つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

2位じゃダメなんです―――ロシアジュニア女子シングル

トゥルソワ
サモドゥロワ
コストルナヤ
パネンコワ
タカラノワ
紀平梨花

ジュニアグランプリファイナルはこの6人に決まった。7戦終了して痛感したのはロシア女子の強さだろう。ファイナルに出場する6人中5人がロシアンという結果、本当におそロシア、である。


ファイナルに出場決定したロシア5人に共通しているのは第1戦で優勝しているということ。幾人も実力者がいるロシアだからこその厳しさではあるが第1戦で2位以下になってしまうと少なくとも今シーズン2戦目は来なかった。
勝って道を開いたのは5戦目が第1戦となったサモドゥロワと6戦目に初登場だったコストルナヤ。この二人1戦目がこれだけ遅かったことからも2戦目の可能性はそれほど高くなかったはずだ。しかし得ていたワンチャンスに勝利したことで2戦目を獲得した。短期間で体調管理も大変だったろうがそれでも良い順位を獲得しファイナルの切符をつかみ取った。ファイナルの表彰台に立てれば更なる道が開かれるだろう。その可能性を得たことは非常に大きい。

一方で1戦目で2位だったグリャコワ・4戦目で3位だったコンスタンチノワには2戦目は与えられずその時点でファイナルへの道も断たれた。それはつまり出場できる5人に比べ世界に飛びたてる道がかなり厳しくなってしまったということでもある。
ロシア以外の国であれば当然与えられたであろう2戦目が与えられない。それだけレベルが高く世界に出るのは困難な状況だ。他の国なら簡単にトップに立てる実力がありながら出場権さえ得られない。それが今のロシア女子シングルの現状だ。

スポーツだからこそ勝利を目指し勝利をもって更なる道が開かれる。2位じゃダメなんです、それをジュニアの年齢で実感することになる彼女たちはこの悔しさを糧にしていくしかない。そして今回勝利した者も次はその勝った者の中でも勝利していかなければならない。この過酷な状況を乗り越える必要があるからこそミスのない演技ができるのだろう。

ただ一人ロシアン以外で出場する紀平も当然勝利を表彰台を狙っているはずだ。しかし1度でも勝利してきた者たちと勝利できなかった自分との差をしっかりと自覚する必要がある。3Aという特別なジャンプが飛べるということは強みではあるがミスしない選手たちの中にあってはそれほどのアドバンテージにはならない。まして5人のロシアンの中にはそれ以上の高難度を飛べるものもいる。勝利するためにはメダルを得るためには名を上げるためにはまずミスをしないことが何よりも求められる。それを成しえることができるか、真価が問われるファイナルになるだろう

タノジャンプを多発するロシアンに苦言を呈する意見を見ることがある。ボーナス狙いでジャンプを後半にまとめるプログラムにウェルバランスが悪いと言われることがある。しかしルール上考えられる戦略の一つだ。より高い基礎点をより多くのGOEを得るための手段なのだ。0.1点でも多いものが勝利する戦いなのだから有効だと思うのならやってみることは悪くないだろう。良くないというならばルールで制限するしかない。現状問題がないのならば勝つための手段として用いることを責められはしないだろう。

外部から嫌味を言うことは簡単だ。しかし彼女たちは熾烈な戦いを勝ち抜かなければならない以上できることを出し惜しんではいられない。外部の無責任な好みを意識してウェルバランスの取れたプログラムを組んで損をして勝てなければそちらの方が悔やまれるだろう。ルールの設定の問題を選手に転嫁させてはいけない。

2位じゃダメなんです。勝たなければ次の試合は得られないんです。その過酷さこそが現在女子シングルにおいてロシア女子がシニアにおいても上位を占める理由となっている。ジュニアっ子たちの結果を見れば今後もその流れが続くことが予想される。

その一方一時期活躍しても体型変化やけがなどで長くは続かなかったりリタイアする選手が後を絶たない。使い捨てのような状況に置かないで欲しいのだが、そこに気を回す以上に多くの選手が上を目指して競っているためなかなか難しい。せめてロシア国内においてもう少しスポーツ医学の発展や選手ファーストの医療体制を整えて欲しいと願わずにいられない。ファイナルに進む選手たちも今回それができなかった選手たちもぜひサポートを含めて体調管理・怪我対策に十分気を付けて欲しい。

 

それにしても面白いと思うのが選手のカラーだ。エテリ門下はその期間の長さにかかわらずいかにもエテリ門下という印象を与えるし、ミーシン門下のサモドゥロワは動きや体の使い方がリーザを思い起こさせる。得意分野の違う2人のコーチが協力したらどんなすごい選手ができるだろうと想像が膨らむが残念ながらそれはまずないといえる。日本でも幾つか派閥があるようにロシアもモスクワやらサンクトやらいろいろあるみたいだから。ただエテリ門下の基礎技術が高いながら少女潮流で個性が似偏ってしまいがちなところや、ミーシン門下のちょっと古い印象のプログラムながら女性的な魅せ方の巧さを見るともったいないなと思ったりもする。

 

さてJGPSの終了をもって今週末からシニアのGPSが始まる。今回は五輪を占う意味でも重要な大会になる。素晴らしい演技がたくさん見られる大会になることを願っている。