71  4.01  レベル3
国別対抗戦   3.9  0.80  4.70  レベル4
平均      3.6 0.768 4.368
 
レベルはまずまずSPでは取れている。小芝居は上手いし表情も出せるが滑りで魅せられるかというとちょっと微妙。そんな印象のGOEなのかもしれない。
 
FS
        基礎点   GOE   合計
フィンランディアT   4.6  0.56  5.16  レベル2
Sアメリカ   4.6  0.66  5.26  レベル2 
中 国 杯   5.3  0.63  5.93  レベル3
欧州選手権   5.3  1.76  7.06  レベル3
世界選手権   5.3  1.07  6.37  レベル3
国別対抗戦   5.3  0.63  5.93  レベル3
平均    5.067 0.885 5.952
 
FSになると体力がかなり厳しくスピードも落ちやすい。エッジも甘くなりがちでレベルを落とす印象。特に後半のエレメンツはこなしている感がはっきり出るのでGOEがあまりつかない。スピンが上手いと言えない分本来ならここで稼ぎたいところなのだが・・・できていないことが感じ取れる結果となっている。
 
<TES計>
SP  
        基礎点   GOE  減点    合計
フィンランディアT  48.05  1.62  0   49.67  
Sアメリカ  27.80  2.64  0   30.44
中 国 杯  30.95  1.78  0   32.73
欧州選手権  48.05  4.92  0   52.97
世界選手権  47.45  1.00 -1   47.45
国別対抗戦  28.43 -2.27  0   26.16
平均    38.455 1.615 -0.167 39.903
 
ジャンプミスを埋められる要素がないことがダイレクトに見られる結果に。転倒が少ない分GOEがマイナスになることは少ないが抜けやノーカンが埋まられるわけでは無い。強みを強みとして生かせていない辺りが基礎点から10点ほど下がってしまう結果となっている。

FS
        基礎点    GOE  減点    合計
フィンランディアT  62.12  2.77  0   64.89
Sアメリカ  84.98  3.42 -1   87.40  
中 国 杯  72.12  4.21  0   76.33
欧州選手権  78.27  9.50  0   87.77
世界選手権  72.08  5.52  0   77.60
国別対抗戦  75.27 -1.62 -1   72.65
平均    74.140 3.967 -0.333 77.774 
 
結果的にそこそこにいつも落ち着いてしまうコフトゥンの点数。ミスが出る場所が色々あるところがもどかしいシーズンを繰り返す結果なのかもしれない。ここだけは高得点を確実に稼げる、というジャンプが必要と同時に、苦手なエレメンツも最低限の点数を確保できるようにしないとほどほどから脱却できないのかもしれない。

<PCS>
SP
       SS  TR  PE  CC  IN  合計
フィンランディアT  7.88  7.38  7.83  7.71  7.79  38.59
Sアメリカ  7.57  7.07  7.21  7.64  7.50  36.99
中 国 杯  7.61  7.43  7.25  7.54  7.54  37.37
欧州選手権  8.39  8.11  8.46  8.39  8.21  41.56
世界選手権  8.54  8.18  8.36  8.39  8.46  41.93
国別対抗戦  8.00  7.64  7.36  7.75  7.71  38.46
平均      7.998  7.635   7.745   7.903   7.868   39.150
 
2シーズン前と平均はあまり変わらないが全体的に下がり気味だなと感じる。まだSPは短いのでこの位で治まっていると言うべきかも。コフトゥンの5項目はPEこそジャンプの出来で上下するが他は横並びの印象。それはある意味強みというか評価するべき処が取り立てて無いということ表していると言うことなのかも。
 
FS
       SS  TR  PE  CC  IN  合計
フィンランディアT  7.79  7.29  7.63  7.75  7.75  76.42
Sアメリカ  7.82  7.14  7.71  7.61  7.68  75.92
中 国 杯  7.75  7.21  7.57  7.54  7.43  75.00 
欧州選手権  8.61  8.21  8.54  8.39  8.50  84.50
世界選手権  8.07  7.64  7.86  7.93  7.93  78.86
国別対抗戦  7.93  7.21  7.39  7.61  7.68  75.64
平均      7.995  7.45  7.783   7.805   7.828   77.723
 
FSは2シーズン前より確実に落ちてきている。欧州選手権のようなジャンプを纏めた演技で無ければ8点台が出ないというのは若手が伸びてきた今の実情では厳しい。ロシアもジュニアにスケーティングの良い選手が出てきているのでこのまま下降し続けると五輪出場を逃してしまいそうな印象だ。
せめて多少ミスが出てもそれを忘れさせるような勢いのある演技を見せる強さが有れば違うのにと思わないでいられない。
 
<来季に向けて>
4Lzを練習中という情報が入っている。ネイサンを見て技術の向上に目覚めたというのは喜ばしいが・・・3Lzも安定していないが大丈夫かと思わずにいられない。
せっかく大きな上背があるのだからそれを有意義に見せることに注視しても良いかもとは思っている。ただジャンプで大きくミスると目に見えてやる気が失われるというのはシニアになってそこそこ時間の経った選手には喜ばしい態度では無い。
どうしてもコミカル系のプログラムが多いがもう中堅の実績がある選手なので正統派の硬質なプログラムで印象を変えるのも良いのではと思っている。型にきちっとはまった動きの必要なプロなら姿勢を生かす振付になるのかもしれない。出来ればどちらかはロシアン以外の振付にして欲しいのでが、それは難しいかな。
ただ現状背後にの火がついた状態なので奮起してプログラムを完遂する意識が無ければ五輪どころか欧州選手権にも出場できなくなるかもしれない。何とか意識と技術が改革されることを願っている。

ぜいたくな悩み、その他ワールド雑感

午前中は用事で出かけていたのだが帰宅したらBSで2017年ワールド男子FSが放映されていたので見た。(録画はできないけど見ることはできるのだ)録画に失敗してあのフジカウンターで羽生の点数が上がっていくところが見れなくてがっかりしていたので再放送は非常にありがたかった。

しかし・・・第3グループの途中から見たのだがだんだん私の中の期待感が消滅していく。というか・・・

 

カウンターすげぇ邪魔!

 

と身もふたもない感想になってしまった。

 

公式のTESカウンターがつき始めてもう数年、それを見て一度も感じたことのない思いがフジ高性能カウンターにわいてきたのはひとえに情報量が多すぎる、ということに尽きる。お茶の間の漠然としかフィギュアをご存じない一般視聴者にはありがたいのだろうが基礎点がほぼ頭に入っているファンにはエレメント名も基礎点とGOEをわざわざ分けて表す必要も感じない。むしろカウンターのでかさが無駄なスペースを奪われているみたいだし、認識する文字が多すぎて演技から目がそれていることに気が付いて自分が嫌になってくる。途中から結局カウンターを見ないようにして、このナビと解説なら海外動画で十分だったなと思ってしまった。

もっともこの感想を抱いてしまったのはリアルタイム観戦ではないということが大きかっただろう。そしてカウンターはつけないで欲しいとは絶対に思わない。なければ欲しいと思うしあればあったでわがままな気持ちがわいてくるというものだろう。人間なんて贅沢なものだとつくづく思う。

 

今回のワールドで非常にうれしかったのはイスラエル2枠だ。結果を見て思わず万歳してしまったくらいだった。1枠だとサモヒンとビチェンコが争いサモヒンが代表になったらビチェンコが引退してしまうかもと危惧していたので二人が五輪で見れることがほぼ確定した2枠が非常にうれしかった。演技としてはミスも多かったがそれでもコンボを無駄にしなかったこととREPを食らわない対処をきちんとしたということがこの結果を生み出した。そういえば昨季ユーロで2位になったときも1Tをつけたことが大きくて、今回も結果的にそれが2枠につながった。点数にならないコンボを付ける意味があるのかとも思うが、それ以上点数を失わないため後に負担をかけないために対処しておくというのが大局では意味があるのだなと感じる。

今回のワールドでも案外コンボを無駄にしている選手が多かった。例えば田中とかコリャーダとか、後半リカバリできそうな場合でもしないケースがいくつも見られた。順位にはかかわらなかったかもしれないが今の点数が積み上げられて得点となるルールにおいては無駄にするということはそれだけで勝機を失うということ。ネイサンが2転倒してもきっちりコンボ分の基礎点を得ようとした姿勢がいま世界で戦うためには必要なのだと改めて今日振り返り映像を見て感じた。

構成が横並びの女子に比べて男子選手は基礎点に固執する姿勢が見れない場合が多い。REPやザヤも男子選手の方が多く発生している現状がある。実行さえすれば基礎点は確実に得られる点数なのでも予定構成だけは確保するという姿勢がもう少し見られるとより面白い試合になる気がする。

来季はいよいよ五輪シーズン、勝利にはより完成度が求められるシーズンだ。自分の決めた構成を完遂してより際どいしのぎを削る試合が見られることを期待する。

競技者と表現者の狭間で―――ミーシャ・ジー

ミーシャ・ジーという選手はかなり昔から知っていた。ただkamiyann的にはあまり関心のない選手だった。EXではハチャメチャに動き目立っていたが試合ではいまいち、特にエレメンツの質が低いことが原因だった。
しかし3シーズン前からその傾向がガラッと変わる。回転が緩み勝ちで着氷がいまいちだったジャンプもしっかり回るようになった。スピンもステップもきちんとルールに対応して行うようになった。その上で自分の個性を出すことは変わらなかった。意識が変わるとこんなに上手くなるものなんだ、ととても感心したことを覚えている。
EXの盛り上げ役としても様々な情報の発信者としても人気者だった。今シーズンに入っては振付師としても実績も作っている。怪我や年齢更には資金難などの問題でワールドは今回で最後ということだが、枠も持っているのでぜひ五輪というフィギュアスケート最大位の大会まで引退を伸ばしてほしい。

 

オータムC   総合2位 230.55 SP2位 79.52 FS3位 151.03
Sカナダ    総合6位 226.07 SP7位 72.30 FS5位 153.77
フランス杯   総合7位 229.06 SP8位 72.49 FS6位 156.57
四大陸選手権  総合7位 239.41 SP8位  81.85 FS8位 157.56
冬季アジア   総合6位 233.93 SP8位 76.18 FS5位 157.75 
世界選手権   総合12位 243.45 SP16位   79.91 FS10位 163.54
平均       総合  233.745  SP平均 77.042 FS平均 156.703

230点を超えると中堅クラスという印象がある。各試合の点数を見ても平均を見ても十分その結果を出してきている。これを上回るにはやはり4回転が必要になってくる。今季冒頭は入れてきたが成功はできなかった。怪我の影響もあり後半は外してきたが演技としてはまとまり印象が良くなったので無理してまで入れなくてもいいと感じた。4回転が飛び交う中ではなかなか点が伸ばせないジレンマを感じるだろうが個性を出す必要を見せる選手も必要だ。そういう意味でも安定した成績を出し続けるジーという選手は重要な人物だと感じる。


<ジャンプ>
SP  

         
        基礎点    GOE  減点    合計
オータムC  30.13  -2.08  0   28.05  
Sカナダ   24.13  -2.50 -1   20.63
フランス杯  26.40  -6.04 -1   19.36
四大陸選手権 24.63   0.97  0   25.60
冬季アジア  23.33  -2.10  0   21.23
世界選手権  24.63  -0.47  0   24.16
平均    25.542 -2.037 -0.333  23.172 

ジャンプについてはどうしてもGOEがマイナスになってしまう傾向がある。もともとジャンプが得意な選手ではないので仕方ない部分ではある。後半は4回転を抜いてきたので基礎点は下がったが全体としては安定してきた。GOEがつくタイプのジャンプではないため基礎点を確実に稼ぐ方が有効だと感じる選手だ。


FS 
        
        基礎点    GOE  減点    合計
オータムC  55.67 -0.86  0   54.81
Sカナダ   57.72 -2.37  0   55.35
フランス杯  59.70 -1.34 -1   57.36  
四大陸選手権 59.43  3.10  0   62.53
冬季アジア  54.73  2.94  0   57.67
世界選手権  59.43  4.02  0   63.45
平均     57.78 0.915 -0.167 58.528

kamiyann的にはジャンプ前の腕や肩の位置と着氷そのものは好みではない選手だ。しかし着氷後の腕の使い方は非常にいい選手だと思う。旧採点時代のユーロ選手はジーのようにびしっと腕を伸ばすことが多かったが昨今あまりいなくなってしまった。体操ほどしっかりする必要はないがそれでもエレメンツを行いましたというアピールは試合なのであった方がいいのではと思うことはある。ジーの肩から手の先まで伸ばす腕は美しいと感じる。

FSについては前半と後半のGOE差が経過をはっきり示している。4回転を入れるか入れないか、である。怪我のためだったようだがジーのやりたかった綺麗な音楽に合わせた美しい演技には4回転は必要なかったように感じる。点数的にも入れない方が大幅に伸びている。


<スピン>
SP
        基礎点   GOE    合計
オータムC   9.3  1.20  10.50  レベル4 2回 レベル3 1回
Sケナダ    9.3  1.43  10.73  レベル4 2回 レベル3 1回
フランス杯   9.3  1.29  10.59  レベル4 2回 レベル3 1回
四大陸選手権  8.8  2.57  11.37  レベル4 1回 レベル3 2回
冬季アジア   9.3  1.90  11.20  レベル4 2回 レベル3 1回
世界選手権   9.3  2.00  11.30  レベル4 2回 レベル3 1回
平均     9.02 2.388 11.408

 キャメルとシット両方でなかなか4が取れなかった。もともとそれほど得意という選手ではないのでシーズンとしては後半の方が点数が伸びているのでこれくらいとれればいいのかもしれない。

 

FS
        基礎点   GOE   合計
オータムC   8.9  1.80  10.70  レベル4 1回  レベル3 2回
Sカナダ    8.9  1.57  10.47  レベル4 1回  レベル3 2回
フランス杯   9.3  1.64  10.94  レベル4 2回  レベル3 1回
四大陸選手権  8.4  1.71  10.11  ALLレベル3
冬季アジア   9.3  2.00  11.30  レベル4 2回  レベル3 1回
世界選手権   9.7  1.79  11.49  ALLレベル4
平均    9.083 1.752 10.835

レベル4がラストで揃ったことがぐっとくる。SPよりも安定しなかったがそれでも後半に行くほど点数が伸びていることがわかる。

 

<ステップ>
SP
        基礎点   GOE   合計
オータムC   3.9  1.12  5.02  レベル4 
Sカナダ    3.3  0.86  4.16  レベル3
フランス杯   3.3  1.07  4.37  レベル3
四大陸選手権  3.9  1.40  5.30  レベル4
冬季アジア   3.9  1.40  5.30  レベル4
世界選手権   3.9  1.40  5.30  レベル4
平均      3.7 1.208 4.908

ステップは得意分野だ。PCS3強やブラウンからみてしまうと控えめに見れるが総得点が230レベルの選手の中にあってはかなりいい数字であるといえる。レベル4を安定して取れているところがルールをきちんと理解した振付師としては信用が置けるという評価になるだろう。


FS
        基礎点   GOE   合計
オータムC   5.3  2.52  7.82  レベル3
Sカナダ    5.3  2.79  8.09  レベル3 
フランス杯   5.3  3.03  8.33  レベル3
四大陸選手権  5.9  2.10  8.00  レベル4
冬季アジア   5.9  3.08  8.98  レベル4
世界選手権   5.9  2.90  8.80  レベル4
平均      5.6 2.737 8.337

ジーのステップの面白いところは全般的にコレオの方がGOEが高い傾向にあるところだ。うまい選手はもちろんどちらも高GOEを取るが、案外似たような数字になる。ジーの場合は明らかにコレオの方が秀でていることが珍しい。近年レベルを取ることに重点が置かれコレオが流し気味に見える選手が増えてきたのでジーのようなコレオで魅せる選手は貴重だと感じる。 

 

<TES計>
SP  
        基礎点   GOE  減点    合計
オータムC  43.33  0.24  0   43.57  
Sカナダ   36.73 -0.21 -1   35.52
フランス杯  39.00 -3.68 -1   34.32
四大陸選手権 37.33  4.94 -1   41.27
冬季アジア  36.53  1.20  0   37.73
世界選手権  37.83  2.93  0   40.76
平均    38.458 0.903 -0.5   38.861

TESはどうしてもジャンプの成否で左右されてしまう。ジャンプの苦手な選手はなかなか上位に入れない厳しい時代ではある。それでも予定構成の基礎点と稼げる部分でGOEを確実に得ることで着実に積み重ねていくしかない。4回転のない選手はよりその傾向が高まる。4回転を抜いてTESが安定したことは評価に値すると感じる。


FS
        基礎点    GOE  減点    合計
オータムC  69.87  3.46  0   73.33
Sカナダ   71.92  1.99  0   73.91  
フランス杯  74.30  3.33 -1   76.63
四大陸選手権 73.73  6.91  0   80.64
冬季アジア  69.93  8.02  0   77.95
世界選手権  75.03  8.71  0   83.74
平均    72.463 5.403 -0.166   77.70 

4回転を入れた時よりなくしたほうが得点としては高くなった。もちろん滑り込みができてレベルを安定させた影響もあるが、自分が決めた構成を確実にこなしたことが大きい。世界選手権のプロトコルはマイナスのない美しいものとなった。引退覚悟の試合でこれを見せた価値は高いと思う。

 

<PCS>
SP
       SS  TR  PE  CC  IN  合計
オータムC  7.15  6.90  7.20  7.35  7.35  35.95
Sカナダ   7.46  7.00  7.43  7.43  7.46  36.78 
フランス杯  7.57  7.36  7.64  7.71  7.89  38.17 
四大陸選手権 7.96  7.79  8.29  8.18  8.36  40.58
冬季アジア  7.60  7.40  7.70  7.85  7.90  38.45
世界選手権  7.79  7.57  7.86  7.89  8.04  39.15
平均      7.588  7.366   7.687   7.735  7.833   38.180

SPは5項目が案外平均的な数字になっている。あまり他の選手と変わりない傾向。

 

FS
       SS  TR  PE  CC  IN  合計
オータムC  7.70  7.10  7.95  7.90  8.20  77.70
Sカナダ   7.75  7.50  8.21  8.18  8.29  79.86
フランス杯  7.79  7.61  8.14  8.11  8.32  79.94 
四大陸選手権 7.68  7.46  7.75  7.71  7.86  76.92
冬季アジア  7.90  7.55  8.10  8.10  8.25  79.80
世界選手権  7.79  7.61  8.14  8.00  8.36  79.80
平均      7.768   7.472  8.048  8.00   8.213   79.003

FSはSPに比べると5項目にばらつきを感じる。ただ数字の出方としてはフェルナンデスタイプの後半3項目が高いタイプ。FSの方がばらつきが出るのは時間とエレメンツが多い分SPよりも魅せるということができる点にあるのかもしれない。

 

<来季に向けて>

ワールドで五輪枠を確保した。一方振付のお仕事も順調だという情報も入っている。振付て終わりというものでもないので練習時間や環境などの問題もあるだろう。しかしフィギュア選手にとってやはり五輪は大切な試合なので持ち越しプロでもいいので何とか頑張ってくれないかと思う。若い選手が4回転を飛ぶことに注視する傾向が強いだけにジーのような選手がいる意味は大きいはず。来季もその姿が見られることを願っている。

ある春の日に―――浅田真央現役卒業に寄せて

昨日と打って変わり今日は穏やかで暖かい春の日でした。桜をはじめとする春の花も満開、美しい日本の風景を感じられる一日となりました。

そんな気持ちのいい日に先日現役引退を表明した浅田真央の会見が行われました。ちょうどお昼休みだったので職場のテレビでその模様を見ていました。

レベルの低い日経の記者や頓珍漢な質問などにもいつも通りの柔らかい笑みで丁寧に真摯に答えていました。記者というものは時に意地の悪い嫌味な質問もするのですが考えてみればこの人はいつも気持ちの良い回答をしてきました。そういう部分が成績以外でも人を魅了してきたのでしょう。

東海地域に生きていますので浅田姉妹はかなり幼いころから見知っていました。その頃からマスメディアや人々の期待にずっとさらされてきた選手生活だったと思います。人々の期待する浅田真央でいなくてはいけないと思い悩むこともあったでしょう。10年以上そうして過ごしてきたのです。本当にお疲れさまでした。

とりあえず今は様々な柵から解き放たれて「浅田真央」としての自由な時間をゆっくり持ってほしいです。心のリフレッシュだけではなく体のケアも十分にして新しい浅田真央としての人生を歩んでいって欲しいと思います。

沢山の笑顔と素敵な時間をありがとう。そして卒業おめでとう!この春の日が新しい始まり、これからもその笑顔が輝き続けることを願っています。

 

世界王者という名の檻の中で―――ハビエル・フェルナンデス

B級戦には出ないフェルナンデスはここ数年JOが初戦になっている。どちらかといえばスロースターターなフェルナンデスはJOではいつもそこそこな滑りで大げさにはやし立てる日本メディアを喜ばせる存在になっていた。
しかし今シーズンのJOでは宇野に及ばなかったもののかなりまとめた演技をしてきた。こんなに早くから仕上げてくるなんて珍しい、しかもFSの振り付けが遅かったはずなのに・・・と意外に思ったことを覚えている。
GPSが連戦なのでそうしたのかなと思いそのあと1月空くから体調は整えられるだろうと思い込んでいたのだが実際にはメディアやショーや宣伝など世界王者として忙しい生活を送っていたらしい。今季最高を見せたロステレコム以降FSをまとめることができずにユーロ以外の主要大会の表彰台を逃す結果となってしまった。
世界王者という称号は私が思う以上にいろいろな意味を持つものなのだな、と改めて知ったフェルナンデスの今シーズンを振り返る。


ロステレコム  総合1位 292.98 SP2位 91.55 FS1位 201.43
フランス杯   総合1位 285.38 SP1位 96.57 FS1位 188.81
G P F   総合4位 268.77 SP3位 91.76 FS4位 177.01
欧州選手権   総合1位 294.84 SP1位 104.25 FS1位 190.59
世界選手権   総合4位 301.19 SP1位 109.05 FS1位 192.14
平均       総合  288.632 SP平均 98.636 FS平均  189.996

 

ユーロは5連覇できたがGPFと世界選手権という強豪選手が揃った大会で台落ちしてしまうと言う五輪シーズン前にはちょっと不安になるシーズンとなってしまった。
点数的には後半の試合で伸びたが主にSPのおかげで有りFSではなかなかジャンプを揃えることが出来なかった。若手が大幅に基礎点を上げていく中で構成を上げないと選択したが、ショーや取材など世界王者に課せられた数多くの雑事の影響も有りなかなかベストな状態で試合をむかえることが出来なかった。


<ジャンプ>
SP  予定構成 4T+3T 4S // 3A = 34.45
         
        基礎点   GOE  減点        合計
ロステレコム 28.35  1.09  0  29.44  
フランス杯  34.45 -0.57 -1  32.88
G P F  34.45 -3.06 -1  30.39
欧州選手権  34.45  4.15  0  38.60
世界選手権  34.45  8.72  0  43.17
平均     33.23 1.958 -0.4  34.896 

持ち越しプロであるマラゲーニャが世界選手権でようやく完成形を見せた。はまり役であるプログラムがなかなかノーミスできずにもやもやしていたのだが、パーツがびしっと入ったときの完成度の高さは素晴らしくこれは3連覇固いのではと思わせた。2連覇という実績が風格ある選手を作り演技に貫録をもたらせた。ロステレコムでは抜けもあったがシーズン後半に向かって完成に近づいていくことがわかる数字の並びになっている。

 


FS 予定構成 4T 4S+3T 3A+2T // 4S 3A 3Lz 3F+Lo+3S 3Lo =79.23
        
        基礎点    GOE  減点   合計
ジャパンO  70.10  8.58  0  78.68
ロステレコム 76.23 10.23  0  86.46
フランス杯  72.49  4.99 -1  76.48  
G P F  67.59 -2.41 -1  64.18
欧州選手権  79.23 -1.19 -1  77.04
世界選手権  75.49  1.61 -1  76.10
平均    73.522 3.635 -0.667 76.49

SPがだんだんとまとまっていくのに対してむしろ崩れていったような印象があるFSのジャンプ。昨季は安定していたセカンド3Tがなかなか入らず、また抜けもしばしば出てなかなか予定構成通りに滑れなかった。構成を上げない以上完成度の高い演技が求められたが、試合以外の要素が多かったためかFSまでは完成度を高められなかった印象だ。


<スピン>
SP
        基礎点   GOE    合計
ロステレコム  8.0  2.43  10.43  ALLレベル3
フランス杯   9.4  2.50  11.90  ALLレベル4
G P F   8.9  1.86  10.76  レベル4 2回 レベル3 1回
欧州選手権   9.4  2.93  12.33  ALLレベル4
世界選手権   9.4  2.22  11.62  ALLレベル4
平均     9.02 2.388 11.408

 SPのスピンについては基礎点が低いので確実にレベル確保しGOEを稼ぎたいところだったがシーズン序盤はレベルを落とすこともあった。世界選手権でもアップライトでぶれて思ったほどのGOEを得られなかった。スピンはフェルナンデスにとってはまだ取りこぼしの多い要素という印象が残るシーズンだった。

FS
        基礎点   GOE   合計
ジャパンO   8.2  2.00  10.20  レベル4 2回  レベル1 1回
ロステレコム  9.0  2.43  11.43  レベル4 2回  レベル2 1回
フランス杯   9.6  2.01  11.61  レベル4 2回  レベル3 1回
G P F   9.6  2.29  11.89  レベル4 2回  レベル3 1回
欧州選手権   9.6  1.65  11.25  レベル4 2回  レベル3 1回
世界選手権  10.0  2.22  12.22  ALLレベル4
平均     9.33  2.10  11.43

なかなかFSで会心という演技がなかったためもあるがスピンもちょっといまいちな印象のシーズンだった。ジャンプの基礎点が現在では決して高くないので取れるところではしっかりとっておきたい。レベルがワールドまでそろわなかったことが少しもったいないと感じる。

 

<ステップ>
SP
        基礎点   GOE   合計
ロステレコム  3.9  1.70  5.60  レベル4 
フランス杯   3.9  2.00  5.90  レベル4
G P F   3.9  1.40  5.30  レベル4
欧州選手権   3.9  2.10  6.00  レベル4
世界選手権   3.9  2.10  6.00  レベル4
平均      3.9  1.86  5.76

ステップは稼ぎどころ、はまりプロでもあるので加点もしっかりとっている。平均も非常に高い素晴らしい数字である。


FS
        基礎点   GOE   合計
ジャパンO   5.9  3.30  9.20  レベル4
ロステレコム  5.3  2.54  7.84  レベル3 
フランス杯   5.3  3.14  8.44  レベル3
G P F   5.9  3.20  9.10  レベル4
欧州選手権   5.9  3.10  9.00  レベル4
世界選手権   5.9  3.40  9.30  レベル4
平均      5.7 3.113 8.813

 ロステレとGOFでレベルを落とした。FSでミスが多かったためかステップの加点も昨季ほど多い感じにはならなかった。休憩するところなどわりと巧くつくられたプログラムだと思ったが、転倒のためか体力的にきつそうに見えてしまいなかなかうまくいかないものだと感じてしまった。

 

<TES計>
SP  
        基礎点   GOE  減点    合計
ロステレコム 40.25  5.22  0   45.47  
フランス杯  47.75  3.93 -1   50.68
G P F  47.25  0.20 -1   46.45
欧州選手権  47.75  9.18  0   56.93
世界選手権  47.75 13.04  0   60.79
平均     46.15 6.314 -0.4  52.064

世界選手権のノーミスTESが素晴らしい。ずっと見たかった完璧マラゲーニャが見れてうれしかった。昨季に比べぐっと数字が高くなっている。ただ個人的にはステップは昨季の方が良かったなぁと思っている。


FS
        基礎点    GOE  減点    合計
ジャパンO  84.20  13.88  0   98.08
ロステレコム 90.53  15.20  0  105.73  
フランス杯  87.39  10.14 -1   96.53
G P F  83.09   3.08 -1   85.17
欧州選手権  94.73   3.56 -1   97.29
世界選手権  91.39   7.23 -1   97.62
平均    88.555  8.848 -0.667 96.736

 ロステレコムが最高でそれを超えることができなかった。もともと4S・4Tはそこそこミスがある選手だったが今シーズンはここ数年安定していた3Aにミスが増えてきたことが昨季の比べ数字を下げる原因となっている。

 

<PCS>
SP
       SS TR PE CC IN  合計
ロステレコム 9.14 9.11 9.11 9.36 9.36  46.08
フランス杯  9.07 9.07 9.00 9.32 9.43  45.89 
G P F  9.07 9.00 8.71 9.21 9.32  45.31 
欧州選手権  9.32 9.32 9.54 9.50 9.64  47.32
世界選手権  9.43 9.36 9.79 9.75 9.93  48.26
平均     9.206  9.172  9.230  9.428  9.536   46.572

フェルナンデスのPCSの特徴は基本CCとINが高く、SSとTRが似た数字に落ち着く、PEはその時の演技の出来に左右されるという点。シーズンを通してその傾向は変わらなかった。

 

FS
       SS TR PE CC IN  合計
ジャパンO  9.39 9.14 9.50 9.46 9.57  94.12
ロステレコム 9.36 9.39 9.68 9.71 9.71  95.70
フランス杯  9.18 9.14 9.04 9.39 9.39  92.28 
G P F  9.14 9.14 8.93 9.39 9.32  91.84
欧州選手権  9.29 9.18 9.21 9.43 9.54  93.30
世界選手権  9.43 9.36 9.36 9.57 9.54  94.52
平均     9.298  9.225  9.287  9.492  9.512  93.628

ロステレコムがPCSでも一番高くこれを超えることができなかった。ノーミスできなくてもPCSの高さはシーズン通して変わらなかったが伸びるということもなかった1年となった。


<来季に向けて>

ノーミスできなかったこともあるがこの構成で五輪を勝ち抜けるかといえば厳しいという印象を与えたシーズンだった。しかしFSで明らかに体力がきつそうなことも見て取れるので構成を上げることができるかもかなり未知数だ。構成を上げる上げないどちらの選択をするかわからないが、決めたら決めたでそれを貫き通しやり遂げることが五輪の表彰台に上る条件になると思う。ぜひいい演技をして念願のメダルをゲットして欲しい。

世界選手権2017年 男子シングル総合データ

世界選手権でSP5位からの逆転優勝というのは男子シングル史上初めてのことだった。旧採点の時は順位点というものが大きかったからそもそも5位になったら優勝の目はまずなかった。そういう意味では新採点法というものの方がいいなと感じる。SPで7割がた優勝者が絞られてしまうのなら最初からFS一発で決めればいいとも思えてしまうからだ。SPとFSの2プログラムを滑る意味が旧採点の頃よりは現在の方がずっとあるような気がする。

 

<ジャンプ得点上位10人>
           基礎点   GOE    計    減点
 1位 ボーヤン・ジン  125.83  15.08  140.91
  2位 宇野 昌磨   125.29  14.49  139.78
  3位 羽生 結弦   119.38  18.28  137.66
  4位 N・チェン   136.32   -6.16  130.16  -3(実質127.16)
  5位 フェルナンデス 109.94  10.33  120.27  -1(実質119.27)
  6位 P・チャン   101.75  11.12  112.87
  7位 レイノルズ   107.04   -0.14  106.90
  8位 クヴィテラシヴィリ   95.17    7.24  102.41 
  9位 ビチェンコ     97.88    2.08   99.96
10位 M・コリャーダ   92.17    5.59   97.76  -1(実質 96.76)

 

1位も10位も昨季より9点ほど上がっている。基礎点100点超えも昨季は4人だったが7人まで増えて高難度化が進んでいることがわかる。
この部門のトップはボーヤン。考えてみればSPFS通して唯一のノーミス、6クワドを全て決めた素晴らしい結果です。そして驚くのは羽生だろう。SPでコンボ分の基礎点を無くしただけで無くGOEで-4受けたはずなのにGOEトップで3位に入ってしまった。SPノーミスだったら何点になっていただろうかと恐ろしくなってしまう。
それにしても高難度化が進んだ割に転倒は三人だけというのも驚きだ。昨季はこの10位以内に転倒者が6人いたが・・・転倒はやはり見ていて気持ちいいものでは無いので少ない方が良い。今回のワールドで良い演技が多かったという印象はこの辺りにあると感じる。


<スピン得点上位10人>

              基礎点 GOE  合計
  1位 J・ブラウン   19.90  7.28  27.18     
  2位 羽生 結弦    19.70  6.00  25.70 
  3位 ヴァシリエフス  19.90  5.13  25.03
  4位 宇野 昌磨    19.50  5.51  25.01
  5位 M・コリャーダ  19.40  5.14  24.54
  6位 P・チャン    18.50  5.35  23.85
  7位 フェルナンデス  19.40  4.44  23.84  
  8位 N・チェン    19.50  4.07  23.57
  9位 ボーヤン・ジン  19.40  3.78  23.18
10位 ミーシャ・ジー  19.00  3.79  22.79

 

ブラウンが1位なのはわかっていたがこうやって数字を見るとすごさがわかる。実は昨季羽生が1位だったのだがGOEは同じでその上を遙かいったブラウンの質の良さが際立った結果だ。
それにしてもボーヤンとネイサンは本当に近い数字が出る。昨季の10位はボーヤンで0.8点ほどGOEが良くなっている。成長が見られる結果だ。それは3位に入ったヴァシリエフスも同じ昨季7位からジャンプアップしている。さすがスピンの名手の弟子だなと感じる。

 

<ステップ得点上位10人>
               基礎点 GOE  合計
  1位 チャン       9.80  5.70  15.50              
  2位 フェルナンデス   9.80  5.50  15.30    
  3位 J・ブラウン    9.80  5.10  14.90   
  4位 羽生 結弦     9.80  5.00  14.80              
  5位 宇野 昌磨     9.80  4.60  14.40    
  6位 ミーシャ・ジー   9.80  4.30  14.10   
  7位 デニス・テン    9.80  4.00  13.80  
  8位 ヴァシリエフス   9.80  3.90  13.70
  9位 ボーヤン・ジン   9.20  3.30  12.50   
10位 N・チェン     9.20  2.90  12.10  

 

1位と2位4位6位は昨季と同じ、1位と10位は昨季より下がったが全体的には点数が上がっている。SPFS両方レベル4を揃えたのは昨季は4人だったが倍増している。シーズン冒頭はなかなか4取れなかったがラストに来て皆纏めてきた。
レベルさえ取れてしまえば大きな差にはならないエレメンツなので皆対応をしてきているのだろう。そしてここでも並ぶボーヤンとネイサン、君たち本当に数字上似たもの選手だわ。


<TES上位10人>
            ジャンプ   スピン  ステップ   計    減点 
  1位 宇野 昌磨    139.78  25.01  14.40  179.19      
  2位 羽生 結弦    137.66  25.70  14.80  178.16  -1(実質177.16)
  3位 ボーヤン・ジン  140.91  23.18  12.50  176.59
  4位 N・チェン    130.16  23.57  12.10  165.83  -3(実質162.83)
  5位 フェルナンデス  120.27  23.84  15.30  159.41  -1(実質158.41)  
  6位 P・チャン    112.87  23.85  15.50  152.22 
  7位 レイノルズ    106.90  21.87  10.77  139.54   
  8位 J・ブラウン   94.19  27.18  14.90  136.27  -1(実質135.27) 
  9位 クヴィテラシヴィリ   102.41  20.75  10.30  133.46
10位 M・コリャーダ  97.76  24.54  10.96  133.26  -1(実質132.26)  

 

昨季は170超えは一人、2位で150台だったが今季は170点台が3人6位でも150台という高得点化。10位でさえ10点以上上がっている。
それでも1位と10位で45点以上開いてしまう。SPの順位も点差もFSの出来で大きく変わってしまう。ジャンプの高難度化による基礎点アップがFSの意味合いを大きく変えてきていると感じる。


<GOE獲得上位10人>
                ジャンプ  スピン  ステップ   計
  1位 羽生 結弦    18.28  6.00  5.00  29.28
  2位 宇野 昌磨    14.49  5.51  4.60  24.60 
  3位 P・チャン    11.12  5.35  5.70  22.17 
  4位 ボーヤン・ジン  15.08  3.78  3.30  22.16 
  5位 フェルナンデス  10.33  4.44  5.50  20.27 
  6位 J・ブラウン     7.88  7.28  5.10  20.26 
  7位 ヴァシリエフス    4.91  5.13  3.90  13.94
  8位 M・コリャーダ    5.59  5.14  2.36  13.09   
  9位 ミーシャ・ジー    3.55  3.79  4.30  11.64
10位 クヴィテラシヴィリ    7.24  1.85  1.70  10.79 

 

GOEが羽生比で低いなぁなんて思っていたのだがSPで-4食らったのに昨季のフェルナンデスのGOEを超えていた。低い気がしたのは気のせいだったのか・・・なんだかよくわからなくなってくる。
しかしこれは羽生だけでは無く10位まで10点を超えるほどGOEを多く得ている。転倒などの大きなミスが案外少なかったことを物語る結果かも知れない。それだけ見応えのあった試合だったんだなと感慨深い。


<PCSSP・FS平均上位10人>
                SS TR PE CC IN  計
  1位 羽生 結弦    9.59 9.34 9.72 9.63 9.68 47.95
  2位 フェルナンデス  9.43 9.36 9.58 9.66 9.74 47.76
  3位 P・チャン    9.64 9.46 9.50 9.57 9.57 47.74
  4位 宇野 昌磨    9.34 9.09 9.38 9.31 9.36 46.46
  5位 J・ブラウン   8.93 8.84 9.07 8.93 9.09 44.85
  6位 N・チェン    8.59 8.41 8.47 8.66 8.63 42.75
  7位 ボーヤン・ジン  8.48 8.16 8.57 8.36 8.43 42.00
  8位 M・コリャーダ  8.52 8.18 8.41 8.36 8.47 41.93
  9位 デニス・テン   8.43 8.05 8.22 8.34 8.36 41.38
10位 M・コフトゥン  8.31 7.91 8.11 8.16 8.20 40.68

 

PCSを平均することに何の意味も無いけれど毎回やっているのでとりあえず上げておく。PCS3強は昨季までと変わらず。出来によってこの3人の序列が決まっている感じ。高難度FSを纏めた羽生がPEで多少差を付けたくらいで後はそれぞれの特性を生かした数字が付けられている。ただTRで羽生が一番低いのだけは疑問だ。たぶんSPの差が大きかったのだろうが不思議な印象を受ける。
数字を見ると3強に宇野が迫ってきているようだが、現実には羽生のFSが低めだったのでそれに併せて他の二人を評価したら近くなってしまったというのが実情だろう。3強と宇野とは別の尺度で採点されているためこんなことも起こる。(3強は基準となった選手に対しての採点、今回の場合はSPFS共先に滑った羽生が基準。宇野は若手用の採点、以前より良い演技をしたら点が伸びるという現象。ボーヤンやネイサンも同じ)
3強については数字的に昨季とあまり代わり映えしないが、それ以下は全体的に伸びている。昨季も10位だったコフトゥンで2点弱上がっている。テンを除けばそこそこ演技を纏めた選手が多かったと言うことだろう。
それにしてもこのPCS10傑にボーヤンが入っているのがうれしい。今季凄くスケートが伸びるようになったわりにシーズン冒頭は全くPCSが変わらなかったので非常に残念に感じたが、ワールドで良い演技をしたことで昨季の4CCを超えることが出来た。FSで単調になってしまうところはまだあるが魅せる意識は昨季より良くなっているし今後の伸びも非常に楽しみだ。
ネイサンは3転倒で4CCよりだいぶ落としてしまったが、靴の問題や初ワールドの枠取りのかかった緊張の中では十分やれるだけのことはした。スポンサーもついたと言うことで靴の問題などはある程度解消できるだろう。不安のある靴であそこまでやりきったのだから期待しか感じない。腕の使い方や音楽への対応は柔軟なところが見えるのでPCSが伸びそうな印象はある。怪我には気をつけて新しいプログラムで新たな魅力を魅せて欲しい。


まだ国別は残っているがとりあえず今シーズンはほぼ終わり。いよいよ五輪シーズンに突入します。GPSの予定もようやく出てきてもう五輪なんだなぁという実感がわいてきます。アサインは新年にならないとわかりませんがそろそろ五輪への勝負プロが発表されてきています。今後も徐々にいろいろな情報が出てくることでしょう。わくわくと言うより胃がきりきりしそうなのですが五輪本番で良い演技がたくさん見られることを信じて待つことにします。
とりあえずこれでワールドは終わり。個別のシーズン振り返りをぼちぼちやっていけたらと思っています。まずはフェルナンデスからかな。国別でないし毎年最初にやってるから・・・