つれづれなるままに・・・

日々の思ったことを綴っていきます。

112.72の出し方

オータムが始まる前に「110.95を超える(仮)」と言う記事を書いていた。昨季のワールド上位6人が今期の構成でこの数字をどうしたら上回れるかを考えてみたものだ。時間がある時にちょろちょろと書いていたので途中で飽きてしまい記事として上げることはなかった。
凡その内容として110.95を超える可能性が最も高いのはノーミス羽生で次がジャンプノーミスレベル4揃え+最高にクリーンな3Aを飛んだチャン、その次がジャンプノーミスレベル4揃え+全てのジャンプGOE+2以上のネイサンではないかというようなものだった。
まだシーズン序盤だしその内また書く気になるかも・・・と書きかけを一応ファイルに保存はしたのだが先日のオータムであっさり羽生が超えたので廃棄決定となってしまった。

 


<2017年AC>

      基礎点     満点    獲得点   達成度

TES計 49.51  65.11  64.17 98.56%

ジャンプ 35.91  44.91  44.71 99.55%

スピン   9.70  14.20  13.60 95.77%

ステップ  3.90   6.00   5.86 97.67%


PCS         50.00  48.55 97.10%

総計         115.11 112.72 97.92%

 


<2015年GPF>

      基礎点     満点    獲得点   達成度

TES計 47.45  63.65  61.81 97.11%

ジャンプ 34.45  43.45  43.16 99.33%

スピン   9.70  14.20  13.85 97.54%

ステップ  3.30   6.00   4.80 80.00%


PCS         50.00  49.14 98.28%

総計         113.65 110.95 97.62%

 


上がオータムの内容、下がこれまでの最高であった2015年のGPFだ。基礎点を上げた以上に点数が伸びているので単純な達成度としても今回の方が上回っている。
個別のエレメンツとしてはジャンプはほぼ同じ、スピンが少し下がってステップはレベルを揃えた分上がった。PCSはまだ序盤と言う意味ではまだそこまで出し切ることはできない部分はあっただろう。そういう意味では現時点で出せる最高の数字といえるのではないだろうか。

 

ということで110.95は超えられてしまったので次は112.72以上を出す事を考えてみる。
まずは予定構成からTESを比較してみる。

 

           今期予定構成      ジャンプ基礎点 TES満点 対64.17比率
羽生結弦    4Lo // 3A 4T+3T= 37.41 66.61 96.34%
宇野昌磨    4F // 4T+3T 3A = 37.71 66.91 95.90%

ボーヤン・ジン 4Lz+3T 3A // 4T= 37.73 66.93 95.88%

P・チャン   4T+3T 4S // 3A = 34.45 63.65 100.82%

フェルナンデス 4T+3T 4S // 3A = 34.45 63.35 101.29%

N・チェン   3A // 4Lz+3T 4F= 41.72 70.92 90.48%

        AC羽生    最大基礎点   必要GOE
羽生結弦    64.17 - 51.01 = 13.16

宇野昌磨    64.17 - 51.31 = 12.86
ボーヤン・ジン 64.17 - 51.33 = 12.84

P・チャン   64.17 - 48.05 = 16.12

フェルナンデス 64.17 - 47.75 = 16.42
N・チェン   64.17 - 55.32 =  8.85

 

羽生のオータムのTES64.17を超えるためには基礎点を最大に取ったうえで大量のGOEを得なくてはいけない。それぞれの今シーズンの基礎点から必要GOEを計算したのが上である。
GOEはジャンプが9点(3×3)、スピンが4.5点(1.5×3)、ステップが2.1なので最大で15.6と言うことになる。現時点でチャンとフェルナンデスがTESでは上回ることができなくなっている。


GOEを+13つけるには凡そステップで1.5、スピンで3.5、ジャンプで8点ほど必要になる。
そうなると宇野とボーヤンについては無理とは言わないがかなり難しいと思われる数字になる。宇野はまだスピンステップは獲得できるかもしれないがボーヤンはこれまでのところその二つにもそこまでのGOEがついていない。両者共に問題となるのが単独ジャンプだろう。ステップを全く入れてないというわけではないが羽生やフェルナンデスほど「明確」ではないし実際に飛ぶまでに間もある。その場合GOEで+3はかなりつきにくい。そしてコンボについてはどちらもあまり上手くはない。ボーヤンは詰まりがちだし宇野は回転しながら下りるので回り込んで回り込んで降りる形になりやすい。ジャンプGOE+8と言う設定はかなりハードであると言える。


そのあたりネイサンはまだ可能かなと言う数字だ。ステップで+1、スピンで+3、ジャンプで+5と言うのはノーミスだったら普通に出そうな数字だからだ。単純なTES勝負だったらノーミス羽生と最も競えるのは現在のところネイサンと言うことになるだろう。


そして羽生も当然更新可能だと言える。少なくとも4LoをSPで入れることは昨季できているからだ。もっともGOEについては4Sほどはもらえていない現状がある。しかしGOE+1.5以上がつけば4S満点を上回るのしそれ以上のGOEを出した経験もあるので十分可能だろうと予想できる。

 

ということでTES64.17を超えられる選手は羽生自身とネイサンの現状二人かなと言う印象だ。


PCSについては羽生・チャン・フェルナンデスの3人なら完璧なノーミスをすれば48.55を出すことはできそうだ。ただ羽生はともかくチャンとフェルナンデスはTESで超えることができない分PCSの数字が必要になる。だがその不足分埋めるとするとPCSをほぼ満点出す必要になる。しかしどちらかといえばTESよりPCSで満点を出す方が難しい。不可能とは言わないがかなり困難だろう。

 

宇野・ネイサン・ボーヤンの3人はPCS3強とはまだ差がある状況だ。よく若手がいい演技をするとPCSが上がるといわれる。確かにソチ五輪で羽生のPCSはチャンに肉薄した。しかし伸びたとはいえ並び立ったわけではない。ソチ五輪SPで先に滑ったノーミス羽生のPCSは46点台半ば、あとから滑ったミスありチャンが47点強、その差は約0.5だった。かなり近づいたことは確かではあるがただ結果的にそうなったというべきだ。つまりノーミス羽生にあの点をつけた時点でチャンがノーミスだったらもっと高い点をつける意思があったということだ。チャンにミスが出て滑りもいまいちな部分があったがため近い数字でおさまっただけでまだ二人の間に差はあったのだ。

そう考えるとこの3人がノーミス同士で3強に並び立つのはまだ難しいだろう。昨季までの3人の最高PCSは宇野が44位、ネイサンが43半ば、ボーヤンが41ほどだった。ソチシーズンの羽生のようにいい演技を連続して行って上がったとしても最高で45~47程度だろう。そうすると48.55まではまだ1点以上は確実に差があることになる。とすればTESでその数字を上回る必要がある。64.17時点で90%以上の達成率が必要なTESにさらに1点以上の上積みと考えると・・・宇野やボーヤンは完璧に近い完成度が必要になるし、ネイサンでもかなり困難さが増してくる。

 

以上のことを踏まえて112.72を各選手が出すために必要な数字を出してみる

        ジャンプ スピン ステップ  TES計 PCS PCS平均 
N・チェン   49.02 13.30 5.20 = 67.52 45.20 (9.040)
宇野昌磨    46.21 13.70 5.80 = 65.71 47.01 (9.402)
ボーヤン・ジン 46.73 13.90 6.00 = 66.63 46.09 (9.218) 
P・チャン   43.45 14.20 6.00 = 63.65 49.07 (9.814)
フェルナンデス 43.45 13.90 6.00 = 63.35 49.37 (9.874)

 

こうして予想点数を考えてみると出せそうな可能性があるのはネイサンだけという感じだ。ジャンプのGOEはなかなか難しいがそれ以外については頑張れば出せないことはない気がする。
宇野はジャンプとPCS、フェルナンデスはスピンとPCS、チャンもスピンとPCSが苦しいなと感じる。ボーヤンに至ってはどれか1つでも出せるだろうかと思ってしまう。

結局のところ試合に勝てるなら何点でもいいのだが、最高点を出すあるいは超えると考えるとそれぞれがこういった数字を意識しなくてはいけなくなるということだ。112.72という数字がどれほど凄いものかよくわかる。上を狙う者たちに対して相当高い壁としてそびえたっている。

 

羽生はわざわざ数字を出す必要はないだろう。PCSもスピンもステップも今回より高い点数を出したことがある。更に基礎点を上げることでジャンプの点数を伸ばすことができれば最高点更新も当然あるだろう。

一方で羽生がシーズン冒頭にこの数字が出したことが良かったのかなと思ってしまうこともある。膝さえよければ4Loに戻すだろうがこの数字が気負いとなってしまわないかと心配になるからだ。数字には上限があり満点採点はないだろうという予想もたつのでたとえノーミスして点数が伸びないことがあるかもしれない。そうなっても深く考えすぎないで欲しいとは思う。こんな記事を出しておいてなんだがあまり点数にはこだわらないその試合その試合の最高の演技を見せて欲しい。

 

とりあえず数字として検討してみたが点数とは実行した演技につけられるもの、あまりそれを意識しすぎてもいけない。頑張って演技をして結果的に最高点だったということが本来望まれるべきだろう。あとどこを強化したらもっと伸びるかな、そんなことを考えながら様々な試合を見ていきたい。そしてまたこの数字の更新が見られたら最高だと今は思っている。